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クエリ検索: "千葉県立保健医療大学"
939件中 1-20の結果を表示しています
  • 岡田 亜紀子, 東本 恭幸, 河野 公子, 海老原 泰代, 峰村 貴央, 細山田 康恵
    千葉県立保健医療大学
    紀要

    2021年 12 巻 1 号 1_69-1_75
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2023/03/31
    研究報告書・技術報告書 フリー

     本研究の目的は,

    千葉県立保健医療大学
    とUR都市機構との連携協定をもとに本学が実施した,地域在住高齢者対象の介護予防プログラム「ほい大健康プログラム」を軸とする「体験型学習プログラム」に参加した学生が得られる学修効果の評価をおこない,よりよいカリキュラム構築に寄与することである.

     無記名・自記式質問紙調査を用いて評価を実施したところ,プログラムへの自身の積極的な参加,対象者の特性理解,対象者に配慮した適切な対応方法の習得,対象者との積極的な交流,仲間と互いに配慮・協力し合う方法の習得に関する設問に,9割を超える学生が肯定的な回答をした.自由記載の設問では,学生は修得した専門知識を活用するだけでなく,プログラム全体の構成など,広い視野を持って気づきを得ていた.

     今後もプログラムには改善を要するものの,ほい大健康プログラムは学修効果の得られる体験型学習プログラムとして捉えることができた.

  • 細谷 紀子, 雨宮 有子, 杉本 健太郎, 佐藤 紀子
    千葉県立保健医療大学
    紀要

    2023年 14 巻 1 号 1_95
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/08/22
    研究報告書・技術報告書 フリー

    (緒言)

     筆者らは,新任期保健師自らが保健師活動の実践体験を意味づけ成長に変えられるリフレクション力を身に着けることが重要であることを見出し1),リフレクションに基づく個別支援能力向上プログラム(以下プログラム)を開発・実施してきた.プログラム終了時点において一定の効果を確認2)しているが,プログラム終了後のフォローアップ体制が未構築であり効果の継続は確認できていない.また,プリセプターの役割を担う時期に達しているプログラム参加者が新人保健師に対してリフレクションに基づく個別支援能力を育成することができれば,新人保健師とプリセプター保健師とがフィードバックし合うことにより双方にとって有効と考えた.そこで本研究は,新任期にプログラムに参加した保健師のリフレクションに基づく個別支援の現状を明らかにし,プリセプターとしての役割発揮を視野に入れたフォローアップに関するニーズを検討することを目的とした.

    (研究方法)

     2014年~2019年までに実施したプログラム参加者で全回出席した31人のうち,現在も自治体常勤保健師であり,研究協力に同意の得られた者を対象とした.データ収集は個別インタビューにより行い,リフレクティブな個別支援能力評価指標を用いて自己評価の理由やプログラム参加の影響を聴取した.「リフレクションに基づく個別支援の現状」と「プログラム参加による影響」を質的帰納的に分析し,「個別支援の現状」については,その性質から「できている」と「不十分」に分けて整理した.

    (結果)

     研究参加者は6名であり,所属は市町村2名,政令市3名,都道府県1名であった.保健師経験年数は3年1名,5年3名,6年と7年各1名であり,プログラム参加後の経過年数は,2年2名,3年1名,4年2名,6年1名であった.

     リフレクションに基づく個別支援の現状は,180コードから45サブカテゴリ,19カテゴリを生成した.【不安や困り感は日常的に職場で話すことができている】など「支援の中で生じる感情や考えの表出・客観視」,「必要な知識の補充」,「対象の捉え方や支援の方向性の再考」は研究参加者全員ができているという現状であった.「対象者の状況や支援に関する記述と説明」「支援の評価」はできている部分がありつつ,自分だけでは不十分といった現状があった.「自己の感情の影響や思い込みの認識」および「保健師としての信念や価値観の獲得」はできている人とそうではない人にわかれる現状があった.

     プログラムの影響は,59コードから14サブカテゴリ,7カテゴリを生成した.【思考や表現の整理の仕方】【自分の思いを躊躇せずに話すことの大事さ】【自己の考え方の広がり】などの影響が確認された.

    (考察)

     リフレクションスキルのうち「自己への気づき」はプログラム参加後2~6年経過した時点において定着が確認され,プログラム参加者は自分の考えや感情を表出する大事さを理解しているため,リフレクションに基づく個別支援能力を育成するプリセプターとしての役割発揮が期待できると示唆された.また,「描写」「評価」は上司や先輩保健師から日常業務において継続的にフォローアップを得ることが,「批判的吟味」はリフレクションにおける意味の説明や自分自身の価値観を客観視できる体験を含めたOff-JTによるフォローアップが必要と考えられた.

    (倫理規定)

     本研究は,

    千葉県立保健医療大学
    研究倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号2021-12).

    (利益相反)

     本研究における開示すべきCOI 関係にある企業等はない.

  • ―ニーズ調査と実施に向けた検討―
    細山田 康恵, 生魚 薫, 峰村 貴央, 岡田 亜紀子, 鈴木 亜夕帆, 海老原 泰代, 河野 公子, 金澤 匠, 荒井 裕介, 平岡 真実, 加瀬 政彦, 菊池 裕, 谷内 洋子, 井上 裕光
    千葉県立保健医療大学
    紀要

    2023年 14 巻 1 号 1_69-1_74
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/08/22
    研究報告書・技術報告書 フリー

    [ 目的] 卒業生がリカレント教育にどのようなことを望んでいるのかニーズを把握する.また,生活科学系の国公立大学の取組について調査する.得られたニーズを同窓会へ還元し,必要なリカレント教育ができるようにすることを目的とする.

    [研究方法]卒業生を対象に,WEBを用いた質問紙法でアンケート調査を行った.また,生活科学系の国公立大学におけるリカレント教育の実態をホームページで調べた.

    [ 結果および考察] アンケートの回収率は31% であった.リカレント教育に関心あるが66%おり,医療や食品分野について要望があった.リカレント教育を推進している10大学は,センター等の組織が整備されている.これにより,社会人の学びやリカレント教育をするシステム構築されていると考える.

    [結論] 学科で医療や食品分野の最新の情報を提供することで,管理栄養士としての知識及び技術の向上を図り,千葉県民の健康づくりに貢献でき ることが期待される.

  • 佐藤 紀子, 細山田 康恵, 今井 宏美, 大内 美穂子, 岡村 太郎, 麻賀 多美代
    千葉県立保健医療大学
    紀要

    2022年 13 巻 1 号 1_51-1_57
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/12/13
    研究報告書・技術報告書 フリー

     他県の看護医療系の単科公立大学が発揮している地域貢献機能と連携状況を調べてその特徴を見出し,本学の今後の地域貢献機能の発揮のあり方を考察する.
     看護医療系の単科公立大学20大学(本学を除く)を対象とし,公立大学協会が発行した地域貢献プログラム事例集の記載内容と各大学の公式HPから地域貢献に関連する連携状況等を抽出し,データ源とした.
     プログラム事例において,Assure機能はすべての大学で発揮されており,17大学はLink機能とともに発揮していた.双方の機能により,人々の健康やくらしの価値および知をつなぎ,持続可能な安心できる地域の構築に貢献できると考えた.また,Enhance機能とDevelop 機能が加わることで,地域に求められる人づくり・魅力的な地域づくりという視点から大学と地域が互いに活性化していくことができると考えられた.これらの機能を発揮するためには,多方面の分野が連携・協働する必要があり,大学はその核となることが求められる.

  • 西村 宣子, 富樫 恵美子
    千葉県立保健医療大学
    紀要

    2021年 12 巻 1 号 1_104
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2023/03/31
    研究報告書・技術報告書 フリー

    (緒言)

     超少子高齢化社会に突入し,国民の健康を守る担い手である医療・福祉分野は,深刻な人手不足を迎えている.日本看護協会では,定年退職後の看護師を「プラチナナース」と称し,看護師のセカンドキャリアとして働き続けることを推奨している.厚生労働省においても,人材確保対策として「看護師のセカンドキャリアにおける活躍を図るための職場環境整備」1)が施策されている.先行研究において,看護管理経験のある者にセカンドキャリア希望が多かった(石井ら,2018)と報告があるが,看護管理者がセカンドキャリアにおいてどのように仕事を継続するのかは明らかにされていない.看護師長のセカンドキャリアに関する意識を明らかにすることは,プラチナナース活用に貢献できるものと考え,A県内の一般病院に勤務する看護師長のセカンドキャリアに関する意識を明らかにすることを目的とした.

    (研究方法)

     A県内の一般病院209施設のうち協力の得られた67施設の40歳以上の看護師長440名に自記式質問紙調査を実施した.調査項目は,対象者の属性,勤務継続希望の有無,セカンドキャリアに対する意識(考えた時期・働く場所・希望の職位・雇用形態),活かせる看護管理能力,準備状況等である.分析方法は,質問紙調査の選択項目は,基本統計量を算出し,自由記述欄の「働き続けたい」理由についてはテキストマイニングで分析を行った.

    (結果)

    1.回収数:255名(回収率57.4%).

    2.対象者の属性:年齢40~44才31名(12%),45~69才69名(27%),50~54才71名(28%),55~50歳64名(25%),60~64名20名(8%).師長経験年数は,3年目以内54名(21%),3~5年未満46名(18%),5~7年42名(17%),7年目以上113名(44%).

    3.セカンドキャリアに対する意識:「働き続けたい」110名(43%),「考え中」102名(40%),「働きたくない」40名(16%)であった.働く場所の希望は,「現在の職場」が56名(21.9%),「老人介護保健施設」35名(13.7%),「診療所」30名(11.8%)であった.希望の職位は,「スタッフ」107名(42%),「考えていない」103名(41%),「管理職」34名(13%)であった.セカンドキャリアで活かせる看護管理能力は,「質管理能力」・「人材育成能力」・「危機管理能力」の回答で占めた.セカンドキャリアを「考え始めた時期」については,「無回答」48%,「準備していない」215名(84%)であった.

    4.「働き続けたい」理由のテキストマイニングによるワードの出現頻度では,「働く」・「仕事」・「経済的」が高かった.

    (考察)

     看護師長のセカンドキャリアに対する意識は,「スタッフ」として「働き続ける」ことを希望する人が多かった.また,働き続ける理由のテキストマイニングから「仕事」,「働く」のワードが多かったことから,看護管理者として培われた経験や能力を活かして働くことより,「看護専門職として仕事を継続する」ことに価値をおいていることが示唆された.セカンドキャリアにおいて「現在の職場」で「非正規雇用」として働く希望が多いことに対しては,職場に対する帰属意識と共に,老化を自覚し,体力や認知力の低下から,職場適応に対する不安,責任や時間の拘束による負担からの解放を望んでいることが推察された.また,調査対象者の4割が定年まで10年以上あり,「仕事を継続する」意識は高いが,現場の業務に追われ,セカンドキャリアについて考える時間や,セカンドキャリアに関する情報を得る機会が少ないことが推察でき,雇用者や職能団体などの積極的な情報発信が必要であることが示唆された.

    (倫理規定)

     本研究は,千葉県保健医療大学研究等倫理審査委員会の承認を得て実施した(2019-08).

    (利益相反)

     本研究における開示すべき利益相反はない.

  • ─ 千葉県における在宅看護に関わる団体の調査から ─
    成 玉恵
    千葉県立保健医療大学
    紀要

    2019年 10 巻 1 号 1_124
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2023/03/31
    研究報告書・技術報告書 フリー

    (緒言)

     千葉県は,高齢者人口の増加率が全国で2番目に高く急激な高齢化が課題となっている.しかし,県内の医療・介護施設数および訪問看護ステーション数は全国平均を下回り,在宅療養者への対応は深刻化している.これまで,在宅看護全体の供給量と種類の充実をはかることを狙いに,在宅看護に関するNPO団体を探索・調査してきた1).その結果,二次資料から8団体の存在が明らかになったが,これらの団体の実態把握には及ばず,在宅看護の提供や看護資源としての可能性については不明であった.以上から,本研究では千葉県内の在宅看護に関するNPO団体の活動内容を明らかにし,地域包括ケアシステム構築に向けた示唆を得ることを目的とする.

    (研究方法)

    研究参加者:先行研究1)で抽出された8つのNPO団体のうち,研究の同意を得た2団体の看護職2名.

    調査方法:半構成的面接調査を行った.

    調査内容:在宅看護活動の現状,活動人数や職種,看護活動の実施で得られる効果と看護活動の継続で社会に貢献したいこと等であった.

    分析方法:団体の活動を可視化するためロジックモデル2)を分析枠組みとした.面接内容は録音,逐語録にし,ロジックモデルの構成要素に関する記述を抽出,演繹的にモデル表を作成した.「アウトカム」に関する記述は帰納的に分類しカテゴリー化した.カテゴリーは意味内容を変えず「アウトカム」の定義に沿って表現した.「インパクト」は「アウトカム」を抽象化し概念的に表現した.

    (結果)

    研究参加者の属性:団体Aは看護師,年齢50歳代,女性,団体理事,訪問看護ステーション所長兼務であった.団体Bは保健師,年齢70歳代,女性,団体理事,多機能型事業所長兼務であった.

    所属団体の概要:A,B共に県内で在宅精神療養者を地域で支援するNPO法人であった.団体Aは職員数16名,年間収益は約8千万円,主な活動はACTプログラムによる精神科訪問看護,精神相談支援事業等であった.団体Bは職員数65名,年間収益は約1億7千万円,活動は多機能型事業(B型福祉事業,グループホーム,訪問看護等)であった.

    ロジックモデル表:「資源」は職員数,職種,活動予算,「活動」は事業,活動内容,「アウトプット」は,年間実績数をそれぞれ記載した.「アウトカム」は団体Aが【障害者が希望を持つ】【障害者が自分の病気に自分の意志で取り組む力をつける】等4つが抽出され,団体Bが【精神障害者が住み慣れた地域や家庭で安心して暮らせる】【精神障害者が自分らしく生きる】等3つが抽出された.「インパクト」は団体Aが【障害者が希望を持ってリカバリーのプロセスを歩む】【リカバリーの大切さを周囲に伝え実現する】等4つが抽出され,団体Bは【市民・専門家・当事者が共に活動して,障害者の自立した地域生活と社会参加を支援する】等2つが抽出された.

    (考察)

     ロジックモデルの作成により2団体の活動内容が明らかになった.特に「アウトカム」は活動の実践内容を概念化することで,在宅看護活動の成果が可視化でき,「インパクト」は2団体共通して,障害者の地域での自立や地域生活,社会参加というキーワードが見られ,地域に貢献していることが明らかになった.以上から,地域の在宅看護活動は地域包括ケアシステムの構築において,看護資源として重要な役割を担うことが示唆された.今回の調査から結果を一般化することは難しいが,今後は多様な看護活動を追いながら,活動内容の評価や構造化を行う予定である.なお本研究の一部は日本地域看護学会第21回学術集会で発表した.

    (倫理規定)

     本研究は,

    千葉県立保健医療大学
    研究等倫理委員会 の承認を得て実施した(承認番号2018-08).

  • 内海 恵美, 田口 智恵美, 浅井 美千代, 三枝 香代子, 大内 美穂子, 坂本 明子, 真田 知子
    千葉県立保健医療大学
    紀要

    2023年 14 巻 1 号 1_98
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/08/22
    研究報告書・技術報告書 フリー

    (緒言)

     本研究の目的は,COVID-19の感染拡大により,医療機関での臨床実習を中止せざるを得なかった本学卒業生を対象に,(1)新人看護師としてどのような困難を抱えているか,(2)学内代替実習(シミュレーション実習)として行われた総合実習が入職後の臨床の場でそのように活かされているか,の二つを調査し,臨床看護教育の内容や方法について検討する基礎資料とすることである.

    (研究方法)

     研究デザインはいずれもアンケートによる量的調査とインタビューによる質的調査である.

     調査(1)は現在病院に勤務する2020年度本学看護学科卒業生を,調査(2)は前述(1)のうち総合実習を成人看護学領域で選択履修した者を対象とした.いずれもMicrosoft teams「2020年度看護学科卒業生」チームにて研究の概要を説明後,依頼文書をメールで送付した.調査(1)では,新人看護職員研修ガイドラインで新人看護職者の到達目標として示された全104項目のうち経験して困難さを感じた項目等,調査(2)では,印象に残っている演習とその理由,入職してから振り返ったり活用できている演習の有無とその理由,学内代替実習となったことの不利益が入職後にあったかどうか,等を調査項目とした.

     いずれも研究協力に同意した対象候補者がアンケートフォームにアクセスし無記名で回答・送信し,この送受信をもって調査に同意が得られたものとした.インタビューは日程調整し対面または遠隔で行い,同意を得て録音した.

    (結果)

     調査(1)では9名から回答が得られ,うち3名の看護師がインタビューに応じた.「複数の患者の看護ケアの優先度を考えて行動する」「決められた業務を時間内に実施できるように調整する」の項目はCOVID-19前の研究*と同様困難を感じる人数の割合が高い.一方,「患者の理解と患者・家族との良好な人間関係の確立」6項目全てにおいて,困難を感じた人数の割合が増え,インタビューでも[患者の病状をコロナ禍で面会できない家族に説明できない]等のCOVID-19に関連した困難の内容が含まれた.

     調査(2)では3名の看護師から回答が得られ,うち1名がインタビューに協力した.全員が,入職後に活用できている演習は《複数患者の検温・報告》《多重課題》であったと回答し,“ 現在の仕事でもほぼ同じことをしているから” 等,実践的な内容であったと評価した.インタビューでは「優先順位の考え方」「重要度と緊急度」について,実習での学びを臨床で活用している一方で,学生同士で患者役-看護師の演習をしていたため,入職後は本当の患者とのコミュニケーションに戸惑いが生じていたと述べた.

    (考察)

     調査(1)においては,COVID-19の影響により患者・家族とのコミュニケーションに困難をより感じている可能性があることが示された.また,COVID-19に関わらず,複数の患者の看護ケアや時間内での業務実施などの業務管理に困難を感じている傾向が明らかとなった.

     調査(2)では,シミュレーション実習は入職後も活用できる現実的な内容であり,リフレクションサイクルを意識した演習構成は自律的な学びを引き出した一方で,模擬患者や看護師からの学びが得られず,患者に対するコミュニケーション能力の育成が課題となったことが示された.

     以上から,社会情勢を加味して教育内容を検討する必要性,および患者・家族へのコミュニケーション能力の獲得機会を担保しつつ,実践的な学修が望ましいことが示唆された.

    (倫理規定)

     研究者が所属する大学の研究等倫理審査委員会の倫理審査の承認を受けた(申請番号2021-14).

    (利益相反)

     本研究内容に申告すべきCOI状態はない.

  • 佐伯 恭子, 諏訪 さゆり
    千葉県立保健医療大学
    紀要

    2023年 14 巻 1 号 1_100
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/08/22
    研究報告書・技術報告書 フリー

    (緒言)

     2025年の我が国の認知症者数は約700万人,軽度認知障害者は400万人に上ると推計されており,認知症の予防やケアに関する研究を推進していく必要がある.特に,認知症の人本人を対象とした研究の推進が求められている1)が,認知症の人は意思決定能力が無いとみなされ意向を尊重されないことがある.研究においてインフォームド・コンセントを与える能力は,対象者への負担や予測されるリスクとベネフィットとの関係で異なるのであり,認知症だから意思決定能力がないと言い切ることはできない.また,研究は治療とは異なり,本人への利益ではなく将来の患者にとっての利益すなわち社会貢献の側面があり,代諾により研究対象者になることは,他者により社会貢献を強制されていることになる2)

     これらを背景に,本研究の前段階で,認知症の人本人の意向を尊重し,認知症の人が安全に安心して研究に参加できることを目指し,「認知症の人を対象とした看護・介護・リハビリテーション領域の研究における倫理的配慮のためのガイド(以下,ガイド)」を開発した3).本研究では,このガイドをさらに洗練させることを目的にグループインタビューを実施することとした.

    (研究方法)

    1.データ収集方法

     本研究の前段階で作成したガイドに関する意見を求めるグループインタビューを実施した.対象者は,①生命倫理研究者(研究倫理審査委員経験有る者),②認知症の人を対象とした研究を実施・公表した経験のある研究者とし,①②併せて3名の構成で,異なる対象者で2回,いずれもオンラインで実施した.

    2.分析方法

     グループインタビューで得られたデータを逐語録にし,逐語録から,ガイド記載内容の中で分かりにくい部分,加筆や修正が必要な部分に関する語りを抜き出した.抜き出した語りを基に“ 研究者が,認知症の人を対象とした研究を計画,実施するために必要な倫理的配慮を考え実践できる” ようにガイドの修正をおこなった.

    (結果)

    1.対象者の概要

     対象者は6名で,生命倫理研究者2名,リハビリテーション領域の研究者2名,看護領域の研究者2名であった.

    2.ガイドの洗練

     得られた意見は,文章表記に関するもの(誤解を招く表現,使用している言葉の吟味,用語の使用),体裁に関するもの(文字の量,図表挿入の提案),ガイドの構成に関するもの(研究倫理3原則の説明や基本方針の追記,章立ての順序の再考,参考文献の追記)であった.また,全体を通して,ガイドであるからこそ内容の重みを考慮することの指摘があった.研究者からは,認知症の人が対象となる研究の計画・実施における留意点や重要事項に関する具体的な提案があった.

     これらの意見,提案をもとに,ガイドの修正をおこなった.

    (考察)

     本ガイドは,認知症の人本人からインフォームド・コンセントを得ることを目指し,研究に伴い発生する可能性のあるリスクの具体的な想定およびその最小化について検討する必要性があることや,本人への説明方法を十分検討することを強調したものである.今後は,本ガイドの活用に向けて取り組む必要がある.

    (倫理規定)

     本研究は,

    千葉県立保健医療大学
    研究等倫理委員会の承認を得て実施した.(承認番号2021-27)

    (利益相反)

     本研究において開示すべきCOIは存在しない.

  • 佐伯 恭子, 諏訪 さゆり
    千葉県立保健医療大学
    紀要

    2021年 12 巻 1 号 1_115
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2023/03/31
    研究報告書・技術報告書 フリー

    (緒言)

     高齢者の増加とともに認知症の人も増えている.認知症の予防や治療のためには薬物療法だけでなく非薬物療法も必要であり,看護・介護・リハビリテーション領域の研究も推進していく必要がある.

     しかし,研究において最も重要な被検者保護の観点でみると,認知症の人は意思決定できないとみなされ意向を尊重されない事態が生じる可能性がある.認知症の人対象の介入研究に関する原著論文43件をもとにした文献研究では,本人がICに関与しなかった可能性のあるものが13件みとめられた1).また,認知症の人を対象とした研究の倫理審査を経験した倫理審査委員へのインタビュー調査では,認知症の人を対象としているにもかかわらず代諾に関する記載がない計画書の存在などが明らかになっている2)

     そこで,本研究では,認知症の人を対象とした看護・介護・リハビリテーション領域の研究における倫理的配慮について,研究倫理に関する基本的な考え方を理解したうえで,その方策を考えることのできるガイドの開発を目指した.

    (研究方法)

    1.ガイド案の作成

     昨年度実施したインタビュー調査(対象者は,研究者,研究倫理審査委員,研究協力者,認知症の人を介護する家族)より,認知症の人を対象とした研究における倫理的配慮に関する実践知を抽出した.その結果,人格の尊重に該当するICに関しては〈意思決定能力の評価〉など7項目,善行に該当するリスク・ベネフィットに関しては〈リスクへの対応策の具体化〉など4項目,正義に該当する対象者選定に関しては〈対象者のリクルート方法の適切性〉など2項目,その他,倫理審査と科学的合理性に関する実践知が明らかになった.これら実践知の要素が含まれるようにガイド案の文章を作成し,研究倫理の三原則を枠組みとしたガイド案を作成した.

    2.インタビュー調査

     作成したガイド案の妥当性及び実用性を高めるため,認知症の人(A氏:アルツハイマー型認知症/B氏:レビー小体型認知症)を対象とした個別インタビューと,専門職および倫理審査委員を対象としたグループインタビュー(研究者1名/研究協力者1名/研究倫理審査委員1名:計3名)を実施した.

    (結果)

     ここでは,ガイド完成までの過程を示す.

     ガイド案を基に,認知症の人(A氏)にインタビューを実施した.A氏からは主に,認知症の人とのコミュニケーションの中で“本人に聞いて確認する”ことの重要性に関する指摘があり,これを反映してガイドVer.1を作成した.次に,ガイドVer.1を基にグループインタビューを実施した.グループインタビューでは主に,活用の際の実用性に関する指摘があり,これを反映してガイドVer.2を作成した.最後に,ガイドVer.2を基に認知症の人(B氏)にインタビューを実施した.B氏からは主に,認知症の人であっても一人の人間として接するのは認知症ではない人と同じであることの指摘があり,これを反映して修正し,ガイドの完成とした.

    (考察)

     本研究で作成したガイドは,研究倫理の三原則に科学的合理性を加えての構成となった.ガイドの内容は,研究が倫理的であるための7要件3)を網羅している.今後,本ガイドの有効性を検証していく必要がある.

    (倫理規定)

     本研究は,千葉大学大学院看護学研究科倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号:31-18).

    (利益相反)

     本研究において開示すべきCOIは存在しない.

  • 阿曽 菜美, 東本 恭幸, 渡邊 智子, 細山田 康恵, 小川 真
    千葉県立保健医療大学
    紀要

    2020年 11 巻 1 号 1_76
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2023/03/31
    研究報告書・技術報告書 フリー

    (緒言)

     味覚は個人の食事選択を左右し,ひいては健康状態を左右する重要な生理機能である.特に塩味については,古くから高血圧患者においてその認知閾値が上昇することが示されてきた1).我が国でも,食塩含浸濾紙「ソルセイブ」を用いた研究により,塩味の認知閾値が1.0mg/cm2以上になると高血圧の発症率が約2.5倍になることが報告されている2).また,塩味の認知閾値が0.8mg/cm2以上の者は,0.6mg/cm2の者と比較して高齢であり,薬剤服用者数が多いだけでなく,漬物の摂取頻度が高いという報告もある3).しかし,一般的にソルセイブは食塩含浸量0.6mg/cm2からしか市販されていないため,塩味の認知閾値がより低く保たれている者の特徴については,不明である.塩味の認知閾値がより低く保たれている者の血圧や食・生活習慣を明らかにすることは,高血圧予防の観点からも重要であると考えられる.そこで本研究では,本学とUR都市機構が連携して行う「ほい大健康プログラム」の参加者を対象とし,食塩含浸量の少ないソルセイブを用いて塩味の認知閾値を測定し,血圧や食・生活習慣との関連を明らかにすることを目的とした.

    (研究方法)

     対象者は,「ほい大健康プログラム」に参加した65歳以上の女性43名(76.8±5.2歳)であった.

     塩味の認知閾値の測定には,食塩含浸量0.2,0.4,0.6,0.8,1.0,1.2,1.4,1.6mg/cm2のソルセイブを用いた.低濃度のソルセイブから順にテストし,塩味を感じられた濾紙の食塩含浸量を各対象者の塩味の認知閾値とした.

     年齢,BMI,血圧,罹患歴等のデータは,「ほい大健康プログラム」における計測値および調査用紙を参照した.また,「たまごの大きさで数える食事チェックシート-簡単版-」4)の回答結果より,エネルギー摂取量および食塩摂取量を算出した.さらに,普段の食事の味の濃さと運動習慣について,同チェックシート内の質問項目から評価した.

     塩味の認知閾値が0.2mg/cm2の者(18名)を低閾値群,0.4mg/cm2以上の者(25名)を高閾値群とし,両群を比較した.連続変数の比較にはWilcoxonの2標本の検定,割合の比較にはFisherの正確検定を用いた.有意水準はp<0.05とした.

    (結果)

     低閾値群と高閾値群の年齢,BMI,収縮期血圧,拡張期血圧,エネルギー摂取量および食塩摂取量について比較したところ,いずれも両群間の有意な差は得られなかった.高血圧症のある対象者は,低閾値群で9名(50%),高閾値群で8名(32%)であり有意な差はなかった.また「コンビニエンスストアのお弁当やファミリーレストランの料理と比べていつものあなたの食事の味はどうですか」という質問に対する回答の割合についても,両群間の有意な差はなかった.一方,「体をよく動かす仕事や運動をしますか」という質問に対し「よくする」と答えた者は低閾値群で11名(61%),高閾値群で5名(20%),「体を動かすことは好きですか」という質問に対し「はい」と答えた者は低閾値群で17名(94%),高閾値群で14名(56%)であり,両群間の回答の割合が有意に異なった.

    (考察)

     塩味の認知閾値がより低く保たれている者とその他の者において,年齢,BMI,血圧,食事摂取状況等を比較した結果,明確な差異は認められなかった.一方で,運動習慣に関する質問に対する回答の割合は両群間で有意に異なり,塩味の認知閾値が低く保たれている者では,好んで体を動かす習慣がある可能性が示唆された.

    (倫理規定)

     本研究は,

    千葉県立保健医療大学
    研究等倫理委員会の承認を得て実施した(2018-06).

    (利益相反)

     申告すべきCOI状態はない.

  • 雨宮 有子, 佐藤 紀子, 細谷 紀子, 杉本 健太郎, 泰羅 万純
    千葉県立保健医療大学
    紀要

    2021年 12 巻 1 号 1_113
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2023/03/31
    研究報告書・技術報告書 フリー

    (緒言)

     我々は,新人保健師がリフレクション力を身に付けることが現任教育上の重要なニーズであることを見出し1),平成26年から「新任期保健師リフレクション力育成プログラム」(以下プログラム)を実施している.プログラムにおいて効果的なファシリテーションを導くガイド(以下ガイド)が必要と考えガイド案を作成した.今回は,ガイド案を用いて実施したプログラムの効果を検討することを目的とした.

    (研究方法)

    1.先行研究等を基にガイド案を作成した.ガイド案には,a.ファシリテーター自身の教育者・実践者(保健師)としての自己研鑽をベースに,b.ファシリテーター自身のワークショップの事前準備と支援体制整備,c.リフレクションが促進される基本的環境(会場・時間・グループ)の事前整備,d.参加者の目的意識の共有と自助的グループ活動の促進,e.グループ・リフレクション促進のための基本的態度・行動・スキル,f.リフレクション促進のための具体的な進め方・問いかけの6つの柱を立てた.本プログラムは新任期保健師を対象としているため,eの内容として,一般に重視される「主体的参加を支えるコーチング」に加え,「共に行為の意味を考え教訓を見つけるティーチング」も含めた.

    2.地方自治体へ就職後3年未満の保健師を対象に,ガイド案を用いたプログラムを実施した.プログラムでは2か月毎に3回,気になっている個別支援について事前にワークシートに記述した上で,ファシリテーターを含め4~6名でグループ・リフレクションを行った.

    3.1)プログラム参加前後にリフレクションスキルの自己評価(10項目・5件法)とその理由を質問紙調査した.プログラムの全回参加者を分析対象とし評価尺度は得点換算し前後比較した.

    2)ファシリテーションの評価について,質問紙調査(12項目・4件法)を1・2回終了時に行い,3回目終了時にファシリテーターの発言・態度に対する満足度とその理由等を聴取した.

    (結果)

     全回参加者は6名だった.

    1)全回参加者のリフレクションスキルの自己評価の平均得点は「感情をありのままに表現できる」(3.50→4.17),「保健師としての信念・価値を見出せる」(2.83→3.33)で上昇が大きかった.一方,批判的分析や評価に関する項目は横ばいで,理由に「支援の意図や判断に自信がないと説明できない,対象者に役立つ支援だったか判断できない,できないので先輩等に相談する」の記述があった.

    2)ファシリテーションの評価は「話をよく聞いてもらえた」「自分の考えや思いを認めてもらえた」が特に高かった.2回目では「異なる視点を得られた」「次回までにすべきことが分かった」等の評価が上がり,半数の項目で全員が最高評価(とてもそう思う)と回答した.理由に「支援の目的や内容を肯定され・関わりの効果を意味付けられ嬉しかった・自信になった」等があった.一方,「主体的に参加できた」「対話を通して自分の考えを意識化できた」の評価は他より低く,ワークショップの課題として「継続支援しておらずワークシートに書くことがない」等の記述があった.

    (考察)

     プログラムの成果として,リフレクションスキルである「感情表現」「信念・価値の発見」が進み,ファシリテーターによる「肯定」「意味付け」を契機に「承認」「自信」が実感されていた.しかし,新任期は実践的で適切な判断基準の獲得途上であることや継続支援自体の実施が少ない状況もあり,これらの状況を踏まえつつ,批判的分析等を進めるための「自己の考えの意識化」「主体的参加」を促すファシリテーションの強化が課題と考えられた.

    (倫理規定)

     著者の所属機関の研究等倫理委員会の承認を得て行った(2019-18).

    (利益相反)

     開示すべきCOI関連事項はない.

  • 栗田 和紀, 佐田 直也
    千葉県立保健医療大学
    紀要

    2024年 15 巻 1 号 1_41-1_44
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/04/19
    研究報告書・技術報告書 フリー

     2023年6月に

    千葉県立保健医療大学
    の幕張キャンパス(千葉市美浜区)にてアオダイショウが発見された.証拠標本に基づく初めてのこの地域からの記録となる.標本の詳しい特徴を記載し,都市化した埋立地における本種の分布を考察する.

  • ─参加者の研修ニーズと今後の課題:2014年度の報告─
    鳥田 美紀代, 杉本 知子, 須釜 真由美, 松谷 正一, 上野 佳代, 三谷 智香子
    千葉県立保健医療大学
    紀要

    2015年 6 巻 1 号 1_43-1_48
    発行日: 2015/03/20
    公開日: 2023/06/21
    研究報告書・技術報告書 フリー

     千葉県内の特別養護老人ホームに勤務する看護職者を対象にフィジカルアセスメント研修を実施した.3年目となる本研修について,実績をふまえて見直しを行い,課題を整理した.研修プログラムは1)フィジカルアセスメントに必要な医学的基礎知識,2)フィジカルアセスメントに関する一般的な知識及び,呼吸器・循環器・消化器のフィジカルアセスメント,3)事例に基づくフィジカルアセスメントの実践,4)実践的課題や対策の共有のための参加者交流で構成され,28施設28名の看護職者が参加した.参加者交流の討議から,研修内容や事例に基づく演習方法の導入等,概ね参加者の研修ニーズに合っていたことが示された.一方で,参加者には,より個別的な症状におけるフィジカルアセスメントの方法と対処方法,あるいは,介護職との知識・技術・判断の共有と協働に関する研修ニーズがあり,これらに対応できる研修を企画・実施することは今後の課題である.

  • 酒巻 裕之, 麻賀 多美代, 荒川 真, 麻生 智子, 鈴鹿 祐子, 岡村 太郎
    千葉県立保健医療大学
    紀要

    2023年 14 巻 1 号 1_104
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/08/22
    研究報告書・技術報告書 フリー

    (緒言)

     糖尿病と歯周病の診療における共通点は,両者とも治癒しない慢性疾患で自覚症状に乏しく受診に至らなかったり,受診が継続しなかったりすることである.糖尿病診療ではコーチングが導入されているが,歯科領域ではコーチングに関する報告は少ない.

     われわれは,歯科医療の現場の歯科衛生士を対象に,歯科保健指導においてコーチング手法を活用することを目標とし,第2回

    千葉県立保健医療大学
    歯科衛生士研修会(以下,研修会)を実施した.本研究では,研修会終了後に研修会の評価ならびに今後の希望テーマや要望等を明らかにする目的で質問紙調査を行った.質問紙調査結果から,今回実施した歯科衛生士研修会の振返りと,今後開催する研修会の在り方について検討した.

    (研究方法)

     研修会は,千葉県歯科衛生士会と

    千葉県立保健医療大学
    歯科衛生学科同窓会の協力を得て参加者を募集し(32名の参加者),令和3年2~5月に計4回の研修会を実施した.

     第1回目「糖尿病に関する知識」医師(糖尿病専門医,コーチングインストラクター)により,糖尿病の病態や治療法について

     第2回目「コーチングについて」第1回と同一講師によりコーチングの概要,慢性疾患へのコーチングの活用について

     第3回目「歯周病に関する知識」歯科医師(歯周治療担当)により,日本歯周病学会のガイドラインを基に歯周病の特徴について

     第4回目「行動から認知度を把握する方法」作業療法士(作業療法士養成校教員)により,歯磨き中の対象者の様子からその対象者の認知レベルに合わせた歯科保健指導法についてであった.

     以上の研修会終了後に,参加者に対して郵送法による無記名,一部記入式多肢選択式質問紙調査を行った.質問紙調査項目は,年齢,勤務状況,研修会全体の満足度,各項目の満足度,次回以降の研修会で希望するテーマ,研修会に対する要望とした.

     本研究は

    千葉県立保健医療大学
    研究倫理審査委員会の承認(2020-13)を得て実施した.

    (結果)

     令和2年度の本研修会は当初,対面の研修会として,血糖値の簡易測定等の演習やコーチングのロールプレイ等を計画していた.しかし,新型コロナウイルス感染症の感染拡大状況からWeb 開催に変更し,演習やロールプレイを中止した.

     研修会後に実施した質問紙調査の対象は24名で19名(79.2 %)から回答を得た.主な調査結果について研修会の全体的満足度は「とても満足」13名(68.4%),「やや満足」6名(31.5%)で,理由は参加しやすい時間帯だった,興味のあるコーチングについて学ぶことができた等であった.希望するテーマは高齢者歯科,全身疾患,摂食嚥下機能,多職種連携等が挙げられた.

    (考察)

     歯科衛生学科では大学の社会貢献の一つに,歯科衛生士の人材育成として,令和元年度から勤務する歯科衛生士を対象に研修会を開催している.令和2年度の研修会は,新型コロナウイルス感染症の感染状況により,演習を含む対面形式からWeb 研修会に変更し,3か月遅れで実施することができた.研修会を継続して対象者がより有意義な情報を得るために,質問紙調査結果から研修会の在り方について検討したところ,Web による研修は新型コロナ感染症に対する感染に対して安全であり,内容については,コーチングについて興味ある内容で,歯周病患者等の歯科保健指導や教育に活用でき,有意義な研修会であったと推察された.参加歯科衛生士が臨床の場で実際にコーチングを活用して歯科保健指導を実践することを望むものである.

     今後開催する研修会については,参加者の要望をふまえて,参加者が参加しやすいように日程調整をし,高齢者歯科医療等,順序性を有するテーマで研修会を実施する所存である.

    (利益相反)

    本研究に関連し開示すべき利益相反関係にある企業などははい.

  • 酒巻 裕之, 石川 裕子, 鈴鹿 祐子, 山中 紗都, 鈴木 英明
    千葉県立保健医療大学
    紀要

    2024年 15 巻 1 号 1_66
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/04/19
    研究報告書・技術報告書 フリー

    (緒言)

     2020年の千葉県の高齢化率は27.0%であり,75歳以上の入院患者や要介護高齢者の認定率および認知症高齢者は増加すると推計されている.これらの対象者は,口腔のセルフケアが十分できず,専門的な口腔健康管理が必要となる場合が多い.

     我々は,2019年から地域包括ケアシステムの理解と高齢者介護予防の実践をするリカレント教育を目的とし,歯科衛生士を対象に

    千葉県立保健医療大学
    歯科衛生士研修会を開催してきた.2021年度に開催した第3回研修会後の質問紙調査において「今後希望するテーマ」として,口腔粘膜の観察方法,口腔粘膜病変に関するテーマの希望が多く挙げられていた.

     また,担当歯科衛生士によるメンテナンスにおいて口腔内観察の際に口腔粘膜の異常が認められ,歯科医師による検査を実施し早期扁平上皮癌等を含む口腔粘膜病変として診断・治療に至った症例が報告されている.

     そこで第4回研修会では,テーマを「口腔粘膜について」とし,口腔内の観察方法を習得し,口腔粘膜の異常所見について共有することを目標としたリカレント教育プログラムを実施した.

     本報告では,本研修会の概要ならびに,研修会終了後に本研修会参加者自身の振返りからの理解度等を検討する目的で実施した質問調査結果について報告した.

    (研究方法)

     対象は千葉県歯科衛生士会,

    千葉県立保健医療大学
    歯科衛生学科同窓会の協力を得て募集し,参加した13名を対象に計3回の研修会を開催した.

     研修会の内容は1回目(2022年11月)「口腔内の観察の目的,口腔内の観察方法について」は,歯科医師(口腔外科)による講義,2回目(2022年12月)「口腔粘膜の代表的な病変の知識」は,歯科医師(口腔病理)による講義,3回目(2023年3月)「口腔内の観察法の演習,擦過細胞診について」は,歯科医師(口腔外科,口腔病理)による講義,実習とした.実習では常に定められた手技での口腔粘膜を含めた口腔内観察と擦過細胞診の細胞採取を体験し,その後,感想や意見交換をした.

     3回目研修会終了後に,Microsoft Formsにて無記名設定の質問調査を実施した.質問項目は,一部自記式多肢選択式とし,質問項目は,年齢,勤務状況,研修会全体の満足度,研修会前後の理解度,今後の研修会のテーマ,研修会に対する要望とした.

    (結果)

     3回の研修会では,それぞれ13名の参加者があった.実習後の感想には,「口腔外科に大変興味がある」,「口腔観察の際,口腔粘膜がすごく気になる」,「細胞診の結果まで知りたい」等が挙がった.

     研修会後の質問調査では,7名から回答を得た.本研修会全体の満足度は「とても満足」「満足」を合わせて100%であった.研修会前後の理解度については,口腔粘膜の正常所見,異常所見,観察方法,主訴の確認方法の理解度が向上していた.また,口腔粘膜病変の診療補助について,研修会前は「十分知っていた」「やや知っていた」を合わせて3名(42.9%),「あまり知らない」2名(28.6%)であったが,研修会後は「十分理解できた」「やや理解できた」の回答が7名(100%)となった.さらに,参加者全員において本研修会内容が今後の口腔粘膜病変に対する診療補助保持に活用できると回答した.

    (考察)

     研修会の講義と実習を通して,対象者は口腔粘膜の正常所見や異常所見,口腔内の観察法,主訴の確認方法,口腔粘膜の診断方法,口腔粘膜病変の診療における診療補助の理解度が向上したと考えられた.したがって,対象者はさらに口腔粘膜病変に対し興味を持ち,診療補助の知識や技術の再確認ができたと思われた.

     歯科衛生士は今後,さまざまな環境において口腔観察を行う機会を持ち,口腔粘膜病変を発見する機会の増加が予想されることからも,今回の研修会は,歯科衛生士にとって有意義であったと考えられた.

     参加者の意見をふまえて,今後の歯科衛生士研修会について,開催内容と開催方法から,多くの参加者を得て継続開催を企画していく所存である.

    (倫理規定)

     本研究は,

    千葉県立保健医療大学
    研究倫理審査委員会の承認(2022-17)を得て実施した.

  • 雄賀多 聡, 島田 美恵子, 麻賀 多美代, 大川 由一, 雨宮 有子, 三宅 理江子, 竹内 弥彦, 岡村 太郎, 松尾 真輔, 中島 一郎
    千葉県立保健医療大学
    紀要

    2020年 11 巻 1 号 1_68
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2023/03/31
    研究報告書・技術報告書 フリー

    (緒言)

     少子高齢化が諸外国に例を見ないスピードで進行するわが国において,多機関・多職種,地域住民の自助・互助などが連携した地域包括ケアシステムを構築することが喫緊の課題である.しかし,自治体主導の地域包括ケアにおける自助・互助の課題として「関連施設間の不十分な連携」「住民の主体性を重視した意欲の継続への支援不足」(佐藤)や「支援者―被支援者の固定的関係性からの脱却」(松繁)が挙げられている.

     千葉市地域包括ケア推進課の介護予防事業に,シニアリーダー(SL)養成講座がある.要介護認定を受けていない高齢住民が,介護予防の座学と介護予防体操の実技講習を受けた後,地域在住高齢者を対象とした介護予防体操教室を開催する地域在住高齢者の互助活動システムである.一方,本学における地域貢献方針のキーワードとしては,地域高齢者自身の内発的な活力を誘導し,高齢者個人・仲間・地域の活性化につなげる,いわゆる「エンパワメント(湧活)」が,学長より提唱されている.そこで,SL自らによるSL活動の効果検証を,我々が後方支援するような研究計画を立案した.

     本研究の目的は,

    千葉県立保健医療大学
    がSL活動の効果をSL自らが検証することへの後方支援手法が,「地域在住高齢者の自助・互助活動を支援する手法」として,本学の社会貢献活動足り得るか検討することである.

    (研究方法)

     千葉市中央区SL代表者10名とともに,SL活動の効果を検証するためのアンケートを作成し,配布方法,回収方法を検討した.アンケートは基本属性と同居人数,介護保険受給状況,健康関連指標(SF-8),SL体操への満足度(4択),要望などの自由記述とした.

     SL(60名)を介し体操教室参加者(573名)を対象にアンケート調査①を実施した.①回収後の基礎集計結果をSL代表者会で報告し,SL代表者を対象としたアンケート調査②(今回の取組が参加者への理解の深まりやSLとしての力量アップに役立ったか等)を実施した.

    (結果)

     調査①:494名(男性11.7% 平均年齢76.5±標準偏差6.3歳 範囲92~50歳)の回答(回収率86.2%).要介護度認定は,要支援1:25名,要支援2:2名,要介護1:1名.22%が単独世帯,31%が夫婦のみ世帯.39名(7.9%)が健康状態を「良くない」と回答.SF-8の身体的健康度は49.3±5.9点,精神的健康度は51.5±5.6点.運動の内容や時間・強度,開催日や開始時刻,指導法や仲間関係など,いずれも95%以上の者が「大変満足・まあ満足」と回答.自由記述は,「教室の継続」を多くが求めた.

     調査②:10名中10名より回答.SLが参加者へのアンケートを作成・回収し今後のSL活動に反映させる今回の手法への満足度は(満足8名,やや満足1名,やや不満1名),参加者への理解が(深まった6名,やや深まった1名,深まらなかった1名),指導力の養成に(役だった3名 まあ役立った3名 あまり役立たない1名),他地域での実施を(ぜひ実施5名 あった方がいい3名 あまりなくてもいい1名).

    (考察)

     アンケート①で,体操教室参加住民の基本特性が明らかになると同時に,アンケート作成・回収を通してSLの自助,SLと参加者間の互助活動に寄与できると考えた.しかし,すべてのSLが今回の手法に肯定的ではなかったことから,質問内容や実施方法にさらなる検討が必要であることが示唆された.

    (倫理規定)

     本研究は

    千葉県立保健医療大学
    研究等倫理委員会の承認を得て実施した(2018-29).

    (利益相反)

     開示すべき利益相反はない.

  • ─ 千葉市内地区別比較からみえるもの ─
    島田 美恵子, 岡村 太郎, 松尾 真輔, 雄賀 多聡, 竹内 弥彦, 岡田 亜紀子, 雨宮 有子, 麻賀 多美代, 大川 由一, 中島 一郎
    千葉県立保健医療大学
    紀要

    2019年 10 巻 1 号 1_116
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2023/03/31
    研究報告書・技術報告書 フリー

    (緒言)

     急速な高齢社会を迎えているわが国において,「可能な限り住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続ける」地域包括ケアシステムの構築および自助・互助の住民参画活動が提唱されている.

     社会貢献は,研究・教育とともに,大学に求められる使命の一つである.本研究は,千葉市保健福祉局が養成した「シニアリーダー(介護予防運動推進ボランティア)」を対象とし,地域のニーズおよび本学の地域に対する支援の在り方を検討することを目的とした.

    (研究方法)

     平成29年12月現在,シニアリーダー登録者は503名である.シニアリーダーが主体となり運営する自主活動は市内133箇所,参加延べ人数は68,000名以上である.本研究はシニアリーダー503名に,村山ら1)の先行研究をもとに作成した自記式質問紙を郵送し,無記名での回収とした.調査実施期間は平成29年12月29日から平成30年1月20日とした.主な調査内容はシニアリーダーの性別,年齢,受講時期,居住地域等の基本属性に加え,現在参加しているシニアリーダーの活動状況,リーダー活動で感じていること,サポート環境,本学への要望などである.分析方法は,単純集計及びクロス集計で,居住地域と性別及び年齢,受講時期,シニアリーダーの活動状況などの関連については,カイ二乗検定を用いた.

    (結果)

     男性128名(平均年齢73.4 標準偏差4.8歳),女性190名(70.9±4.4歳),計318名の回答を得た(回収率63.2%).受講後活動に参加したことがないものは52名(16.7%)であり,回答者の活動状況は地区による差がみられた(P=0.016).回答者の78%が「活動にやりがいがある」「活動に楽しいと感じる」と答え,受講時期が早いものほど「やりがい」「楽しさ」を感じている者が多かった(P<0.05).「住民同士のつながりは強い」「地域の活動に参加している住民が多い」に「あまりそう思わない」「思わない」と答えたものに地区別の差はみられず,それぞれ49%,62%であった.「シニアリーダー活動が地域住民に知られていない・あまり知られていない」と答えたものは全体の70%であった.活動に対する自由記述,活動しない理由の自由記述においてのべ133件の回答があり,リーダーが指導する住民への対応やリーダー同志の関係の難しさ,地域施設のサポートを要望すると記載した内容が45件あり,自治会やあんしんケアセンターとの関わりを求めていた.フォローアップ講座開講への要望は設問・自由記述ともに高かった.

    (考察)

     本学の支援として「関係性を調整する役割」が推測された.ひとつは,先行研究と同様に本研究においても明らかになった,経験年数別にリーダーの活動意識に違いがあることへの考慮である1).リーダー養成講座のカリキュラム作成時に工夫が必要であることが示唆された.また,本学による出前講座などのサポートは,指導内容の確認や新たな知見の授受により,リーダーの役割意識を強化できる可能性がある2).地域施設とともに,リーダーの活躍の場を確保しフォローできる体制づくりの構築が望まれた

    (倫理規定)

     本研究は

    千葉県立保健医療大学
    研究等倫理委員会の 承認(申請番号2017-036)を得て実施された.

  • 桝本 輝樹, 鈴鹿 祐子, 今井 宏美, 亀井 縁, 浅井 美千代
    千葉県立保健医療大学
    紀要

    2015年 6 巻 1 号 1_37-1_42
    発行日: 2015/03/20
    公開日: 2023/06/21
    研究報告書・技術報告書 フリー
     保健医療系大学在学生に対して,大規模災害時の安否確認についての意向や行動を調査し,あわせて災害時の対応マニュアル作成のための基礎資料とすることを目的として,
    千葉県立保健医療大学
    在学生と教職員を対象に,東日本大震災時の安否確認行動についてのアンケート調査を実施した.
     アンケートは600名に配布し,有効回答率は38.8%(232通)であった.調査の結果,在宅かどうかを問わず,連絡(安否確認)をとりたいと思った対象は母親を中心とした家族が最も多く,使用しようとした連絡手段は携帯電話およびショートメールであった.
     SNSは輻輳がなく,クラウドや海外にサーバを置くものも多いため利用できなかった割合が低く,有効性が裏付けられたものの,活用の度合いは低かった.
     緊急時の連絡手段などについての話し合いが行われているかどうかについては,家族と話し合いをしている割合が55%,大学関係者とは35%,実習先との連絡方法を検討している割合は17%に留まった.
     本研究により,学生,教職員のいずれも家族を中心とした親族の安否を確認,かつ自らの安全を伝達することを望んでいることが明らかとなった.また,大学では安否確認の枠組みは設けられているものの,具体的なマニュアルや安否確認システムの整備の余地があり,防災教育の点では改善の余地が大きいことも明らかとなった.
  • 工藤 美奈子, 佐々木 みづほ, 佐伯 恭子, 河野 舞, 室井 大佑, 成田 悠哉, 龍野 一郎
    千葉県立保健医療大学
    紀要

    2024年 15 巻 1 号 1_59
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/04/19
    研究報告書・技術報告書 フリー

    (緒言)

     新型コロナウィルス感染症(COVID-19)や感染症対策に伴う行動制限は,高齢者の地域におけるコミュニケーションと社会活動を制限し,その結果として日常生活動作(ADL),認知機能,うつ病の発症を含めたメンタルヘルスを悪化させていることが危惧されている.千葉県民の健康づくり推進の一助となるべく「COVID-19が及ぼした地域高齢者の健康への影響」についての調査を実施したので結果を報告する.

    (研究方法)

     千葉県内の特別養護老人ホーム・ケアハウス・介護老人保健施設の,全体の責任者であり総括的な役割を担う者(理事長・施設長(管理者・ホーム長)など)を対象に,無記名の自記式質問紙調査(郵送法)を行った.調査期間は2023年2月20日~2023年3月20日まで,対象施設は計456施設とし,アンケート質問用紙への回答と返信をもって同意を得たとした.質問項目は施設の基本データ関連7問,COVID-19が施設に与えた影響関連6問,COVID-19が職員の労働環境に与えた影響が1問,今後の考案等自由記載が1問の合計15問とした.

    (結果)

     アンケート回収率は34%であった(特別養護老人ホーム74,ケアハウス35,介護老人保健施設45).

    ① クラスターの発生:全施設中78%で発生した.

    ② COVID-19の影響で制限した活動:ご家族との面会,外出,レクリエーション活動,施設内の行動範囲の順で制限が多く,自宅復帰,会話,個別の趣味活動での制限は少なかった.

    ③ COVID-19が利用者に与えた影響:全施設中70%以上の施設において,歩行移動能力等の身体活動量が低下した.また,表情笑顔,活気意欲,食堂の集団生活時間等の精神面関連項目においても70%以上の施設で低下が認められた.影響が小さく変化がなかった項目は,栄養状態77%や排泄能力73%であった.上昇した項目は,居室で過ごす時間,臥床時間テレビ鑑賞時間が挙げられた.

    ④ COVID-19による介護介入量と時間:増えたと変化なしがほぼ半数認められた.

    ⑤ COVID-19と利用者の機能:精神状態,認知機能,要介護度においてそれぞれ81%,73%,58%の施設で影響ありと回答した.

    ⑥ COVID-19による施設職員への影響:心理的負担と業務量においてそれぞれ98%,92%の施設で増加していることが認められた.身体的負担は89%,マンパワー不足は75%の施設で影響が認められた.

    ⑦ COVID-19流行前と比較した活動状況の回復度:ボランティア受け入れにおいては68%の施設で全く回復していないと回答し,流行前と同程度に回復したと回答したのは0.6%だった.

    ⑧ 自由記載欄:回答率は50%弱であった.イベントや面会の復活,今後の不安や現状困っていること,政府への要望の記載それぞれ全体の4割を占めた.

    (考察)

     歩行移動能力や身体活動量の低下など身体的機能への悪影響と共に,精神状態・認知機能においても大半の施設で影響が出ていることが分かった.身体的機能低下が作用していることに加え,家族面会の中止や施設内での集団行動の減少などひととのコミュニケーションが激減し,精神面での変化が大きく影響していると考えられる.栄養状態や排泄能力は利用者の状態に変化がない傾向がみられ,基本的日常生活動作のうちの生命維持に必要な動作は影響を受けにくいことが考えられる.今回の調査から,COVID-19が高齢者施設の居住者と職員に大きな影響を与えたこと,また,現在でも影響を与え続けていることがわかった.今後は,施設別や職員の精神面ケアの問題も含め,更なる調査・分析を進める必要があると考える.

    千葉県立保健医療大学
    研究倫理審査委員会

    承認2022-18

  • 金澤 匠, 細山田 康恵
    千葉県立保健医療大学
    紀要

    2024年 15 巻 1 号 1_53
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/04/19
    研究報告書・技術報告書 フリー

    (緒言)

     オートファジーは主要な細胞内タンパク質分解経路であり,タンパク質やオルガネラをオートファゴソームと呼ばれる小胞により取り囲み,分解することで細胞の恒常性維持に寄与している.これまでに卵巣ホルモンの一つであるプロゲステロンを卵巣摘出ラットに投与した時に肝オートファジーが促進されることが明らかになっている1).これは性周期による血中プロゲステロン(P4)濃度の生理的な変動が肝オートファジー活性を調節している可能性を示唆している.そこで本研究では,性周期に伴う血中P4濃度の変動が雌ラットの肝オートファジー活性に及ぼす影響について検討した.

    (研究方法)

     49日齢(7週齢)のF344系雌ラット(12匹)を飼料及び水を自由摂取させて飼育した.ラットの性周期は4~5日間の周期性を示し,血中P4濃度はその性周期に応じて変動する.そこで,性周期が安定する60日齢を経過した後,5日間の尾静脈採血から血中P4濃度の周期性を測定した.5日間の血中P4濃度の推移を測定した結果,1日のみ高くなる日があり,5日周期でピークを示すことが確認された.その周期性に基づき,血中P4濃度の高いラットと低いラットの生体試料が得られるように,ピーク日及びその2日後の2パターン(各6匹)に分けて解剖した.解剖時の日齢は70~73日齢となった.解剖は麻酔下で行い,腹部大動脈血及び肝臓を採取した.採取した血清及び肝臓を用いて血中P4濃度及び肝オートファジー関連タンパク質(LC3,ATG5,p62)の測定を行った.測定結果は,血中P4濃度の中央値を基準に低P4群と高P4群に分けてStudent’s t-testで有意差の検定を行った(有意水準p<0.05).また,オートファジー関連タンパク質と血中P4濃度の相関について,Pearsonの相関係数から検討した(有意水準p<0.05).肝臓切片は抗LC3抗体を用いた蛍光免疫染色を行い,蛍光顕微鏡によりオートファゴソームを観察した.

    (結果)

     解剖した12匹のラットの血中P4濃度は,10~25 ng/mL(最小値:10.54 ng/mL,中央値:19.13 ng/mL,最大値:24.84 ng/mL)の範囲で分布していた.

     肝臓中のオートファジー関連タンパク質を分析した結果,オートファゴソーム形成の指標であるLC3-II/LC3-I比について低P4群と高P4群の間で有意な差は見られなかったが,血中P4濃度との間では正の相関が確認された(r=0.5350,p=0.0731).一方,もう1つのオートファゴソーム形成の指標であるATG5量は低P4群と高P4群の間で有意な差は見られず,血中P4濃度との相関も低かった(r=-0.4603,p=0.1321).オートファジーの分解基質であるp62量については,高P4群で有意に減少し(p<0.05),血中P4濃度との間にも高い負の相関が確認された(r=-0.7817,p=0.0027).

     オートファジー活性を形態学的に評価するため,蛍光免疫染色を用いて肝臓中のオートファゴソームの可視化を行った.その結果,血中P4濃度が中央値付近の19.45 ng/mLであったラットでオートファゴソームが若干観察され,21.76及び24.84 ng/mLであったラットではオートファゴソームの顕著な増加が観察された.

    (考察)

     血中P4濃度はLC3-II/LC3-I比と正の相関を示し,p62量と負の相関を示した.さらにオートファゴソームの顕微鏡観察において,中央値よりも高い血中P4濃度においてオートファゴソームの顕著な増加が見られた.これらの結果から,性周期におけるP4分泌の上昇が肝オートファジーを誘導していると考えられる.

     本研究から,性周期に伴う血中P4濃度の変動が肝オートファジー活性を正に制御していることが明らかとなった.

    (倫理規定)

     本研究は,

    千葉県立保健医療大学
    動物実験研究倫理審査部会の承認(2022-A005)を得た後,「
    千葉県立保健医療大学
    動物実験等に関する管理規程」に沿って行われた.

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