沖縄県多良間島には,古くから親族・非親族のかかわりなく,年上の子どもが年下の子どもの守役を担当する“守姉(もりあね)”と呼ばれる風習がある。この風習はここ数十年のあいだに著しく衰退したが,いまもなお異年齢の子どもからなる仲間集団が広くみられる。本研究では,多良間島の集落で子どもを自然観察して記録し,年齢群の異なる者どうしの仲間集団がどの程度みられるか,どのような特徴があるかを検討した。観察期間は,2014年6月から2015年11月にかけてで,3回の滞在中に8セッションの観察を行った。8セッション中,観察された子どもの人数が少なかった1セッションを除く7セッション(観察時間:413分)について分析を行った。観察された57集団について分析を行った結果,集落の中央エリア(小学校,幼稚園,グラウンド,図書館などがあるところ)では,6人以上の比較的大きな集団,それも男女を含む異年齢の集団が多く観察され,3,4歳から小学校高学年までを含む大きい集団も存在した。いっぽう,家や団地の前・道端では,少人数からなる同性・同学年の仲間集団が相対的に多く,集落内の場所により仲間集団の構成メンバーが異なることがわかった。交通量が少ないこと,子どもたちが集結して遊べる場所が限られていること,年上の子どもが年下の子どもの世話や遊び相手をすることを当然視する考え方などがこうした仲間関係の形成に寄与していると考えられた。
抄録全体を表示