人間・環境学会誌
Online ISSN : 2432-0366
Print ISSN : 1341-500X
23 巻, 1 号
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目次
原著論文
  • 李 晋琦, 横山 ゆりか
    2020 年 23 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2020/11/25
    公開日: 2024/02/22
    ジャーナル 認証あり

    路地や里弄それぞれの既往研究は数多くあるが,両者を比較対象として捉え,国際的な視点から研究した例は少ない.また,生まれ育つ環境や文化が異なる人々の路地及び里弄に対する印象評価の研究は,管見にして未だに見たことがない.そこで,本論では(日本東京の)路地と(中国揚子江南部の)里弄を研究対象として取り上げ,日本人と中国人向けのアンケート調査を通じて,路地と里弄の識別及び印象の類似性について論じる.研究手段としては,写真を用い,写真ごとの質問項目における7段階の評価により,1)路地と里弄の識別(日本/中国らしさ・路地/里弄らしさ),2)印象評価(懐かしさ・雰囲気の良さ),3)利用価値の評価(残したいか)を分析し,①日本と中国の人々は自国/他国の路地/里弄の街路空間を明確に判別できる,②日本人からみた路地と中国人からみた里弄の言葉に共通性があり,街路空間の景観の特徴に類似性がある,③日中の路地/里弄には共通する懐かしさがあり,国籍を問わず,人がその懐かしさを感じられる,④懐かしさや雰囲気に良い印象を持てる街路空間を保全したい傾向が見られる,以上4点の検証を試みた.分析の結果,日本人または中国人は日本の路地/中国の里弄を識別できたうえ,その識別に類似性が認められた.印象評価において,懐かしさについて両国に差が見られた一方で,雰囲気の良さと残したい希望の評価において両国ともに強い正の相関が認められた.日中ともに現在,路地/里弄が失われつつあるなか,人々の認識を確かめることで,路地/里弄空間の保全や発展の一助となれば幸いである.

短報論文
  • 金 徳祐, 横山 ゆりか
    2020 年 23 巻 1 号 p. 11-15
    発行日: 2020/11/25
    公開日: 2024/02/22
    ジャーナル 認証あり

    美術館疲れを回復する方法としてベンチに座ることがある。しかし、実際にベンチで精神的疲労が回復されるかについては依然として明確ではない。注意回復理論によると、意図的注意から他の対象へ自動的に注意を移すことによって、精神的疲労が回復されるとしている。すなわち、座る場所での行動が意図的注意を伴わないものであるかどうかによって、精神的疲労の回復可能性を類推することができる。また、その行動の割合が座る場所の周辺環境によって異なった場合、回復可能性を向上させるための知見が得られる。従って、美術館Aの8か所のベンチで一人で座った117名の行動を観察し、その行動を、「携帯の操作」や「キョロキョロする」などの意図的行動と、「ボーっとする」などの自動的行動に分類し、自動的行動の割合を求めた。さらに、ベンチの周辺環境を、ⅰ.廊下に面しているベンチ、ⅱ.展示室の中央にあるベンチ、ⅲ.窓に面して自然が見えるベンチと分類し、自動的行動の割合を集計した。その結果、自動的行動の割合の平均は27%で、ベンチの周辺環境によって異なった(ⅰ.廊下:34.6%、ⅱ.展示:25.6%、ⅲ.窓:17.6%)(ⅰ-iii:p**<0.017)。以上より、自然は、自動的注意の対象として機能し、精神的疲労の回復可能性が高いことが示唆された。また、ベンチから見える作品は、必ずしも集中して見る対象ではなく、自動的注意の対象として機能し得ることが示唆された。

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