Dental Medicine Research
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33 巻, 2 号
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総説
  • 伴 信太郎
    2013 年 33 巻 2 号 p. 156-162
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2014/03/20
    ジャーナル フリー
    現在,世界的にヘルスケア・システムは大きな転換を迫られている.その要因は,急速な高齢化(日本はその最先端にいる),様々な専門職の誕生,ICT の急速な発展,住民・患者の質の高い医療・ケアの要求などである.医療者教育もそのような社会的ニーズに応えねばならず,大きな転換点に差しかかっている.これまでの医療者教育は,専門的な知識を,これから専門家になろうとする人達に伝達していくことが主であると考えられてきたが,現在は知識は誰でも情報として手に入る時代であり,最早専門的な知識を伝達することは教育の一部分を占めるに過ぎない.これから専門領域に進もうとする人たちに求められる能力はこのようなものです(目標)と明確にした上で,ʻモチベーションを高めるʼ工夫をすれば,あとはグループ学習や自学自習が可能な時代になっている.既にライセンスを持って臨床している人は生涯教育として自分で勉強していかざるを得ないが,その為には,学生でも研修医でも自学自習を進められることが望ましく,かつ現代はそのことが可能な環境になってきている.従って,モチベーションを喚起するさまざまな学習方略を工夫することが大切な時代になっているのである.
平成24年度上條奨学賞(教育業績部門)受賞
  • Tomio INOUE
    2013 年 33 巻 2 号 p. 163-168
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2014/03/20
    ジャーナル フリー
    As society has aged, the proportion of individuals aged ≥75 years has increased, resulting in a higher number of patients with underlying comorbidities presenting for dental care. However, dental care in Japan is not currently capable of accommodating such changes, and it is incumbent upon universities to train new dentists for the requisite skills. The system must be able to deal with three challenges: (1) provide satisfactory and safe dental care for patients with underlying comorbidities; (2) maintain close cooperation with physicians; and (3) maintain and restore oral function. Showa University is working quickly to reform its dental education system with these challenges in mind.
原著
  • ChiaHao KUO, Mariko TAKAHASHI, Koutaro MAKI
    2013 年 33 巻 2 号 p. 169-177
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2014/03/20
    ジャーナル フリー
    The interactions between orofacial muscles and skeletal patterns are widely recognized as significant factors in craniofacial growth. Many studies have suggested that the vertical facial growth pattern correlates with occlusal forces and the activity of masticatory muscles. In particular, it has been suggested that occlusal forces produced by masticatory muscles are converted into physiological stress at the condyle in the form of functional strain. In such circumstances, the dimensions and morphology of the condyle ought to be affected. The aim of this study is to test the hypothesis that low-angle subjects with larger occlusal forces tend to have mandibular condyles with a larger surface area than high-angle subjects. Cone-beam computed tomographic scans were obtained from 14 Japanese adult subjects (17 to 33 years old, 7 high angle and 7 low angle) at 60 kV and 10 mA. Occlusal force was measured by pressure-indicating films, and the surface area of the condyle was calculated from axial CT data. The correlation between occlusal conditions and the surface area of condyles was compared between the two facial groups. We found that the low-angle group had a significantly larger surface area and volume of condyles than the high-angle group and that there was a positive correlation between occlusal forces and condylar surface area. Our findings demonstrate that occlusal force is one of the important factors that affect the mechanical environment of the condyle.
症例報告
  • 宮崎(両川) ひろみ, 宮崎 芳和
    2013 年 33 巻 2 号 p. 178-184
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2014/03/20
    ジャーナル フリー
    中程度の叢生を伴う症例の矯正治療では,歯列の拡大を伴う非抜歯とするか,便宜的小臼歯抜歯とするかの判断が難しい.歯の移動が顔貌や歯周組織に及ぼす影響の事前の予測が重要となるため,総合的な判断を要するが,既存の抜歯基準のみでは定量的な判断が困難な現状となっている.本症例は初診時年齢15 歳9 か月の女子で,上顎前歯の叢生と犬歯唇側転位を主訴に来院した.症例は上顎歯列に-5.5 mm のアーチレングスディスクレパンシーを伴うAngle I 級叢生症例で,セルフライゲーションタイプのプリアジャステッドエッジワイズ装置(0.022″×0.028″スロット)を用い,非抜歯での治療を行った.動的治療期間11 か月にて叢生の解消とinterincisal angle の改善が得られたため,エッジワイズ装置を撤去し保定観察を開始した.下顎第二大臼歯の萌出スペース不足など,治療後の歯列咬合には非抜歯の方針に基づく問題点も見受けられたが,顔貌と歯列の調和を含め総じて適切な治療方針であったと考えられたので本治療について考察し報告する.
  • 間所 睦, 宮崎 芳和
    2013 年 33 巻 2 号 p. 185-192
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2014/03/20
    ジャーナル フリー
    テンポラリーアンカレッジデバイスの出現により,矯正治療における歯の移動限界は拡大した.一方,治療方針決定のための明確な診断基準は定まっていない現状となっている.本論文では,テンポラリーアンカレッジデバイスの使用により,非外科・非抜歯にて矯正治療を行った骨格性反対咬合の矯正治療について考察し報告する.患者は初診時年齢30 歳5 か月の女性で,受け口の改善を主訴に来院した.症例は前歯の反対咬合と過蓋咬合を伴う骨格性下顎前突で,上下顎前歯の早期接触による下顎の機能的前方誘導を伴うものの,側面頭部X 線規格写真分析からは外科矯正の可能性も示唆された.そこで下顎位確認のため前歯の早期接触を解消後に再評価を行った結果,テンポラリーアンカレッジデバイスを利用した下顎臼歯の遠心移動を前提として,非外科・非抜歯の方針と診断した.治療経過は,動的治療期間2 年5 か月にて全顎的に被蓋が確立されたのでエッジワイズ装置を撤去し保定観察開始とした.本治療を通じ,テンポラリーアンカレッジデバイスの有用性が示されたと同時に,骨格性下顎前突で外科矯正と非外科の治療方針のボーダーラインとなる症例における明確な判断基準の必要性が示唆された.
  • 市川 雄大, 山口 徹太郎, 槇 宏太郎
    2013 年 33 巻 2 号 p. 193-197
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2014/03/20
    ジャーナル フリー
    不正咬合の治療において永久歯の抜去を必要とする場合,通常は上下顎第一小臼歯を選択することが多い.しかし,形態異常や失活歯,重篤な齲蝕を有する歯などが存在する場合,これらが抜歯の対象となり得る.そのような場合,非対称な左右での歯種の違いや,歯肉ラインの乱れなどの審美的な問題,かつ,適正な下顎運動路など機能的な問題を考慮する必要がある.本症例は初診時年齢27歳3か月の女性,上顎の前突感および叢生を主訴に来院した.保存不可能な上顎右側側切歯を伴う骨格性上顎前突症例である.叢生,正中線の不一致および水平的被蓋改善のため,保存不可能な上顎右側側切歯,上顎左側第一小臼歯および下顎両側第二小臼歯を抜去し,マルチブラケット装置による治療を行った.本症例においては,上顎右側犬歯が低位唇側転位のためその移動量および唇側歯槽骨の非薄化から歯の移動による歯肉退縮の可能性があり審美的な面が損なわれることが懸念されたが,歯の移動のみで審美的かつ機能的咬合が得られた.しかしながら,保定に影響を及ぼす要因には歯周組織の再編,咬合,軟組織と硬組織のバランスなどが挙げられるように,今後も下顎運動時の咬頭干渉に留意しながら長期経過を確認していく必要性が考えられる.
臨床報告
  • 山川 道代, 高橋 浩二, 宇山 理紗, 武井 良子, 池松 武直, 横山 薫
    2013 年 33 巻 2 号 p. 198-204
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2014/03/20
    ジャーナル フリー
    〔目的〕いびきや睡眠中の無呼吸を主訴に当科を受診する患者には,すでにOSAHS の診断がある患者とない患者がいる.今回われわれはこれら2群の比較を行い,さらに,当科で作製した口腔内装置の効果について検討を行った.また,OSAHS 患者のセファロ分析により,口腔内装置装着前後の顎顔面形態の変化を検討した.〔方法〕いびきや睡眠中の無呼吸を主訴に当科を受診した患者242名を対象に,すでに診断のある患者と当科受診後にOSAHS であると判明した患者のBMI,ESS,AHI の比較を行った.さらに当科で作製した口腔内装置の効果をAHI 値の改善率を用いて検討した.また,セファロ分析を用い,AHI の変化と口腔内装置装着前後の顎顔面形態の変化の関係性を検討した.〔結果〕242名中,OSAHS の診断のない患者は71 名で,そのうち44 名は当科受診後にOSAHS であることが判明した.すでに診断のある患者と診断のない患者のBMI,ESS,AHI の差はなかった.口腔内装置装着によりAHI は有意に改善し,重症患者においての有効性も確認された.さらに,セファロ分析において,口腔内装置装着により気道が拡大することが確認された.〔結論〕本研究の結果から潜在性のOSAHS 患者が多く存在する可能性があることが示唆された.重症患者も含めOSAHS 患者に口腔内装置はきわめて有効であることが明らかとなった.
クリニカル・テクノロジー
  • Yuji SATO, Keiichiro UCHIDA
    2013 年 33 巻 2 号 p. 205-208
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2014/03/20
    ジャーナル フリー
    Purpose: The aim of this report was to introduce a technique for removing a cement-retained superstructure from the implant abutment easily without any special instrumentation.
    Procedures: A cement-retained superstructure was fabricated using conventional methods. A hole (diameter: ≤1 mm) was prepared from the outer to inner surface of the superstructure before casting, with a horizontal opening for removal. A machined carbide bur was inserted into the horizontal hole for removal of the superstructure. The bur was pressed downward to check whether the superstructure could be removed properly. When removing the superstructure, the bur was inserted into the opening of the superstructure and pressed downward.
    Conclusion: A machined carbide bur applied in a horizontal opening fabricated in the cement-retained superstructure was effective for easy removal. Furthermore, this technique reduces the pain due to impact force when using a conventional removing device.
  • 船登 雅彦, 小野 康寛, 馬場 一美
    2013 年 33 巻 2 号 p. 209-213
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2014/03/20
    ジャーナル フリー
    覚醒時の上下歯列接触癖(Tooth Contacting Habit; TCH)は顎関節症の原因因子として注目されてきている.TCH の評価は質問票や問診に基づくため信頼性が低く,TCH を客観的に評価することができなかった.著者らはTCH を客観的に定量化するために「TCH 測定システム」を開発し,臨床への導入をすすめている.
    このTCH 測定システムはコンピューターと専用ソフトウェアからなり,E メール機能を有する市販の携帯電話さえあれば,ランダムに送信されるE メールを受信した時にTCH の有無を確認し,空メールを返信するだけで,データが蓄積され,TCH の出現頻度や出現状況を自動分析することができる.
    本稿ではTCH 測定システムの概要と初期の運用実績および今後の発展性について紹介する.
臨床講座
  • 田中 晋平, 舘 慶太, 宮内 知彦, 上村 江美, 馬場 一美
    2013 年 33 巻 2 号 p. 215-220
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2014/03/20
    ジャーナル フリー
    デジタル技術の発展により歯科医療は変革しつつある.例えばインプラント治療では,検査,診断,治療計画,手術支援,補綴装置の製作などにデジタル技術が導入されている.補綴治療全般では従来の間接法に替わり,CAD/CAM や光学印象採得など従来の補綴治療の根幹を変える技術が出現したことから,ジルコニアなどの高密度焼結体の加工が可能となり,メタルフリー補綴の普及を加速させた.一方で矢継ぎ早に提供される新技術への違和感や,従来の技術に対する信頼感が導入に二の足を踏ませていることも否めない.そこで,本稿では,補綴治療におけるデジタル・デンティストリーの現状と今後の可能性について最新情報を提供する.
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