脊髄硬膜外血腫は圧迫部位の後根が圧迫されて神経痛様の疼痛が生じ,ついで脊髄自体の症状として対麻痺または四肢麻痺が出現すると言われており,現在までに若年者の報告は少ない.本症例は,特発性胸髄硬膜外血腫により術後両下肢に対麻痺と脊髄性運動失調を呈し,走行可能となった20 歳男性の症例である.深部感覚が重度鈍麻していたことから,視覚・聴覚・体性感覚によるフィードバックを考慮し,ステップ練習,走行練習を反復して行った.結果,本症例は術後4 ヶ月後に走行のリズムを全身で再学習でき,走行時に足がもつれなくなった.そこで,理学療法の経過と介入方法を報告する.
座位にて著明なSpO2 の低下が確認された間質性肺炎の症例を経験した.この要因として換気血流比不均等によるSpO2 の低下と長期臥床による廃用を呈していたと考え,姿勢を配慮し座位や立位ではなく背臥位中心に運動療法を施行した.その結果SpO2 の著明な低下を惹起することなく筋持久力の向上が図れ,座位獲得や介助量軽減し自宅退院に至った.
仙骨神経孔を含む不安定型骨盤骨折に対し,保存的に加療し良好な結果を得た1 例を経験したので報告する.本症例は,入院時,体動時の神経根刺激症状があり,仰臥位から動けない疼痛がある不安定型の骨盤輪骨折であった.受傷後4 週のベッド上安静により下肢への電撃痛および体動時の疼痛は軽減し,骨折側の下肢は7 週目に荷重開始し,8 週目に全荷重を行った.その結果,10週目にT-cane 歩行で自宅退院した.一般に骨盤骨折の骨癒合評価は画像では早期の段階では難しいが,本症例においてはFIM および患者の症状から判断した適切なリハビリの遂行および荷重時期判断により,合併症と骨転位なく自宅退院が可能となった.
栃木県理学療法士会社会局メディカルサポート部は設立からの期間が短い組織であり,公益事業の一部を担う,学術研究の推進,自己研鑽の3 つを掲げ活動を行っている.当部は,公益事業を担う事業として栃木県高校野球連盟主催試合サポート,栃木県サッカー協会トレセン活動サポート,大田原マラソン大会サポートと会員の自己研鑽のためのワークショップ事業(研修会)を行っている.活動環境の特殊性からサポート活動に関わる人材が不足気味である.そのため研修会と活動時のフォローの充実を行う.また,部として県民対象のセミナー開催も検討している.