本特集は地球規模で広がる化学物質汚染について、その実態を広域汚染を引き起こす POPs 系化学物質を中心に、モニタリング手法に重心を置きつつ、広域汚染を引き起こす物質の物理化学的特性、生物学的、毒性学的研究の進展、地球規模の監視手法とモデル化を取りまとめたものである。あわせて、ローカルな汚染監視や途上国におけるさまざまな課題とキャパシティビルディングに関する話題、化学物質国際管理にかかわるいくつかの話題にも触れている。持続可能なこの惑星の未来を考えるうえで、環境の状態を把握し将来を予測して早めの対策を準備することが重要であり、本誌をその一助にしていただければと考える次第である。なお、本特集で取り上げられた化学物質の主なものについて、残留性有機汚染物質と内分泌かく乱化学物質に分けて、次ページ以降に化学構造式を記載した。 実際には、非常に多くの類縁化学物質の混合物として存在するものも少なくない。例えば、PCBs やダイオキシン類等は、それぞれ 209 種類の構造異性体からなる。また、DDTs も塩素の位置が異なる o, pʼ-DDT と p, pʼ-DDT の二つに加えて、その代謝産物であるo, pʼ-DDE,o, pʼ-DDD,p, pʼ-DDE,p, pʼ-DDD のあわせて 6 種類が環境中で見つかっているが 、図には一例だけをあげていることに留意されたい。
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