新文明への入口として、諸危惧や危機が生活経済環境を囲繞している。「生(ライフ)」「活(経営)」を足場とする、根源的人間性や生命認識等をコアとする、根基的経営からの学際的生活経済再構築が問われている。中でも非貨幣経済領域の明示的展開は意義深い。加えてその貨幣経済との明確な接合理論が待望されている。本論では、非貨幣経済経営(ライフ経営)とそれを覆う3貨幣経済(家計/コミュニティ・片側経済・倫理的市場)領域の総合図を提起した。その4領域が格子状に縦断する層には、ライフシステムの5サブシステム(その機能装置)と対応する5(公共も含む)経済分野を配置した。下層からヒト-自然(自然論理⇔エコ産業),-モノ(勿体論理⇔製造流通),-ヒト(対人論理⇔サービス)、-コト(公民論理⇔公共関連)、-ココロ(人間復興⇔情報・知財)とし、各層内で非貨幣論理と3貨幣経済を対置させた。
総じてはヘーゼル・へダーソンの生命系経済の横展開の変形に、同氏の倫理的市場・片側市場論を加えた論と捉えられるかも知れない。しかしこの5層展開により、非家計経済側からの輪切りが始動する。また非貨幣経済内外優境学的調整・経営原理が、QO‘L’向上スパイラルを、家庭・コミュニティから他地域・社会・国・全球に及ぼすことにも繋がる。SDGsはその例示である。弱者・不公正・不平等・環境に対する倫理的市場対応の他、各層のハザード例を明記し、かつ公共(及びその補完)機能を第4層に設定することで、4領域横断+層間相互作用での政治経済的調整機能(典型的にはCOVID-19や金融資本主義的な過度な自由主義や地球環境に関わる予定不調和への対応)も期待される。
市場経済論理のみならず、地球市民論理、自然環境論理、内なる自然や人間性論理が、各分野・各領域・全体に貫通するライフ経済文明への理念整理でもある。性善説に立つ倫理的行動を、社会経済・公共システムが性悪説危機予防力としても守護力を発揮できるか否かも問われる。予定調和の歪みとしての自然環境危機、市場経済危機、生命科学・電子文明の危機や危惧に際し、ライフ経営ではいかにして総合力として有効に予防力・阻止力・論理力を行使できるかが問われる。生きた有機体であり、システムでもあるライフとその様態には、様々な相互作用や揺らぎがある。それらが、動態的でしなやかで持続可能な文明と、共鳴・共振・協調する確かな仕組みが構築されるとき、消費・労働・余暇等の様態選択肢も、自由でおおらかで、かつ安心して、豊かに広げていけることとなる。「生(3ライフ)」「活(4領域)」「経済(5分野)」の総合力は、主体力の再生・復活にも繋がる。
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