コンクリート工学論文集
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  • 野澤 忠明, 小林 裕貴, 佐川 康貴
    2025 年36 巻 p. 1-11
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

    構造物の軽量化・長寿命化が可能な超高強度域合成繊維補強コンクリート(PVA-UFC)の構造利用を目指し,実橋梁の架け替えを想定した上部工の試設計を行うと共に,試設計された桁を製造し載荷試験によって,その性能確認を行った。引張抵抗を見込んで計算を行うことで,降伏耐力を比較的精度よく予測できた。本研究では,主鉄筋に高強度鉄筋を使用し,通常よりも高い応力度の制限値を設定したが,繊維によるひび割れの抑制効果により,ひび割れ幅は耐久性上問題のない範囲に抑えられた。これらのことから,超高強度・繊維補強といった従来のコンクリートと異なる特性を持つPVA-UFCであっても,道路橋示方書に準じた設計手法を用いて安全側の照査ができ,かつ,小断面化・軽量化が可能であると考えられる。

  • 郡司 康浩, 高橋 孝二, 菅野 秀人, 西田 哲也
    2025 年36 巻 p. 13-26
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/03/15
    ジャーナル フリー

    柱と袖壁の接続部には目地,袖壁脚部には水平スリットを設置するRC袖壁付き柱の設計に用いる骨格曲線について検討した。その結果,部材の内法高さに対する水平スリットの高さの比が小さいことや設計上の便宜性も考慮し,剛性評価では部材の内法高さ全体を袖壁付き柱断面と考えても,初期剛性や降伏点剛性低下率,剛域の設定については一般的な考え方が適用できることを示した。また,頭部では累加強度の考え方に基づき柱・袖壁それぞれの曲げ終局モーメントを足し合わせた値,脚部では柱単独の曲げ終局モーメントの値を用いることで,設計上適切な曲げ終局強度を算定できることも示した。本論の検討結果を用いれば,設計に用いる適切な骨格曲線を設定できる。

  • 岸本 豪太, 濱井 洋, 森田 浩史, 濱 幸雄
    2025 年36 巻 p. 27-36
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/15
    ジャーナル フリー

    本研究では,AE減水剤または高性能AE減水剤を用いたコンクリートに,4種類の化学混和剤(混和剤)をそれぞれあと添加して製造したスランプフロー(SF)で管理する流動化コンクリートについて,あと添加の混和剤種類が流動化コンクリートの諸性状に及ぼす影響を確認した。添加率あたりのSF増大量が小さい混和剤の方が経時でのSF低下量が小さく,流動化によるSF増大量が大きいと凝結時間が遅れる傾向にあった。増粘剤含有型の混和剤を使用した場合に,同等のSFにおけるSF400mmおよび500mm到達時間がやや長くなった。流動化後の空気量を5%以上とするか,あと添加の混和剤に高性能AE減水剤を使用することで耐凍害性を確保できることが示唆された。

  • 松澤 一輝, 山本 武志, 谷口 拓海, 大杉 武史
    2025 年36 巻 p. 37-47
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/15
    ジャーナル フリー

    福島第一原子力発電所の汚染水処理で発生する除染装置スラッジをアルカリ活性材料(AAM)で固化処理可能か検討するために,模擬物として硫酸バリウム(BS)とヘキサシアニドコバルト鉄酸カリウム(FCN)をAAMで固化した。既往の研究を参照しつつ物性の良否に対する判定基準を設定し,これを満たす「適切な配合」を探索した。先ず,H2O/母材比とSi/Al比とNa/Si比をパラメータとして固化体を作製した。メタカオリンと高炉スラグの混合物を母材としてBSを固化した系で「適切な配合」が見つかり,混練溶液の最適濃度(適切な液相組成)を2種類抽出した。次に,混練溶液を「適切な液相組成」に固定し,BS量と水量またはBS+FCN量と水量をパラメータとして「適切な配合」の範囲を明らかにした。BS系よりもBS+FCN系は固化可能な模擬物量が多かった。

  • 後藤 慶次, 李 権哲, 山上 大智, 尾崎 允彦, 佐藤 靖彦
    2025 年36 巻 p. 49-60
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/15
    ジャーナル フリー

    本研究では,開発したGFRPシートが力を受けることによって透明な状態から白濁化する現象に着目し,シートの応力状態を可視化する手法について検討した。GFRPシートの引張試験と付着試験を実施し,引張試験では引張力に応じて緯糸が白濁化すること,また,付着試験においては,はく離前は経糸が白濁化し,はく離後に緯糸が白濁化することが明らかになった。モデル検証試験から経糸もしくは緯糸の白濁化は,繊維と直交する方向に引張応力が作用することで発生した繊維束内の内部損傷(き裂)による現象と推定された。デジタル画像解析によって,GFRPシートの白濁化面積から「白濁化率」を算出し,白濁化率とひずみには高い相関関係があることを示した。

  • 藤澤 健一, 今井 隆太, 千々和 伸浩, 藤井 学
    2025 年36 巻 p. 61-69
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/15
    ジャーナル フリー

    下水道関連施設における硫酸劣化対策として,表面保護工法が主に用いられる。表面保護被覆の耐硫酸性については,試験室内での促進試験の事例はあるが,実施設での調査報告はほとんどなく,硫酸浸透・躯体劣化の機構は未解明であった。本研究では,約20年供用された施設において表面保護被覆の調査を行い,長期の劣化機構の解明を試みた。塗膜分析の結果から,硫酸劣化環境下では塗膜中を,硫酸が透過することが確認できた。透過した硫酸は,躯体コンクリートを徐々に劣化させることも確認された。硫酸によるpHの低下領域は,中性化深さより深くまでおよび,セメント硬化体へ影響を及ぼしていることが確認できた。

  • 北村 勇斗, 佐々木 一成, 石関 嘉一, 半井 健一郎
    2025 年36 巻 p. 71-81
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/15
    ジャーナル フリー

    材料押出方式の建設用3Dプリンタでは,モルタルは一般的に引張強度が低く,単独では引張応力が生じる部材に使用することが困難であるため,引張力を負担する補強方法が求められている。本研究では,連続した補強用鋼繊維をモルタルと同時に押し出して,連続繊維補強モルタルを積層する3Dプリンティング工法を用いて,連続繊維を部材軸方向に配向させた梁部材を積層した。梁部材は曲げ載荷実験により構造性能を確認し,実験結果を断面計算結果と比較することで補強効果を評価した。その結果,連続繊維により補強されたモルタル梁は曲げ耐力が向上し,計算値と同等の耐力を有していることが明らかとなった。

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