アロマテラピー学雑誌
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総説
  • 前島 裕子, 下村 健寿
    2025 年26 巻2 号 p. 50-59
    発行日: 2025/09/05
    公開日: 2025/09/05
    ジャーナル フリー

    オキシトシンは従来,分娩促進や母乳分泌に関与するホルモンとして知られていたが,近年,その役割は代謝制御,体重制御,社会的行動,感情調節にまで及ぶことが明らかになっている。特に注目されているのが,オキシトシンの抗不安効果である。ヒトを対象とした研究でも,オキシトシンの鼻腔内投与により,社会的な不安や恐怖感が軽減されることが報告されている。アロマテラピーやハンドトリートメントもまた,神経系にリラクゼーション効果をもたらし,コルチゾルを低下させ,扁桃体の活動を抑制するなどの可能性が示唆され不安軽減に効果的であることが示されている。ストレス社会において不安に苦しむ患者が増加する中で,オキシトシンは臨床応用の可能性を秘めている。その一方でアロマテラピーやハンドトリートメントなどの抗不安効果にオキシトシンが関与している可能性が示唆されている。本稿ではオキシトシンの抗不安効果を中心にアロマテラピーやハンドトリートメントなどの効果との関係を論じる。

原著論文
  • 山川 毅, 武藤 千穂, 水上 勝義, 熊谷 千津, 森 恵莉, 米澤 和
    2025 年26 巻2 号 p. 60-67
    発行日: 2025/09/05
    公開日: 2025/09/05
    ジャーナル フリー

    背景:精油の吸入が健常高齢者の認知機能に及ぼす影響に関する報告は蓄積されているが,認知機能に対する作用と嗅覚機能の関連について調査した研究はいまだ少ない。今回,われわれは健常高齢者に対し,精油の吸入が嗅覚機能と認知機能に及ぼす影響と,さらにそれら変化量の関連性について検討したので報告する。方法:対象は,健康な65~74歳の男女28名であり,被験者を無作為に二群に分けた。介入群は,実施毎に3種の精油(ラベンダー,ヒノキ,ユズ)のいずれか1種を選択し,対照群は精製水(無臭)を4週間1日2回朝夕20秒間嗅いだ。4週間の介入の前後で嗅覚同定能(Open Essence)と認知機能(MoCA-J),VAS(気分・生活習慣状態),POMSの評価を行った。結果:介入群では介入前後でOpen EssenceおよびMoCA-J,ならびにMoCA-Jの評価項目である遅延再生のスコアに有意な上昇がみられた。一方,対照群はいずれの項目にも有意な変化は認められなかった。また,嗅覚同定能総得点の変化量と,MoCA-J総得点の変化量にやや正の相関傾向が認められた。考察:本研究により,健常高齢者が毎日精油の香りを意識して嗅ぐことで,嗅覚機能の低下を予防し,それに伴い認知機能の低下を予防できる可能性が示唆された。

研究ノート
  • 礒田 涼花, 有村 源一郎
    2025 年26 巻2 号 p. 68-71
    発行日: 2025/09/05
    公開日: 2025/09/05
    ジャーナル フリー

    植食者に食害された植物が放出する匂いは,近隣の未被害植物の防御能力を向上させることが知られている。しかし,食害された植物の農業利用は現実的でないことなどが理由に未だ実装に至っていない。この問題に対して,恒常的に匂いを放出するペパーミントやキャンディミントの近傍でコマツナおよびダイズを生育したところ,それぞれの葉で防御遺伝子(pathogenesis-related protein 1遺伝子(PR1))等の発現が誘導され,病害虫抵抗性が向上することが近年報告された。しかし,ナス科の重要作物であるトマトにおける効果は未検証であった。本研究では,栽培室内でペパーミントの近傍(10 cm)に配置してトマト個体を7日間栽培したところ,トマトの葉におけるPR1の発現が高められることが見いだされた。さらに圃場試験において,ペパーミントからさまざまな距離でトマト個体を設置し,3週間生育させた。その結果,20, 50, 100 cmの距離のトマトは,ミントから200 cm離れた場所で栽培したコントロールのトマト個体と比べて,それぞれ20.9%, 37.4%, 74.3%の被害率となった。これらの結果から,ペパーミントはトマト栽培における害虫防除に有効であるコンパニオンプランツであることが示唆された。

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