市販のあさり30検体, しじみ55検体, ほたて貝28検体を用いて, 増菌培養および定量培養法によって
Clostridium属の分布を検討し, 次の結果を得た.
1) 貝類からの
Clostridium属の検出率は, 自家製のChopped liver brothと市販のCooked meat mediumを用いた増菌培養法で比較したところ, 市販培地 (検出率100%) の方が自家製培地 (検出率89%) よりも優れていた. しかし, 自家製培地を用いると
C. pergringensの分離率が著しく高い事が認められた. 一方,
C. perfringens以外の菌種の分離には市販培地の方が優れている事が認められた.
2)
Clostridium属の汚染菌量はいずれも5×10
2以下であった. また, 非加熱処理と加熱処理検体で菌数がほぼ同数であることから, 貝類に汚染している
Clostridium属は主として芽胞型である事が推定された.
3) 分類菌株の菌種は, あさりでは
C. bifermentans, C. perfringens, C. sporogenes, C. hastiforme, C. irregularisおよび
C. aurantibutyricumの6菌種であった. しじみでは
C. perfringens, C. bifermentans, C. hastiforme, C. sporogenes, C. barati, C. fallax, C. glycolicum, C. lituseburense, C. putrificum, C. cadaveris, C. aurantibutyricum, C. pseudotetanicum, C. ghoniおよび
C. sordelliiの14菌種であった. ほたて貝では
C. perfringens, C. sporogenes, C. hastiforme, C. lituseburense, C. barati, C. irregularis, C. bifermentansおよび
C. sordelliiの8菌種であった.
4)
C. perfringens52株のHobbs血清型は1型3株, 2型2株, 4型3株, 5型2株, 8型1株, 10型1株, 型別不能株40株であった. また,
C. perfringens52株中3株 (5.8%) はエンテロトキシン産生株であった. 血清型, エンテロトキシン産生株と検体の種類との間には, 特定の関係は認められなかった.
5) 今回の実験方法では, 貝類の増菌培養液か
C. botulinum毒素および
C. botulinumは検出されなかった.
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