一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
61回大会(2009年)
選択された号の論文の316件中101~150を表示しています
  • 冨永 美穂子, 鈴木 明子, 尹 鍋淑, 井川 佳子
    セッションID: 2P-25
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    目的:食の自立期ともいえる大学生の食生活のあり方を探究するために,食生活状況に関して調査,解析を試みてきており,食事の摂取状況,摂取する食品の頻度,食意識などにおける性差を明らかにしてきた.食生活状況は社会的文化的な環境により異なることが考えられるが,比較文化的な検討例はほとんどない.そこで,大学生の食生活状況および食意識を把握し,それに基づいた支援方法を検討するための相対的な判断材料を得るために,日本と共通の文化的自己観をもつと考えられている韓国の学生と性差を含めて検討を試みた.
    方法:2005年12月~2006年5月にかけて,質問紙調査を行い,欠損値を除く日本の大学生403名(男子;127名,女子;276名),韓国の大学生178名(男子;75名,女子;103名)のデータを分析に用いた.調査内容は,食事や食品の摂取頻度などの食生活に関する項目,食意識などに関する項目であった.各設問項目について,性および日本,韓国の国別にクロス集計あるいは数値化できる項目はその平均値を求めた.食意識項目については因子分析を行い,抽出因子の得点数を従属変数に2要因(性×国)の分散分析を行うとともに,抽出因子と食生活状況との相関係数を求めた.
    結果:食事や食品の摂取頻度において,朝食,昼食,夕食ともに必ず食べる割合,動物性食品を週3~4回以上食べる割合は,日本の学生の方が韓国よりも高かった.また,朝食,昼食を必ず食べる割合,植物性食品,菓子類の摂取頻度は女子の方が,夕食を必ず食べる割合,肉類,アルコール類,清涼飲料の摂取頻度は男子の方が高かった.食意識項目に関して因子分析を行ったところ5因子が抽出された.性や国に関わらず,“健全な食”因子得点が高いほど偏食なく,多種の食品を摂取し,“簡便性”因子得点が高いほど偏食があり,清涼飲料などの嗜好品の摂取頻度が高い傾向にあった.
  • 宇都宮 由佳, スィワナーソン パタニ
    セッションID: 2P-26
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    目的:16世紀の大航海時代ポルトガルは,香辛料を求め東アジアへ進出してきた.その際,影響を受けた菓子が今日もなお残っている.東アジアという文化的に相互関連のある地域において,どのようなものが受入れられ,発展または消失していったのか.本研究では,ポルトガルに影響を受けた菓子について,日本,タイで共通または類似したものに焦点を絞り,主材料,用いる道具,作り方をオリジナルと比較する.そして各国の食文化とどのように融合,変容したのかを探る.今回は調理道具に着目した.
    結果・考察:調理道具で大きく影響を受けたものはオーブンである.代表的菓子として日本ではカステラ,タイでモーケーンがある.カステラは,小麦粉,鶏卵,砂糖,湯を四角の型へ入れオーブンで焼く.モーケーンも四角の型に入れオーブンで焼くが,材料はペーンマン(キャッサバ芋の粉),アヒルの卵,ヤシ砂糖,ココナッツミルクとなる.希少な小麦粉より豊富なペーンマンを代替したと考えられる.モーケーンのモーとは鍋,ケーンは汁を意味する.現在も調査継続中であるが,モーケーンは元来タイにあり,そこにオーブンが登場し,今日の作り方に変化した可能性もある.
    材料で影響を受けたのは「卵」を用いることである.Fios de ovosは,鶏卵素麺(日本),フォイトーン(タイ)となり,特にタイでは宮廷菓子として発展し広く普及した.卵黄液を糸状にする道具は,ポルトガルでは卵殻に穴をあけたもの,日本は竹筒に穴を,タイではバナナ葉を円錐状にしたもの用いていた.現在ポルトガルはステンレス製のジョーロ型となったが,日本,タイはそれぞれ原型に準じた形状となっている.
  • 相槌,頷き行動から見た大皿の役割
    大野 智子, 寺井 仁, 徳永 弘子, 立山 和美, 笠松 千夏, 武川 直樹
    セッションID: 2P-27
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    目的
    大皿,銘銘皿など,食事の提供形態は,複数人で食事を共にするときのコミュニケーションに影響すると考えられる.共食場面において,共有された「大皿」がコミュニケーションの質に与える効果について「聞き手の応答」の形態に着目し検討を行った.
    方法
    分析対象は,3人グループでの共食中の映像である.実験では,「世代」として「高校生」と「主婦」,「食事形態」として銘々の皿に食事が配膳される「銘々皿」と,大皿を囲んで自由に取り分ける「大皿」の各2水準,計4条件が設定された.実験時間は30分間である. 分析では,会話中の聞き手の応答として,他者の発話を受ける姿勢が弱い「うなずき」,他者の発話を受ける姿勢が強い「あいづち」に注目した.「うなずき」は頭部の上下運動のみによる応答で,「あいづち」は“うん”などの言語行動を伴う応答である.また聞き手が話し手に応答した際の,両者の視線を合わせて分析することにより,コミュニケーションの質について総合的な分析を行った.
    結果
    高校生と主婦の両世代とも,大皿において「聞き手の応答回数」が多い結果となり,大皿が聞き手の応答を促進している可能性が示された.応答の形態に着目すると,大皿では銘々皿に比べ「あいづち」が多く,積極的な会話の姿勢が形成されていたことが示された.また,応答発生時の話者と聞き手の視線は,銘々皿では自分の食べ物に集中している一方,大皿では各所に配られていたことが確認された. 以上の結果から,大皿という共有空間が中心に存在することにより,食べるという行為の過程において視線配布の広がりを生み,互いに発話を受ける姿勢を強める結果となり「活発なコミュニケーションの場」が作り出されていたことが示唆される.
  • 川村 昭子
    セッションID: 2P-28
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    【目的】日常生活で、食の営みである食生活(食事や嗜好など)と年中行事がどのように意識されているかを知るためにアンケート調査を行った結果を報告した。1)、2)今回は食生活と年中行事の関わりをみるために、2005~2006年の2年間を比較検討した。
    【方法】 2005・2006年度本学入学生193名を対象として自己記入法により実施し、即時回収した。質問には、自由回答あるいは選択回答の形式をとり、これらの結果を集計し、検討した。
    【結果】自宅通学生は60.1%、下宿学生は39.9%であるが、ほとんどが北陸三県(石川・富山・福井)出身者で、家族構成は二世帯が三世帯より多かった。食事・食生活についての意識、食事・食生活で気をつけていることなどは前報の回答と同様の結果であったが、2006年度学生は2005年度学生より自宅通学生が多かったので、自分では食事を用意しないのか、食事・食生活で気をつけているとしたのは62.6%と比較すると低い値を示した。日常の食事量は常に腹八分目を保っているが19.8%と増え、朝食をほとんど食べないは14.3%と減りよい傾向であった。しかし欠食しないとする学生は31.9%と減り、ほとんどの学生が欠食しており、朝食が一番多かった。外食やファーストフード利用は減少の傾向であった。年中行事の意識については、2006年度学生は2005年度学生よりは、行事の認識の数値は増加しているが、実施の数値は減少していた。認識していても実施しない行事が多く、認識の約半分しか実施していなく、年齢とともに実施する行事や実施しない行事がみられる傾向であった。また、行事を実施しなくても行事に関わる食べ物だけを食するという回答も多くみられた。
    [文献] 1)川村;(社)日本家政学会第59回大会研究発表要旨集、p.93(2007) 2)川村;(社)日本家政学会第60回大会研究発表要旨集、p.103(2008)
  • 大久保 恵子, 小竹 佐知子
    セッションID: 2P-29
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    目的 江戸後期史家頼山陽の母・頼梅颸没後の喪祭供え物献立にみられる食品の内容を検討した。 方法 頼(らい)家に伝わる「梅颸御供」に使用された食品を皿ごとに分析し、また使用食品が贈答の場合の贈り主の状況について調査した。 結果 献立冊子(頼山陽史跡資料館所蔵)は表紙に「朝夕奠御献立 上・中・下」と書かれた3分冊になっており、全部で52丁から成る。梅颸死去(1843(天保14)年)の2日後(発引=出棺の日)の12月11日から1月29日までの48日間の膳の献立が順番に綴じられており、資料の散逸・欠損などはみられなかった。発引の日は朝奠と夜祭奠の二膳のみであったが、それ以降は朝奠、午後奠(午奠)、夕奠の三膳が供えられた。朝奠は猪口、御汁、御平、御飯、御香物、御酒あるいは御湯の膳構成が主であった。午後奠には菓子と茶が供えられていた。また、夕奠は朝奠の膳にさらに御向詰、御肴が加わったものが主であった。食材料に畜鳥肉は用いられておらず、野菜類、根菜類、魚類、海草類、茸類が使われていた。この膳供物をおこなう時期は、ちょうど年中行事の年末および正月にあたっており、そのため、供物食品のなかには、雑煮(1/1-3)、七草粥(1/7)、小豆粥(1/15)などがみられた。午後奠の菓子は全部で33種(63個)が供えられており、このうちの17%が知人からの到来品であった。
  • 小出 あつみ, 山本 淳子, 山内 知子
    セッションID: 2P-30
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    [目的] 小学生の食生活は10年程前からの塾通いの増加、テレビゲームの普及などに伴い、大きく変化しており、食生活において問題点が多いと考えられる。本研究では、小学生の食生活状況、塾および習い事の実施状況、運動量等について調査し、特にローレル指数に影響を与える要因について検討した。[調査方法] 名古屋市内にあるM小学校保護者会にアンケートを依頼し、保護者が自記式で回答した。パネルは1年生から6年生までの157名で回収率は84%であった。[結果] 体位:身体状況は全国平均値とほぼ同じであった。食品群別摂取状況:主食は朝・昼・夕共にほぼ100%摂取されており、朝食では卵・乳製品が多く、夕食では肉・野菜・大豆製品が多く、1日の食品摂取バランスは良好であった。間食:摂取状況は平日で80%、休日で70%を示し、乳製品と果物で多かった。休日の過ごし方:テレビおよびテレビゲームをやる時間が外出の時間を上回り、読書時間は少なかった。運動量:運動回数は1週間に平均3回で、1回の時間は約1時間であった。塾・習い事:塾・習い事は約80%以上が通っており、1週間の平均回数は3回であった。回数は、学年が上がるに従い増加した。スポーツ・お稽古事では学年で変化は見られなかった。ローレル指数:間食した学童で間食しない学童より、塾・習い事に通っている3年生以外の学童で通っていない学童よりローレル指数は高かった。M小学校の現状:M小学校の学童は、食品摂取バランスがよく、肥満も見受けられず、良好の状態と考えられた。塾に通う学童の率は高く、間食を摂取しているが、ローレル指数は正常範囲内であり、塾通い及び間食による顕著な影響は認められなかった。
  • 今津屋 直子
    セッションID: 2P-31
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    目的:小学校において食に関する教育については保健や家庭のような教科で取り上げられることが多かったが、学習指導要領(2008)にみられるように、今日では学校の教育活動全体によって食に関する指導を進めていくことが求められている。本研究は小学校における食育の実践を通して、食育の総合的な学習の時間および家庭科への導入について検討した。また、食育を実践できる教員の育成は教員養成校の課題のひとつという認識から、小学校の食育に対する教員養成校の関わり方について検討した。 方法:京都市立K小学校では、総合的な学習の時間に食育を導入しており、地域学習単元として「大豆」をテーマに、大豆の栽培、収穫、大豆や味噌を使った食べ物の調製まで、一連の学習活動が行われている。その活動の一部である味噌汁の調理実習授業に、筆者と大学生が参加し、参与観察を行った。授業で用いられた調理操作について家庭科の授業の成果がみられるかどうか、「家庭」の教科書で扱われている調理操作を参考にして検討した。総合的な学習の時間•家庭科の学習計画、および家庭科の学習状況については担任教諭へのインタビュー調査を行った。 結果:総合的な学習の時間の児童の活動から、家庭科で学んだ栄養素や調理実習の学習効果をみることができた。食育を教育活動に取入れていくには、総合的な学習の時間のような横断的総合的な指導、そして学校全体の組織が関わり易い授業を中心に取り組むのがよいことが示唆された。家庭科で学んだ知識や技術は、総合的な学習の時間のなかで学習の成果となって現れ、活用させることでさらに高められていくと考えられる。大学生にとっては、学童期の子どもへの理解を深め、食育を学ぶ機会として重要であることが示唆された。
  • 児童の意識と行動を構造的に分析する試み
    高橋 洋子
    セッションID: 2P-32
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    目的: 調理が子どもの精神的発達に果たす役割を実証的に検討することを目的として、アンケート調査を企画した。本報では、予備調査をもとに、児童の意識と行動の因果関係を、共分散構造分析を導入して分析した事例を報告する。
    方法: 2008年6月、新潟市内の小学校4・5・6年生とその保護者を対象にアンケート調査を行い、男児67名と女児71名の意識と行動を分析した。アンケートから観測された変数「調理する人への憧憬」「調理上達の願望」「現在の調理意欲」「調理上達の自信」に影響を及ぼす潜在変数として“調理意識”を、「現在の調理頻度」「現在の調理技能」に影響を及ぼす潜在変数として“調理行動”を設定し、“調理意識”が“調理行動” に及ぼす影響を示すものとした。さらに「幼少期からの調理経験」が“調理意識”“調理行動” に及ぼす影響と、“調理意識”“調理行動” が「社会性の発達」に及ぼす影響も加えて、一連の因果関係をモデル化し、男児・女児各々のデータで共分散構造分析を行った。
    結果: (1)モデルの適合度: モデルのGFIは男児0.944、女児0.953で、いずれも適合度は良好であった。(2)変数の関連性に見られた性差: a.“調理意識”が“調理行動” に及ぼす影響は、男児の方が強かった。b.「幼少期からの調理経験」が“調理意識”“調理行動” に及ぼす影響は、いずれも女児の方が強かった。c. “調理行動” が「社会性の発達」に及ぼす影響は、男児の方が強かった。(3)まとめ: 「幼少期からの調理経験」が、現在の児童の“調理意識”と“調理行動”を通じて、「社会性の発達」で例示した精神的発達につながる一連の過程を、モデル化して説明できる可能性が示唆された。
  • 森島 美佳
    セッションID: 2P-33
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    【はじめに】本研究では、現代人にとって深刻な花粉症に対する防護マスクに着目し、その機能性と快適性の改善策を提案することを長期的な目的としている。市販されている花粉症用マスクは、実験的には口当シート上に多量の花粉を吸着することができる。しかし、実際にマスクを装着した際、防護効果を確実に得ることは困難であると考えられる。その理由として、装着時の不快感が、装着状態に影響を及ぼし、花粉防護効果を減少させていることが予想される。本発表では、この問題点に対する改善策を見出すための基礎研究として、衛生用マスクの着用に関する意識調査の結果について報告する。
    【調査方法】調査は、Webもしくは用紙を用いて、アンケートを実施した。調査期間は、2005年6月から2008年6月である。調査項目は、「花粉症ですか。」、「マスクを使用しますか。」、「マスクを使用することは好きですか。」、「マスクを使用するとき、問題点・気になることはありますか。」である。
    【調査結果】実施した調査を集計した結果、 有効回答者数は計506名であった。花粉症有症者は43%であり、そのうちマスクを使用する者は28%であった。また、マスクを使用することを嫌う者は93%、好む者は7%であった。マスクを使用するときの問題点・気になることについて、テキストマイニングに従い解析した結果、前者からは「息苦しい」、「蒸れる」、「邪魔」、「見た目」、「暑い」等の意見が挙げられた。一方、後者からは「安心感がある」、「あたたかい」、「楽になる」、「顔が隠せる」、「風邪予防になる」等の意見が挙げられた。以上の結果から、マスクの熱特性について検討することが重要であると推察された。
  • 榮 光子
    セッションID: 2P-34
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    目的 近年、日本において病原性大腸菌O157による食中毒など細菌汚染にまつわる事件が多発し、安全や衛生に関する意識が高まっている。それに伴い、抗菌加工製品の市場は拡大し、特に繊維製品の市場拡大は著しい。本研究では、抗菌加工製品の市場動向、消費者の購買意欲、抗菌に対する意識を調査し、今後の抗菌加工繊維製品市場の動向を検討することを目的とした。
    方法 2008年8月に百貨店、スーパーマーケット、ドラッグストア、コンビニエンスストアにおいて、衣料用、インテリア用、バス・トイレ用、日用、医療用繊維製品5品目について、抗菌表示の有無、抗菌剤の種類、価格等を調査し、エクセルを用いて分析した。また、同年8~9月に306人の男女を対象とし、日常生活の意識行動、「抗菌」という言葉の理解度、抗菌効果の評価など全26項目の質問紙調査を実施し、エクセルまたはSPSSを用いて分析した。
    結果 本市場調査では、医療用繊維製品では75%、バス・トイレ用では53%、インテリア用では14%、日用では9%、衣料用では8%に抗菌表示があった。「抗菌」の意味については75%が正しく意味を理解しており、衣料用繊維製品に対して根強い購買欲求があることが分かった。今後、抗菌加工を強調したり、望ましい抗菌加工処理をすることによって衣料用繊維製品における抗菌市場はより成長するものと思われる。また、トイレ用繊維製品の便座カバーについては、抗菌加工がほぼすべてになされている温熱洗浄便座の普及とともに、減少するものと推察される。
  • 岡村 好美
    セッションID: 2P-35
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    目的 社会の経済的影響によって被服費の金額が変化することはよく知られており,不況下では高級衣類の売り上げは振るわず,被服類の販売店によっては営業形態の見直しが必要になったりする。このように不況下では低価格であることが重視されるが,全てのブランドやメーカーにおいて被服類の販売が低下する訳ではなく,これは購買意欲を刺激する要因強度が,価格より形態・色彩・素材などのデザイン要素において高いことを示していると考えられる。近年は際だって支持される形態的な特徴が認められない状況であるため,本研究は,着用者だけでなく他者に対する影響も大きい被服類の色彩に注目して,購入につながる選択時の意識の変化を検討した。
    方法大学生405名(04年度生242名,08年度生163名)を対象とした留置法による質問紙調査の回答に1点から5点の点数を与えて,性別,年度別に平均値の差の検定および因子分析を行い,得られたそれぞれの結果に基づいて検討した。PCCS色相×トーン一覧表を用いた色彩嗜好状況と流行色との比較から,色彩嗜好への「流行」の影響を検討した。
    結果1.男女差は04年度より08年度で大きく,男子学生より女子学生の色彩意識の変化が大きいと考えられた。2.1の結果は年度間の差で明瞭に示され,女子学生では好きな色と似合う色に対する意識の変化が認められた。3.好きな色・似合う色を被服の種類によって使い分けていることが推察された。4.レッド系の流行は女子学生の嗜好に影響を与えやすいと考えられた。
  • 木下 みゆき, 福井 典代
    セッションID: 2P-36
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    目的前報1)において和服教材について調査した結果、和服教材の多くは、和裁や着付けを行うといった「実習授業」と和服の変遷などを学習する「座学授業」とに大きく分けられた。しかし、こうした授業を通して、生徒は「和服のイメージ」を客観的に把握することはない。そこで本研究では、和服を活用した教材開発を行うにあたり、階層分析法を適用して、和服の選定に対して定量的に評価することを目的とした。
    方法2008年12月に、女子学生14名を対象にアンケート調査を行った。アンケート調査は、「結婚式に参列する際の服装の選定」という場面を設定し、階層分析法を用いて行った。結婚式に参列する際の服装に対する4つの評価項目「価格」「天気」「体型に合う」「着る手間」の重視度と各評価項目に対する和服と洋服の充足度を一対比較法を用いて測定し、「結婚式に参列する際の服装の選定」における各服装の総合得点を算出した。
    結果結果 一対比較による判定の整合度0.15以下の整合性のよい評定者のデータを用いて、「結婚式に参列する際の服装の選定」における各服装の総合得点を算出した結果、和服より洋服の方が総合得点が高かった。また、それぞれの評価項目の総合得点についてみると、洋服においては、「体型に合う」「天気」「着る手間」「価格」の順に高く、和服においては、「体型に合う」「価格」「天気」「着る手間」の順に高かった。洋服、和服共に「体型に合う」が総合得点として最も高いという結果になった。また、和服において洋服より「価格」の順位が高く、これは、和服が洋服より高いというイメージがあるためと思われる。 [文献] 1)木下,福井;第55回(社)日本家政学会中四国・四国支部研究発表会研究発表要旨集、40 (2008)
  • 小町谷 寿子
    セッションID: 2P-37
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    目的 筆者はこれまでに新聞広告に注目した分析調査法を提案し、19世紀後半のアメリカにおける既製服の浸透過程を分析した。今回は、新聞広告ではなく、新聞記事としてのファッション情報の推移を分析する。
    方法 まず、新聞・雑誌の発行部数の推移を国勢調査によって確認した。次に、当時の最有力紙であるNew York Times紙に注目し、ファッション記事内容を抽出した。更に、記事数と内容の推移を分析した。
    結果 アメリカ国勢調査によると、新聞の発行数は、1850年に254社による758,454部であったものが、1890年の1,610社、8,287,183部から1900年には2,226社、15,102,156部に急増した。1900年には、ほぼ全世帯数に新聞が浸透したことになる。New York Times紙のファッション記事は、1859年3月25日の「Opening day for spring fashion, New York City」に始まる。記事の内容は多岐にわたり、季節ごとのニューヨーク、パリ、ロンドンの流行、上着やシャツ、手袋などアイテム別紹介、新技術として、スケルトンスカートやパラソル、新素材などがあった。また社会変化を反映して、南北戦争下のファッションや既製服、市民服など大衆ならではの新しい感覚が特集された。記事数は、1859-73年までは年平均5.8件であったが、1874年からFashion Articlesという連載が組まれ1886年まで年平均27.5件、1887-90年は年平均45.5件、1891-93年には年平均78件に至った。その後は1900年まで年平均7.4件に衰退した。これは1890年頃から普及した月刊の雑誌類に情報源としての地位を奪われたと考えられる。
  • 益本 仁雄, 宇都宮 由佳, 森山 夏菜
    セッションID: 2P-38
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    目的:今日,様々な場面でエコが取り組まれる一方,ファッションよる環境汚染に対して,関心をもつ者は少ないように感じる.本研究では,女子大生の視点でエコとファッションを考える.2008年7月女子大生(90名)とその母親世代(70名)を対象に質問紙調査を行い,エコやファッションに対する意識や行動の共通点・相違点を明らにして,ファッションに関するエコを実践している人のライフスタイルを探る.さらに,聞取りやディスカッションの結果も加味して,女子大生の立場から「やりたい」と思えるエコとファッションの方法を考察していく.
    結果及び考察:女子大生と母親世代の意識や行動の共通点は,エコに関する情報は「テレビ・新聞」から得ており,エコに関心はあるものの,ファッションより興味が低いことである.相違点は,「環境に良い洗剤の使用」「天然繊維の使用」などエコの実践は母親世代が高い.一方,女子大生は,「年下への譲渡」「フリーマーケット」の活用したリユースを実践している比率が高かった.女子大生におけるエコを実践している人のライフスタイルは,「地域活動に積極的」「掃除好き」「情報をよく探索」「家族からファッション・エコ情報を得ている」ということが明らかとなった. ディスカッションの結果,自治体や企業による衣料品回収サービスやその他の活動について,「知らない」「やりたいと思っても方法がわからない」が指摘され,女子大学生がよく利用する場所や衣料品店など広く情報提供・活動することが必要である.また,1人あたり年間20kgの衣料消費量を減らすため,品質の良いものを長く,またエコ商品の周知を兼ねたネットによる衣料品レンタルなどが提案された.
  • 孫 珠熙, 中村 紗織, 田畑 美沙紀, 吉武 春奈, 上村 百合恵
    セッションID: 2P-39
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    <目的>熊本市のストリートでおしゃれにみえる若者を対象に写真撮影をしてもらい、さらにご自身がおしゃれに着こなすためのファッション行動について、質問調査を行った。また、東京都のストリートファッションと比較し、熊本市のストリートファッション行動を明らかにすることを目的とする。 <方法>調査時期は東京と熊本ともに2008年6月に行った。ストリートファッションは写真撮影とインタネットを利用した。質問紙調査内容は_丸1_おしゃれな人に見える秘訣に関して14項目_丸2_興味を持っているファッションイメージ_丸3_異性を選ぶ決め手_丸4_モチベーションを高める為にすること_丸5_好きな色と最近の関心_丸6_個人特性であった。データの集計・分析には、クロス集計を用いたカイ2乗検定、相関分析、因子分析を行った。統計処理にはSPSS16.0を用いた。 <結果>ストリートファッションで見ると、東京のおしゃれな若者は、ベルト・ネックレス・帽子などの雑貨を使ったコーディネートが熊本より多く、熊本のおしゃれな若者は東京より、重ね着・ブラウスやシャツによる衣服の単品コーディネートが多かった。おしゃれに見える秘訣に関する質問項目を因子分析した結果、お化粧と体型、高級感と流行、恋愛とお金、全体的な雰囲気の4因子が得られた。また、装いにプラスになる項目はアクセサリー、ヘアスタイル、お化粧、体型、カラーコーディネートであることが明らかになった。
  • 中村 範久, 佐藤 悦子, 滝山 桂子
    セッションID: 2P-40
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    〈目的〉古着は流行りとして注目され,おしゃれの一つとして利用されている。家庭用品が豊富な現代にあって,最後まで使い切らずに捨てることが多く,中でも衣服は,資源としてではなく処分される物の代表となっていることが多く見られる。古着を利用することやリメイク・リフォームの実践をすることは,廃棄衣料を減らす方法の一つとして重要であると考える。そこで,本研究は,現在の古着が衣生活の中に定着しているかを流行と衣服に対する意識,衣生活事象を取り上げて検討する。
    〈方法〉調査は,国立大学,私立大学の大学生と大学院生の計471名を対象として,平成20年7月上旬~下旬に集合調査法による質問紙調査を実施した。調査内容は 1)流行と衣服への関心(23項目) 2)衣生活事象(購入・着装・管理・廃棄の47項目) 3)古着の利用と不用衣服の有効活用(6項目) 4)所持衣服の利用状況を設定した。調査データは,主成分分析,重回帰分析などを用いて解析した。
    〈結果〉主成分分析によって,流行と衣服に対する意識については「流行り好き」「古着への好奇心」「小物のこだわり」の3因子が,衣生活事象については「古着採用」「損傷意識」「個性派」「不用衣服処分」「規範意識」「古着の高級感」の6因子が抽出された。さらに,古着の利用と不用衣服の有効活用の全6項目の各行動を引き起こすには,衣生活事象のどの因子が影響しているかを重回帰分析によって検討した結果,「古着採用」因子が全6項目に影響していることが明らかになった。
  • 平林  由果, 渡辺 澄子
    セッションID: 2P-41
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】超高齢社会となった現代において、高齢者自身が社会に適応し、自立することが求められている。おしゃれを楽しむことは人に活力を与えると言われており、ファッションセラピーやコスモセラピーを取り入れている高齢者施設が増えつつある。化粧は人を魅力的にし、それにより人は自信を持つことができ、物事に積極的に取り組めるようになると思われる。そこで本研究では、高齢者における化粧の効果を検証するため、化粧前後の感情状態の変化および唾液中のストレスホルモンの濃度を観察した。
    【方法】デイケアセンターに通所している75~95歳の女性35名に対し、各自のパーソナルカラーを診断し、結果に基づいたカラーで化粧を行った。化粧前後に、多面的感情状態尺度を肯定的・否定的な35項目について尋ねた。同時に唾液を採取し、唾液中のストレスホルモンを分析し、化粧前後で比較した。残念ながら、唾液量が少なく分析できなかったサンプルが多く、前後とも分析できたのは、コルチゾールで16名、アミラーゼと免疫グロブリンAは11名のみであった。
    【結果】約半数の被験者は、外出時に身だしなみに気を遣う、おしゃれに関心があると回答した。しかし、6割は外出時に化粧を全くしない被験者であった。化粧後には、「快活・爽快」、「充実」、「優越」の肯定的感情状態が高まり、わずかであるが否定的感情が低下する傾向がみられた。また、16名中12名において化粧後のコルチゾール分泌量が減少した。以上の結果は、化粧をすることで気分がよくなり、ストレスが緩和されたことを示唆している。どの被験者も化粧後の表情は化粧前より明るかった。高齢者に活力を与える手段として、化粧は効果的であると考えられる。
  • 斉藤 秀子, 丸田 直美, 菊池 直子, 加藤 登志子
    セッションID: 2P-42
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    目的 高齢化が進む日本において、福祉に関わる服飾文化の形成は急務である。すなわち、いつでも、誰でも、どこでも衣服について困難な状況にあるとき、問題解決のためのサポートが提供される文化の形成が必要である。本研究は、どのような服飾文化の形成が望ましいかについて検討することを目的として、日欧服飾文化の比較を行うものである。本報告では、先行的に行ったスエーデンにおける、衣服に関わる介護の現状と、身障者を対象とするファッションデザインとその提供方法についての調査結果を報告する。
    方法 調査は平成20年9月24日~26日に、スエーデン、ストックホルム市およびその近郊で行われた。高齢者ケアつき住宅の認知症ユニットにおける2名の高齢者の衣服選択、着脱介助の現状を観察、記録した。また、高齢者のためのホームヘルプサービスセンターヘルパーに同行し、衣服選択、着脱介助の現状を観察、記録した。さらに、障害者ための衣服デザイナー、MS.ÅStenmark氏のデザインした衣服について観察、記録するとともに、販売方法について同氏へのインタビューを行った。
    結果 高齢者ケアつき住宅では、2名のケアワーカーが4名の認知症高齢者を担当していた。モーニングケアとして居室で行われた介助は、シャワー後、どの服を着るか話あうことから始まり、アクセサリーの選択等、常に相互のコミュニケーションの元に進められ、朝食後はヘアにカーラーを巻くケアがあった。ホームヘルプサービスセンターヘルパーと同行した高齢者住宅においても、同様にモーニングケアとしてのシャワー、衣服着用の介助は、相互のコミュニケーションを進めつつ行われた。障害者のための衣服デザインは着脱が便利な巻きスカート、腹部に着脱用ファスナーのついたジーンズ風ズボン等であり、ブティックでの試着、布地等の選択によるオーダーメイドで提供されていた。
  • 久慈 るみ子, 呑山 委佐子, 丸田 直美, 横山 貴美子, 雨宮 邦子, 内田 幸子, 加藤 登志子, 菊池 直子, 斉藤 秀子
    セッションID: 2P-43
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    目的 現在売り場を飾る衣料品は多種多様であるにも関わらず、被介護者の必要を満たしているものは少ない状況にあり、機能面はもとより衣服の役割の一つである心理的要求を満たすものはさらに少ない。また商品情報の提供方法についても検討の余地があると考えられる。そこで本研究では介護に利用すると便利な商品や、被介護者の視点に立って開発した介護服等の展示を行い、これをもとに情報提供するための展示マニュアルを作成し、あわせて介護に関わる衣服や情報提供についてのアンケート調査を行った。 方法 展示は盛岡・仙台・高崎・甲府の4か所で行った。展示品は企業より現在展開している商品提供と本研究者の提案による介護服等60点である。展示会場でのアンケート調査の内容は介護の際に不足している情報や購入ルート、介護服に求める機能などである。 結果 展示4会場の入場者数はのべ482名、テレビ取材3社、ラジオでの紹介2社、新聞取材1社であった。入場者の内のアンケート回答者は238名、福祉関係の大学生が42%、年代別では10~20代が59.2%、性別では女性79.8%であった。回答率は「工夫されたデザインの衣服を見たことがある」では67.2%と高いが「衣料専門店で見た」は3.5%と低く衣料品店以外で工夫されたデザインを見ていることがわかった。困ったときの衣服についての情報収集・購入に関わる質問の回答率は「下着やパジャマは介護福祉専門店や病院で間に合うとは思わない」が低く「なるべく1人で着たり、脱いだりできることを優先して選びたい」「通信販売・インターネットでの購入は肌触り・サイズに対する不安がある」は高く、着脱の工夫等を期待するが販売方法への不満や不安が考察された。
  • 布施谷 節子, 柴田 優子
    セッションID: 2P-44
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    目的現代では、メガネがファッションアイテムとしての地位を確立しつつあるとはいっても、圧倒的に視力矯正の目的で使用されることが多い。若い女性は、メガネを着用することによって素顔の印象が変化してしまうことを経験的に知っていたり、一般的な「真面目」という評価を避けたがる傾向から、コンタクトレンズ装用が多いと考えられる。顔面の印象はメガネだけではなく、髪型、化粧、肌の色、目鼻立ち、人柄などが要因となろうが、今回は、メガネ着用によって素顔の印象はどのように変化するのかを実験によって検証しようとした。
    方法素顔の印象が対照的(丸顔・細面)な二人の被験者が、縁は黒色でデザインの異なる8種類のメガネを着用した場合の正面からの顔面写真を撮影し、これらの写真を印象評価の資料とした。なお、撮影時には、前髪を上げ、側髪は後ろで束ねた。評価項目は「野暮ったい-清楚」、「幼い-大人っぽい」、「きつい-優しい」、「とっつきにくい-親しみやすい」の5項目をSD法により評価した。評価者は女子大生50名である。
    結果(1)8種類のメガネは、因子分析の結果、被験者によって分類されるのではなく、丸型、角型などのメガネの縁の形とレンズの幅および上縁の角度によって分類できた。(2)被験者二人の素顔の印象の違いは、メガネ着用によって相殺され二人が同じような印象になってしまうことがわかった。メガネそのものの印象が強いといえる。(3)やや幅広で四角の一般的なメガネはどの評価項目も「どちらともいえない」という中庸の印象であり、丸型は「やぼったい」、「とっつきにくい」、「幼い」印象が強く、上縁が上がり気味の幅の狭いメガネは「きつい」、「大人っぽい」印象が強いといえる。
  • (第3報)月経および生理用品に関する教育内容の検討
    鍋山 友子, 武井  玲子, 小野寺 潤子, 平野  由香里
    セッションID: 2P-45
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】月経に伴う心理的・身体的随伴症状や生理用品使用時の不快症状をリスクととらえ、これらリスクを低減化するリスクマネジメント研究の一環として、女子大生を対象としてこれまで受けてきた教育内容調査を行い、今後の課題を抽出すること、また、月経状態に相応した生理用ナプキンを選択できる授業内容を検討すること、を目的とする。
    【方法】本学学生208人を対象として、質問紙による留置き自記入調査を行った。また、生理用ナプキンの実習授業は60人を対象として行った。
    【結果】月経・生理用品に関する教育は、小学校91.3%、中学校66.3%、高等学校35.1%、家族69.2%、男女一緒で受ける割合は32.2%、男女別は90.7%であり、保健体育83.4%、特別な時間44.4%、家庭科12.7%の割合で、それぞれ教育されていた。授業内容についてみると、身体の仕組みや月経メカニズムに比較して、生理用品の使用方法や生理痛などの不快症状に関する内容の方が少なく、更に知りたかったとする割合が高い傾向であった。生理痛に対しては、我慢しているなど受動的対処をしている学生が多く、また、生理用品の購入については自分で購入が27.2%に対して、母親が購入は74.3%と高い結果であった。ナプキンの構造を知る実習授業は、「月経状態や生活行動に相応したナプキンが選択できる」ことを目標に、吸収状態や触感を観察、確認させる授業を目指した。方法は、各自使用のナプキンを縦半分に切断し、中央部分に色水を滴下し、吸収状態や表面を観察後、ナプキン全体に色水をかけて内部構造と吸収状態を観察させた。数人のグループ毎に、表面材の材質や表面状態、高分子ポリマーや綿状パルプなどの吸収体の構造や吸収性に市販品毎に特徴があることを確認させた。
  • 小・中・高の技術習得実態と大学生の現状 
    小山  京子, 川畑  昌子, 知野 恵子
    セッションID: 2P-46
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    目的 教材として「ゆかた」を多く扱う理由として、基礎縫いを網羅していること、手縫い技術の習得に有効であること等があげられる。これまでに、被服製作する際の身体寸法・裁断に重要な柄合わせ・縫製の特徴である留め方法等を検討してきた。学生の現況は製作に意欲があってもゆとり教育・実習時間の削減などに起因する技術低下は否めない。そこで、学生の技術習得実態を把握することは半期15時間で被服製作する基礎的資料となり、学生指導上も意義あることと考える。 方法 ゆかた製作に多く用いる手縫い技術について、被服実習を履修した大学・短期大生にアンケート調査を実施し、学生の技術習得実態を分析、新学習指導要領と照合する。 結果 アンケートは東京、岡山の学生171名に行った。学生のほとんどは小学校で被服製作を学んでおり、小・中・高を通して最多はエプロン製作であった。回答では、自分ができる縫製技術としてほぼ全員が並み縫い、次いで半返し縫いをあげ、本絎け・三つ折り絎けは約半数ができるとあり、自己申告上はかなり技術習得ができているようである。 自由記述をKJ法により分析したところ、「被服製作において楽しいと思ったこと」208枚は「完成・達成感」「作品製作」「平面から立体」等7個に、「苦痛に感じたこと」182枚は「作品製作」「失敗・やり直し」「時間不足」等6個のカテゴリーに分類できた。 平成24年より実施される新学習指導要領では、被服と住居は一分野となり、「衣服の材料や状態に応じた日常着の手入れができること」「補修についてはまつり縫い、スナップつけを取り上げ」とあるが製作についての記載はない。現調査より、新教育を受けた学生の被服製作は益々困難となることが予測される。
  • 小原 奈津子, 宮島 美穂
    セッションID: 2P-47
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    目的 ベトナムの伝統衣服であるアオザイは、長袖でゆとりが少なく体にフィットした形で腰から裾へ長いスリットが入った上衣と、幅広のパンツの組み合わせからなる。現在はポリエステル製のアオザイがよく見かけられるが、高温多湿な気候下でスリムなデザインの衣服素材として吸湿性の低いポリエステルが予想に反して定着していることから、ポリエステルとスリットがアオザイの衣服内気候に及ぼす影響を検討した。
    方法 試料服としてスリットのあるアオザイとスリットをふさいだアオザイを、厚さと織密度がほぼ等しいポリエステルと綿で製作した。30℃、80%R.H.の環境下で、5人の被験者が椅座安静(15分)、階段昇降運動(15分)、立位安静(30分)のプログラムで運動した。その間、8か所の皮膚温の変化、4か所の衣服内温湿度の変化を測定し、温度、快適、べたつきなどの官能評価を行った。これらの実験は各2回行った。さらに実験前後の衣服とタオルの重量差から発汗量を求めた。
    結果 皮膚温、衣服内温湿度および官能評価では被験者に共通した運動による変化がみられたが、分散分析の結果、素材とスリットはこれらの衣服内気候に影響する要因としては有意ではなかった。他方、汗の量は、スリットのない綿素材>スリットのないポリエステル素材>スリットのあるポリエステル素材>スリットのある綿素材の順となり、綿素材のアオザイではスリットの有無が汗の量の要因として有意であり、一方ポリエステルではスリットの有無は要因として有意でなかった。これらの結果から、本実験のような条件下で運動した場合の衣服内気候は、素材の吸湿性のみならず、吸湿による吸着熱の発生、素材の通気性、吸水性などに影響を受けることが明らかとなった。
  • 森 俊夫, 杉浦 愛子, 日下部 信幸
    セッションID: 2P-48
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    目的 紙糸製品は、軽量感があり、毛羽立ちが少なく、高い吸放湿性などのメリットがあるが、一方で、しわになりやすい、伸度が低いといったデメリットもある。このようなデメリットを改善するために、更なる機能の向上が期待され、紙糸にポリ乳酸を加える研究がなされてきた。美濃和紙を用いた紙糸の製品化を目的として、開発された紙布と靴下などの紙糸製品について、着用時の快―不快などの快適性の評価を試みると共に、紙布の更なる機能向上を計ることを目的とする。
    方法 試料として、美濃和紙にポリ乳酸を10%(PLA10%)および20%(PLA20%)混入した紙糸とマニラ麻紙糸から作られた紙布および靴下を用いた。また、紙布の機能向上を計るために、マニラ麻に新しく開発された加工を施した紙糸から作成された紙布およびアームカバーを用いた。ポリ袋法により、靴下着用時における不感蒸泄量を測定した。さらに、「ソフトさ」、「さわり心地」、「柔らかさ」、「なめらか感」、「サラサラ感」、「チクチク感」および「ムレ感」について一対比較法により、平均嗜好度を求めた。。
    結果 ポリ乳酸を混入した紙布は、ソフトでさわり心地のよい素材であるが、ポリ乳酸を10%以上加えると快適感は低下することが分かった。また、マニラ麻を加工した布は柔らかく、なめらかで、チクチクしない肌に優しい素材であることがわかった。しかし、サラサラ感についてはマニラ麻の方が性能が高く透湿性がよいことを示唆している。ポリ袋法による不感蒸泄量の測定結果から、綿や紙布の天然繊維からなる靴下は、ポリエステルなどの疎水性の靴下に比べ、不感蒸泄作用を促進し、放湿性がよいことがわかた。
  • 池田 節子, 山口 庸子
    セッションID: 2P-49
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】さくらは古くから日本の文化に深く関わり、さくら染めとしても工芸染色愛好家に親しまれてきた。さくらの種類は山桜の原種から観賞用の園芸種、自然や人工交配された種類等、広く全国に分布している。さくらが染料として使用されたのは、古く江戸時代のウワミズザクラの樹皮、根で鳶色に染色されたものが記録として記されている1)。さくら染めの研究は、歴史的考察2)、染色性の検討3)等がみられるが、染色性に関する実験的な報告は少ない。そこで、染色技法の基礎資料として、関東周辺に自生し、入手しやすい3タイプ(大島桜系、彼岸桜系、交配種)のさくら9種を対象に、染色後の色相と堅ろう性について検討した。
    【方法】さくらは平成18年9月上旬に、葉付きの枝を採取して供した。試布は絹及び綿を使用した。葉は採取直後、枝は室内で5ヶ月乾燥を行ってから、浴比1:20で30分間煮沸抽出した。抽出直後、一晩放置後の抽出液2タイプを用いて、85~90℃、30分の浸漬染めを行った。媒染は、Al、Cr、Cuを用いて、常温で20分処理を行い、水洗後再び染色、水洗、自然乾燥した。抽出液は可視分光光度計で吸収スペクトルを測定した。分光色差計(Color Flex M00218)を用いてL*a*b*値を測定した。堅ろう度は、耐光試験(6h・12h照射)、洗濯試験A法を実施した。
    【結果】種類別色相変化は、大島桜系、交配種の枝抽出液のUVスペクトルに、約500nm付近でピークがみられた。表面色は、抽出後一晩放置液のCu媒染でa*値が大きく、赤味が確認できた。堅ろう度は、耐光試験6、12h照射で、葉抽出液の絹試料4-5級と良好であった。洗濯試験はほとんどの試料で汚染4-5級と優れていた。 1)諸戸;大日本有用樹木効用編,p.182~188 2),3)丸山;櫻の科学,No.11,p.26~36
  • 牛田 智, 小山 雅子, 古濱 裕樹
    セッションID: 2P-50
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】 藍による染色は、建て染めと生葉染めに大別される。通常の藍染は建て染めで行われ、綿も絹も染色することができる。一方生葉染めは、絹・羊毛は染色することができるが、綿は極めて薄くしか染色できない。本研究では生葉染めで、綿布を濃く染色することを目的とした。
    【方法】 生葉染めで綿布を染色する際、アルカリを加えることによりロイコ体を経て染色することができるのではないかと考え、藍の生葉の代用としてインジゴの前駆体であるインジカンを含むインド藍の乾燥粉末を水に入れ、1時間酵素反応させ、その後アルカリを加え、綿布を投入し1時間染色した。酸化を防ぐためのアルゴン雰囲気下での染色を、インド藍粉末を熱湯抽出したインジカンを含む液と水抽出した酵素を含む液を混ぜる方法で行った。またインド藍粉末量、温浴の温度、pH、染色後の放置時間、染色時間を変え染色を行った。
    【結果】 染色液をpH12.5付近で染色を行うことにより、綿布を中性よりも濃く染色することができた。またアルゴン雰囲気下で酸化を防ぐことで一定の効果がみられた。pHを変えて染色したところ、pH11以下では赤色色素のインジルビンが生成され、紫色に染色された。pH13はインジルビンは生成しないが、pH12.5に比べ薄かった。染色液から綿布を取り出す時間を変えて染色を行ったところ、1時間以内に染色液から取り出した綿布は薄かったが、1時間以上浸漬させておいた綿布は濃く染色された。染色温度による著しい効果はみられなかった。
  • 宮坂 広夫, 原 大陽, 相木 雄二郎, 河野 志織, 藤津 雅子
    セッションID: 2P-51
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】食器洗い乾燥機の市場は、90年代後半以降急激に成長しており、それに伴い、専用洗剤の市場も拡大している。本報では、家庭における食器洗いに関して、手洗い洗剤と比較して食器洗い乾燥機および専用洗剤に関する生活者トレンドついて調査した結果を報告する。また、今後の専用洗剤に求められる機能についても提案する。 【方法】食器洗い乾燥機専用洗剤を使用している世帯員2名以上の20-59歳の主婦を対象に、訪問およびWebによる調査を実施した。各種洗剤の洗浄性能を市販食器洗い乾燥機を用いて評価した。また、専用洗剤を一般家庭で使用していただき、洗浄性能をアンケートにより調査した。 【結果】食器洗い乾燥機の種類は、ビルトインと卓上の2タイプに大別される。ビルトインタイプは、年間出荷台数約80万台の約7割を占めている。保有率は、主婦の年齢が30代から40代の家庭で高かった。食器洗い乾燥機および専用洗剤に対しては、大きな不満を感じてない家庭が大多数を占めた。ただし、「ご飯粒、卵、茶渋など頑固な汚れは落ちにくい」という意見があり、洗浄力のさらなる向上が望まれている。また、食器の洗浄後の仕上がりに関して、「くもり」、「輝き」、「ピカピカ」というキーワードが抽出され、生活者の使用満足度を高めるためには、仕上り性能を向上させることが有効であることが示唆された。仕上り性能を低下させる要因の1つは、洗浄中に生成する炭酸カルシウムが、食器に蓄積するためである。この改善のためには、洗剤中にカルシウム捕捉能の優れたキレート剤を配合することが有効である。キレート剤として、ポリカルボン酸塩を用いた洗剤の技術および評価結果について報告する。
  • 鈴木 佐代, 岡崎 美奈子
    セッションID: 2P-52
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    目的 本研究は、教材の少なさが指摘される住教育について、児童が興味・関心をもち、家庭での実践意欲を喚起するような写真教材の開発を目的とする。写真教材は、文字ではなく写真であることで児童の関心をひきつけやすい、教室に持ち込めない事象の提示が可能、児童の家庭環境の違いに左右されずに写真という共通の場を通した学習ができる、教育者の意図を反映できる等の特徴がある。本稿では、小学校家庭科の整理・整頓の学習について写真教材を提案し、その有効性を検討する。
    方法 整理・整頓を考える対象として、児童の身近なものや住空間である本棚、リビング、衣装ケース、玄関を選び、学習の導入部分で使用することを意図して写真教材を作成した。福岡県宗像市A小学校5年生20名を4グループに分け、グループごとに写真を提示・発問し、これに対する児童の発言を分析した。またこの教材を用いた授業案の構想を行った。
    結果 写真は、問題がある(整理・整頓されていない)場面(写真1)と改善された(整理・整頓された)場面(写真2)の2タイプを用意した。児童からは、場面の物理的状態を読み取る発言だけでなく、自らの快適・不快の気持ちを示す発言、改善案を提案する発言、家庭での実践意欲を示す発言が得られた。また写真1と写真2を同時に提示した場合、児童は2つ場面の違いに興味を持ち、一方、写真1→写真2の順に提示した場合は、各々の写真の情報をより詳しく読み取った。児童が写真の意図を読み取っただけでなく、そこから発想を拡げたことや、写真に興味を示して他の児童と活発に意見交換できたことから、写真教材は授業の導入部分での効果が期待できると考える。今後は、授業で実践できるよう内容を検討していきたい。
  • 谷本 道子, 櫻井 のり子, 高橋 清美
    セッションID: 2P-53
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    目的 2000年に施行された介護保険制度は支出が急激に増大したのに伴い,個々の高齢者の必要度に応じた適正なサービスの提供が懸案となってきた.本研究は,高齢者の自立的な生活能力の保持を可能にする,地域の生活支援サービスの在り方を探ることを目的とする.
    方法 1960年代,アメリカ合衆国の65歳以上人口が約8%となったとき,アリゾナ州に建設されたサン・シティは,55歳以上の居住者による“アクティブ・アダルト・コミュニティ”として知られている.その後,リタイア後の生活のダウンサイズ化を図る風潮とともに,類似のリタイアメント・コミュニティが各地に建設されている.アメリカ合衆国ロードアイランド州の2つのリタイアメント・コミュニティを対象に,老人ホームなどの高齢者施設との違い,管理方法,生活支援システム等について,資料収集及び聞き取り調査を行った.調査時期は2008年8月および2009年2月である.
    結果 生活規模のダウン・サイジングとともに,世代や価値観を共有する世帯が集まるコミュニティに関しては疑問視されることも多いが,メリットも多い.加齢に伴い,周囲特に地域による生活支援システムの必要性が高まる.ここでは,自立生活の可能性を高めるために,特に食生活,買い物・通院などの交通手段の確保,緊急時の連絡方法の確保等が有効であることを明らかにした.
  • 佐藤 恵, 佐藤 了子
    セッションID: 2P-54
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    目的 本学生活文化科では、授業支援型e-LearningシステムCEASを導入している。平成18,19年度はファッションコーディネートに関する教材を提供し、受講生からは一定の評価を得た。そこで、インテリアコーディネート_II_の授業もパソコンを用いることからe-LearningシステムCEASは有効であると考え、平成20年度はインテリアコーディネートの教材制作を行うことを目的とした。
    方法 昨年度まで取り組んでいたファッションコーディネート教材を完成版と考え、その様式に従い教材制作に取り組んだ。過年度作品の掲載やインテリアコーディネートソフトウェアであるマイホーンムデザイナー(メガソフト)の操作マニュアルは前回の反省をもとにWebに特化しているhtm形式で作成した。また、基礎知識項目を小テストとして毎回組み込み、同じ問題を繰り返し出題した。
    結果 色彩やスタイルなど前報のファッションコーディネートと重複する項目も多く、両方を網羅して学ぶことで知識の幅を広げることができる。また、インテリアコーディネート1では理論を、2ではコンピュータを用いたインテリアコーディネートの実践を中心に取り組んでいる。しかし、実技の繰り返しでは理論をおろそかにしがちになる。そこで(1)制作中の課題に関する小テストを毎回実施する、(2)同じ問題を繰り返し出題する、ことで知識の定着も図れる。また、e-Learning上で提供するテキストはホームページ(htm)形式で制作することで容量を気にすることなく、デザイン性を優先することができるようになり、視覚的効果が得られるようになった。
  • 塩谷 奈緒子, 五十嵐 由利子
    セッションID: 2P-55
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】住宅で生活を営む過程において発生する生活臭は弱い臭気ではあるものの、室内環境に拡散するなどの影響があると考えられている。また、そういった生活臭に対して臭気環境を改善するための行動を人々は行ってきている。そこで、そういった生活臭や臭気環境に関わる人の感覚評価とそれによる行動や環境条件、さらに生活行動との関連について調査を行うこととした。
    【方法】新潟県内、及び群馬県内の一般住宅の家庭を中心に、普段の生活の中で居住者がどのような臭気を気にしているのか、また、そこからどういった臭気対策を行い、臭気環境の改善をはかっているのかについて居間を中心としたアンケート調査を実施した。調査期間は2007年12月~2008年2月で、アンケートの回収数は330件(回収率79.5%)であった。
    【結果】居間における臭気環境では、生活環境が整備されたことにより、比較的弱いカビ等の臭気について気になっている傾向がみられた。その中でも調理に関わる臭気では、LDK型の居間において特に臭気を気にする傾向がみられ、居間の臭気環境に大きな影響を与えていたと考えられた。また、居住者の生活行動に対して数量化_III_類を用いて5つのグループに分類し分析を行ったところ、居住者の生活行動が臭気環境へ及ぼす影響がみられた。特に、居住者の衛生環境への関心の意識の影響は大きいと考えられ、衛生環境への関心の高いグループでは、臭気を気にしている人が多く、さらに臭気対策も行っている人が多くなっていた。さらに、居住者の在宅時間との関連もみられ、生活スタイルによる影響もあったと考えられた。
  • 渡辺 紀子
    セッションID: 2P-56
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    <目的> 生活雑排水中(洗濯・炊事・風呂)のBOD有機物質は27g/人/日であり、その中に占める洗剤総排出量は非常に多い。水質汚濁の改善のためにも洗剤の効率的な浄化システムの構築が必要である。近年、酸化チタン光触媒は環境浄化材料として注目されている。これまで粉末状酸化チタンによる界面活性剤の光分解に関する研究は散見されるが、市販洗剤を対象とした研究は見当たらない。本実験ではメッシュ状チタン表面に酸化チタン皮膜を有する光触媒材料を用いて洗剤排水の分解性を検討した。    <方法> 酸化チタン:イールド社のメッシュタイプを使用。市販液体洗剤:衣料用・台所用の6種、表示使用濃度(0.067~0.133%)の1倍・1/2倍濃度。光分解実験:200mlビーカーに洗剤液50mlと5×5cm2のメッシュ状酸化チタン1枚、均等な照射量維持のためターンテーブルを使用、光源:ブラックライト(主波長352nm、紫外線強度1200μW/cm2)72時間までの各時間照射。分解率:酸化チタン使用有無、照射前後の洗剤液の表面張力(液滴法)測定から算出した。                <結果> 本実験の洗剤の分解は界面活性能消失を表面張力の復活から推測。ポリオキシエチレンアルキルエーテルを主成分とする衣料用洗剤(標準界面活性剤濃度:0.0293%)の72時間までの経時変化において、中性洗剤の方が弱アルカリ性洗剤より分解率が高かった。中性洗剤1/2表示濃度液を72時間照射した結果、100%の分解率を示した。7月下旬の屋外自然光とブラックライトとの48時間照射で比較したところ、自然光はブラックライトより分解率が若干高かった。省エネルギーの立場から自然光を活用した「メッシュ状酸化チタン/洗剤排水」系の浄化装置導入の実用化が期待される。         
  • 日景 弥生
    セッションID: 2P-57
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    目的 地方公共団体ではごみ処理経費負担の公平性や最終処分地の延命などのために、家庭ゴミの有料化(指定ゴミ袋制度)を進めている。そこで本研究では、レジ袋・マイバッグなどに関する調査から、家庭ごみ有料地域住民(以下「制度あり」)と無料地域住民(以下「制度なし」)の環境に対する意識を探ることを目的とした。 方法 1)対象者;環境に関する講演会参加者200名、「制度あり」のA市イベントに参加した市民191名、「制度なし」のB市イベントに参加した市民888名の計1,191名を対象とした。 2)方法;対象者にアンケート用紙を配布・回収・分析した。調査は2008年6月と9月に実施した。 3)調査項目;家庭ごみ有料化・マイバック・レジ袋・生活行動などに関する項目からなる計20項目とした。 結果 1)制度への賛否では、「賛成」が「制度あり」で約90%、「制度なし」で約70%となり、有意差(p<0.001)がみられた。これより「制度あり」ではごみ有料化を肯定的に捉えていた。2)マイバックを持っている人は、「制度あり」で約80%、「制度なし」で約70%で、有意差(p<0.01)がみられた。3)「レジ袋は必要」と思う人は、「制度あり」「制度なし」とも約60%で有意差はみられなかった。4)「残り汁を直接流しに捨てている」は、「制度なし」の方が多く有意差がみられた。しかし他の4つの生活行動項目では有意差がみられなかった。
  • 高橋 ユリア, 下村 道子, 津田 謹輔
    セッションID: 2P-58
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    目的 摂食障害者について、医学的、心理学的、栄養学的な研究は多いが、教育的立場に立った研究は少ない。また、摂食障害者が学生である場合、専門医を受診する前に、家族の他、頻繁に接する事が多いのは、学校での教師や養護教諭ではないだろうか。さらに、女子教育に携わる者、食教育に携わる者は、得に摂食障害学生との関わりは、多義にわたるのではないだろうか。このような観点から、摂食障害者の食概念、食行動、食に対するストレス、家族環境等について、さらに、摂食障害者の家族のストレスについて、教育者としての立場での理解を深め、適切な対応をする事が必要であると考え、本研究を行った。
    方法 研究調査協力の承諾を得た、摂食障害者261名、摂食障害者の家族212名に聞き取り調査を行った。聞き取り内容は、摂食障害者に対し、今までの聞き取り調査で得られた、食概念、食行動、ストレス、家族への思い等についての解釈の整合性の確認、家族側から見たストレス、今までに行ってきた、摂食障害学生への、教育的指導の効果についての摂食障害者、家族両方からの評価である。
    結果 摂食障害者、摂食障害者の家族ともに、すべての事象に対し、食というものが尺度になっている事を理解してもらえる事を切望していた。また、教育現場の人間が目を向けてくれる事に、高い評価を示した。さらに、毛髪中の亜鉛濃度とストレス指標との関連による教育的指導法に対し、高い評価を示した。
  • 關戸 啓子
    セッションID: 2P-59
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    目的 健康食品は多くの人が利用しているが,適切に使用されない場合もあり問題視されている。そこで,健康食品の適切な利用に関する指導が求められている。将来,その役を担うことが期待される職業である看護者や管理栄養士を目指す学生自身は,どのように利用しているのか実態調査を行った。
    方法 健康食品の利用状況と背景等をアンケートによって調査した。対象は4年制大学の3年生女子学生で,看護学生と栄養学科学生である。学生には研究の趣旨,協力は自由意思であること,成績とは無関係であることを説明し,研究協力に合意した学生は提出用の箱に調査用紙を入れるように依頼した。調査は無記名で2007年5月~6月と2008年7月に行った。
    結果 調査用紙の有効回答は,看護学生76人,栄養学科学生70人であった。両学生とも,健康食品を良く利用する学生が約25%,たまに利用する学生が約40%,全く利用しない学生が約35%であった。健康食品利用頻度,住居形態,食事を誰が作るか,食事は手作りか,規則正しく食事するか,ダイエットをしているかに対する質問において,全て看護学生と栄養学科学生の回答の間に有意差はなかった。健康食品の利用頻度は,家族と暮らしているよりも1人暮らしの学生の方が高く,食事を自分で作る学生の方が高く,ダイエットをしている学生の方が高く,有意差(p<0.05)が認められた。健康食品を利用する理由で最も多かったのは,両学生とも同じで「不足しがちな栄養素を補うため」であった。健康食品を選ぶ時の理由も最も多かったのは両学生とも同じで「価格」であった。
  • 南 江美子, 幅  惠莉花, 松嶋  理沙, 添田  絵理子, 板橋  恵美, 千葉 貴子
    セッションID: 2P-60
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    <目的>平成20年度から特定健康診査・特定保健指導が導入されたことにより、特定保険指導に関わるハイリスク者のみならず、健康増進を目的とした40代以上を対象とした栄養指導においても結果を出す指導が求められるようになった。そこで、本研究では効果的な保健指導を行う一環として、当該地域の食生活の特性を明らかにし、具体的な指導目標を策定するための一助とすることを目的とした。 <方法>平成20年にA市の基本健康診査を受診した40~60歳の男女104名のうち、改正「疫学の指針」に従い、研究の趣旨を書面および口頭にて説明した上で同意が得られ署名捺印した76名(男38名、女38名)を対象者とした。食事調査は半定量食物摂取調査法を用いて行った。 <結果>男性ではエネルギー、脂質の不足者が各46%、64%と多かった。反対に女性では脂質の過剰摂取者が41%と多かった。また、脂質エネルギー比率では男性の59%が不足しており、反対に女性の39%が過剰であった。女性では菓子等からの脂質摂取が多いことが推測された。また食物繊維は男性81%、女性64%が不足していた。 当該地域の女性の食の課題としては、高脂肪、高たんぱく質、低食物繊維が挙げられたが、これは、女性に多い大腸がんの危険因子に当てはまるため改善が必要である。また、塩分摂取量は男女ともに目標値よりも高かった。これは、漬物摂取量が多いこと、ラーメンの汁を飲み干す人が多いことが一因に挙げられた。また、低食物繊維の一因として、きのこ、海草が少ないことが挙げられた。その他、男女ともにカルシウム、鉄の不足が挙げられた。
  • 千葉 貴子, 佐藤 裕美, デュアー アンドリュー
    セッションID: 2P-61
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    <目的>ルワンダは、ドイツそして第一次世界大戦以降はベルギーの植民地支配を受け、1962年に独立したアフリカ中央部に位置する国家である。1990年~1994年にかけては内戦が勃発し大量虐殺(ジェノサイド事件)など悲惨な経験をした地域でもある。ジェノサイド事件から15年経過した現在、ルワンダの子どもたちの現状はどのようなものであるのかを主に体調と食生活の関係を中心に調査することを目的とした。 <方法>対象者は、アフリカ・ルワンダの首都キガリにある、ウムチョムゥイーザ学園に通う4歳から19歳までの、全285名を対象とした。質問項目としては、食事の回数、食品の摂取項目、就寝・起床時間、排便・排尿回数、体調の良し悪し等について選択式の調査票を用いて調査した。言語については、ルワンダの公用語であるフランス語を用いた。データー処理は汎用統計解析ソフトSPSSを用い、主に体調の良し悪しと各項目についてχ2検定を行った。 <結果>今回の研究の結果、ルワンダの子どもたちの半数は1日3回の食事を摂取しているが、多くの子どもは朝を抜き昼食と夕食を中心に摂取していた。また、食事回数が少ないほど体調不良を訴える子どもの割合が高くなる傾向が見られた。この傾向は特に幼児期において顕著であった(P<0.01)。さらに3色食品群別摂取状況と体調との関係をみると、主食・たんぱく質・野菜を1日に1回は摂取できている子どもは体調が良い割合が高いが、食事回数も少なく、主食と野菜のみの食事を摂取している対象者は体調不良を訴える割合が高かった。
  • (第1報)家庭科教員養成課程をもつ大学の現状
    小田 奈緒美, 東 珠実, 柿野 成美, 古寺 浩, 鈴木 真由子, 田崎 裕美, 増田 啓子, 村尾 勇之, 吉本 敏子
    セッションID: 3A-1
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    目的:近年、家族や家庭生活に関わる新たな社会問題が顕在化する中で、わが国の家政学は、専門領域の細分化、学生数の減少、家政学会員の減少などいくつかの困難に直面している。そこで、本研究では、家庭科教員養成課程をもつ高等教育における家政学と家政教育の現状を把握し、今後の諸課題を明らかにしたいと考え、調査を行なった。
    方法:調査対象は、全国の大学のうち家庭科教員の免許が取得できる家政系大学63校と、教員養成系大学53校、ゼロ免課程の大学11校の合計127校である。調査方法は、郵送法によるアンケート調査とした。調査時期は2008年10月~11月である。調査内容は、属性としてコースに所属する教員数と関連領域、入学者数と家庭科教員免許取得者数、今後の家政学の発展に重要な研究領域、家政学会との関係、家政学の社会への貢献度、職業教育との関係などである。
    結果:回収数は47校で、回収率は37.0%であった。講座・専攻・コースに所属する教員は、全体平均10名ほどであるが、家政系は全体的に教員数が多く、教員養成系において女性が多い傾向があり、いずれも構成する領域は衣・食・住が多かった。入学者数は女性が多く、過去5年間の動向は変化がないと感じているようである。家庭科教員免許取得者数は全体平均15名ほどであり、免許取得者数は家政系において多かったが、家庭科教員として就職した割合においては差がなかった。また、家政学会には、全体的には半数の教員が入会しており、家政系より教員養成系が多く入会していることがわかった。今後、家政学が発展するために最も重要な領域は消費者教育と考えられていることがわかった。また、いずれにおいても家政学は教育や学問の一分野として確立していると認識されている一方で、家政学の専門性をもった中等教育の教員養成は、不十分と考えていることがわかった。
  • ―教員養成系学部と家政系学部の比較―
    吉本 敏子, 東 珠実, 小田 奈緒美, 柿野 成美, 古寺 浩, 鈴木 真由子, 田崎 裕美, 増田 啓子, 村尾 勇之
    セッションID: 3A-2
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    目的:本研究では、高等教育における家政教育の課題を明らかにするために、家庭科教員養成課程を持つ大学の学部や講座等の実態と教員の意識を調査・分析する。第1報ではその結果を概観したが、第2報では教員養成系学部と家政系学部の比較を行い、それぞれの特徴と課題を明らかにする。
    方法:家庭科の教員免許状が取得できる家政系学部と教員養成系学部の計127校を対象に、2008年10月から11月に郵送によるアンケート調査を実施した。回収数は家政系学部21、教員養成系学部26(ゼロ免課程6を含む)の計47、回収率は37%であった。
    結果:1)家政学会に入会していない教員は家政系学部に多く、入会しなくても問題はないという意識が高い。2)学問としての家政学の確立、家政学の社会的貢献、職業教育としての家政学につての肯定的意識は、教員養成系学部教員の方が高い。3)教員養成系学部教員と家政系学部教員のいずれも家政学が教育の一分野として確立されているという意識は5割程度で、中等教育の内容に家政学の研究成果が十分に反映されている、家政学の専門性を持った中等教育の教員が適切に養成されているという意識は高いとは言えない。4)教育職員免許法については、専門科目の単位数、学習指導要領との整合性、現代的な生活課題への対応、免許取得要件、教職科目関連の取得単位数に関して問題意識を持つ教員は教員養成系に多い。学習指導要領の改訂や大学のカリキュラム改革が進む中で、家政学の専門性を持った教員をいかに養成すべきかという大きな課題がある。
  • ―ピクニックをキーワードとして―
    村瀬 麻佑子, 村上 陽子
    セッションID: 3A-3
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】 近年、子ども達の生活スキルの低下が問題となっている。こうした状況を背景に、学校では教科、特に家庭科の中でそれを補足しようとする動きがある。従来、家庭で身につけるべき基本的な知識・技術は毎日の地道な繰り返しの中で身に付くものである。これを授業で行うとすれば、本来家庭科で学ぶべき学習がおろそかになると懸念される。この状況を打破するためには扱う題材の工夫が必要となる。さらに、家庭科の授業時間数や学習内容の削減等により、時間的・質的に効率のよい学習計画の作成や学習内容の検討および教材の工夫が求められる。そこで、本研究では「楽しさ」によって子ども達の学習が効果的かつ意欲的なものになると考え、これまで教材として用いられることのなかった「ピクニック」に着目した。本研究では「ピクニック」をキーワードとして、家庭科のみならず全ての教科の学習を関連あるものとして学習の体系化を図る。これにより、「ピクニック」という教材を教科の中で学習できるという意外性と柔軟性および可能性を示し、新しい家庭科のあり方を提案する。
    【方法】 家庭科教育およびピクニックに対する意識について、静岡大学教育学部学生に対し、アンケート調査を行った(調査時期2008年4月、男子132人、女子135人、有効回答率100%)。また、ピクニックの構成要素を家庭科と関連づけながら分析・図式化した。これを元に、小学校家庭科の学習計画を作成した。
    【結果】 家庭科に好意的なイメージを持っている人は約28%であった。分野間、さらには分野内においてもその学習内容に対する興味・関心に顕著な差が見られた。「ピクニック」の要素を取り入れた授業に対する興味・関心は高く、有用性が示唆された。
  • 吉川 はる奈, 下平 奈津美
    セッションID: 3A-4
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】男子大学生の父親イメージ、子育て意識を明らかにし、その意識に影響を与える要因について考察していく。父親の育児への関与が社会全体で求められる中で、男子大学生がもつ父親イメージ、親になる意識についての研究がすすめられている。本研究では、日本人男子大学生の父親イメージとそれに影響を与えている要因について考察する。また育児関与度の高いスウェーデン人男子大学生との比較を行い、両者の意識の特徴や違いについて考察する。
    【方法】関東近郊の日本人男子大学生240名。調査期間は2008年6月~8月。スウェーデン人男子大学生70名。調査期間は2008年10月~11月。自記式質問紙調査。調査内容は、基本的属性であるフェイスシート、性別役割分業意識、親になるための準備状態測定尺度、家事、育児分担、子どもへの親和、子どもイメージ、子どもとのふれあい体験、性の受容、両親の職業と両親に対する意識などである。
    【結果】日本人男子大学生は、質問紙の配布240部に対し、回収数202部、有効回答は200部(84,2%)であった。一方、スウェーデン人男子大学生は、配布70部に対し有効回答52部(74,3%)であった。また日本人男子大学生については、子どもとのふれあい体験はボランティアや授業のほか、きょうだいの世話、親戚の子どもの世話などを通して行っていた。体験の時期は小学校時期から中学校時期が中心。中でも近所の子どもと遊ぶ、きょうだいの世話など繰り返し子どもとふれあう体験をしている者は、子どもに対するイメージが肯定的であった。スウェーデン人男子大学生との比較では、日本人男子学生が子育てを意欲的に捉えるものの、父親になる自信があまりないことがうかがわれた。
  • 室谷 雅美, 中山 徹
    セッションID: 3A-5
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    目的 現代社会において、とくに核家族化・少子化が進むなど深刻な社会問題が多いなかで、地域でのニーズや課題は今後ますます多様化するであろうと思われる。こういったなかで地域における公民館の役割はたいへん重要なものであると考える。  公民館の活動が地域の子どもたちを健やかに育てる一端を担え、地域社会づくりを推進していくために、子育て支援活動の充実を図るとともに地域の拠点となるよう務めなければならない。また、安心して子育てのできる地域づくりを実現するために、公民館が拠点となることが必要である。そのために、具体的な公民館での子育て支援活動を把握し、公民館の果たすべき役割を検討し、地域づくりに生かすことを目的とする。 方法 奈良市内の公民館職員を対象に公民館で実施されている子育て支援事業についてのアンケート調査を実施。 結果 16館44事業についての回答を得た結果、活動内容により、3つのプログラムに分類をした。3つの分類は、対象者と活動内容で区分することにより、各館でどのような活動が実施されているのかが明確にされる点と、分析を行ううえでそれぞれの事業の特長をとらえやすいのではないかという点からも3つのプログラムに分類することとした。1.子育てについての託児付講座。子どもを預けて、保護者を対象に学習する機会を設けるプログラムである。2.親子で参加するプログラムで、スキンシップを図るために子どもと遊んだり、体操などを行うプログラムである。3.主に小学生を対象とした「子ども居場所づくり」の実施である。
  • 奈良岡 緑, 阪本 慶, 中山 徹
    セッションID: 3A-6
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】現在、自治体の財政難を理由に公立保育所の民営化が全国で進められている。自治体は民営化を行うことで財政支出を削減することができ、競争原理によって多様な保育ニーズに対応することができるとしている。しかし引き継ぎ方法や保育士の雇用形態など検討しなければならない事項は多く、状況も自治体によってバラバラであり方針にまとまりがない現状である。本研究では、全国における公立保育所民営化の実施状況と今後の基本方向について把握し、すでに実施した自治体においてはその移管方法や財政効果について調査を行うことで、公立保育所民営化のもたらす影響や今後の保育行政のあり方について検討していく。
    【方法】全国の自治体を対象に2008年12月~2009年3月にアンケート調査を行った。調査内容は(1)公立保育所運営費一般財源化による影響、(2)自治体の保育料見直しの実態、(3)自治体の保育予算、(4)公立保育所民営化の状況、(5)公立保育所の保育士の雇用状況である。
    【結果】調査の結果、民営化等の実施はこの5年間でも着実に進行しており、基本方向としても公立保育所を減少させていく意向が全国的に強いことがうかがえた。しかし一方で公立保育所の役割についての評価は高く、特に地域の子育て支援の拠点としての公立保育所の役割に期待する回答が多く見られた。また民営化の際の引き継ぎ期間は3か月以内と短期間であった自治体が最も多く、審議会や評議機関の設置についても十分に実施されていない自治体が多いこともわかった。財政効果にのみ着目するのでなく、今後より良い保育環境をつくっていくためにも、今後の公立保育所の役割や民営化についてよく検討する必要がある。
  • 表 真美, 西田 裕香
    セッションID: 3A-7
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    目的 子どもの生活習慣の乱れが指摘されるなか、国や教育委員会が家庭での子どもの生活を指導する動きが強まっている。全国で広がる「ノーテレビデー」もその一つである。そこで本研究では、テレビ視聴と小・中学生の生活および発達との関連を明らかにすることを目的とする。
    方法 2008年6月から7月に近畿地区の小・中学校において小学校3・4・5・6年生419名、中学校1年生119名、計538名(男子249名、女子289名)を対象に集合法により自記式質問紙調査を行った。主な調査内容は(1)生活習慣、(2)テレビ視聴の実態、(3)テレビ視聴に対する保護者の態度、(4)家族のコミュニケーション、(5)子どもの発達である。
    結果 得られた結果の概要は以下のとおりである。(1)35%が自分専用のテレビをもっており、テレビが好きと回答したのは95%であった。約7割の子どもが週3日以上夜10時までテレビを見ており、友だちと遊びながら、食事をしながらテレビを見る子どもも多かった。 約5割の子どもが、「ほかにしなければいけないことがあってもまずテレビをみる」「テレビを見ることを我慢するのはたえられない」と回答した。(2)子どものテレビ視聴に対する保護者の規制はあまり行われていなかった。(3)家族の会話頻度や満足度は全体的に高かった。(4)夜遅くまでのテレビ視聴・「ながら見」の頻度、テレビ視聴に対する依存度の高さは、積極性・情緒・規範意識・道徳心などの子どもの発達にマイナスの方向で影響を及ぼしていた。(5)テレビ視聴に対する依存度が高い子どもは、家族との会話頻度・会話満足度が低くなった。
  • アクティブデューティーの隊員とその家族の生活
    岸本 朱美
    セッションID: 3A-8
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    目的 本研究では、アメリカのミリタリーの中でもアクティブデューティーの隊員にフォーカスを当て研究した。その隊員のライフサイクルに伴った家族が受ける心理的影響と家族関係におけるストレス、ストレスを和らげるための隊員への啓発や教育の内容と家族への支援の一端を明らかにした。 方法 (1)アメリカのミリタリーファミリーをサポートするためのウェブサイトや冊子、先行研究の調査。(2)ミシガン州バトルクリークのミリタリーメンバーによるプレゼンテーションの聴講・質問。 結果 Active Duty(アクティブ・デューティ*実際に戦地に派遣される)隊員のライフサイクルは、隊員の配置に関わって(1)Pre-Deployment ―配置前、(2)Deployment-配置、(3)Re-deployment-再会、(4)Post-Deployment-再会後、 (5)Sustainment-継続というサイクルを繰り返す。配置は、隊員が家族を離れ派遣されるものであるが(1)~(4)のそれぞれの時期に関わって、隊員はもちろんのこと、家族・子どもたちも影響を受ける。全ての配置が国外とは限らない。(4)Post-Deploymentの時期は、家族は隊員が帰ってきた喜びはありつつも、隊員がいない間に培ってきた家族内の関係や働きを、もう一度、構築し直していかなければならず、家族にとって最もストレスの高い時期といわれている。隊員の配置に対して、一般的に以下の内容等が呼びかけられている。配置があることを意識し備えること。 不安や恐れなどの気持ちを話し合うこと。子どもが自分の気持ちを表現できるように手助けすること。離れている間も、愛されており気にかけられていると家族全員に知らせること。離れた時期を成長のきっかけと捉えること。
  • H台住区の生活実態調査から
    木脇 奈智子, 棚山 研, 新井 康友
    セッションID: 3A-9
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    目的:近年、ニュータウンの「オールドタウン」化や、いわゆる孤独死が話題となっている。我々は2005年より、大阪府堺市の泉北NTの調査研究に取り組んできた。一次調査の結果、1)NT人口の減少と高齢化が深刻であること、2)府営住宅を中心に孤独死が多発していること、3)老朽化し空室化する府営住宅には多くの低所得層が流入していること、が明らかになった。一方で、4)住民のコミュニティが主体性を発揮しつつあることもわかった。本調査では、NTに住む独居高齢者の生活実態(とくに孤立の現状)を把握することを目的に、NTのH台住区において質問紙調査およびヒアリング調査を行った。
    方法::1) 質問紙調査 2008年3月~4月 調査対象者 H台に居住する65歳以上の独居高齢者(住民基本台帳より複写。352名)。調査方法 面接員が全戸を訪問し、対面聞き取りにより質問紙に記入(回答248件、回答率70.4%) 調査対象者の属性 平均年齢 73.9歳、性別 男性68名、女性180名. 2)ヒアリング調査 2008年8月 質問紙の際に「インタビューを受けてもよい」と回答した対象者9名((女性7、男性2)にそれぞれ2時間程度のヒアリングを行った。
    結果::とくに、低所得層の府営住宅に住む独居高齢者の孤立の実態が際立っていた。たとえば「近所づきあいがない(49.7%)」「正月三が日はひとりで過ごした(79.3%)」というように、約半数の独居高齢者が孤立していた。ヒアリング調査からは「一人暮らしは気楽でいい」という女性たちと、「1週間誰とも話していない」と孤独に陥りやすい男性の傾向がみられた。当日事例を紹介し分析を行う。
  • 鈴木 有紀恵, 長津 美代子
    セッションID: 3A-10
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    <目的>後期高齢者の増加とともに要介護者も増えることが予測される。要介護者のQOLを維持しながら、介護者が高齢者ケアを個人の生活に肯定的に位置づけていくためには、介護を負担感といった否定的側面のみではなく、肯定的な側面からも捉えていく必要がある。大学生は介護に関わった経験のない者が多いが、高齢者ケアを肯定的に評価することができれば、介護をただ苦痛なものとして避けるよりも、介護を必要としている高齢者に積極的に関わっていくことが出来る。こうした問題意識から、本研究では、高齢者ケアの意味づけ尺度を作成し、大学生が高齢者ケアをどのように捉えているかを明らかにする。また、意味づけに影響する要因についても明らかにする。 <方法>2008年10月~11月に大学生600人を対象にアンケート調査を行った。有効回収数466票。有効回収率77.7%。男性42.9%、女性57.1%。学年は1年310.5%、2年27.0%、3年21.5%、4年以上19.1%。年齢は最低18歳、最高29歳、平均20.2歳。 <結果>(1)事例研究や先行研究から高齢者ケアの意味づけ尺度34項目を作成し、探索的因子分析を行い、さらに2項目を除く32項目で因子分析を行った結果、「否定感情(15項目)」「自己成長(12項目)」「家族凝集(5項目)」の3因子を抽出した。 (2)男女で有意差が確認されたのは「自己成長」で、女性の方が高齢者ケアを自己成長の契機と捉える傾向が強い。 (3)男性では、介護等体験の履修が高齢者ケアを自己成長の契機と捉えることに影響している。女性では、親が自分の親を第三者の援助を得て介護を行った経験を有する場合に、高齢者ケアを自己成長と捉えることに影響をしている。
  • 鈴木 敏子
    セッションID: 3A-11
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    目的 2006年12月に教育基本法が改正され、さらには07年6月に学校教育法が改正された。学校教育法では、第21条義務教育の「教育の目標」の家庭科に対応する四号には「家族・家庭の役割」が新たに挿入された。その下で2008年には中教審の答申があり、学習指導要領が改訂された。こうして家庭科では、「社会の変化に対応」して「家族と家庭に関する教育」が重視されることになった。では、小学校教諭の免許状を取得しようとしている学生たちはどのような家族観をもって子どもたちに臨もうとしているであろうか。学生の家族観の特徴を明らかにし、「家族」について学習する課題を探ることを目的とする。
    方法 小学校教諭一種免許状取得が必修である横浜国立大学教育人間科学部学校教育課程の1年生を対象として、家族観を浮かび上がらせる記述をさせた。08年度後期開講の小学校教科専門「家庭科概説」の受講者で、11月18日の授業の出席者117人のうち、1年生のみ109人(男子42人、女子67人)の記述を分析する。まず4人の人物が描かれている一つの絵を提示し、一目見たときに浮かんだことを一言で表現する。次にそう思った理由を記入する。その絵は「家族」という表現が多かったことから、さらにその「家族」の紹介文を記述する。
    結果 4人の人物の絵は、ほとんどの者が「家族」をあげており、その多くは、「仲が良い」「明るい」「幸せそう」などの形容詞をつけている。家族の紹介では、男性は夫=父でサラリーマン、女性は妻=母で専業主婦あるいはパート、男の子は野球かサッカーをやっているその夫妻の元気な息子、女の子はおとなしい娘、4人は同姓、等といった、画一的な家族イメージ、ジェンダー観で描かれ、家族は「多様化」していると言うにもかかわらず、それは実感として捉えられていないことが明らかになった。   
  • ガンガ 伸子
    セッションID: 3B-1
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    [目的] 2008年は、原油の高騰やバイオ燃料転用による穀物価格の上昇などにより、食料品の値上げが相次いだ。食料全体の消費者物価指数は、前年比2.6%上昇し、とりわけ穀類(前年比6.4%)の上昇が著しかった。本研究の目的は、2008年における食料品価格の高騰が、最低限、健康的な食生活を維持するために必要な栄養摂取にかける費用にどのように影響を及ぼしたかを推計することである。食事摂取基準を満たすことを制約条件とした場合の費用を、四半期ごとに線形計画法(linear programming)を用いて算出し、食料品価格高騰が家計の及ぼした影響について検討した。
    [方法] 食事摂取基準を満たし、また特定の栄養成分については過剰摂取にならないように15の制約条件を設定し、その場合の最小費用を、以下に示すような線形計画法により算出した。
    目的関数  Min Z=cx
       cは各食品の平均価格、xは1人1日当たり消費量
    制約条件 Ax<=>b
       Aは各食品の栄養成分含量、bは栄養所要量
    非負条件 x>=0
     分析に用いた資料は、厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2005年版)」「五訂日本食品標準成分表」と総務省統計局『家計調査年報』である。
    [結果] 第1四半期から第2四半期、さらに第3四半期と、栄養摂取にかける最小費用は上昇傾向を示し、家計の栄養摂取にかける費用負担が増えたことを示した。
  • 大町 一磨, ガンガ 伸子
    セッションID: 3B-2
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    【目的】 現在,わが国はフードシステムの発展により,豊かで便利な食生活を享受できるようになった一方で,朝食を摂らない若者や個食の増加など食習慣の乱れや,栄養バランスの偏り,生活習慣病の増加,食料の海外依存,食べ残しの増加など様々な問題が生じている。本研究の目的は,とりわけ食生活における問題の指摘が多い若者の食習慣および食料消費パターンの特徴を明らかにし,今後の食育の方向性を検討する上での基礎資料とすることである。
    【方法】 1)食習慣については,朝食の欠食率に関するコーホート分析を行い,ダミー変数を用いて,時代効果,年齢効果,世代効果に分離した。2)食料消費パターンについては,2005年の年齢階級別・性別の食料摂取量からクラスター分析を行った。分析に用いた資料は,厚生労働省「国民健康・栄養調査(国民健康調査)」(1975-2005)である。
    【結果】 コーホート分析から,時代効果は2005年が欠食率を引き上げる効果を強く示した。年齢効果は20代と30代の若者が高く,世代効果は若い世代での効果が高かった。また,男女の違いも顕著に示され,男性の方が欠食率を非常に高める効果を示した。クラスター分析から,女性の食料消費パターンは20代30代において非常に類似していたが,男性は30代と40代が近いパターンを示した。10代後半の食料消費パターンは他の世代とは大きく異なり,また男女の違いも大きいことが示された。
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