ペストロジー学会誌
Online ISSN : 2432-1532
Print ISSN : 0916-7382
11 巻, 1 号
選択された号の論文の22件中1~22を表示しています
総説
  • 須藤 千春
    原稿種別: 本文
    1996 年11 巻1 号 p. 1-8
    発行日: 1996/10/31
    公開日: 2019/07/11
    ジャーナル フリー
    室内塵生態系は利用し得る資源(食物,水など)が少なく,比較的安定しているので,室内塵固有種であるコナ,ヤケなどの発育は緩慢で,寿命が長く,少数の卵を散発的に産卵し,増殖速度が遅いという特徴をもつと考えられた.またコナとヤケの生態学的特徴にはかなりの相違がみられ,両種は住み分けていると考えられた.すなわちコナは環境要因の悪化などにより耐乾性の長期発育休止若虫が出現し,湿度要求性も低いので乾燥した環境で優占しており,ヤケは湿度要求性が高く,長期発育休止若虫の出現が一般的でないので,比較的湿潤な環境で優占していると推察された.コナ,ヤケの季節消長,家屋構造による生息状況の相異もこのような両種の生態学的特徴,相異に基因すると考えられた.
原著
  • 橋本 知幸
    原稿種別: 本文
    1996 年11 巻1 号 p. 9-13
    発行日: 1996/10/31
    公開日: 2019/07/11
    ジャーナル フリー

    食品混入異物や衛生害虫として問題になるノミバエの一種,クサビノミバエ Megaselia scalaris の幼虫および成虫の殺虫剤に対する感受性を調査した.

    幼虫の感受性は培地混入法による羽化阻害率から検討し,IGR剤,有機燐剤,カーバメート剤およびピレスロイド剤を含む9つの薬剤に対して,きわめて低い感受性であることが判明した.この結果から,本種の幼虫がもともと薬剤耐性である可能性が示唆された.

    また,成虫の殺虫剤感受性は薬剤残渣面 (250mg (AI.) /m2) に対する継続接触法により検討した.その結果,供試した7薬剤の速効性は,chlorpyrifos-methyl> dichlorvos > permethrin > diaiznon > dl, d-T80-allethrin > prothiofos > propoxurの順であった.

    今回の成績が本種の普遍的な感受性であるとすれば,化学的対策を施す場合,幼虫駆除よりも成虫駆除に重点を置くべきであると考える.

  • 高橋 健一, 伊東 拓也
    原稿種別: 本文
    1996 年11 巻1 号 p. 14-17
    発行日: 1996/10/31
    公開日: 2019/07/11
    ジャーナル フリー
    長期間にわたり皮膚炎の発生に悩まされていた住宅で室内塵を調査したところ,床表面や寝具類から合計43個体のネコツメダニが分離された.また,ネコの飼育用敷物からも57個体のネコツメダニが検出された.そこで,獣医師がこの住宅で飼育されていたネコとイヌの殺ダニ処理を行ったところ,皮疹の発生は収まり,被害が解消した.
  • 平尾 素一
    原稿種別: 本文
    1996 年11 巻1 号 p. 18-23
    発行日: 1996/10/31
    公開日: 2019/07/11
    ジャーナル フリー
    一般住宅におけるノシメマダラメイガの汚染実態を調べるため,全国28都市,120戸の住宅で,フェロモントラップを使い調査を行った.室内の89.2%,屋外の94.2%の住宅で捕獲があった.家庭内で保管中の加工食品も加害される可能性の高いことが示された.屋外では5月初旬から10月中~下旬まで捕獲されたが,外周から飛来侵入する可能性のあることも示唆された.
  • 平尾 素一, 羽原 政明, 桜井 仁
    原稿種別: 本文
    1996 年11 巻1 号 p. 24-28
    発行日: 1996/10/31
    公開日: 2019/07/11
    ジャーナル フリー

    各種食品害虫が発生していることを確認した三工場で,計157枚の粘着シートトラップ,21本のリボントラップ,12台のライトトラップ,フェロモントラップ(マダラメイガ亜科用47枚,タバコシバンムシ用43枚)を使用し,7日間捕獲を行い各トラップの食品害虫捕獲特性を比較した.生息食品害虫種を確認するため計123ヶ所よりダストサンプリングし,7科20種を検出した.

    粘着トラップは各種の食品害虫を巾広く,少量ずつ捕獲し,リボントラップは飛翔性の食品害虫,ライトトラップは走光性食品害虫をよく捕獲した.マダラメイガ亜科用,タバコシバンムシ用のフェロモントラップはそれぞれ対象とする種を効率よく捕獲した.特にフェロモントラップはダストサンプリングで発見できない場合でも,多数の成虫を捕獲し,発生調査には秀れたトラップであることが判明した.

  • 辻 英明
    原稿種別: 本文
    1996 年11 巻1 号 p. 29-35
    発行日: 1996/10/31
    公開日: 2019/07/11
    ジャーナル フリー
    ノシメマダラメイガ老熟幼虫の歩行時間とその後の経過,歩行と隙間への侵入との関係,歩行速度,静止または蛹化位置などを実験的に検討した.老熟幼虫は負の走光性を示し,紙面に比べてポリエチレンフィルム上では歩行速度が低下した.休眠幼虫は25〜26℃で24〜36時間以上歩行でき,19〜20℃での歩行速度から,最初の24時間で白紙上221m以上,ポリエチレンフィルム上で101m以上の歩行能力が推定された.非休眠老熟幼虫も同様の傾向がみられ,27℃の歩行速度から,最初の12時間で白紙上171m以上,ポリエチレンフィルム上で79m以上の推定値が得られた.いずれの老熟幼虫もダンボール片のような適当な隙間がみつかれば潜入し,歩行を中止した.休眠幼虫の場合,夜半まで照明のある条件下で潜伏場所がないと早期に蛹化し,反対に暗黒下や潜伏条件下では休眠が保たれた.どちらの老熟幼虫も上方に移動して静止あるいは蛹化する傾向があったが,上方の蓋が透明の場合は下方に移動して静止(まゆを作り)あるいは蛹化した.凹みや隅を選んで静止・蛹化する傾向も明らかであった.
短報
  • 柴田 光信, 杉浦 正昭, 池田 和幸
    原稿種別: 本文
    1996 年11 巻1 号 p. 36-39
    発行日: 1996/10/31
    公開日: 2019/07/11
    ジャーナル フリー

    各種の金属酸化物の屋内塵性ダニ類に対する効果を調査し,無機物でのダニ駆除の可能性を検討した.その結果,速効的な致死効果は認められなかったが,特に酸化亜鉛で強い増殖抑制効果が認められた.そこで,各種準実地試験を行ったところ,特にカーペットのヒョウヒダニに対して,常識的な薬量で増殖抑制効果が認められ,実地での効果も期待できると予測された.

    酸化亜鉛は化学的に安定であり,長期にわたっての屋内塵性ダニ類の防除が可能ではないかと推察できる.

  • 曽根 麻紀子, 小長谷 貴昭, 高橋 朋也, 辻 英明
    原稿種別: 本文
    1996 年11 巻1 号 p. 40-43
    発行日: 1996/10/31
    公開日: 2019/07/11
    ジャーナル フリー
    コクヌストモドキ成虫が餌と餌以外の場所でどう分布するかを,床にガーゼまたはボール紙を敷いた飼育容器内で調べた.供試虫のほとんどは,餌容器の外側が滑りやすいとその垂直面を登ることができなかったが,餌容器の外側に紙を巻くと,すぐによじ登り餌容器内へ侵入した.すなわち,空腹であっても,ただちに飛翔して餌に入るわけではなかった.摂食した後は餌容器の外へ出て,狭い場所へ潜伏する傾向がみられた.特にガーゼと飼育容器との間で集団になる様子がうかがえた.コクヌストモドキ成虫は,歩行により餌に入り,摂食時や産卵時以外は粉末性食物の外のシェルターを好む傾向があるものと言えよう.
  • 高橋 朋也, 渡辺 信子, 曽根 麻紀子, 辻 英明
    原稿種別: 本文
    1996 年11 巻1 号 p. 44-46
    発行日: 1996/10/31
    公開日: 2019/07/11
    ジャーナル フリー
  • 渡辺 護, 小菅 喜昭, 宮地 宏幸
    原稿種別: 本文
    1996 年11 巻1 号 p. 47-53
    発行日: 1996/10/31
    公開日: 2019/07/11
    ジャーナル フリー

    前報に引き続き,富山県婦負郡婦中町の印刷工場で,飛翔性昆虫の侵入阻止の試みとして,1994年9月にフェノトリン 1%含有炭酸ガス製剤の噴霧装置を設置し,毎日朝夕7時に自動的に噴霧させ,工場に侵入する飛翔性昆虫の侵入阻止の実地試験を行った.

    その結果,設置前後の侵入数の比較などから,侵入阻止を図れたとする成績が得られた.すなわち,①工場内部に設置したライトトラップの捕集数が,噴霧装置設置後は比較的低い状態に維持されている.②自動噴霧室隣室の粘着式ライトトラップの捕集数が1/10に減少した.

    また,黒色ユスリカ(エリユスリカ亜科のOrthocladius glabripennis, O. frigidus. O. makabensisやヤマユスリカ亜科のタカダユキユスリカSyndiamesa takatensis)の工場などへの飛来静止の日変化を観察した結果,日中飛来性であることが確認された.このことから,朝タ7時の自動噴霧を12時にも行う1日3回噴霧が望ましいと思われた.

  • 奥田 寿男, 新庄 五朗
    原稿種別: 本文
    1996 年11 巻1 号 p. 54-58
    発行日: 1996/10/31
    公開日: 2019/07/11
    ジャーナル フリー

    フェニトロチオンMCを主成分としたK5―123製剤のゴキブリに対する基礎効力試験および準実地試験を行った.また,排泄物ならびに死亡個体を介した同製剤の伝播効果についても室内試験で観察した.

    K5―123製剤は基礎効力試験において,既上市ベイト剤に比べ明らかに優れた効果を示し,準実地試験においても誘引性が高く評価され,ゴキブリ用製剤として実用化が期待された.また,室内試験において伝播効果の評価を試みたところ,既上市品に比べ顕著なその効果が認められた.

  • 新庄 五朗, 奥田 寿男, 黒田 圭介
    原稿種別: 本文
    1996 年11 巻1 号 p. 59-62
    発行日: 1996/10/31
    公開日: 2019/07/11
    ジャーナル フリー

    フェニトロチオンMCを有効成分として利用した新ベイト剤である,K5―123のゴキブリ防除試験を大阪府下の飲食店(ゴキブリ指数 36.8)で行ったところ,

    ①単独使用(5g/m2)において顕著な防除効果を発輝し,その効果は約2ヵ月間続いた。

    ②フェニトロチオン MC剤との併用において,さらに防除効果は上がり,ゴキブリ棲息密度指数として0.15以下が6ヵ月間以上にわたって継続した.これらの成果を通じて,ベイト剤はゴキブリ防除剤として有用な剤であることを確認する一方,単独使用でのゴキブリ防除の限界が示唆され,ゴキブリ防除のIPMにおいては他剤(残留塗布剤)との併用が好ましいことが分かった.

事例報告
feedback
Top