処理工程での汚染機会が異なるササミとモモ肉を指標にして, 岐阜県内の食鳥処理場の規模別, 解体方法別および処理食鳥の種類別の微生物汚染状況を調査した. また, 食鳥肉の微生物コントロールを実施するための監視指導法を確立する目的で, ササミとモモ肉の微生物汚染を指標にした監視指導成果の判定も試み次の結果を得た.
1. 供試したササミおよびモモ肉112検体中25検体から
Salmonella spp. 検出された. 分離された
Salmonella spp. 27株の血清型は11種類に型別され, S. Hadarが全体の37.0%を占めて最も多く, 以下S. Sofia14.8%, S. Enteritidis7.4%, S. Bredeney7.4%の順であった.
2. 供試したササミおよびモモ肉112検体中51検体から
S. aureusが検出された. 分離された
S. aureusの代表株51株のコアグラーゼ型はII型が全体の33.3%を占めて最も多く, 以下VIII型が11.8%, VI型が5.9%, VII型が5.9%の順であった.
3. モモ肉はササミに比べ大腸菌群,
Salmonella spp. ,
C. jejuniおよび
S. aureusのすべてにおいて汚染率が高かった.
4. 公的検査処理場は
Salmonella spp. および
C. jejuniの汚染率が認定小規模処理場より高い傾向にあった. しかし,
S. aureus汚染率では認定小規模処理場のほうが高い傾向を示した.
5. 解体方法による微生物汚染状況の比較では, ササミ, モモ肉とも指標とする菌種によりバラツキがあり, 著しい差は認められなかった.
6. 食鳥の種類による微生物汚染状況の比較では,
Salmonella spp. および
C. jejuniではブロイラーが廃鶏より高い汚染率を示し,
S. aureusでは廃鶏の方が高い傾向を示した.
7. 冷却水に50~100ppmの塩素が加えているAおよびB処理場では, 冷却水からは
C. jejuniは検出されず, 冷却後のと体からの検出率も冷却前に比べ減少傾向が認められた. しかしながら, 塩素の添加量をおさえているCおよびD処理場では冷却水からは
C. jejuniが50~100%検出された. 冷却後のと体からの検出率も冷却前に比べほとんど減少傾向が認められなかった.
8. ササミとモモ肉の汚染状況を指標にして, 食鳥処理場への監視指導成果の判定を試みた結果, ササミについては, 監視指導実施前に比べ実施後の方が,
Salmonella spp. ,
C. jejuniおよび
S. aureusのすべてにおいて著しい汚染率の減少が認められた. モモ肉についても,
Salmonella spp. ,
C. jejuniは著しい減少が認められた. しかし,
S. aureusについては大差が認められなかった.
抄録全体を表示