日本ダニ学会誌
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9 巻, 1 号
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総説
  • 安倍 弘
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2000 年 9 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 2000年
    公開日: 2004/12/28
    ジャーナル フリー
    ミズダニ類(Hydracarina)を対象とする多くの研究の中で, 特に系統と進化に関わる話題について現在まで得られている知見をまとめた. ミズダニ類はケダニ団に属する分類群で, 現在5,000種以上が9上科52科にまとめられている. 近年の分岐学的研究はミズダニ類の単系統性を支持しているが, 現行の分類体系はそれぞれの単系統群を反映した構成にはなっていない. また, ミズダニ類内部の系統関係については従来から様々な仮説が立てられているが, 未だに信頼できる系統仮説は得られていない. 近年では生態学や行動学の分野でも系統関係を考慮するようになり, ミズダニ類でも比較法によるデータ解析などが行われている. 今後, ミズダニ類の進化に関わる知見を得るためには, 様々な現象を系統的側面からテストするための信頼性の高い系統仮説を得る必要があるだろう.
原著
  • 刑部 正博, 江原 昭三, Shashi ADHIKARI
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2000 年 9 巻 1 号 p. 15-22
    発行日: 2000年
    公開日: 2004/12/28
    ジャーナル フリー
    ネパール国キルティプールにおいて, 展葉直後のナシ葉が褐変もしくは枯死する被害がみられ, それらの樹には多くのニセクロバーハダニが寄生していた. そこで, ネパールで古くから栽培されているファルピンナシとセイヨウナシでハダニの寄生密度と被害度との関係を調査した結果, 寄生密度が高い樹では被害度も高いことが明らかになった. ファルピンナシでは新芽当たりの寄生個体数は最大80個体に達し, 平均個体数が20以上の樹では約80%の芽で著しい被害が認められた. 開花時期はファルピンナシがもっとも早く, 次いでセイヨウナシ, チュウゴクナシ, ニホンナシの順であった. 本種による被害は開花時期が遅いものほど軽く, ニホンナシでは著しい被害を受けた新葉は認められなかった.
  • 岡部 貴美子, 中村 達哉, 後藤 哲雄
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2000 年 9 巻 1 号 p. 23-30
    発行日: 2000年
    公開日: 2004/12/28
    ジャーナル フリー
    1992年5月から1993年1月にわたって, 群馬, 長野, 愛知各県に設置したニホンミツバチの巣箱から働きバチ及び巣の堆積物を採集し, ダニ相を調べた. 優占種は腐食性と考えられるカンザシカフンダニ, ケナガコナダニ, サトウダニであった. 他に捕食性や土壌生息性のダニがわずかに採集された. ダニのほとんどは堆積物中から採集され, 働きバチ体表に付着していたものはほとんどなかった. 季節的には, 群馬県ではダニ総個体数に2つの, 愛知県では1つのピークが認められたが, 長野県ではそもそもダニの発生がほとんどなかった. 採集されたほとんどのダニは, ハチ個体数の増減や蜂蜜生産量にほとんど影響を与えないものと考えられた.
  • 春日 志高, 天野 洋
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2000 年 9 巻 1 号 p. 31-42
    発行日: 2000年
    公開日: 2004/12/28
    ジャーナル フリー
    1999年3月8日から5月31日の期間に全国47都道府県を対象としてケナガコナダニ属のダニのホウレンソウ加害に関するアンケート調査を実施した. 被害は北海道から九州までの広範囲で認められ, 施設栽培で早春と晩秋に発生するのが一般的だった. ケナガコナダニ属のダニはまれに大きな被害を引き起こすが, 季節的に限定された発生を示すため害虫としての重要性は比較的低く評価された. また, 最近5年間くらいで被害が認識されるようになった比較的新しい害虫であることが示された. 被害傾向は「年によってまちまち」が50%, 「横ばい」が27.1%, 「年々増加」が18.8%, そして「年々減少」が4.2%だった. イナワラやモミガラの堆肥, 特に未熟堆肥の大量投入が発生を助長する傾向が認められた. さらに登録のある2薬剤の評価を求めたところ, DDVP乳剤の効果にばらつきが認められた. この原因は薬剤がダニの寄生する新芽部にかかりにくいためと考えられた. 一方, DCIP粒剤の評価は比較的高かったが匂いが強いためか使用例は少なかった. 郵送されたサンプルからダニを採取し同定したところ, ホウレンソウケナガコナダニが優占種であり, ホウレンソウ加害の主要種と考えられた.
短報
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