人間・環境学会誌
Online ISSN : 2432-0366
Print ISSN : 1341-500X
24 巻, 2 号
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目次
表紙
裏表紙
原著論文
  • 小島 康生, 根ヶ山 光一
    2022 年 24 巻 2 号 p. 1-8
    発行日: 2022/03/30
    公開日: 2024/02/22
    ジャーナル 認証あり

    沖縄県多良間島には,古くから親族・非親族のかかわりなく,年上の子どもが年下の子どもの守役を担当する“守姉(もりあね)”と呼ばれる風習がある。この風習はここ数十年のあいだに著しく衰退したが,いまもなお異年齢の子どもからなる仲間集団が広くみられる。本研究では,多良間島の集落で子どもを自然観察して記録し,年齢群の異なる者どうしの仲間集団がどの程度みられるか,どのような特徴があるかを検討した。観察期間は,2014年6月から2015年11月にかけてで,3回の滞在中に8セッションの観察を行った。8セッション中,観察された子どもの人数が少なかった1セッションを除く7セッション(観察時間:413分)について分析を行った。観察された57集団について分析を行った結果,集落の中央エリア(小学校,幼稚園,グラウンド,図書館などがあるところ)では,6人以上の比較的大きな集団,それも男女を含む異年齢の集団が多く観察され,3,4歳から小学校高学年までを含む大きい集団も存在した。いっぽう,家や団地の前・道端では,少人数からなる同性・同学年の仲間集団が相対的に多く,集落内の場所により仲間集団の構成メンバーが異なることがわかった。交通量が少ないこと,子どもたちが集結して遊べる場所が限られていること,年上の子どもが年下の子どもの世話や遊び相手をすることを当然視する考え方などがこうした仲間関係の形成に寄与していると考えられた。

  • ヴィルタマウォン ピチャウット, 南 博文
    2022 年 24 巻 2 号 p. 9-18
    発行日: 2022/03/30
    公開日: 2024/02/22
    ジャーナル 認証あり

    タイにおいて屋台は,首都の都市的生活の一部となっており,公的空間の占有は合法的ではないにも関わらず,その存在は市民からはごくノーマルな状況として受容されている。本研究の対象となるノンタブリー埠頭地区は,バンコク市の境界に位置する交通の要衝地点(ハブ)であり,本市の拡大に伴い屋台業者の進出が見られた場所である。コロナ禍による都市封鎖期間中に,公共での人の集まりの閉鎖や制限を与えるガイドラインは,路上の屋台業者に直接の影響を及ぼした。本研究は,上記地区内の立地特性の異なる3つのエリアにおいて,2020年の都市封鎖期間中の2回の調査期間(5月から6月,及び8月から9月)で屋台業者及び利用者の行動と意識の変容を現地観察と質問紙調査法によって調査した。結果からは,1)購買行動のパタンには大きな変化は見られない,2)都市アクターの減少により屋台業者への経済的ダメージがあった,3)業種や地区の特性によって屋台の開業形態に弁別的な差異がある,4)異なる年齢層間において屋台での購買行動と公的な問題に関する態度との関係に統計的に有意な差がある,ことが明らかになった。これらの知見は,これまで不明確であった要因と隠れた相互関係を示すものであり,将来の都市開発の視点にどう寄与するかが議論された。

短報論文
  • 原田 雅之, 柳瀬 亮太, 小浜 朋子
    2022 年 24 巻 2 号 p. 19-23
    発行日: 2022/03/30
    公開日: 2024/02/22
    ジャーナル 認証あり

    本研究では,若年者を対象とした実験室実験の結果から,公共空間を移動する際の手がかりとなる表示物の,「見落とし」に影響する環境要因の解明を目的とする。遮光空間にディスプレイを設置し,公共空間の静止画像を提示して探索実験と印象評価実験を行った。その結果から,「見落とし」に影響する要因として主に次の3つが示唆された。1)標的の配置条件や大きさが「見落とし」に総じて影響し、その中でも「非常口」は,色と図柄の連想度による影響を受ける。2)天井面の輝度軽減は天井付近の小さい標的,垂直面の輝度軽減は小型で低輝度の標的,表示数削減は文字や数字を主体として複数の情報を含む標的に対して,それぞれ「見落とし」の可能性を減少させる。3)垂直面の輝度軽減は空間の「明るさ感」「雑然さ」を抑制し,「広がり感」を向上させる。表示数削減は空間の「雑然さ」を抑制し,「広がり感」を向上させ,総じて好意的な印象を強め,主体の心理的負担軽減を促す。

  • 小嶋 理江, 稲上 誠, 青木 宏文
    2022 年 24 巻 2 号 p. 24-28
    発行日: 2022/03/30
    公開日: 2024/02/22
    ジャーナル 認証あり

    昨今,高齢ドライバによる交通事故が世間の注目を浴び,免許返納が促進されている。その一方で運転をやめることによる生き甲斐の減少や要介護リスクの増加などの問題も指摘されている。高齢者のモビリティを支えるため,有効な運転補助手段や環境整備など運転支援に対する知見を得ることが急務である。国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の研究成果展開事業「センター・オブ・イノベーション(COI)プログラム」によって蓄積されたデータのうち,本報告では,高齢ドライバが運転したくないと感じる走行環境の質問項目に着目した。24種類の走行環境に対する「見かける程度」と「運転したくない程度」の評価を用いて,潜在ランク理論による分析を行った結果,回答者(55歳~87歳)を5群に分類した。高齢者群の走行環境に対する評価の仕方の差異が見られ,走行環境に対する認識が高齢者群によって異なる様相が明らかとなった。

第123回研究会報告
編集後記
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