【緒言】ペアレントトレーニング(PT)は,神経発達症(NDDs)児をもつ親の養育スキルの向上を目的とした介入方法として国内外で研究が重ねられ,その有効性が示されている.しかし,それらは親の長期的な子育て期において持続的な効果といえるのか,そもそもPTの効果を維持している親の状態像はいかなるものかに関して言及している研究は少ない.本研究では,PT終了後1年以上経過している母親にインタビューを行い,その効果を長期的に維持している親の状態を明らかにし,その状態に至るために必要な親支援について検討した.
【方法】PT終了後1年以上経過しているNDDs児の母親17名を対象に,半構造化個別インタビューを実施した.インタビューガイドは,PT参加後の母親の変化が子どもや家族及び社会との関係性にどのような影響を与えたかという観点から作成した.データは逐語録に書き起こし,修正版グラウンデッドセオリーアプローチを用いて分析した.
【結果】本研究では,分析焦点者「PT終了後1年以上経過しているNDDs児の母親」,分析テーマ「PTに参加をきっかけに母親が自己受容に至るプロセス」とし,分析を行った.その結果,概念36,サブカテゴリ11,カテゴリ4を生成された.母親はPT参加をきっかけに子育ての不安を開示できる他者と出会い,子育ての孤独感から解放された.母親はPTを通して内省的セルフコントロールを獲得し,PT終了後も内省的セルフコントロールを用いて子育ての葛藤を乗り越えていた.そのような経験を重ねることで,わが子の全人的承認が可能となり,自己受容に至ることが示唆された.
【結論】PTの長期的な効果を維持している母親は,自己受容に至ることで安定した子育てを行っている状態であることが推察された.母親がこのような状態を維持するために,支援者は「自己開示」「子どもへの洞察」「自己内省」の3つのスキルの習得を,PTプログラムを進めるなかで促す必要がある.
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