日本皮膚免疫アレルギー学会雑誌
Online ISSN : 2433-7854
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3 巻, 2 号
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総説
  • 佐田 憲映
    専門分野: 総説
    2020 年3 巻2 号 p. 279-281
    発行日: 2020/04/30
    公開日: 2020/11/24
    ジャーナル 認証あり

     原発性血管炎は,主たる罹患血管のサイズで分類され,大型血管炎には高安動脈炎,巨細胞性動脈炎,小型血管炎のうち免疫複合体が関与しないものにはANCA関連血管炎が分類される。

     大型血管炎に対しては,おもに副腎皮質ステロイド薬を中心として再燃例や治療抵抗例にはさまざまな免疫抑制剤の併用が試みられてきた。最近,抗IL-6受容体抗体製剤トシリズマブの有用性を評価したランダム化比較試験の結果が相次いで報告された。GiACTA試験は,巨細胞性動脈炎患者を対象とし,ステロイドフリーの状態での寛解維持効果が証明された。TAKT試験は,治療抵抗性の高安動脈炎患者において再燃抑制効果が示唆されている。

     ANCA関連血管炎では,従来治療の代替療法として抗CD20抗体製剤リツキシマブの有効性が報告されている。さらに最近では,補体C5a受容体阻害剤アバコパンが,副腎皮質ステロイド薬の代替役として,または大幅な減量が可能となる薬剤として期待されている。

    (日本皮膚免疫アレルギー学会雑誌,3(2):279-281,2020)

  • 上田 真由美
    原稿種別: 総説
    2020 年3 巻2 号 p. 282-293
    発行日: 2020/04/20
    公開日: 2020/11/24
    ジャーナル 認証あり

     重篤な眼合併症ならびに眼後遺症を認める重症薬疹には,Stevens-Johnson症候群(SJS)ならびにその重症型である中毒性表皮壊死症(TEN:Toxic Epidermal Necrolysis)がある。眼科医は,眼後遺症を伴う慢性期の患者を診ることが多く,重篤な眼合併症ならびに眼後遺症を伴うSJSとTENを併せて広義のStevens-Johnson症候群と呼称している。眼合併症を伴うのは約半数と報告されており,その多くは慢性期に重篤な眼後遺症を生じる。重篤な眼合併症・眼後遺症を伴うSJS/TENの主な原因薬は,アセトアミノフェンやNSAIDsをはじめとする解熱鎮痛薬が原因と考えられる。感冒薬関連眼合併症型SJS/TEN発症には,遺伝子素因も大きく関与しており,日本人では,HLA-A02 : 06や,IKZF1をはじめとした複数の遺伝子多型との有意な相関が確認されている。

    (日本皮膚免疫アレルギー学会雑誌,3(2):282-293,2020)

  • 乾 重樹
    原稿種別: 総説
    2020 年3 巻2 号 p. 294-298
    発行日: 2020/04/20
    公開日: 2020/11/24
    ジャーナル 認証あり

     通常の診療においては,臨床像を観察することで診断をつけていく。しかし,診断に自信がもてない場合は,トリコスコピーによって確認する。もし,臨床像から予想した診断と合わなければ,臨床像とトリコスコピー所見とを総合的に再考する。脱毛の形状パターンをまず観察する。円形の脱毛斑では円形脱毛症を,前頭部と頭頂部にパターン化した脱毛では男性型脱毛症を考え,トリコスコピー所見から確認する。帯状脱毛ではオフィアシス型円形脱毛症,frontal fibrosing alopeciaが鑑別となり,さらにびまん性脱毛ではびまん性の円形脱毛症,女性型脱毛症,休止期脱毛症の頻度が高い。これらについても各々に特徴的なトリコスコピー所見が手がかりとなる。

    (日本皮膚免疫アレルギー学会雑誌,3(2):294-298,2020)

  • 新井 達
    原稿種別: 総説
    2020 年3 巻2 号 p. 299-304
    発行日: 2020/04/20
    公開日: 2020/11/24
    ジャーナル 認証あり

     膠原病はさまざまな皮膚症状を主訴に来院する。今回は代表的な5症例[1.凍瘡を主訴に受診した強皮症,2.難治性手湿疹から腎癌が発見された皮膚筋炎のメカニクスハンド,3.逆ゴットロン徴候を主訴に来院した間質性肺炎合併皮膚筋炎,4.難治性搔痒性皮疹で受診した亜急性皮膚エリテマトーデス(丘疹鱗屑型),5.持続性の顔面半側の血管性浮腫を主訴に来院したSjögren症候群]を供覧して,各症例のポイントについて述べるとともに,皮膚科医が膠原病診療を行うことの意義と重要性について述べた。

    (日本皮膚免疫アレルギー学会雑誌,3(2):299-304,2020)

  • 山本 俊幸
    原稿種別: 総説
    2020 年3 巻2 号 p. 305-312
    発行日: 2020/04/20
    公開日: 2020/11/24
    ジャーナル 認証あり

     好酸球性筋膜炎は,四肢に板状の(浮腫性)硬化をきたすが,手指の浮腫性腫脹やレイノー現象を欠く。病理組織学的に,筋膜の肥厚と炎症細胞浸潤を認める。好酸球浸潤は,生検の時期によって必ずしもみられなく,旧くなると形質細胞の浸潤が目立つ。末梢血好酸球上昇は,病初期にみられることが多い。強皮症の類縁疾患であるが,その頻度はずっと低い。発症の誘因となるのは過度の労作が有名だが,ほかに血液系悪性腫瘍や薬剤の関与が報告されている。自己免疫疾患を合併することがあり,皮膚疾患だとモルフェアの合併が最も多い。治療は副腎皮質ステロイド薬の内服が第一選択となる。わが国においても診断基準,重症度分類が策定された。病態に関しては,好酸球が線維化になんらかの役割を担っているが,研究は遅れている。本稿では,好酸球性筋膜炎の最近の知見について概説した。

    (日本皮膚免疫アレルギー学会雑誌,3(2):305-312,2020)

症例
  • 井上 友介, 足立 厚子, 白井 成鎬, 山野 希
    原稿種別: 症例
    2020 年3 巻2 号 p. 313-317
    発行日: 2020/04/20
    公開日: 2020/11/24
    ジャーナル 認証あり

     38歳,男性。30分間のランニングをした後に市販の栄養ドリンク剤を1本服用したところ,30分後に全身に蕁麻疹が出現した。その後意識消失し,救急搬送された。後日,原因精査を希望し当科を受診された。栄養ドリンク剤as isのプリックテストにて陽性を示したため,成分別プリックテストを施行した。合成タウリン(1%)のみ陽性を示し,ほかの成分はすべて陰性であったため,栄養ドリンク剤中の合成タウリンによるアナフィラキシーと診断した。栄養ドリンク剤による即時型アレルギーの報告は少なく,合成タウリンでの報告例は韓国からの1例のみであり,調べ得た限りではわが国で初の報告例である。タウリンは哺乳類の成長に重要な栄養素で,牡蠣やイカなどの食品に天然タウリンとして含まれるほかに,多数の栄養機能食品に配合されている。自験例はイカなど天然タウリンを多く含む食品の摂取制限は必要とせず,合成タウリンを含有する栄養機能食品の禁止のみで,再発はない。

    (日本皮膚免疫アレルギー学会雑誌,3(2):313-317,2020)

  • 小谷 紘史, 大塚 勤, 岡田 真也, 草間 幹夫, 谷口 隆志
    原稿種別: 症例
    2020 年3 巻2 号 p. 318-325
    発行日: 2020/04/30
    公開日: 2020/11/24
    ジャーナル 認証あり

     76歳女。約2年前に右顎下部に腫脹が出現。徐々に増大し,6ヵ月前,掻痒を伴う発赤が出現したため,当院耳鼻咽喉科を受診。蜂窩織炎の診断のもとに,抗菌薬による治療を行ったが改善せず。精査治療目的に当科紹介受診となった。右顎下部に木村病を疑わせる腫瘤とリンパ節腫脹,両側大腿に点状出血,紅色の小結節を散在性に認めた。また,手指に関節痛や朝のこわばりを認め,単純X線にて関節破壊像がみられた。血中高IgG4血症(501mg/dl)を認め,組織学的に右顎下部の腫瘤,リンパ節,左大腿部の小結節のいずれにも著明なIgG4陽性形質細胞浸潤を認めたことから,木村病様皮疹,リウマチ様の関節症状を呈したIgG4関連疾患と診断し,プレドニゾロン(30mg/day)内服開始した。治療開始21日目に症状は軽快したが,プレドニゾロン漸減中に間質性肺炎を発症し死の転帰となった。

    (日本皮膚免疫アレルギー学会雑誌,3(2):318-325,2020)

  • 奥田 英右, 岸田 寛子, 片岡 葉子
    原稿種別: 症例
    2020 年3 巻2 号 p. 326-329
    発行日: 2020/04/30
    公開日: 2020/11/24
    ジャーナル 認証あり

     18歳女性。市販感冒薬を内服後に緊急治療を要する呼吸困難と全身に蕁麻疹が出現し,救急治療を受け改善した。アナフィラキシーの原因薬検索目的で当科紹介された。被疑薬はメチルエフェドリンを含む8種の構成成分で構成されている。個々の成分について各々皮膚テスト(プリックテスト,スクラッチチャンバーテスト)・内服誘発テスト施行した。メチルエフェドリン以外の皮膚テスト,内服テストはすべて陰性。メチルエフェドリン塩酸塩は単独で入手困難であったため,同成分を含むフスコデ®配合錠を用いた。フスコデ®配合錠は,感冒薬として多く用いられる。フスコデ®配合錠には鎮咳作用のあるジヒドロコデインリン酸塩,dl-メチルエフェドリン塩酸塩,抗ヒスタミン作用のクロルフェニラミンマレイン酸塩が含まれている。フスコデ®配合錠内服75分後,全身に紅斑を伴う呼吸困難と鼻漏が誘発された。フスコデ®配合錠の他の成分ではいかなる症状も誘発されなかった。メチルエフェドリンがアナフィラキシーの原因薬品と推測された。これはメチルエフェドリンによる最初のアナフィラキシー報告例である。

    (日本皮膚免疫アレルギー学会雑誌,3(2):326-329,2020)

  • 鎌田 友香, 山中 美佳, 加藤 敦子
    原稿種別: 症例
    2020 年3 巻2 号 p. 330-336
    発行日: 2020/04/20
    公開日: 2020/11/24
    ジャーナル 認証あり

     59歳,女性。歯科で左奥歯に仮歯を装着した約1時間半後に左頬粘膜の腫脹が出現した。数時間後に除去したが,同日夜から37.5℃の発熱と口蓋に水疱,咽頭の腫脹,それに伴う呼吸困難感も出現した。パッチテストで仮歯,仮歯レジンの液剤,重合したレジン,2-hydroxyethyl methacrylate(2-HEMA),ethyleneglycol dimethacrylate(EGDMA),金チオ硫酸ナトリウム,重クロム酸カリウム,塩化第二水銀に陽性を示した。仮歯レジンの主剤であるmethyl methacrylate(MMA)のパッチテストは陰性であったが,液剤には2-HEMA,EGDMAと類似した構造をもつメタクリルモノマーが含まれていた。以上より仮歯のメタクリルレジンアレルギーと診断した。歯科患者のメタクリルレジンアレルギーの報告は歯科従事者に比し少なく,自験例は,わが国で探し得た限り4例目であった。軽微な症状は見逃されている可能性が高く,注意が必要である。また,メタクリルレジンアレルギーを疑う際のパッチテストは,主剤だけでなく2-HEMA,EGDMAも貼付することが重要と考えた。

    (日本皮膚免疫アレルギー学会雑誌,3(2):330-336,2020)

  • 岡村 玲子, 峠岡 理沙, 尾藤 三佳, 上田 幸子, 益田 浩司, 加藤 則人, 羽倉 麻美
    原稿種別: 症例
    2020 年3 巻2 号 p. 337-341
    発行日: 2020/04/20
    公開日: 2020/11/24
    ジャーナル 認証あり

     45歳,歯科助手の女性。初診の1ヵ月前から歯科助手の仕事をはじめ,同時期より勤務後に右手第1~3指に限局した紅斑が出現した。歯科医院でレジンの入った容器を洗浄する際,手袋をして右手1~3指を用いてレジンを拭い取っていた。レジンの接触皮膚炎を疑いパッチテストを行った。レジンシリーズと,歯科医院で使用しているレジンのポリマー(1%pet),モノマー(1%pet)を用いた。レジンシリーズのうちethyleneglycol dimethacrylate(EGDMA),2-hydroxyethyl methacrylate(2-HEMA)と,歯科医院のレジンのモノマーで陽性反応を認め,レジンによる接触皮膚炎と診断した。レジンの接触皮膚炎は低分子のモノマーをアレルゲンとし,使用する指の紅斑,腫脹など特徴的な皮疹を呈する。またレジンは各種の手袋に浸透する性質をもっているため,扱いの際には注意が必要である。

    (日本皮膚免疫アレルギー学会雑誌,3(2):337-341,2020)

  • ~フレームの金属芯の腐食により生じたニッケルアレルギー~
    飯島 茂子, 小城 一見, 髙山 典子, 沼田 充, 佐々木 和実
    原稿種別: 症例
    2020 年3 巻2 号 p. 342-348
    発行日: 2020/04/20
    公開日: 2020/11/24
    ジャーナル 認証あり

     52歳女,プラスチック製メガネの先セルによるアレルギー性接触皮膚炎(ACD)の1例を報告した。患者はメガネを半年間使用した後,両耳介上部に掻痒を自覚した。初診時同部に落屑性浸潤性紅斑を認めた。先セルの削り屑のパッチテストを施行したところ陽性であったが,C.I. Solvent Orange 60などの油溶性染料はパッチテスト陰性であった。メガネフレームを分解したところ,金属芯が腐食していた。金属成分の分析を蛍光X線分析法を用いて行ったところ,金属芯および先セル樹脂内にニッケル(Ni)が主要成分として検出された。金属成分のパッチテストではNiが強陽性を示した。以上より,汗・皮脂等により金属芯が腐食し,その結果,Niが先セル樹脂内に拡散,浸透したため発症したNiアレルギーに伴うACDである,と最終診断した。

    (日本皮膚免疫アレルギー学会雑誌,3(2):342-348,2020)

  • 福田 理紗, 細川 僚子, 河野 通良, 高橋 愼一
    原稿種別: 症例
    2020 年3 巻2 号 p. 349-354
    発行日: 2020/04/30
    公開日: 2020/11/24
    ジャーナル 認証あり

     66歳,女性。アトピー性皮膚炎の既往あり。1年半前よりヴァイオリンの練習を開始し,松脂を空気中に舞うほど多めに使用していた。3ヵ月前より左頸部に紅斑が出現し,徐々に拡大。初診時,顔面,左下顎から頸部,両鎖骨上部,上肢に紅斑を認めた。パッチテストにて,ロジン,ニッケルが+,本人使用の天然樹脂の松脂が++,紫檀は72時間後まで+?であった。松脂をカーボン製の人工樹脂に変更し,新しい弓にてヴァイオリンを再開したが,左下顎部の皮疹が残存。顎当ての紫檀を黒檀に,顎当てのニッケルを含む金属をチタンに変更し皮疹は消退した。再燃時の頸部の皮疹の分布も考慮し,ロジン,ニッケル,紫檀によるアレルギー性接触皮膚炎と診断した。ヴァイオリンによるアレルギー性接触皮膚炎の報告は海外では多いが,わが国ではまだ少ない。ヴァイオリン演奏者におけるアレルギー性接触皮膚炎の原因と臨床像,代替品について理解を深めておくことが重要である。

    (日本皮膚免疫アレルギー学会雑誌,3(2):349-354,2020)

  • 良元 のぞみ, 永井 晶代, 鈴木 加余子, 杉浦 一充
    原稿種別: 症例
    2020 年3 巻2 号 p. 355-361
    発行日: 2020/04/30
    公開日: 2020/11/24
    ジャーナル 認証あり

     症例1:42歳男性。外痔核に対してトリベノシド・リドカイン軟膏を1週間使用したところ,殿部に浮腫性紅斑が出現した。症例2:26歳女性。外痔核に対しトリベノシド・リドカイン軟膏を10日間連続使用した後に殿部に浮腫性紅斑が出現し,その後全身に紅斑が広がった。症例3:37歳女性。外痔核に対してトリベノシド・リドカイン軟膏を使用開始した約2週間後に殿部にびらんを生じ,その後も外用を継続したところ全身に紅斑が広がった。3例すべてにトリベノシド・リドカイン軟膏およびその成分を用いてパッチテストを施行した結果,同軟膏およびトリベノシドに陽性反応を呈した。症例2についてはトリベノシドの最低惹起濃度が0.01%pet.であることを確認した。

    (日本皮膚免疫アレルギー学会雑誌,3(2):355-361,2020)

  • ~アクセサリーの作製中に感作された例~
    飯島 茂子, 小城 一見, 髙山 典子
    原稿種別: 症例
    2020 年3 巻2 号 p. 362-369
    発行日: 2020/04/30
    公開日: 2020/11/24
    ジャーナル 認証あり

     64歳女。紫外線硬化アクリル樹脂を用いたアクセサリーの作製中に感作されたアレルギー性接触皮膚炎の1例を報告した。患者は布またはポリエチレン手袋を着用していたが,2週間後の2回目の作製後に手指の軽度の腫脹・疼痛・掻痒を感じた。4週間後の3回目の作製時には,水疱を形成する重篤な皮膚炎を生じた。パッチテストの結果から,感作源は,アクリル樹脂中に含まれる2-ヒドロキシエチルアクリレートと考えた。2-ヒドロキシエチルメタクリレートにも弱い交差反応を示し,今後,同様の樹脂を用いる歯科治療,接着剤,ネイルアートなどでも口腔粘膜・皮膚接触部位に皮膚炎を生じる可能性がある。感作を防止するには,アクリルモノマーには直接接触するのを避けること,ディスポーザブル手袋は防護性のないこと,およびネオプレン製工業用手袋でも短時間の作業に留めることを十分理解させることが重要である。

    (日本皮膚免疫アレルギー学会雑誌,3(2):362-369,2020)

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