一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
61回大会(2009年)
選択された号の論文の316件中151~200を表示しています
  • 水谷 節子, 田村 久美
    セッションID: 3B-3
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    目的 地産地消の活動は徐々に幅広い分野に浸透している。最近では農林水産省による「地産地消の今後の推進方向」が打ち出された。コンビニ業界でも消費者志向等に鑑み関連商品を販売する動きがある。が,事例研究はいまだ少ない。そこで,生活に身近なコンビニにおける地産地消活動について,全国的な動向を把握するとともに,岡山県下の事例を消費者志向経営の観点から考察することが,本研究の目的である。
    方法 1)地産地消に対するコンビニ業界の取り組みについては,売上高上位4社のニュースリリース・プレスリリースをもとに調査した。2)つぎに事例として,コンビニにおける岡山県産の蒜山ジャージ製品の販売状況について,蒜山への現地調査,蒜山酪農農業協同組合および,販売の店舗に聞き取り調査を行った。3)さらにコンビニ各社や消費者関連機関への各種調査を実施した。
    結果 得られた結果は次の通りである。1)コンビニ業界では,従来のような全国一律の商品展開ではなく,各地域に合わせた商品展開を行っていることが明らかになった。また,全国的に行政とコンビニが包括業務提携を結ぶ新たな動きも見られる。災害時の物資供給のみならず,地産地消に対する協力体制が取られる傾向にあることも分かった。2)この提携を岡山県はコンビニA社と2008年9月に締結。同県を代表する地産地消の1つ,蒜山ジャージ製品をA社は短期限定で販売した。コンビニB社は蒜山酪農と継続的に取引を行っている。同県内のB社119店舗中18店舗で蒜山ジャージ製品が継続販売されていることが判明した。その理由は,消費者ニーズが最も多く挙げられた。3)消費者ニーズを反映するよう各社独自のシステムが存在する。この内部的システムに加えて,ISO10002の他,COMS(消費者志向マネジメントシステム)などの外部評価併用については,費用対効果を含めた導入の方法が課題である。 
  • 重川 純子
    セッションID: 3B-4
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    目的 住宅の購入は生涯の中でも最も高価な買い物の1つであり、長期間のローンを利用して購入することが一般的である。世帯・家族の状況は購入に影響を及ぼし、また購入後長期間にわたるローン返済は家族の生活に影響を及ぼすと考えられる。本研究では、同一対象者の継続調査を用い住宅取得状況と世帯・家族の属性の相違、変化を明らかにする。
    方法 消費生活に関するパネル調査((財)家計経済研究所)の14年間(1993年から2006年)の調査を用い、初年から2006年調査まで有配偶で回答継続している調査対象者538人中、観察対象期間内の住宅変化として新規住宅購入(164)、買換(50)、持家継続(213)、借家継続(58)の485人を観察対象として抽出した。属性については主に初年と14年目の属性を取り上げ比較を行った。
    結果 居住地域では持家継続は町村割合が相対的に高いが、購入者と借家継続間では相違はない。住宅変化により家族構成は異なっており、持家継続では親との同居割合が高く、借家継続では親等との同居は極低い。2006年の平均子ども数は2.1から2.3人で住宅変化による相違はない。夫学歴には居住変化と線形的な関係がみられるが、妻学歴にはみられない。初年の妻の就業状況について、持家継続と買換では約半数が就業しているが他の2つでは約25%と低い。2006年にはいずれも住宅変化でも就業化し60%台の就業率である。初年にはともに借家であった新規購入と借家継続の就業状況の比較結果はほぼ同様の変化であり、就業が住宅購入を促進した、また、住宅購入が就業を促進した、とはいえない。
  • 3.2001年から2005年の消費者情報
    大藪 千穂, 杉原 利治
    セッションID: 3B-5
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    目的 本研究は、わが国を初めとする先進国で深刻化している消費者問題を解決するために、アメリカの消費者情報誌Consumer Reportsの2001年から2005年の消費者情報を分析することを目的としている。
    方法 2001年から2005年の5年間に提供している情報を、「商品・サービス」と「社会・時事問題等」の2つに大別し、「商品・サービス」については、10大費目に非消費支出を加えた11大費目と品目に分類した。また、情報のメッセージ性として、機能性、経済性等、8つの内容に分類した。「社会・時事問題等」は、社会保障、経済、社会、その他の4つに分類し、情報のメッセージ性として、紹介、啓発、解決策提示を設定した。また、それぞれの情報の流れについて、消費者、消費者情報誌、企業、政府の4主体別に分析した。
    結果 2001年から2005年の5年間の情報は2633件で、「商品・サービス」が6割を占めていた。中でも交通通信が685件と「商品・サービス」の4割を占めている。情報のメッセージ性では、機能性に関する情報が5割と最も多く、次いで評価となった。「社会・時事問題等」では、紹介に関する情報が7割と最も多かった。情報のメッセージ性ではその他が多くなった。情報の流れについては、「商品・サービス」では、消費者情報誌からの出力情報が1267件、入力情報では企業への情報が多くなった。一方、「社会・時事問題等」では、消費者からの情報が最も多かった。
  • 乗本 秀樹
    セッションID: 3B-6
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    目的生活経営の営みと生活経営学という総合的学問を家政系学生がよく理解するには、2つのことが必要である。1つは、多様な生活主題ごとに叙述された問題解決や課題達成の事例に、切実で創造的な諸契機を見出すことである。もう1つは、生活経営学の展開過程に即して、時代と生活に結びつけながら主体的諸契機を理解することである。本報告では、後者を念頭に置きつつ、生活を励ますために生活経営学が用意してきた諸契機を整理するとともに、他の主体的契機が併せ求められることを指摘する。
    方法生活経営学(家庭経営学、家庭管理学)の文献によって、主体的契機、とくに多様な細目を結びつけ方向づける統合的な契機を探索する。そして、現代の生活経営環境を見渡すことにより、新たに求められる主体的契機を見当づける。
    結果(1)人間は自ら行動選択できるということが確かめられて、生活経営学が始まった。その後に、この学に、生活経営を励ます3つの統合的契機が用意された。
     a.主観的構想による生活の方向づけと、生活諸局面の科学的・合理的管理
     b.意思決定と対話の技法の活用と、生活の様式・基準の発見と創造
     c.経済社会制度の変革を視野に入れた、個人・個別家庭を越える協働
    3者は、それぞれ背景にある思考を異にするが、生活経営にとって相補的でありうる。
    (2)上の諸契機ならびに他の生活経営諸要素は、歴史的、構造的に制約される(制約されつつ自律的であろうとする)。この様子を確認するよう生活主体を促すことも、生活経営学の内容である。
  • 向井 友花, 畑井 朝子, 佐藤 伸
    セッションID: 3C-1
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    目的 血圧上昇に伴ってスーパーオキシド(O2-)の主たる産生酵素NAD(P)Hオキシダーゼが活性化し、過剰のO2-が血管内皮の機能を障害することが知られている。一方、我々はこれまでアズキ抽出物による血圧の上昇抑制について報告してきたが、NAD(P)Hオキシダーゼの発現や活性に及ぼすアズキの影響については不明である。そこで本研究では、NAD(P)Hオキシダーゼに対するアズキの生理的役割を明らかにするために、大動脈中のO2-産生及び本酵素のサブユニットの発現に及ぼすアズキ種皮(ABSC)の影響について検討した。
    方法 SHR及び正常血圧のWistar Kyotoラット(WKY)にABSC含有飼料を8週間投与し、投与期間中の収縮期血圧を尾部カフ法により測定した。投与終了後、大動脈を採取し、NAD(P)Hオキシダーゼ由来のO2-量を化学発光法により測定した。大動脈から総RNAを抽出し、本酵素のサブユニットであるp47phox及び Nox4のmRNA量をリアルタイムPCR法により定量した。
    結果 ABSCを投与したSHRの収縮期血圧は非投与群に比べて低値を示し、血圧上昇の抑制効果が認められた。ABSCを投与したSHRの大動脈のO2-産生量は非投与群に比べて低値を示した。SHRの非投与群のNox4及びp47phoxのmRNA発現量は、WKY群に比べて高値であった。一方、SHRのNox4のmRNA発現量にはABSC投与による差はみられなかったが、p47phoxのmRNA発現量はABSC投与群で低値であった。以上から、ABSCはNAD(P)Hオキシダーゼのp47phoxのmRNA発現量を抑制し、O2-産生を低減することが示唆された。
  • 市 育代, 小城 勝相
    セッションID: 3C-2
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    【目的】四塩化炭素(CCl4)により肝臓では酸化ストレスが亢進し、広汎な細胞死が誘導される。本研究では酸化ストレスを抑える効果的な食品成分の探索として、ビタミンE(VE)をCCl4中毒ラットに投与し、その抑制効果を検討した。
    【方法】8週齢の雄Wistar ratを4群に分け、ミネラルオイルのみ(Control)、CCl4のみ(CCl4)、CCl4とVE(CCl4+VE)、VEのみ(Sham)を経口投与した。VEはCCl4投与の12時間前に0.5 ml/kg体重.投与した。ControlとSham群は24時間後に、CCl4とCCl4+VE群は1.5, 6, 12, 24 h後に解剖を行った。
    【結果】肝細胞死の指標であるALT、ASTはCCl4群でControl群より高かったが、CCl4+VE群はCCl4のみを投与した群より低く、VEがCCl4による細胞死を軽減していた。肝臓のビタミンC(VC)はCCl4とCCl4+VE群でControl群より低かったが、12時間以降はCCl4+VEでその減少が抑えられており、VEがVCを救済して酸化ストレスの亢進を抑えていた。肝臓のVEはControlとCCl4、Sham間で差はみられなかったが、CCl4+VE群では有意に高かった。アポトーシスのシグナル経路であるMAPKのリン酸化はCCl4投与1.5 hから変化しており、VCの減少が起こる前から影響を受けていた。これよりMAPKがVCよりも酸化ストレスに鋭敏であることが分かった。しかしVE投与によるMAPKの変化はみられなかった。以上の結果より、ビタミンEは酸化ストレスの亢進を抑えることでCCl4による細胞死を減少させていることが分かった。
  • 竹田 早希, 田中 翠, 小垂 眞, 田代 操
    セッションID: 3C-3
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    目的現在までの研究で当研究室において、ウズラ卵白オボムコイド(OM)を摂取したラットにおいて、ラット血中中性脂肪値が低下するという現象を見出している。これはOMのトリプシンインヒビターとしての作用が関係していると考えられる。この推察を明らかにするため、OMをラットに摂取させた時の腸管内における挙動を、時間を追って検討することを目的とし研究を行った。 方法OMは市販のウズラ卵白よりTCA-アセトン沈殿法により調整し、さらにゲル濾過クロマトグラフィーで精製を行った。4週齢のSD系雄性ラット36匹を用い、OM無添加のコントロール食群とOM2%含有のOM添加食群の2群に分けた。20日間の飼育期間中に実験で用いるラットを30分間に1gの飼料を食べることができるように訓練した。そして実験当日1gの飼料を摂取させる前(0分)と摂取後30,60,90,120,180分の各群ラットの胃、小腸上部、小腸中部、及び小腸下部の内容物を採取し分析した。 結果・考察小腸内トリプシン活性においてOM添加食群はコントロール群に比べて活性が低下したが、逆にキモトリプシン活性においてはOM添加食群でコントロール群より活性が増大した。トリプシンインヒビター活性において、胃では食後30分で高い活性を示し、徐々に低下傾向を示した。小腸では食後90分以降は小腸下部で高い活性を示した。総タンパク質定量においてはOM添加食群でタンパク質残存量が多い傾向にあった。  以上のことから、OM摂取により膵液酵素の分泌が増加したものと考えられた。またトリプシンインヒビター活性と総タンパク質定量の結果から、OMはトリプシンと結合し、トリプシンインヒビター複合体を形成し、小腸下部まで存在することが示唆された。
  • 田中 翠, 竹田 早希, 小垂 眞, 田代 操
    セッションID: 3C-4
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    目的本研究室ではウズラ卵白オボムコイド(OM)の摂取によりラットの脂質代謝が改善されることを見出している。トリプシンインヒビター(TI)摂取で膵臓のタンパク質合成や酵素分泌が促進されること(トロフィック効果)が知られており、OM摂取でも同様の効果が生じることを確認している。我々はこのトロフィック効果によりOMの脂質代謝改善作用が起こると考えている。一方で、卵白タンパク質の摂取においても脂質代謝改善作用があるといくつか報告されており、主にアミノ酸組成に焦点が当てられている。そこで、本研究ではTI活性を揃えたウズラの卵白タンパク質(EW)とOMの摂取では脂質代謝にどのような違いが出るのかを検討した。 方法6週令のSD系雄性ラットをカゼイン食のControl群、同等のTI活性を持つ OM食群と EW食群の3群に群分けし、3週間の飼育を行った。飼育期間中は4時間の摂食制限とした。飼育期間終了後に解剖を行い、腹部大動脈血、肝臓、膵臓を採取した。解剖直前にCT装置を用いて体脂肪の計測を行った。血液は脂質成分の分析とインスリンの計測、膵臓は膵酵素の活性測定、肝臓は脂質成分の分析と脂肪酸合成系酵素の測定を行った。また、各臓器のタンパク質の定量を行った。 結果・考察Control群に対してOM群とEW群で同様に摂食量、体重増加量が減少し、膵臓重量、タンパク質量、酵素活性の上昇が見られ、トロフィック効果の発現が確認された。血中TGでは各群で違いは見られなかったが、血中TC、体脂肪率、血中インスリンはOM群とEW群で同等な低下傾向が見られた。今回の実験においてOM群とEW群で大きな違いは見られず、脂質代謝に影響を与えるのはTI活性に因ることが示唆された。
  • 古市 幸生, 高山 侑樹
    セッションID: 3C-5
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    目的
    本研究では、キノコが脂質代謝に及ぼす影響に着目し、高脂肪食投与ラットに2種類のキノコの子実体粉末を与え、脂質代謝に及ぼす影響について比較検討した。
    方法
    3週齢のSD系雄性ラットを用い、セルロースを10%添加した対照群、シイタケ、ブナシメジ粉末をそれぞれ10%加えた試験食群を設け、1週間予備飼育後、3週間飼育した。コレステロール粉末を0.5%添加したコレステロール負荷群も同様に設定し、肝臓、腎周囲脂肪、副睾丸周囲脂肪重、血清はT‐chol、TG、HDL- chol、(VLDL+LDL)-chol、PLを測定し、肝臓はT‐chol、TG、PLを測定した。また糞中排泄胆汁酸量も測定した。
    結果
    コレステロール無添加食実験
    血清脂質では、T-cholは対照群と比較し、シイタケ群で有意に低値を示した。TGは、対照群に対してブナシメジ群では著しく低値を示した。
    肝臓脂質では、TLは対照群、ブナシメジ群に対しシイタケ群で有意に高値を示した。TGでは対照群、ブナシメジ群と比較してシイタケ群で有意に高値を示した。
    コレステロール負荷食実験
    血清脂質では、TGは対照群、ブナシメジ群と比較して、シイタケ群は有意に低値を示した。PLは、対照群、ブナシメジ群に対してシイタケ群は有意な低下が認められた。
    肝臓脂質では、TLは対照群、シイタケ群で差は見られなかったが、ブナシメジ群では低値を示した。TGは、対照群、ブナシメジ群に対し、シイタケ群が有意に高値を示した。
    以上の結果より、ブナシメジには強い血清TG低下作用が示された。一方、シイタケには肝臓TG蓄積促進作用が示された。また、シイタケには糞中胆汁酸排泄促進による血清コレステロール低下作用が示唆された。さらにエリタデニンによる血清コレステロール低下作用も確認された。
  • 奥西 智哉
    セッションID: 3C-6
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    近年,米の需要を喚起する目的で米粉を使用したパンが注目されているが,品質はさほど良くない。品質の良い米パンを開発するために,炊飯米の利用を試みた。その特性をパン高さおよび官能試験により評価した。
    パンの基本的な配合材料は強力小麦粉250.0 g、ドライイースト2.8 g、砂糖17.0 g、食塩5.0 g、バター10 g、脱イオン水180.0 gとする。この基本配合材料より焼成されるパンを小麦粉パンとし、小麦粉の一部を炊飯米あるいは米粉で置換したパンはそれぞれごはんパンあるいは米粉パンとした。炊飯米あるいは米粉置換は乾物重量換算で同量とした。焼成後、常温(25 ℃)冷却し、1時間後ポリエチレン袋に入れ、口を閉めて1日常温貯蔵した。厚さ2.0 cmにスライスし、内相を4×4 cmにカットした試料を官能試験に供した。
    米粉パンでは、米粉の置換率の上昇とともに製パン性が低下したのに対し、炊飯米置換率30%までのごはんパンは小麦粉パンと同等あるいはそれ以上の製パン性を有した。炊飯米置換率10-40%のごはんパンは、官能試験で小麦粉パンより有意に評価が高く、最適置換率は30 %であった。すだち・色相・香りは、20%ごはんパンの色相評価が有意に高い点を除き、いずれも有意差はなかった。触感および硬さは10-30%ごはんパンで有意に高く、20%が最適であった。味ともちもち感は、30%が最も高く、しっとり感と甘味は、炊飯米置換率が高まるほど向上した。一方、米粉パンはすべての官能評価項目において小麦粉パンと有意差は見られず、特に総合評価では置換率にかかわらず評価が低かった。
    製パン材料に米粉を利用すると製パン性が損なわれるが、炊飯米は製パン性、風味や食感を改善した。総合的に判断して、最適置換率は30%であった。
  • 井上 美江, 佐藤 香澄, 大森 正司, 加藤 みゆき
    セッションID: 3C-7
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    目的 碁石茶は、高知県で生産されている四国の伝統的な後発酵茶の一つで、好気的カビ付けと嫌気的バクテリア発酵の両方を行う二段階発酵茶に分類される。碁石茶からは、これまでにバクテリア26種、カビ2種が分離・同定され、碁石茶の風味形成に関わる主要な微生物として乳酸菌のLactobacillus plantarum等が明らかとされている。本研究では、新たな微生物の同定を目的として桶漬け葉から微生物を分離し、乳酸菌を中心に同定を行い、それらの性質について検討した。
    方法 (1)試料は、2007年7月に高知県長岡郡大豊町で製造された碁石茶の桶漬け後の茶葉を用いた。(2)採取した茶葉1gを滅菌生理的食塩水に入れて懸濁させ、選択培地を用いて37℃で48時間培養し、純粋分離と生菌数の測定を行った。LBS寒天培地とTATAC寒天培地から分離した菌については、グラム染色、形態観察、アピによる同定を行った。(3)同定された乳酸菌について、増殖速度、pHの変化、乳酸生成量の変化を測定した。
    結果 (1)生菌数は、普通寒天培地が1.1×105個、LBS寒天培地が4.6×104個、TATAC寒天培地が3.3×103個、ポテトデキストロース寒天培地が8.6×104個であった。(2)乳酸菌は、Lactobacillus pentosusEnterococcus aviumEnterococcus faeciumなどが同定された。(3)乳酸菌の増殖曲線はS字型を示し、3時間から12時間まではほぼ直線的に、その後は緩やかに増殖した。菌の増殖に伴って培地のpHは低下し、乳酸の生成量は増加した。pHの低下は、増殖した乳酸菌により生成された乳酸によるものであると考えられた。
  • 中野 優, 久保田 紀久枝
    セッションID: 3C-8
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】機能性成分の供給源であり、食物繊維や水分を補給するなどの多様な働きをする緑黄色野菜の一つであるニンジンの摂取量の増加が期待されている。ニンジンの味や栄養成分の研究は多々あるが、ニンジンのおいしさを示す指標としてのにおいに着目した研究は少ない。本研究では国内産品種の向陽2号を用い、生および加熱調理したニンジンの香気特性、香気に寄与する成分について明らかにすることを目的とした。 【方法】ニンジンの上下1cmを切り落とし、皮を剝き、縦半分に切りわけ、一方を生試料、もう一方を蒸し器で15分間加熱し、加熱試料とした。各試料のにおいの特性を官能評価により比較した。また、香気に寄与する成分を調べるため、それぞれに20%のNaClを加えフードプロセッサーで粉砕し、ペンタン、エーテル=1:1に一晩浸漬し、香気成分を含む画分を溶媒抽出した。有機層を分離し、高真空蒸留により香気濃縮物を得、GC,GC-MS-Olfactometryにより分析を行った。 【結果】官能評価の結果、生試料は砂糖のようにすっきりした甘さと青臭く、ニンジンらしいにおい、加熱試料はさつまいものような甘さとまろやかで重みのあるにおいであると特徴付けられた。香気成分組成については生試料において野菜の青臭いにおいを有する2-nonenalや2-methoxy-3-(1-methyolpropyl)pyrazine, 6-nonenal, 花様のにおいを有するgeraniolが、加熱試料については、じゃがいものようなにおいを有するmethionalが主要寄与成分であることが分かった。また、野菜のにおいである2-nonenalなども主要香気として検出された。
  • 河上 瑞穂, 池畑 あい, 氏 昌未, 森本 恵子
    セッションID: 3C-9
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    【目的】閉経後女性ではメタボリックシンドロームの発症頻度が増加する。これは、女性ホルモンであるエストロゲンの欠乏により内臓脂肪が蓄積し、インスリン抵抗性が生じるためと考えられるが詳細なメカニズムについては明らかにされていない。そこで、本研究では閉経モデルラットのインスリン抵抗性とインスリン情報伝達経路に対するエストロゲン補充の影響を検討した。【方法】成熟雌ラットを卵巣摘出に対する偽手術(S)群、卵巣摘出後偽薬補充(P)群、卵巣摘出後エストロゲン補充(E)群に分け、高インスリン正常血糖クランプ法によりインスリン抵抗性を評価した。さらに門脈よりインスリン投与を行い、肝臓、腓腹筋、腸間膜脂肪および腎・生殖器周囲脂肪を摘出した。各臓器サンプルのAkt、Glycogen synthase kinase (GSK)とそのリン酸化をWestern blot法にて検討した。また、腹部内臓脂肪や皮下脂肪重量を測定した。【結果】P群ではS群と比べて腹部内臓脂肪重量の増加が見られ、インスリン抵抗性が増大したが、E群では両者とも回復した。肝臓では、S群とE群においてインスリン刺激によりPhospho-AktとPhospho-GSK3βの発現量が増加したが、P群ではどちらも増加しなかった。腓腹筋においては各群ともインスリン刺激によりこれらの発現量が増加する傾向が見られたが、エストロゲンの有無による差は認められなかった。【考察】本研究により、卵巣摘出ラットにおいては、腹部内臓脂肪が増加し、インスリン抵抗性が増大した。また、肝臓ではグリコーゲン合成に関与する酵素活性が低下しインスリン作用が抑制されるが、エストロゲン補充により回復することが示唆された。
  • 池畑 あい, 河上 瑞穂, 森本 恵子
    セッションID: 3C-10
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    【目的】ケージ交換ストレス負荷時の動脈壁酸化ストレスの変化に対するエストロゲンの影響を検討した。【方法】成熟雌ラットを卵巣摘出後偽薬補充群、エストロゲン補充群と偽手術群に分けた。ストレス負荷前後に経時的に採血を行い、血漿グルコース、一酸化窒素代謝産物(NOx)濃度などを測定した。またストレス負荷前と負荷30分後に摘出した大動脈・肝臓・腸間膜のNitrotyrosine、4-hydroxy-2-nonenal修飾蛋白質をWestern blot法で検討した。【結果】ストレスによる血漿NOx濃度の変化及び腸間膜の酸化ストレスには群間に差が見られた。
  • 南里 妃名子, 中山 正教
    セッションID: 3C-11
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    [目的]若年女性のやせ傾向が問題となる一方で、男性肥満者の割合は増加傾向にあり、今後のメタボリックシンドローム(MS)発症率の増加が懸念されている。肥満は食事との深く関連しており、若年時期の良好な食習慣の維持はMS予防が期待できる。そのためには、習慣的な食事パターンを把握・評価することが重要であり、本研究では、大学生の習慣的な食事パターンを抽出し食事バランスガイドを用いて評価を行った。 [方法]対象者は、男子大学生66名(平均年齢20.0±0.5)である。食事調査は、過去1か月間の習慣的な栄養素等摂取量など食習慣について、妥当性が検討されているBDHQを用いて行った。食事パターンを抽出するため、51食品を用いて因子分析(主成分法)を行い3つのパターンを抽出し、それぞれ因子得点を個人ごとに算出し4分位で群分けした。食事評価は食事バランスガイドを用いて行い、各項目(酒類、菓子類を含む)と食事パターンの因子得点について、分散分析、重回帰分析を行った。統計解析は、SAS9.1を用いて行った。 [結果]因子分析の結果、1)洋食パターン2)和食パターン3)デザートの多い食事パターンが抽出された。食事バランスガイドの各項目と食事パターンの因子得点について分散分析、回帰分析を行った結果、洋食パターンでは主食は有意な低下傾向を示し、酒類は有意な上昇傾向を示した。和食パターンでは副菜は有意な上昇傾向を示した。デザートの多い食事パターンでは果物、菓子類ともに有意な上昇傾向を示したが、果物は適正範囲以下であった。また、主菜は、全ての食事パターンおよび各群で適量範囲以上であった。
  • 鈴木 敬子, 平田 耕造
    セッションID: 3C-12
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    目的
    暑熱環境では、汗によって失われた水分を補わなければ日常生活時でも脱水になる危険性がある。そこで、本調査では夏期における日常生活時での水分出納について検討した。

    方法
    被験者は21~25歳の女子5名と72~81歳の女子5名の計10名とした。調査は各被験者の自宅とし、2008年8~9月に午前9時から翌日9時までの24時間実施した。基本となる着衣体重を測定後、1日の生活中に生じた全ての飲食前後、排尿排便前後、入浴前後、就寝前および起床時に着衣体重を測定した。また覚醒時には、1時間毎に着衣体重、温冷感、快適感および口渇感を申告させた。食事は一定の量を摂取させ、それ以外の食物摂取を禁止した。飲水はお酒以外を自由摂取とした。1日の生活内容は、自己記入により記録させた。

    結果
    (1)1日の生活行動の観察から、体重が実験開始時より減少したのは3回の「食事前」、および夜の「睡眠」・「昼寝」のあとであった。特に睡眠後、朝食・昼食前には、昼夜転倒生活者1名を除く9名中5名に体重減少が認められ、朝食前では4名が1%以上にも達した。 (2)1日の合計飲水量と排泄量(r=0.67)、飲水量と口渇感(r=0.71)の間に有意な相関が得られたが、排泄量と口渇感の間には有意な相関は認められなかった。 (3)以上の変化には、若齢者と高齢者の間に差が観察されなかった。
  • 森田 雅子
    セッションID: 3D-1
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    生活財としての食玩に関する表象文化的研究  食玩とは元々量販店において飲料や菓子の販売に際して、販促品として抱きあわせで商品に添付したオマケのシリーズもの小玩具(模型)であった。しかし、海洋堂制作の食玩がその精巧さ、独創性、そしてコレクション性により一世を風靡するにいたり、商品として「独立」し、主体として販売されるようになった。後には、さまざまな制作会社の参入もあり、食玩のジャンルは多様化し、このごろはお菓子などの食品サンプルもでまわっている。  本発表ではまず国内の大衆文化的な背景を概観し、そこに「カワイイ」や漫画の流行などジャポネスクな要素の海外における流行もからめて考察する。また、食玩の形態や造形的特性、ジャンルの広がりを大衆文化的な図像消費という観点から検討する。
  • 佐原 秋生
    セッションID: 3D-2
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
     近年のフランス料理屋で気がつくのは、食材の出所がメニューに書いてある、一皿の量が極端に少ない、ソースが何やら泡立っていたりする、食材の取り合わせが突飛な料理がある、給仕が長々と説明する、などである。各種の「目新しさ」は、40年ほど前に始まった所謂ヌーヴェル・キュイジーヌの流行時に目立ち、その後は収まったかに見えたのだが、このところ再び目につくようになっている。現在のこれらの現象の位置づけを試みるのが、本研究の目的である。  18世紀に「近代芸術」が技術一般から分化独立して以来、料理は芸術の分野として扱われて来たとは言い難い。「料理が訴える快は美と違って個人的だから」(カント「判断力批判」)、「料理を感じる味覚と嗅覚は劣等な感覚だから」(ネドンセル「美学入門」)、「料理は感情を表明しないから」(オクスフォード刊「美学事典」)などがその理由として挙げられたわけだが、実際は扱う素材が食糧であり、栄養補給という本能的行為と美の追求という精神的行為とを分ち難いためと思われる。  しかし今や先進地域では、人が飢えから解放されると共に、料理は栄養補給から分離出来る状態に至っている。食のもたらす快楽が身体性と精神性との和とすれば、精神性の割合が増加しており、「空腹でなくとも味わいたい」「知的欲求から、展覧会や演奏会に行くように、レストランに行きたい」層が存在し得るのである。現代に入って美術や音楽が変貌したのにも似て、障碍の消滅または軽減によって芸術としての資格を得た料理もまた、知覚されるべきものから考えられるべきものに変化しつつある。近年のフランス料理屋の、少なくともその良質部分の目新しさは、この方向で解釈するのが妥当であろう。
  • 島田 玲子, 木村 靖子, 川嶋 かほる
    セッションID: 3D-3
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    <目的>戦後の経済成長下、日本人の食生活は大きく変容した。食内容が欧米化したこと、食の家庭外への依存が非常に肥大したこと、家族で食卓を囲むことの減少など、さまざまな変化がみられている。これらの食のあり方の変化は、現代の食生活の乱れを引き起した一因とされているが、家庭内での食に関する伝承の途絶が背景として考えられる。この点を実証的に探るために、これまで家庭における調理技能の伝承、調理の伝承、調味の伝承、親子間での嗜好や食意識・食行動の類似性などについて、検討を加えてきた。本研究では調査紙調査を通して、子ども時代の保護者の食行動が現在の食行動に与える影響を検討した。
    <方法>関東圏にある中学校、高等学校、短期大学、大学で、生徒・学生に調査紙を2部ずつ配布し、本人と親のそれぞれごとに回答してもらい、のちに、生徒・学生を通して回収した。調査は、現在の自分自身、および自分が子どもだった頃の親(調理担当者)について、その食意識や食行動について回答を求めるものであり、計55問を設定した。調査紙配布数は、2651枚、回収数1516枚(回収率57.2%)、うち有効回答数1467枚(有効回答率55.3%)であった。
    <結果>現在家庭で主たる調理担当者である721名の回答について、子ども時代の調理担当者の食行動(食材の使用、調理中および調理後の行動、摂食行動、食への満足度等)と現在の本人の食行動との比較・検討を行った。その結果、現在とっている食行動は、子ども時代の調理担当者の食行動から影響を受けているものが多いことが判明した。しかし、その影響度に差が見られため、その影響の大小について、家庭内の伝承、および時代の推移から検討を行った。
  • 藤岡 由美子, 中山 文子
    セッションID: 3D-4
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    目的:近年、大学の学生相談室における来談件数が増加している。不適応や抑うつ感、対人関係や将来に対する不安が理由の多数を占めており、早期発見、早期対応が望まれている。日本では、大学入学を機に生活環境の変化に伴い、食習慣や食環境も大きく変化すると思われる。本研究では、大学1年生の食習慣や食環境の変化、食に対する意識、食環境の実態を調査し、心理状態がどのように反映されているかを検討する。特に食事内容の他、人間関係の構築、気分転換、楽しさ等の食事が果たす役割と、心理状態との関係について検討する。
    方法:地方3都市に位置する3大学の大学1年生674名(男性260名、女性414名)を対象に、アンケート調査を実施した。調査項目は、1)高校から大学にかけての食習慣の変化、2)食に対する意識、3)食環境の実態、4)食品群の摂取頻度、5)POMS(Profile of Mood States)、6)UPI(University Personality Inventory)。調査は、入学後2、3ヶ月の時点で行った。
    結果:高校から大学にかけての変化では、自炊群が自宅・寮群に比べて摂取食品数の減少、欠食、自炊回数の増加、食事時間の不規則性が現れた。男性では、外食やファーストフード、共食の回数が増えていた。女性は男性に比べて、食事中の会話や談笑が多く、食事の時間を楽しみ、共食を通して気分転換をしていた。食事内容と心理状態との関係については、麺類・糖・嗜好品の摂取頻度が高いと、男性では思考低下が、女性では怒り敵意、思考低下が高かった。食事中の感情と心理状態との関係では、食事を楽しんでない人や会話の量が少ない人は、拒否絶望が高かった。一人の食事をつらいと感じた人は、不安・緊張、抑うつ、対人不安、不満怒りが顕著に高かった。女性は食事中にいらつきや不快感があると、男性に比べて不安・緊張、抑うつ、疲労、混乱、拒否絶望が高かった。
  • 木村 留美, 杉山 寿美, 石永 正隆
    セッションID: 3D-5
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】白飯とおかずで構成される日本の食事様式,すなわち“口中調味(口中に残るおかずの味で白飯を味付けする)”により白飯をおいしく食べてきたと考えられる。我々はこれまでに口中調味実施群と非実施群で,白飯とおかずを食べる時,同じおかずであっても白飯がおいしく食べられるかどうかに差があることを報告している。本報告では,このことが過去の食環境に影響をうけ,現在の食事内容や献立作成能力に影響を及ぼしているのではないかと考え,口中調味実施とこれらとの関係を検討した。
    【方法】管理栄養士課程の女子大学生(口中調味の実施群74.8%(172名)と非実施群25.2%(58名))を対象として,(1)過去の食環境等を質問した。また,(2)前報告で実施群と非実施群で「白飯がおいしく食べられるかどうかに差が認められたおかず」を実際に食べているか,(3)さらに,これらのおかずを組み合わせる料理(献立作成)を依頼した。
    【結果】(1)口中調味の実施群は,小学生時の共食者に母および祖母が有意に多く,「ごはんは左,汁は右に置く」という配膳マナーが現在身に付いている者が多かった。(2)「白飯がおいしく食べられるかどうかに差が認められたおかず」を白飯と食べる者の割合は実施群で高く,非実施群では白飯以外の主食を食べることが推察された。(3)また,これらのおかずに組み合わせる料理では,非実施群においても白飯を組み合わせる者が多く,実際の食事とは異なっていた。さらに,両群共に味噌汁などの「白飯がおいしく食べられるおかず」を組み合わせていた。これらのことから,非実施群では「白飯がおいしく食べられないおかず」を実際には白飯と食さないが,白飯とおいしく食べるための献立作成能力は,ほぼ実施群と同様であった。
  • 岩田 彩見, 小林 由実, 小川 宣子, 加藤 邦人, 山本 和彦, 長屋 郁子
    セッションID: 3D-6
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    [目的] 同じ調理を行った場合でも、調理経験の違いによって出来上がりのおいしさに何かしらの差が生じる。その要因の一つとして、調理時に行動を起こす前に、状況判断や動作点確認のために行う目の動きに着目した。基本的な加熱調理である「炒める」について目配りを観察し、おいしさの指標との関係から、調理経験から得られる目配りが調理技術の一つであることを確認した。本研究では、炒め調理における目配り技術と出来上がりのおいしさとの関係を詳細に調べるために、おいしさの評価手段を追加し、比較対象者を増やすことで目配り技術の確立を目的とした。
    [方法] きんぴらごぼうの炒め調理を、調理経験の異なる4名が同じ材料、同じ調理内容で行った。調理時の目配りを比較するために、第三者が調理時の目の動向を観察して、調理技術に関係した配点で目配りを点数化した。また客観的に目配りを評価するために、画像処理による視点移動量を測定した。そして出来上がりに対して、硬さ測定と官能検査から得られたおいしさの指標と、味の浸み込み具合を示す塩分濃度について比較することで、目配り技術との関係性を確認した。
    [結果] 目配り観察では、熟練者の方が調理に重要な目配りをしており、その移動量も大きいことを確認した。また出来上がりを硬さ測定した結果、熟練者はおいしさの指標と有意差はなく好まれる硬さとなり、非熟練者では有意に違いがみられた。塩分濃度については、有意差は得られなかったものの熟練者の方が味の浸み込みが良いことを確認した。以上の結果から、調理経験に伴う目配り技術は出来上がりのおいしさに関係していることを再確認した。
  • 高橋 智子, 金 娟廷, 岩崎 裕子, 大越 ひろ
    セッションID: 3D-7
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    目的 摂食機能に障害を有する児者が食べやすい食肉の開発の基礎的研究の一環として、豚挽肉にマッシュした3種類の芋(じゃが芋、山芋、里芋)を添加した食肉試料を調製し、その食べやすさについて検討した。
    方法 豚挽肉に0.5%の食塩を添加したものを基準試料(C)とし、基準試料の豚挽肉の10%をじゃが芋に置換した食肉試料(CP)、同様に山芋に置換した食肉試料(CY)、里芋に置換した食肉試料(CT)を調製した。これらの試料について、力学的特性としてテクスチャー特性、破断特性を測定した。また、食べやすさの官能評価を行い、筋電位測定により咀嚼筋活動を検討した。併せて、嚥下直前の肉食塊の性状についても検討した。
    結果 基準試料Cが有意に他の芋添加試料よりも硬く、また、CY、CT試料の付着性はC、CP試料よりも有意に大きいことが認められた。里芋を添加したCT試料のみかけの破断ひずみは他の試料よりも有意に大きく、また、基準試料Cのみかけの破断応力は他の試料よりも有意に大きくなった。官能評価より、付着性が大きかったCY、CT試料が他の2試料に比べ、有意に飲み込みやすく、残留感が少ないと評価された。咀嚼筋活動では、個人差はあるものの、C、CPに比べ、CY、CTの筋活動時間は短く、咀嚼周期も短い傾向を示した。また、嚥下直前の基準試料Cの食塊は他の試料よりも硬い傾向を示した。
  • 三神 彩子, 三浦 理絵, 喜多 記子, 佐藤 久美, 長尾 慶子
    セッションID: 3D-8
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】家庭部門でのエネルギー使用量増加が近年顕著であり,資源の有効活用および地球温暖化防止の観点から省エネルギー(以下省エネと表記)対策が重要課題となっている。
    食生活分野での調理に適した道具の選択はエコ・クッキングの観点から重要な因子である。本研究では,幅広い料理法に対応できる中華鍋(鉄)の特性を活用し,省エネ,CO2削減効果をはかることを目的に,「炒める」「焼く」「揚げる」「蒸す」「煮る」の5操作法別に代表的な調理を実施し,他の鍋類との比較・検討をおこなった。
    【方法】ガス積算流量計,熱電対温度計,温度計測記録器を使用し,加熱操作法別に,調理道具(中華鍋,西洋蒸し器,蒸籠,フライパン,揚げ鍋,グリル)ごとの調理時のガス・水使用量, 試料内部温度,仕上がりまでの加熱時間を測定し,さらにCO2排出量に換算した。
    【結果】中華鍋は,その形状から火力を効率的に活用でき,熱伝導率が高く,「炒める」では,中華鍋の方がフライパン(鉄)と比較し約26%,フライパン(テフロン)とでは約56%の省エネ効果があった。「焼く」は,中華鍋の方がフライパン(鉄)と比べ約13%,フライパン(テフロン)とでは約47%の省エネ効果があった。「揚げる」は,グリルでも省エネ効果が認められたが,仕上がり(外観)を考慮すると中華鍋が適しており,揚げ鍋と比較し約15%の省エネ効果があった。「蒸す」では,中華鍋で蒸籠を使った場合と,西洋蒸し器使用とで比較すると,約19%の省エネ効果があった。「煮る」は,弱火・長時間加熱の煮込料理で中華鍋の省エネ効果はみられなかった。以上5項目中4項目の加熱操作の中華鍋使用の料理で13~56%の省エネ,CO2削減効果が確認できた。
  • 森山 三千江, 久保 翔太, 黒川 衣代
    セッションID: 3D-9
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】近年、食育が注目される様になり、様々な地方自治体での取り組みが紹介されている。しかし、児童・生徒の食生活は家庭環境に大きく左右されるものであり、食材一つをとっても自分の意志で購入・調理する機会が少ない。そこで、食育の効果と家庭での食生活との関連性を調査し、今後の食育の可能性を検討した。 【方法】愛知県内の食育推進校と一般カリキュラム校の二つの小学校の5,6年生173名と、全国でも女性の就業率の高い福井県内の中学校の生徒177名を調査対象とし、2008年7月~12月に質問紙による調査を行った。主な調査内容は朝食・夕食の摂取回数、共食者、調理者、食事の満足度、食事作りへの協力度、食事作りの頻度、希望する調理者などの項目である。それぞれの項目について男女差、教育の差、地域差があるかどうか調べ、食育と地域差があるかどうかを調べた。 【結果】朝食・夕食の欠食は学校間で差は見られず、欠食率は極めて低かった。朝食に対する満足度は食育推進校の方が低い項目が多く、食に関する知識が多くなるほど、食事に対する要求が高まると考えられる。食事の共食者は福井県では祖父母が含まれることが多く、調理者も母親に次いで祖母という回答が愛知県より多かった。しかし、調理者の希望は母親の次に父親への要求が高く、父親の食事作りへの参加が望まれ、父親との調理教室などを食育に取り入れるなどの工夫も必要であると感じられる。また、食事作りへの協力度は女子の方が多かったが、食育推進校では男子でも朝食を自分で作っている割合が高いものの、孤食となっており、調理技術のみでなく共食の楽しさなども食育の内容に取り入れる工夫が検討される。
  • 井奥 加奈, 川縁 千織, 石川 厚, 大仲 政憲, 白石 龍生
    セッションID: 3D-10
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】学校現場において、食に関する指導が普及しつつある今日、小学校教員の持つ食教育に対する認識や実践状況の把握は、教員と養護教諭・栄養教諭との連携を考えていくうえで重要である。今回は小学校教員の世代別比較を中心に大阪府下の2都市に勤務する小学校教員の食教育に対する認識や実践状況を報告する。 【方法】大阪府下の政令指定都市に勤務する小学校教員に対して質問紙による調査を実施した。調査配布票931票、回収票533票、有効回収率は56.3%であった。 【結果および考察】今回調査対象者となった小学校教員は、20年以上のキャリアを持つ者が51%、女性70%、50歳以上の者42%であり、大阪府下の小学校における一般的な教員構成を反映していると考えられた。インターネットの活用や企業などからの出張授業を活用した教員は10%程度であったが、給食の時間における子どもへの配慮は85%以上の教員が実施しており、栄養教諭・栄養職員との連携授業も50%以上が経験していた。現在、さらに解析を進めている。
  • 片渕 結子, 中村 修, 本田 藍
    セッションID: 3D-11
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     食育基本法の成立や栄養教諭制度の創設など、食に関する指導の充実が求められている。しかし、栄養教諭の採用が地域によって異なっている状況や、食に関する指導のための授業時間が確保されていない状況がある。このように、栄養教諭・職員(以下栄養職員)による食に関する指導には多くの課題があると考えられる。そこで、本研究では食に関する指導における栄養職員と教職員の連携や支援体制ついての現状と課題を明らかにする。

    【方法】
     A、B、Cの3地区の栄養職員計355名(回収率88.2%)を対象に平成20年8月~9月にかけてアンケート調査を行った。調査内容は、食に関する指導の際の教職員・教科との連携、行政の支援体制などである。

    【結果】
     食に関する指導をする際の教職員との連携については、47.9%が連携できていると答えた。連携ができていないと答えた理由としては「栄養職員に丸投げの状況がある」、「学校で理解を得にくい」、「打合せ時間が確保できない」などが挙げられた。
     食に関する指導計画は「作成され、実践されている」が40.9%、「作成されているが実践されていない」が31.0%、「作成されていない」が19.5%であった。
     食に関する指導の行政の支援体制については、充分であるという回答が20.8%に留まった。さらに、Aでは34.6%、Cでは18.8%と地区によって差が見られた。
     以上の結果から、食に関する指導は学校の状況に左右され、行政や学校の支援体制も不充分であると栄養職員は感じていると考えられる。なお、食生活に関する指導は家庭科が長年担ってきており、家庭科教員と栄養職員がそれぞれの専門性を活かし、連携することで、食に関する指導はさらに充実すると考える。家庭科教員との連携方法の検討については今後の課題である。
  • 加賀谷 みえ子, 木村 友子
    セッションID: 3D-12
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】 間食の意識・実態を調査することで、間食の役割やあり方を検討することを目的とした。専門分野別での間食への意識の違いはあるかを検討し、若干の知見を得たので報告する。 【対象および方法】1. 女子大学生233名を対象とし、選択式による意識調査(調査項目は、生活習慣、間食習慣、食習慣項目)を2008年5月に実施した (回収率100%)。2. 食品栄養学科の学生118名を対象者として、2008年9月22日~30日までの連続7日間の実態調査(調査項目7項目)を実施し、1週間後に回収した(回収率81%)。 【結果および考察】1. 意識調査では、間食習慣がある者はほとんどであり、間食は生理的欲求面と嗜好面を満たすのに大きな役割を担っていた。食生活や栄養成分表示への関心は食品栄養学科が他学科の学生に比べ顕著に多く、有意差がみられた(食生活P<0.001 栄養成分表示P<0.001)。 2. 実態調査では、間食習慣や間食費用、一週間あたりの摂取熱量などが全体的に低い傾向にみられ、意識調査と比較して顕著に少なかった。意識調査が5月、実態調査が9月であったため、嗜好状況には季節や食べやすさ、持ち運びやすさが影響していることが伺えた。 間食は生理的欲求を満たし、精神面に良好な影響を与える大きな役割を担っていた。また、食知識の有無は間食行動に影響を及ぼすことが示唆された。
  • 布施 眞里子
    セッションID: 3D-13
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    [目的] 食品の産地や日付偽装,また中国産食品への農薬混入など,食の安全性についての問題が近年話題になっているが,日常の食品購入時における食品表示などについての学生の意識を知り,今後の教育内容への示唆を得る目的でアンケート調査を行った.
    [方法] 対象は本学学生213名(Aグループ-食を専門にしない-102名,B-保育を専門-84名,C-食を専門-27名)およびAの家族(D)34名.調査時期は2008年6月,8月または2009年1月.調査内容は,加工食品購入時に注目する表示項目(値段,製造会社名,原材料の内容,食品添加物,原産地,日付)の順位,日付・原産地などへの意識,食の情報源,安全性への注目度など.
    [結果] 表示への注目は学生(A,B,C) では1位の最多が「値段」60~70%,2位「日付」,3位「原産地」であった.家族(D)は1位が「原産地」35%だが,2位「日付」,3位「値段」との間に大差がなかった.日付では「なるべく先の日付を購入する」が全グループで最多で,次に多いのは「期限切れ近くでも安ければ買う」と「期限切れ近くは買わない」であった.原産地では「出来るだけ国産を選ぶ」が最多.次はCとDでは「食品により買い分ける」が多いのに比べ,AとBは「特に気にしない」も「買い分ける」と同程度であった.食の安全性は「少し気にする」が最多で,「とても気にする」と合わせると学生で約70% ,家族では100% であった.食の情報源は「テレビ」が1位で80%以上だが,2位の「新聞」がAとBは約30%,C 40%,D60%と差が見られた.食が専門のCは,A,Bと比べ多少違う傾向が見られた.
  • 野中 美津枝, 局 百花, 溝口 理沙
    セッションID: 3D-14
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】現在若者の朝食の欠食が問題となっており、食育の推進の目標として、朝食を欠食する20歳代男性の減少と食事バランスガイドを参考に食生活を送る国民の割合を具体的に数値目標であげている。そこで、若者の朝食欠食の実態を知るため、大学生と高校生に朝食に関するアンケート調査を実施した。さらに、高等学校家庭科の授業に「食事バランスガイド」を取り入れた「朝ごはん」授業を試みて、授業効果を分析した。
    【方法】調査は、大学生については、平成20年6月~平成20年9月にかけて、福岡県A大学212名、福岡県B大学160名の合計372名、高校生については、平成20年5月に福岡県C高校1~2年生261名、平成20年9月に宮崎県D高校3年生91名の合計353名を対象にアンケート調査を実施した。授業にあたっては、福岡県C高校では、平成20年5月に、1年生1クラス、2年生6クラス、宮崎県D高校では、平成20年9月に、3年生3クラスで、合計10クラス(328名)を対象に行った。
    【結果】(1) 大学生の朝食欠食率は42.7%、高校生の朝食欠食率は25.2%と高く、その朝食欠食開始時期は中学1年生、高校1年生、大学1年生に欠食習慣が始まる者が多い。(2)高校生の朝食欠食の影響が非常に大きく、朝食欠食者が朝食摂取者に比べて体調不良得点が有意に高かった。(3)高校生の朝食欠食者は「朝食を食べるべきだと思う」が62.9%で、朝食摂取意識が低いことがわかった。(4)「朝ごはん」授業を高校家庭科に導入することにより、朝食欠食者の朝食摂取意識が有意に上昇しており、朝食欠食者の朝食摂取意識の変容に効果的であることが明らかになった。
  • 茨城食育応援弁当の開発
    荒田 玲子, 石井 智哉, 小澤 敦子
    セッションID: 3D-15
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】現在の日本において、朝昼晩の食事を全て家庭で摂る事は難しい。このような社会状況を踏まえて茨城県では、健康増進に繋がるバランスのとれた食事を外食や中食でも選ぶ事が出来るよう、「いばらき健康づくり支援店」制度を発足させている。またT大学では、大学の持つ知的財産を地域に活用してもらう取り組みとして地域連携・産学連携の事業を地域連携センターが中心となって行っている。その中で、管理栄養士を目指す学生の教育の媒体として、また県の進める食育推進を担う活動として、県民の健康に寄与する、栄養バランスの優れた弁当を提案する事をこの研究の目的とした。【方法】開発メンバーは、T大健康栄養学科学生10名と教員(管理栄養士)、W社の商品開発担当者、県保健福祉部担当者(管理栄養士)である。県内コンビニで550円程度で販売する健康弁当、学生の父親世代が選んでくれる、おいしくて、低カロリー、低塩分、野菜たっぷり、食材は全て国産、県産品を多用し地域性を出す等を条件とした。【結果】40~50歳代の男性に好まれる味と、健康を考えての食材選択、調理法、味付けには、相容れない点も多く、その接点を見出すのに苦労した。しかし、その試行錯誤が学生への実践教育となった。売れる弁当を塩分を3g以下にする事が難しい事や、茨城県産魚が安定供給されず、他県産を選ばなければならなかったりした。また、企業側の食品の安全性のチェックが思った以上に厳しい等、教室では学ぶことが出来ない、生産・流通・消費のしくみを実践する事が出来た。この研究を通して、茨城県の「いばらき健康づくり支援店」制度の、すばらしさを再認識することが出来たので、今後も普及に努めたい。
  • 横井川 久己男
    セッションID: 3E-1
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    (目的)大腸菌O157による感染症において,抗生物質の使用がベロ毒素の大量放出やベロ毒素遺伝子の活性化等を誘導し,病態を悪化させる事例が報告されている。しかし,ベロ毒素生産性を有効に抑制する報告はほとんどない。マイクロ波の二次的な加熱作用を利用した電子レンジは食事の直前に汎用されるが,電子レンジ処理が本病原体のベロ毒素生産性に及ぼす影響は研究されていない。本研究では,本病原体に対するマイクロ波の影響を検討した。(実験材料と方法)菌株は大腸菌O157sakai株を用いた。マイクロ波照射は,電子レンジ又はマイクロ波照射装置(グリーンモチーフ,東京電子)を用いた。ベロ毒素は逆受身ラテックス凝集反応により測定した。ベロ毒素遺伝子の転写量は定量PCR法により測定した。(結果)170W,30秒間の電子レンジ処理(照射後の試料温度40℃)では,本病原体の生存率は約70%となった。40℃の恒温水槽では生細胞数が低下しないことから,マイクロ波の影響により生細胞数が低下したと考えられた。種々の食品に本病原体を接種し,700 Wで7秒間の電子レンジ処理をした時,生存率は食品の種類により著しく変動した。酸耐性は電子レンジ処理(700 Wで7秒間)により低下し,電子レンジ処理後に生育した大腸菌O157のベロ毒素生産性も低下した。二次的な加熱作用の影響を排除するため,グリーンモチーフを用いて微弱なマイクロ波照射により温度を37℃に制御して本病原体を培養した時,ベロ毒素生産量はマイクロ波照射により低下し,ベロ毒素遺伝子の転写が遅れることも判明した。以上の結果から,マイクロ波は大腸菌O157の病原性を低下させると考えられた。
  • 佐藤 久美, 村上 和雄, 長尾 慶子
    セッションID: 3E-2
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    【目的】調理中の昆布からのアミノ酸ならびにヒ素の溶出量に焦点をあて,だし汁ならびに昆布煮物を対象にして,栄養・安全の両面から最適な調製法を検討してきた。今回は昆布佃煮を対象に,調理操作を変えて調製した佃煮中の総ヒ素量(以下ヒ素と略記)の低減化と佃煮の抗酸化活性を目的に,最適な調理条件について検討した。
    【方法】3cm角に切った真昆布は試料間のばらつきがないように混合してから10gずつ秤量し,酢(0,10および50wt%)を加えた各浸漬水100g中で1時間浸漬させた。次に600Wの電熱器で5分間加熱後300Wに変え,醤油・みりんを加えて計45分間加熱した。また調理操作を,1.浸漬前に焙る,2.75mm幅の細切りにして浸漬する,3.浸漬水を取り換えると変えた試料も同様に調製し,凍結乾燥後粉末にした。ヒ素量は乾式灰化後,水素化物発生原子吸光分光法を用いて測定した。また粉末試料を水及びエタノールを用いて抽出し,化学発光法(ケミルミネッセンス法)を用いてペルオキシラジカル捕捉活性を測定した。発生したラジカルの半量を捕捉する試料濃度のIC50値(%)を指標とした。
    【結果】佃煮のヒ素量は浸漬水を除去してから調製すると大幅に減少し,エタノール抽出部では捕捉活性が低下したが,水抽出部の捕捉活性の低下はわずかであった。水抽出部の捕捉活性は焙り焼き法により上昇したが,焙り焼き後浸漬した水を除去する方法で著しく低下した。細切りにするとエタノール抽出部の捕捉活性は低下し,調理条件によって水抽出部とエタノール抽出部の捕捉活性の傾向が異なった。エタノール抽出部よりも水抽出部は高い捕捉活性を示し,昆布中の抗酸化成分は水に溶出しやすいことが確認された。
  • 原田 和樹, 前田 俊道, 河村 幸恵, 小泉 武夫
    セッションID: 3E-3
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    【目的】調査捕鯨で得られたミンク鯨やイワシ鯨は、食品にする際に、鋸を引いて赤肉を切断加工するが、その際に生じる屑肉は廃棄される。我々は、その屑赤肉から新たな発酵調味料を作ることを試みた。その発酵調味料を「くじら醤油」と名付け、その抗酸化能を、米国農務省(USDA)が世界標準抗酸化能測定法として推奨するORAC(Oxygen Radical Absorbance Capacity)法を用いて、ペルオキシラジカル消去活性能で調べた。
    【方法】試料の発酵は醤油麹と塩だけを共存させ、室温で約1年間行った。抗酸化能の測定は、AAPH溶液からペルオキシラジカルを発生させ、それによって分解されるフルオレセインの蛍光強度をベルトールド社製Mithras LB940マルチラベルプレートリーダを用いて、経時的に測定した。試料存在下での蛍光強度の曲線下面積と、非存在下での面積の差を算出して、濃度既知の標準物質Troloxに対する相対値で親水性ORAC値を求めた。単位はµmol Trolox当量/100mlで表した。独立した実験を3回行い、比較として市販の魚醤や大豆醤油を用いた。
    【結果】「くじら醤油」は魚醤というよりは肉醤に括られるが、肉醤のデータベースが全く存在しないので、あえて魚醤のORAC値と比較した。「くじら醤油」のORAC値は、7955±541であった。この抗酸化能の高さは、調べた魚醤の32品の中で、「ひらめ魚醤」、「エタリ(カタクチイワシ)の魚醤」、「イカいしり」、「フグ魚醤」に次いで5番目であった。ちなみに、大豆醤油のうすくち醤油のORAC値は、4944であり、32品の魚醤のORAC値の平均値は5186であった。
  • 安藤 真美, 北尾 悟
    セッションID: 3E-4
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    【目的】昨年度の本大会において、かつおだしのラジカル捕捉活性能に対する核酸関連物質および遊離アミノ酸の寄与について報告した。今年度は、かつおだしと並んで代表的な和風だしである昆布だしのラジカル捕捉活性能を測定すると共に、含有成分の寄与について検討した。さらに、うまみの相乗効果が明らかとなっている、かつお・昆布混合だしにおいて、含有成分の抗酸化能の相乗効果についても検討した。
    【方法】3%濃度に調製した昆布だし(10種)と市販風味調味料だし(昆布風味5種,濃度0.7%)を用いた。さらに各々1.5%濃度のかつお・昆布混合だしおよび市販風味調味料だし(かつお・昆布風味:濃度0.7%)も用いた。それぞれのだし汁のペルオキシルラジカル捕捉活性能(AAPH-CL法)、およびヒドロキシルラジカル捕捉活性能(ALOKAラジカルキャッチ)を、ルミネッセンスリーダー(ALOKA AccuFLEX Lumi400)を用いて測定した。抗酸化能はすべてTrolox当量に換算した。さらに核酸関連物質をHPLC (島津LC7A)により、遊離アミノ酸をアミノ酸分析機(日立L-8500)にて定量した。
    【結果】昆布だしでは、ヒドロキシルラジカル捕捉活性能がペルオキシルラジカル捕捉活性能よりも高い傾向を示した。天然品では、昆布の種類によって抗酸化能の強さに差が認められるとともに、市販風味調味料だしよりも全体的に抗酸化能が高かった。なお、昆布だしに含まれる核酸関連物質の抗酸化能への寄与率は低かったが、遊離アミノ酸の寄与率は、だしの種類によって大きな違いが認められた。さらに、かつお・昆布混合だしと各々単独の場合のラジカル捕捉活性能の比較では、ペルオキシルラジカル捕捉活性能の相乗性は認められなかった。
  • 西村 公雄, 真部 真里子, 後藤 昌弘
    セッションID: 3E-5
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    【目的】薑汁撞奶(キョンジャッゾンナーイ)は,中国の広東省を中心に食べられているデザートで,ショウガと牛乳で作られている。しかしながら,そのゲル化機構については,詳細は不明である。そこで,本研究では,ゲル化に関する酵素並びにビタミンC(アスコルビン酸(AsA))の添加効果について調べた。
    【方法】ショウガ(土佐一)搾汁と70℃に加熱した牛乳を混合し,45℃で60分加温することで,薑汁撞奶を得た。このゲル化に及ぼす各種プロテアーゼ阻害剤およびAsAの効果を破断強度やショウガプロテアーゼ活性測定等を用いて検討した。特に,AsAの効果は走査型電子顕微鏡観察も用いて調べた。
    【結果】薑汁撞奶のゲル強度は,1.71 ± 0.37 Pa(n=7)を示したが,1mM ヨードアセトアミド(IAA)存在下では,0.25 ± 0.05 Pa(n=7)となり有意(p>0.01)に低かった。一方,10mM EDTA,0.2% AsA存在下ではそれぞれ,2.34 ± 0.26 Pa(n=4),2.33 ± 0.29 Pa(n=4)と有意(p>0.05)に増加した。各試薬のショウガ由来酵素活性に与える影響を見たところ,IAAは7.6 ± 2.9 %(n=3)まで抑えたが,EDTAは157.8 ± 20.1 %(n=4)と亢進した。これらのことはゲル形成にショウガ中のシステインプロテアーゼが関与していることを示唆していた。また,AsAの存在は酵素活性に顕著な影響を与えなかった。走査型電子顕微鏡による各ゲルの微細構造は,薑汁撞奶,EDTA存在下では空隙の直径がそれぞれ38.2 ± 8.6μm(n=10),39.8 ± 12.2μm(n=10)であったのに対し,AsA存在下では25.3 ± 6.9μm(n=10)と有意(p>0.01)に小さくなった。このことから,AsAは酵素活性を促進させることなく,ゲルの網目構造を密とすることでゲル強度を増加させるものと考えられた。なお,本研究の一部は,2008年度同志社女子大学共同研究助成金により行った。
  • 千田 眞喜子, 葛葉 泰久
    セッションID: 3E-6
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    目的 硝酸態窒素は(体内で亜硝酸態窒素に還元されることにより),健康を害する可能性が指摘されている1),2).前回までの実験3)-5)では野菜ジュースの亜硝酸生成に関し,塩素と冷蔵保存による抑止効果を確認した.今回は,収穫後の保存状態が野菜中の硝酸・亜硝酸態窒素の生成に与える影響と,塩素による亜硝酸態窒素除去効果について明らかにすることを目的とした.
    方法 収穫当日と,収穫して1,2,3,4日間経過したほうれん草を用いてジュースを作成した.後者は,実験当日まで,新聞紙で包みポリエチレン袋に入れ,7℃または18℃で保存した.つまり,収穫後の日数と保存温度の組み合わせで,9通りの試料を用意したことになる.それらを用い,亜硝酸態窒素,硝酸態窒素,アンモニア態窒素の濃度変化を観測した.さらに,試料に塩素を添加し,塩素による亜硝酸態・アンモニア態窒素の除去効果を調べた.
    結果 7℃保存と18℃保存を比較し,収穫後の保存温度が低い方が,ほうれん草の亜硝酸態窒素,硝酸態窒素,アンモニア態窒素の生成が抑制されることが明らかになった.また,塩素による亜硝酸態窒素とアンモニア態窒素の除去効果を確認した.さらに,ほうれん草ジュースは,その有機物含量故に,有機物が少ない試料と比較して,多くの塩素を必要とすることを確認した.
    [文献] 1)林:水と健康,pp.206(2004),2) リロンデルら;硝酸塩は本当に危険か,pp.256(2006),3)千田ら;家政学会第60回要旨集(2008),4)千田ら;水文・水資源学会2008年度要旨集(2008),5)千田ら;家政学会関西支部第30回講演要旨集(2008) 
  • 粟津原 理恵, 吉田 佳子, 遠藤 伸之, 長尾 慶子
    セッションID: 3E-7
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    【目的】我々は昨年より抗酸化性成分のルチンを多く含むソバ葉の有効利用法を検討している。今回は幅広い年齢層に好まれるプディングの製造にソバ葉を利用し、物性、嗜好およびラジカル捕捉活性の観点から、ソバ葉の添加方法および最適添加量を検討した。
    【方法】試料は、牛乳:卵の割合を2:1とし砂糖30wt%添加したプディングを標準とした。ソバ葉の添加は、試料全量に対して0.5、2.0、 4.0 wt%量のソバ葉粉末(日穀製粉株式会社)とし、60℃の牛乳で5分間浸出させた液を使用した。プディングの物性は破断強度試験により評価した。主材料の牛乳および卵タンパク質に対するルチンの影響をみるために、液体クロマトグラム(HPLC)および紫外可視 (UV/vis)吸収スペクトル測定を実施した。測色色差計による色度と官能評価(順位法、嗜好意欲尺度法)結果からソバ葉を利用したプディングの品質を総合的に判定した。また、化学発光法によりペルオキシラジカル捕捉活性を測定し抗酸化性を評価した。
    【結果・考察】破断強度測定ではソバ葉使用量の増加に伴い破断特性値が低下し、コシのない崩れやすいゲルとなった。HPLCおよびUV/visスペクトル測定結果より、ルチンは牛乳および卵タンパク質との化学的相互作用により高分子化を促進させる傾向を示し、これが上記物性変化の一因であると推察した。ソバ葉浸出液の利用により、プディングの緑黄度が強まり十分な着色効果が認められたが、なめらかさが低下し苦味が増した。総合評価ではソバ葉使用量2.0wt%が有意に好まれた。ソバ葉使用量の増加に伴いプディングの抗酸化性が増強され、機能性向上の観点からもソバ葉浸出液の利用効果が認められた。
  • 本みりんとの比較
    西念 幸江, 生方 恵梨子, 峯木 真知子
    セッションID: 3E-8
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    [目的] 東肥赤酒は、熊本県特産の酒で、糖度は43.4%、本みりんと同様に甘味を付与する調味料として使用されている。本みりんでは、可溶性成分の溶出抑制効果や煮崩れ防止が報告されているが、赤酒の調理特性は不明である。そこで、本研究では、豚肉に赤酒を浸漬した場合の効果を検討した。[方法] 国産豚ロース肉芯部(39.8g±1.8g)を用い、調製液は脱イオン水、赤酒(瑞鷹(株))、本みりん(宝酒造(株))、清酒(黄桜_(株)_)で、肉重量の40%量とした。これらを真空専用袋に入れ、真空包装機(東静電気(株) TOSUPACK V-280型)により真空包装(真空度98%)し、室温で30分浸漬後加熱した。スチームコンベクションオーブン(フジマック(株) S0410E017)による加熱は、庫内温度:85℃、スチーム量:100%、調理モード:コンビとし、熱電対温度計を試料に刺してデータコレクタ(安立計器(株) AM-8000E)でモニタリングし、中心温度が75℃に達してから1分間加熱した。加熱前後の肉試料の重量、断面積、色、アミノ酸分析、加熱後のかたさ応力(クリープメータ:(株)山電 RE2-33005B)を測定し、組織構造(SEM)を観察した。また、各浸漬液の加熱前後のpH、糖度、塩分を調べ、官能評価も行った。[結果] 赤酒を使用した豚肉は、重量変化率が少なく、本みりん同様74.2%であった。加熱後の浸漬液のpHはいずれも5.9-6.0であった。豚肉の破断応力では、赤酒試料1.1×105Paで有意にやわらかく、本みりん試料が次いでいた。清酒を用いた試料では重量変化が最も大きく、破断応力は高かった。天つゆおよび上記の肉試料の官能評価は、7段階評点法による嗜好型評価を行った。香りは赤酒が高い評価の傾向であったが、有意差はなかった。他の項目でも、有意の差は見られなかった。
  • 中村 恵子, 佐藤 由加
    セッションID: 3E-9
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】 凍み大根は、冬の農閑期に作られる保存食であり、夜間の寒気で大根を凍結させ、昼間の日照や風により融解・脱水させ、これを繰り返して乾燥させる。東日本に広く分布する加工食品であるが、大根の切り方や下処理の方法は地域によって異なり、製品の組織構造も調製条件により異なるが、その詳細は明らかにされていない。
     そこで、本研究では凍結前の処理が凍み大根の品質におよぼす影響及び凍結・解凍速度が組織構造におよぼす影響を明らかにすることを目的とした。さらに、組織構造の相違による食味の変化についても検討した。
    【方法】 市販の大根は20cmに切りそろえ、そのまま・皮むき・下ゆで(熱湯10分間加熱)・水さらし(下ゆで後流水中に3時間放置)の処理を行い試料とした。低温インキュベータ(-5℃~3℃で温度条件をプログラム)及び冷凍庫(-20℃)・冷蔵庫(5℃)を用いて試料を凍結(16時間)・解凍(8時間)させ、経時的に重量・温度の測定と組織の観察を行った。スポンジ状・ゴム状と組織構造の異なる凍み大根を試料とし、40℃の水で戻した後調味液で加熱し、大学生35名に対し2点比較法で官能検査を行った。
    【結果】下ゆで処理によって大根の重量は減少し、乾燥時間を短縮することができた。水さらし処理により、製品は白く仕上がった。重量変化には解凍速度より凍結速度が大きく影響し、緩慢凍結では重量減少が大きく内部にスポンジ状構造が形成された。官能検査の結果、スポンジ状試料は調味料のしみこみがよく、ゴム状試料は固く歯切れがよかった。
  • 藤居 東奈, 香西 みどり
    セッションID: 3E-10
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    目的塩味の付与はおいしさに関わる重要な要因であるが,食品中における食塩の拡散係数に関する報告は僅少であり,さらに,拡散係数を用いて,試料内部の食塩濃度を予測する報告はほとんど見られない.本研究では,野菜中の食塩の拡散係数を測定し,これを用いて実際の調理を想定した条件での試料中の食塩濃度の予測を行った.
    方法試料はダイコン,ニンジン,ジャガイモとし,食塩の拡散係数を求める実験では,加熱処理により細胞膜機能を低下させた1~3cm角試料を20~99.5℃の0.2~0.8M食塩水溶液に浸漬し,モール法により食塩濃度を測定した.三次元拡散方程式に対する差分方程式による予測値と実験値との差が最小になるような拡散係数をプログラム計算により求め,実際の調理を想定した条件での試料内部の食塩濃度の予測を行い,実測値と比較した.水分含量(減圧乾燥法)と遊離カリウムイオン含量(原子吸光法)の試料内分布を測定した.
    結果20~99.5℃のうち,70℃における1~3cm角のダイコン中の食塩の拡散係数は,2.21×10-5~5.43×10-5(cm2/s)であった.拡散係数は試料サイズによる差はないとされているが,加熱・浸漬により試料内成分が不均一になることが拡散係数の算出に影響する要因の一つだと考えられた.調理に用いる濃度範囲では拡散係数の濃度依存性はなかった.2cm角試料における食塩の拡散係数を用いて,実際の調理条件での試料内食塩濃度を予測した.試料を体積要素の集合体と考えた予測と,中心部と外側を10等分した各点における予測を行った結果,体積要素による予測の方がより実測値と一致した.ジャガイモ中の食塩の拡散係数はダイコンとニンジン中の食塩の拡散係数よりやや小さかった.以上,拡散係数を用いた野菜中の食塩濃度の予測の,調理への応用可能性が示された.
  • 真部 真里子, 岩永 英莉子, 成瀬 まどか
    セッションID: 3E-11
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    目的 生活習慣病予防の見地から減塩が重要であるが、食物の塩味減少は、おいしさを著しく低下させる。おいしさの低下を防ぐため、うま味物質の減塩効果を活用し、だしを効かせて調理することは周知だが、我々は鰹だしのうま味物質以外の風味にも減塩効果があることを明らかにしてきた。そこで、本研究では、口腔内で感知される鰹だしの風味に着目し、鰹だしの味の形成に重要なヒスチジンと乳酸ならびに後鼻腔経由のにおいによる減塩効果について検討した。
    方法 20歳代の女性を被験者として二点比較法による官能評価を行った。まず、MSG単独溶液ならびにMSG・ヒスチジン・乳酸のうち二者もしくは三者の混合溶液を塩分濃度0.80%に調整したものと基準試料(塩分濃度0.70-0.92%の食塩水)をそれぞれ組にし、各組、塩味が強いものを回答してもらった。さらに、鰹だしの香気成分を含む蒸気を口腔内に導入して、におい刺激を付加した0.68-0.93%の5段階濃度の食塩水とにおい刺激のない0.80%食塩水を飲み比べてもらい、より塩味が強いもの、塩味の好ましいものを回答してもらった。またGC-OならびにGC-RO分析によって鰹だしのにおいプロファイルを作成した。
    結果 プロビット法にて解析した結果、乳酸・ヒスチジン、中でも乳酸には強い塩味増強効果が認められた。また、後鼻腔経由のにおいは、おいしさ向上効果が認められた。前鼻腔経由のにおいのおいしさ向上効果は荒節だしよりも枯節だしの方が顕著であったが、後鼻腔経由のにおいでは逆の結果となった。GC分析の結果、においの種類が多く感知されたものにより顕著なおいしさ向上効果があることが示唆された。
  • 高橋 享子, 山本 沙織
    セッションID: 3E-12
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】卵白アレルゲン・オボムコイドの低減化は困難であると云われているが、我々は高温高圧処理により卵白アレルゲン・オボムコイドのアレルゲン性を低下させた。しかし、本方法では卵白タンパク質特性の気泡性が低下する問題が残された。本研究では、低アレルゲン化処理卵白の気泡性保持とその卵白の応用性について検討した。 【方法】60 % 卵白でメレンゲを形成した後、高温高圧処理(80kpa・1分)を行い再びメレンゲを形成し、これを用いてスポンジケーキの開発を行った。作製スポンジケーキのアレルゲン量は、卵白アレルゲン・オボムコイド特異抗体と患者血清を用いて測定した。 【結果】60 % 低減化メレンゲのアレルゲン量は、60 % 生メレンゲに比較して1/25に低下した。さらに、1/25に低減化したメレンゲを用いてスポンジケーキを作製したところ、アレルゲン量は約1/20に低下した。また、卵アレルギー患児血清によるIgE結合性の低下も認められた。スポンジケーキの膨化は、生メレンゲ・スポンジケーキの75 % であったが、低減化スポンジケーキはしっとり感があり、味も良く好評であった。 【考察】アレルゲン量が約1/20に低下した低減化スポンジケーキの作製に成功した。低減化処理卵白及びメレンゲを用いた低アレルゲン化卵の更なるレシピ開発が期待できる。
  • 大崎 聡子, 山口 智子, 小谷 スミ子
    セッションID: 3E-13
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】これまでに小麦アレルギー患者が安心して摂取できるグルテンフリー米粉パンの製造条件を、増粘多糖類のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCと略)の添加により見出している(小谷2007)。本研究では、小麦アレルゲンの他に、卵アレルゲンおよびミルクアレルゲンも含まない米粉パンの製造を試みるとともに、HPMCの種類を変えた場合についても検討した。
    【方法】1.材料は、主材料として米粉を、副材料として食塩・上白糖・オリーブオイル・ドライイースト・HPMC・水を用いた。HPMCは65SH-4000、90SH-4000(信越化学工業(株))を用いた。2.製造条件として、HPMCの種類と添加割合、水の配合割合、生地の焼成条件を検討した。3.物性評価は、比容積・テクスチャー(硬さ,凝集性,付着性)を測定した((株)山電卓上型物性測定器TPU-2S(B))。試料間の差はt検定により解析した。4.官能評価は2点嗜好試験法および5段階評点法による嗜好評価を行なった。
    【結果】小麦・卵・ミルクの三大アレルゲンを含まないグルテンフリー米粉パンの製造条件を検討したところ、65SH-4000を0.8%添加した場合、水分90%、180℃・45分焼成において良好な比容積が得られた。この時のテクスチャーの値は、硬さ30.7×103(Pa)、凝集性0.71、付着性8.45×102(J/m3)であり、官能評価においても好まれる傾向にあった。また、同一条件下で、HPMCの種類を90SH-4000に変えた場合でもパンの焼成は可能であった。しかし、比容積が低く、90SH-4000を使用する場合は、添加量を多くする必要があることが示唆された。
  • 和泉 秀彦, 山田 千佳子
    セッションID: 3E-14
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】米は日本人の主食であり、我々の食生活において重要な食材である。しかし、その米粒中のタンパク質に対してアレルギー反応を示す人がおり、これらの人が米を食するには低アレルゲン米が必要となる。これまでに、酸性溶液浸漬によりアレルゲンが低減化されることが明らかになっている。そこで本研究では、精白米の酸性溶液および米酢希釈溶液への浸漬、さらにその後の炊飯がアレルゲンの低減化に及ぼす影響について解析した。 【方法】精白米をpH3-6に調整した0.1M酢酸緩衝溶液に、4℃、30℃、50℃で16時間浸漬し、溶出タンパク質中および米粒残存タンパク質中のアレルゲンをイムノブロット法で検出した。さらに米粒残存アレルゲンをCS Analyzerを用いて定量した。次に炊飯の影響をみるため、各pHの酢酸緩衝溶液に50℃で浸漬後炊飯し、米粒残存アレルゲンの挙動について同様に解析した。また、精白米を酢酸濃度が0.1M、0.25M、0.5Mになるように希釈した米酢溶液に浸漬後炊飯し、炊飯前後の米粒残存アレルゲンの挙動についても同様に解析した。 【結果】精白米をpH3の0.1M酢酸緩衝溶液およびすべての濃度の米酢希釈溶液に50℃で浸漬した場合、米粒残存アレルゲンは顕著に減少し、残存量は20%以下であった。しかし、米酢希釈溶液の濃度によるアレルゲンの残存量に差は確認できなかった。これらの溶液のpHはすべてpH3付近であり、アレルゲンの低減化に影響を及ぼすのは濃度ではなくpHであると考えられる。次に、それぞれの溶液に浸漬後炊飯した結果、米粒中に残存したアレルゲンは炊飯前後で差は確認できず、炊飯後も低減化された状態であった。
  • 人見 英里, 廣島 愛
    セッションID: 3E-15
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】グルタチオンs-トランスフェラーゼ(GST)は第二相解毒代謝酵素の一種であり、生体の解毒代謝において重要な役割を果たしている。このGSTを誘導する食品としては、ブロッコリーを代表とするアブラナ科野菜が知られているが、調理操作を行なった場合の野菜の解毒酵素誘導能については未知の部分が多い。そこで、本研究では、日本でよく食されるアブラナ科野菜であるブロッコリーとダイコンについて、加熱あるいはすりおろしを行なった場合のGST誘導能について検討を行った。
    【方法】試料として、山口市内の量販店で購入した青首ダイコン(山口県産)、辛味ダイコン(群馬県産)、ブロッコリー(広島県産、福島県産)を用いた。ブロッコリーでは、茹で加熱あるいは電子レンジ加熱を行なった後、エタノール抽出を行なった。青首ダイコンでは、茹で加熱、電子レンジ加熱、すりおろしを、辛味ダイコンではすりおろしを行ない、それぞれの搾汁液を試料液とした。これらの試料液をラット肝臓由来RL34細胞に投与し、24時間培養後の細胞のGST活性をCDNB法にて測定した。
    【結果】非加熱の場合、青首ダイコン、辛味ダイコンの搾り汁には高いGST誘導活性が認められた。ダイコンを茹で加熱した場合、短時間の加熱によって活性は失われたが、電子レンジによる短時間の加熱では、活性は保たれた。ブロッコリーでは非加熱では活性はみられなかったが、短時間の茹で加熱、電子レンジ加熱の後には弱いながら誘導活性が認められた。ダイコンをすりおろした場合、60分放置した場合にも活性は保たれた。
     以上のことから、解毒酵素誘導能を最大限発揮させるためにはそれぞれの野菜に応じた調理方法を選択することが望まれる。
  • 井上 真理
    セッションID: 3F-1
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    目的 衣料用天然皮革を収集し、物理特性を測定して衣料用天然皮革の性能を明らかにする。また皮革特有の触感、いわゆる皮革の基本風合い値を抽出して評価するとともに衣料用途としての皮革の品質評価を行い、衣料用天然皮革の触感に直接かかわる物理特性を分析して、客観的な風合い評価式を導く。
    方法 試料として衣料用天然皮革83点を収集した。姫路、龍野地区の熟練者10名を対象として、皮革特有の基本風合い値「柔軟性」「弾力性」「ふくらみ」「なめらかさ」については10段階で、「衣料用としての総合品質評価」を5段階で手触りによる評価を行った。衣料用天然皮革の力学特性、表面特性、構造特性(厚さ、重さ)をKES-Fシステムを用いて測定した。適切な測定条件の設定を検討し、基本風合い値から総合品質評価値を導く場合と物理特性値から直接総合品質評価値を導く場合に分けて客観的評価式を作成した。
    結果 皮革試料はせん断硬いため、最大せん断角度を4°としてごく初期のせん断剛性と座屈前のせん断剛性およびせん断角度0°におけるヒステリシスをせん断特性の特性値とした。皮革熟練者の総合品質評価値を予測する方法として段階的ブロック間残差回帰方式を採用して評価式を導いた。基本風合い値から総合品質評価値を導く場合と物理特性値から直接総合品質評価値を導く場合、いずれの客観評価式も計算結果の相関係数0.8以上と強い相関を示し、天然皮革の総合品質評価を高い精度で予測できることが明らかになった。それぞれの特徴を生かし、それぞれの客観評価式を利用することが有効であると考えられる。
  • 城島 栄一郎, 谷川 綾子
    セッションID: 3F-2
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    日常生活で使用している椅子は形や色など多くの種類があり、目的・場面によって使い分けられているが、「座り心地」が椅子の重要な選択基準である。座り心地は、座面や背もたれの広さ、高さ、クッション性など数多くの要因が関係するが、張り材料の影響が大きい。 本研究では、座り心地、手触りの官能検査と素材の物性試験を行い、それらの相互関係を検討することで座り心地を決める要因を明らかにすることを目的とし、次の結果を得た。
    (1)座り心地と高い相関がみられたのは手触りの温冷感、軟らかさ、フィット感
    (2)座り心地と相関が低かったのは座った時のむれ感、手触りのむれ感、張り材料の水分率
    (3)座り心地を目的変数とした重回帰分析の結果から、手触りの温冷感と軟らかさで座り心地を90%評価できた
  • 與倉 弘子, 遠藤 彩代, 鋤柄 佐千子
    セッションID: 3F-3
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    目的 伝統的和装用絹織物である絹ちりめん布は、各産地において伝統的製織技術が継承されている。本研究では、婦人洋装用薄手布としての適合性を検討するために、絹ちりめん布の力学特性、表面特性、風合い値と触感の主観評価値との関係を捉え、絹ちりめん布の性能設計に関する基礎資料を得る。
    方法 丹後産地と長浜産地から収集した12種類の無地ちりめん布を試料とした。布の力学特性、表面特性はKES-FBシステム婦人用薄手布標準条件により計測した。布の特性値から婦人用薄手布の基本風合い値と総合風合い値、ちりめん布の風合い値を計算した。同一構造に製織された2種類の試料布については糸の伸張特性を計測した。また、婦人用ブラウス等に用いる場合を想定して、手触りによるちりめん布の触感の主観評価を行った。被験者は女子大学生30名(19~23歳)である。評価項目は「滑らか」「腰がある」「柔らかい」「好き嫌い」の4項目として、SD法による5段階評価を実施した。しぼ設計の異なる4種類の試料布については、同項目について一対比較法による触感評価も行った。
    結果 SD法による触感評価では、婦人用ブラウス等に用いる場合には、「滑らか」で「柔らかい」ちりめん布(変わり一越)が好まれる傾向にあった。触感評価と有意な相関が得られた特性は、布の厚さT0と表面粗さSMDで、T0とSMDの値が小さい試料が好まれた。しぼの大きさが異なるちりめん布については、しぼが小さい試料はSMDや表面摩擦係数の変動MMDの値が小さく、滑らかで好まれる傾向が示された。原料繊維が異なり織構造の等しい2種類の絹ちりめん布については、糸の伸張特性が布の力学特性や触感評価に影響することが確認された。
  • 田中 由佳理, 鋤柄 佐千子
    セッションID: 3F-4
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    【目的】 人間の布に対する触知覚は、視覚の影響を受けることがある。
    布の「やわらかさ」「あたたかさ」という触感は、それぞれ感覚が強いものほど「しっとり」の感覚が強いことが分かっている1) 。ここでは、布に対して抱く触感覚評価において、視覚が及ぼす影響を明らかにし、「しっとり」の感覚に及ぼす色の影響を明確化することを目的とする。
    【方法】 触感において「しっとり」を強く感じる布1) を選定し、同組成の布6色を試料とした。物性値は、KESシステムを用いて、表面特性(平均摩擦係数・摩擦係数の平均偏差・表面粗さ)、曲げ特性、圧縮特性、最大熱流量qmax、通気抵抗を測定した。 (1) 10~20代男女を対象に、一対比較法により、「やわらかい」「あたたかい」「しっとり」の3項目につき官能評価を行った。 (2) 分光測色計(CM-3600d)を用いて、明度、色度、彩度を測色し、官能評価との関係を分析した。
    【結果】 官能検査の結果、3項目全てにおいて、主効果で1%の有意差があり、触感には視覚情報(色)が影響していることが明らかになった。又、測色データにおいては、明度の値が大きい試料は「しっとり」を強く感じず、Lab表色系によるaの値が大きい試料は「しっとり」を強く感じるという結果が得られた。
    1) Tanaka Y, Sukigara S, Evaluation of “Shittori” Characteristic for Fabric, Journal of Textile Engineering(2008), 54, 75-81
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