EPMAを用いて硫化鉱物の定量分析を行なう際,珪酸塩,酸化鉱物などに対して用いられているBence and Albee法が適用できるか否かについて検討し,合成硫化鉱物を用いてα-factorを求めた。結果を要約すれば次のようである。 (1)Cu-S, Fe-S:およびCu
2S-Bi
2S
3系合成硫化鉱物より求めたCu,Fe,BiおよびSに対する検量線は真濃度(C)と相対強度(K)との比と真濃度との関係は直線的となり(第1図,第2図),第(1)式を満足させる。 (2)Cu-Fe-Pb-Bi-S 5成分系硫化物より求めたα-factor(第4表)から計算したβ-factorの値と測定値より求めたβ-factorの差はそれぞれ0.01,0.02以下の値であり,CuおよびSに対する相対誤差はそれぞれ1%,2%である。 (3)上記5成分系について,それぞれの元素のα-foctorは第4表のようで,この値から求めた分析値は金属元素について1%以下の相対誤差,Sについて2%以下の相対誤差の精度をもって考えることができる。 (4)第4表のα-factorを用いて天然産emplectite, aikiniteおよび合成idaiteを分析した。分析値は第5表のようであり,その値は理論値とよく一致する。 (5)今回の実験結果は広く珪酸塩,酸化鉱物などの分析に対して用いられているBence and Albee法が硫化鉱物の分析に対しても適用できることを示している。
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