生活経済学研究
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54 巻
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論文
  • 西垣 鳴人
    2021 年 54 巻 p. 1-14
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
    複数債務の一本化を目的とした借りまとめローンは、表向き債務負担軽減が目的とされるが、ハイリスクな借り手には高金利が適用されるなど隠れた過重債務の温床となる可能性が指摘される。本稿は、地域貢献や個人も含めたリレーションシップが期待される地域金融機関の5業態(地方銀行、第二地方銀行、信用金庫、信用組合、労働金庫)のデータを使用して、借りまとめローンの商品設定が果たして本来の目的に沿ってなされているか否かについて検証する。検証の結果、地銀と第二地銀については相対的な金利の高さに関わらず借りまとめローンの目的を無視した商品設定を示す明確な証拠は示されなかった。信用金庫は最高金利の平均は決して低くないが借手負担を軽減するような設定がみられた。労金は観測数の少なさに関わらず債務負担軽減を意識した設定をしてる明確なエビデンスが示された。一方、信組は標準偏差の大きいことが特徴だが、相対的な低金利にも関わらず借りまとめローン本来の目的に関する認識不足が疑われる検証結果となった。
  • 堀江 雅子, 大藪 千穂, 泉谷 徹
    2021 年 54 巻 p. 15-28
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本論文では金融経済教育に関する3時間について,授業前に実施した「金融に関するアンケート(「金融意識・行動」),「金融リテラシー」)」を実施し,生徒の「自由記述」の内容を「人間発達度」と「現実把握度」で分析した。また「金融意識・行動に関するアンケート」によって生徒を数量化Ⅲ類とクラスター分析を用いて金融意識・行動グループに分類し,グループ別に「人間発達度」,「現実把握度」を分析し,金融意識・行動と授業効果について明らかにした。このことから,生徒の「金融意識・行動」よりも,授業を継続的に積み重ねていくことの方が,生徒の人間発達や金融に対する現実把握に影響を与えることが明らかになった。
  • 前田 拓生, 阿部 嶺一, 保井 俊之
    2021 年 54 巻 p. 29-44
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、群馬県西毛地域の内、高崎市及び富岡市をコミュニティ経済と捉え、SDGsの「11住み続けるまち」として西毛地域が持続可能であり続け、当該コミュニティの価値や理念の実現に貢献できる地域通貨を如何に設計していくべきかについて考察を行った。その際、地域通貨が、コミュニティ経済の共創と活性化を進めるためには、栗田(2020)がいう互酬性をはかる必要があることから、PEACECOINを模した紙ベースの割引クーポン券を配布し、当該割引クーポン券を利用する人々の主観的ウェルビーイングを観測することにより、互酬性に関する検証を試みた。
  • 鄭 美沙
    2021 年 54 巻 p. 45-58
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では、金融広報中央委員会が2019年に実施した「金融リテラシー調査」を用いて、金融リテラシーが若年層のリスク性資産の購入と金融トラブル回避に与える影響を分析本稿では金融広報中央委員会の「金融リテラシー調査(2019年)」を用いて、若年層のリスク性資産の購入や金融トラブルの要因を、金融リテラシーを中心に分析した。分析にあたっては、具体的なリテラシーを特定するため、金融リテラシーを「効率的な資産運用に必要な知識や判断力」である資産運用リテラシーと、「日常生活における正しい消費行動に必要な知識や判断力」である消費生活リテラシー、分散投資・インフレーション・複利計算の問いで構成されるビッグスリーに分類した。分析の結果、資産運用リテラシーとビッグスリーがリスク性資産購入を促すことと、消費生活リテラシーが金融トラブルの回避に有効であることが明らかになった。しかし、資産運用リテラシーが少しある場合は、金融トラブルを経験する確率も高くなった。 金融リテラシー以外では、住宅ローンの保有がリスク性資産購入経験者である確率を高めた。住宅ローンは家計のリスク許容度を圧迫し、リスク性資産保有の制約になる可能性もあるものの、金融機関と接点を持つことがリスク性資産購入のきっかけにもなると示唆される。
  • 尾室 拓史
    2021 年 54 巻 p. 59-72
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
     店頭決済手段が多様化するとともに、生活者にとって店頭決済手段の選択は、家計管理や買い物に伴う時間の節約等の面で、日々の生活に大きく関わるものとなった。また、ここ数年でスマートフォン決済が大きな普及を見せ、一部の生活者にとって欠かせないものとなっている。このため、今後、生活者にとってよりよい決済手段やキャッシュレスに関する政策を検討するうえでは、生活者がスマートフォン決済に寄せている期待について把握することが重要である。以上を踏まえ本稿は、スーパー・コンビニの支払いにおけるキャッシュレス手段利用者を対象とし、スマートフォン決済利用者が決済手段に寄せている期待の特徴について、非スマートフォン決済利用者と比較しつつ検討を行った。男女別にプロビットモデルによる推計を行った結果、男女ともにポイント還元や容易さを重視する人がスマートフォン決済を利用していること、また、男性については、預金口座の残高管理を重視する人や新型コロナウイルス感染を懸念する人、周囲にあわせる人がスマートフォン決済を利用する傾向が見られた一方、女性について同様の傾向は見られないこと等が分かった。
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