本稿では、金融広報中央委員会が2019年に実施した「金融リテラシー調査」を用いて、金融リテラシーが若年層のリスク性資産の購入と金融トラブル回避に与える影響を分析本稿では金融広報中央委員会の「金融リテラシー調査(2019年)」を用いて、若年層のリスク性資産の購入や金融トラブルの要因を、金融リテラシーを中心に分析した。分析にあたっては、具体的なリテラシーを特定するため、金融リテラシーを「効率的な資産運用に必要な知識や判断力」である資産運用リテラシーと、「日常生活における正しい消費行動に必要な知識や判断力」である消費生活リテラシー、分散投資・インフレーション・複利計算の問いで構成されるビッグスリーに分類した。分析の結果、資産運用リテラシーとビッグスリーがリスク性資産購入を促すことと、消費生活リテラシーが金融トラブルの回避に有効であることが明らかになった。しかし、資産運用リテラシーが少しある場合は、金融トラブルを経験する確率も高くなった。
金融リテラシー以外では、住宅ローンの保有がリスク性資産購入経験者である確率を高めた。住宅ローンは家計のリスク許容度を圧迫し、リスク性資産保有の制約になる可能性もあるものの、金融機関と接点を持つことがリスク性資産購入のきっかけにもなると示唆される。
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