宝石学会(日本)講演会要旨
平成18年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
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  • James E. Shigley
    セッションID: 1
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/10
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  • 小倉 繁太郎
    セッションID: 2
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/10
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    Black and white opals have been analyzed, adopting both of small area and 2D- spectrometers. It is concluded that both methods have been useful for evaluating the structural colors of opals existing inside the opal samples.
  • 矢野 晴也
    セッションID: 3
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/10
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    円形ブリリアント・カット・ダイヤモンドについてのカット評価基準が、米国GIAの基準に合わせ、我が国においても改定され、本年4月から施行されている。この中で、ガードル部についてディギング・アウトとペインティングの概念が判定基準の一つとして取り入れられた。〈BR〉 本来三次元構造体であるカットの判定は三次元的な観点から行われるべきであり、このことについては、既に1997年の本学会で取り上げ、ガードル部の重要性について報告しておいた。今般の上記概念が判定基準に正式に取り上げられたことは一つの大きな進歩であり、歓迎すべきであると考えられる。そこで、前回の報告をさらに敷延することで今回定められた基準を検証することとする。
     円形ブリリアント・カットのガードル部は16の山と谷で構成される波を打っている。本来ならばこの山と谷の厚さはそれぞれに均等であり、全ての山と谷はそれぞれテーブル面に平行な同一平面上に位置し、規則正しい波動を示していなければならない。ディギング・アウトとペインティングがなされていると、前者の場合には一部の山が低くなり、後者の場合には厚くなる。即ちガードルが規則正しい波動を示さなくなる。大波小波あるいは不均一な波を打つことになる。
     この結果として、ガードル部に直接接する上下のガードル面の傾斜とその方位がそれぞれに変化し、光学的効果も当然変化する。また石の体積も多少の変化を示す事になる。これら諸効果をもたらすが故に、ディギング・アウトとペインティングが基準に取り入れられた訳であるが、評価の実施に際しては、現行の目視による判定方法にやや曖昧な点がある。例えば一部のガードル厚さが他と比較して大きいと測定された場合、それがクラウン側に起因するものか、パビリオン側に起因するものかは、現行法では目視に頼らざるを得ない。またガードル部にエキストラ・ファセットが存在している場合には正確なガードル厚さが測定出来ない事になる。これらの難点を克服回避してより正確なガードルの状況を把握する事が必要である。これらのことから、より客観的な評価について試案を申し述べてみたい。先に述べた如く、上下ガードル面の傾斜角と方位角はガードルの厚さの変化により一意的に変化し、しかもこれらの角度は現在の計測装置、ダイヤメンションなど、で計測表示されているので、これらの数値を加工し間接的ながらガードル厚さの変化を知ることが可能な筈である。この計算方式と判定方法について報告する。
     光学的な効果や歩留まりへの影響についても付け加え報告する。
  • 神田 久生, 杢野 由明, 茶谷原 昭義
    セッションID: 4
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/10
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    気相法で合成されるダイヤモンドは薄い膜状のものしか得られないといわれていたが、最近、ミリサイズの厚みを持つ単結晶のダイヤモンドも合成されるようになり、宝石への用途も可能になってきている。したがって、宝石関係の人たちも気相合成ダイヤモンドに関心を持つようになってきた。本研究では、ミリサイズの厚みをもつ気相合成ダイヤモンド結晶について、形態と着色、発光の特性を調べたのでその特徴を紹介する。
    この結晶は産総研において気相法で合成された結晶で4x4x1.5mmのサイズの四面体である。 これは、高圧合成ダイヤモンド基板の{001}表面にホモエピタキシャル成長させたものであるためこのような形態を示す。成長した結晶の側面には微細な結晶がブドウのようにランダムに付着していて、この部分は多結晶状になっている。上面は(001)の単結晶表面である。しかし、砂丘のようにうねった表面パターンがみられる。つまり、きちんとした(001)面ではなく、微斜面から形成されている。
    この結晶は濃い茶色を呈しており殆ど不透明である。カソードルミネッセンス(電子線照射したとき発生する発光)で発光特性を調べると、次のような特徴が見られた。
    1)発光強度分布はうねった表面パターンに対応していた。微斜面の角度などによって不純物の混入具合がことなり、そのため発光強度が異なるためと思われる。
    2)発光スペクトル測定によると、235, 389, 467, 532, 575 nmの波長にシャープなピークが観測された。これらはいずれも既報の発光ピークである。この中でも、235 nmピークは自由励起子の発光で、結晶完全性が高いほど強度が大きくなる。本結晶でこのピークが観測されたことは、結晶性がよいことを示すが、発光強度は小さいため、結晶完全性が優れているとはいいがたい。また、窒素が関連する575nm(NVセンターと呼ばれる)ピークがあることから、窒素不純物が含まれているといえる。
    3)結晶格子がくずれたときBand Aと呼ばれる430nmにブロードなピークが出現することがよく知られているが、このBand A発光は、この結晶にはほとんどなかった。しかし、周囲の多結晶部分と接する単結晶領域に局所的に観察された。多結晶領域と単結晶領域との間で結晶格子のミスマッチがあり、そのため、このBand Aが形成されたといえる。
    上記2)のシャープなピークを高分解能で測定すると、多結晶領域と単結晶領域の境界付近で、ピークの分裂やピーク波長のシフトがみられた。これは結晶格子がひずんでいることを示す。
  • 李 宝, 伊藤 利道
    セッションID: 5
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/10
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    【はじめに】 基板材料としてよく使われているサファイア(Al2O3)単結晶の特性に関して評価を行う場合、サファイアは広いバンドギャップ(~8.5eV)を持つ絶縁体であるため、光物性的な評価方法が適しているが、適当な励起光源がないため、しばしば電子線による評価が行われている。特に合成サファイアの場合は、電子線励起による酸素欠陥への影響について、カソードルミネッセンス(CL)によう研究結果が報告されている。これに対し、発光色を制御するため処理した天然サファイアについては、これまでほとんど報告がなされていない。本研究では、天然及び合成サファイアについて、その表面及びその直下の電子ビーム照射による変化を詳細に調べた結果、サファイアの代表的欠陥であるF+センター (発光波長~330nm)やCr3+センターの発光特性に対する電子線照射効果が、サファイアの種類に強く依存し、特に試料温度や水素プラズマ照射により、かなり異なることを見出した。
    【実験】 Be拡散処理した天然サファイア、未処理天然サファイアと2種類の合成サファイアについて、F+センター発光強度の電子ビーム照射時間依存性を調べ、電子ビーム照射効果に対する試料温度依存性、アニール処理や水素プラズマ照射による影響を調べた。各試料に対する電子線照射は、加速電圧を一定(15kV)とし、ビーム電流を1×10-7~2×10-6 Aの範囲で変化させて行った。また、試料温度は、室温(RT)から85Kまで変化させた。水素プラズマ照射は、試料温度900℃、水素ガス圧力5KPa、水素流量100sccmの条件で、2時間行った。
    【結果・考察】 天然処理石は、他の試料に比べ、電子ビーム照射による変化が低照射量で生じ、高照射量で飽和するF+センターの発光強度が低かった。一方、合成石は天然処理石に比べ、発光強度が強く、その試料温度依存性が大きかったのに対し、天然処理石は試料温度による変化が少なかった。他方、水素プラズマ照射に対しては、合成石では変化が殆んど無かったが、天然処理石の場合、発光センターの強度を含め試料の色やピークも変化することが判明した。これらより、天然処理石の場合には、温度依存性が小さいため、励起キャリアの拡散長が熱的な影響をあまり受けない程度に短いことが示唆され、合成石の場合には、試料温度の上昇とともにキャリア拡散長が大幅に増大するため、明瞭な温度依存性が現れるものと考えられる。また、水素プラズマ処理すれば、F+センターの発光が抑制され、Cr3+センターの電子状態にも影響を及ぼすが、それ以外にも試料の変色現象として現れ、発色に関わる不純物に対しても電子状態が変化することを見出した。水素プラズマ照射による変色に関しては酸素雰囲気でのアニール処理でほぼ元の発色に復元できるが、電子状態については完全には回復できないことがしばしば存在した。これらの結果から、天然処理石は電子ビーム照射、アニール処理、あるいは水素プラズマ照射により、変化しやすい電子状態の発光センターを持っていることが分かる。さらに、F+ センターとCr3+センター以外にも、3eV付近に観測される発光ピークについて、時間分解フォトルミネセンスにより調べた結果、明瞭な試料依存性があることが明らかになった。
  • 林 政彦, 村杉 亜以子, 山崎 淳司
    セッションID: 6
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/10
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    ルビーの特徴である赤色の発光について、カソードルミネッセンス(CL)を測定し、そのCLの波形から、ルビーに含まれる微量元素の濃度との関係について調べた。その結果、下記のことがわかった。
     1)677.5nm、697.5nm、701.2nm、717.0nm付近にシャープなCLが観察され、これらのピークは、Cr203の含有量が増加するにつれて、長波長側にシフトする傾向が見られた。
     2)CLの強度はCr203の含有量が約0.4wt%の時が最も高く、過剰のCr203は濃度消光が引き起こされ、CLの強度が低下することがわかった。
     3)加熱によってCLのピークが長波長側に大きくシフトする傾向が見られた。これは、加熱処理によってCr203が拡散し、そのため格子定数が伸張したためと考えられる。
     このように、CLの波形から不純物や欠陥のエネルギー準位、濃度、組成分析、歪み量などを調べることができるため、現在では物性評価や機能評価に広く用いられている。今回は宝石の評価への一つの可能性としても言及する。
  • 奥山 宗之, 川野 潤, 宮田 雄史
    セッションID: 7
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/10
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    今日では、サファイアの熱処理は一般的に行われている。特にベリリウムを添加したパパラチャ・サファイアが市場を混乱させたことは記憶に新しい。現在の所、これらの熱処理はサファイアの融点直下で行われていると信じられており、鑑別もこのような高温での処理を前提としている。しかし、さらに低い温度での熱処理がなされ、これが鑑別をすり抜けている可能性は否定できない。
     そこで、本研究ではサファイア中での添加元素の拡散定数を求めることによって、試料中での当該元素の濃度分布を測定することにより、処理温度、時間を推定するなどの新しい鑑別手段を提供するための基礎データの収集を試みた。
     前述のパパラチャ・サファイアを想定して、添加元素としてBeを選択した。  ただしBeは毒性が高く、実験を行う際に危険を生じる可能性がある。そこで本研究では、ベリリウムの拡散について、まず分子動力学法(Molecular Dynamics、以下MD)を用いたコンピューターシミュレーションを行った。MDは、費用もかからず危険性も無いだけでなく、原子レベルでBeの拡散挙動を知ることが出来る。さらにこの結果を用いれば、効率的に実験条件を設定することが可能であるため、シミュレーション結果に基づいて高温路炉における実験を行い、総合的にコランダムにおけるBeの拡散挙動を調べた。
     MD計算を行うにあたっては、新たにAlおよびBe原子に働く力のパラメーターを導出した。このパラメーターは、コランダム(α‐Al2O3)、ブロメライト(BeO)とクリソベリル(BeAl2O4)の物性を精度よく再現する。このパラメーターを用いて、コランダム中にBeを添加した系でMD計算を行ったところ、融点直下の2000℃付近のみでなく、約1000℃までBeが拡散した。
     MD計算の結果より比較的低温でも拡散が起こりうる可能性があることが明らかになったので、800, 1000, 1200, 1450℃において市販のベルヌイ合成のホワイト・サファイアを酸化ベリリウムとともに加熱した。この結果、1450℃の加熱で色の変化を示した。この試料の組成分析を行った結果、実際にBeが拡散していることが確認された。
     これらの結果より、一般的な加熱温度(1800℃)より低温(1450℃)でもBeは拡散することが明らかになった。さらに、MD計算で求められたBeの拡散定数と、高温炉実験で得られた結果を比較すると、この実験系でのシミュレーションは有効であるとみなせる。この結果は、新たな鑑別手段としての可能性を示唆している。
  • 森 孝仁, 奥田 薫
    セッションID: 8
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/10
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    ルビーは、日本の市場で人気の高い色石の1つである。中でもミャンマー産のルビーは人気が高く、日本で流通しているルビーは、加熱処理によって美しい赤色を呈するMonghsu鉱山のものがほとんどであった。
     しかし、最近では、加熱処理技術が向上し、条件や添加物を変えることにより、様々な産地のコランダムから理想的な色相のルビーを作り出すことが可能になってきた。これらの処理は、時として、宝石の希少性を大きく左右し、本来の価値を曖昧にするだけでなく、処理条件が一般的に非公開であることが多いことから、取り引きの現場における不安要素となってきている。
     そのため、最近では、研磨のみが施された非加熱のルビーを求める声も多くなり、注目が高まってきている。その結果、加熱処理が施されているかどうかの判定を要求されるケースが激増してきた。しかしながら、この判定方法はまだ確立されておらず、世界各国の鑑別機関によって、判定結果が異なる場合も珍しくないのが現状である。また、現地から非加熱として仕入れてきたものに加熱処理の痕跡が認められたりすることもあり、市場も混乱しているように感じる。
     今後の日本の宝石市場において、ルビーの加熱処理の看破は、絶対に必要な技術であると考えられる。日本において、いまだ確実な方法が確立されていない要因の一つとしては、現在の日本の市場では、履歴の確実な非加熱のルビーを見る機会が非常に少ないということが挙げられる。
     加熱処理の痕跡を発見するためには、まず非加熱ルビーの特徴を徹底的に調査し、そのデータを収集することが必要である。非加熱ルビーのインクルージョン等の特徴については、既に先人の手によって研究されているが、ここで初心に帰り、改めて、現状のデータを収集・分析を行ったので、その結果について報告する。
     まず、ミャンマーのMogok鉱山からルビー原石を入手し、通常の研磨のみを行った。これらの手順においては、全て当方の監視下で行った。多岐に渡る天然石の特徴をできるだけ網羅するために、また、様々な入手経路を想定し、Mogok鉱山内の約30の鉱区から同様のサンプルを収集した。収集したルビーについて、インクルージョン、可視分光吸収特性、含有微量元素の測定を行った。
     今後は、今回検査した宝石を用いて、実際に、様々な条件下で加熱処理実験を行い、その変化を調査・報告したいと考えている。
  • 江森 健太郎, 間中 裕二, 横山 照之
    セッションID: 9
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/10
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    2005年末頃から、天然ブルー・サファイアが“新技法加熱処理が施された”ブルー・サファイアとして、タイのマーケットにはいってきた。すぐさま、それらのブルー・サファイアはベリリウム(Be)加熱拡散処理であることが判明したが加熱方法自体、未だ明らかにはされておらず、軽元素が色にどのような影響を与えているのか、解明されてはいない。その上、処理方法は以前にイエローやオレンジのサファイアにBe拡散加熱処理を行っていたときの手法よりも複雑化しているようにも見える。
     これら“新技法加熱処理が施された”ブルー・サファイアを光学顕微鏡で観察すると、通常の加熱処理が行われたブルー・サファイアに含まれるインクルージョンが観察され、いくつかのサンプルでは通常の加熱処理では普通見られないインクルージョンが観察された。そういったインクルージョンには、極微小のもやのかかった小片や円形状の特徴で、結晶の表層近くに観察される。
     光学顕微鏡観察に加え、このBe拡散加熱処理が施されたと思われるサンプルに高度な手法の観察を行った。現在、この新技法が施されたブルー・サファイアを鑑別する一番信頼性の高い方法は、数ppmのオーダーで軽元素を分析可能なレーザーアブレーションICP質量分析装置(LA-ICP-MS)を用いるか、二次イオン分析装置(SIMS)を用いることである。
  • 北脇 裕士, 阿依 アヒマディ, 岡野 誠
    セッションID: 10
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/10
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    一昨年9月に鑑別表記のルール改定が行われ、コランダムについては大きな変更と新たなカテゴリーが設けられた。このきっかけになったのが、2002年以降突如として出現したBe拡散処理されたパパラチャ・カラー・サファイアである。当初は輸出国側から一切の情報開示がなく、“軽元素の拡散”という従来にはなかった新しい手法であったことから、業界としての対応も後手を踏む結果となった。その後の研究によってある程度の理論的究明には進展が見られたが、Be(ベリリウム)の検出にはSIMSやLA-ICP-MSなどのこれまでの宝石鑑別の範疇を超えた高度な分析技術が必要となり、今後の鑑別技術のあり方を問われる結果となった。
     Be拡散による主な色変化は2価の元素であるBeがコランダム中の3価のAl(アルミニウム)を置換することによって生じるトラップド・ホール・カラ・センターによってイエローが生じることによって説明がなされている。したがって、特にイエロー系のサファイアは加熱・非加熱あるいはBe拡散処理の識別が極めて困難な現状である。
     さて、今年の初め頃からバンコクのマーケットではBe拡散処理されたブルー・サファイアが見られるようになり、宝石業界の新たな脅威となりつつある。Gem Research Swiss lab (GRS)では2005年の11月にBe拡散処理ブルー・サファイアを確認しており、今年の初め頃より増加の傾向にあると報告している。日本国内でも少数ながら発見されており、宝石鑑別団体協議会(AGL)では各会員機関に注意を呼びかけている。
     GAAJラボで確認したBe拡散処理ブルー・サファイアには特徴的な円形~らせん状のインクルージョンが見られ、これが一般鑑別における重要な手がかりとなる。しかし、類似したインクルージョンはBe処理されていないものにも見られることがあり、最終的にはLIBSあるいはLA-ICP-MSによる分析が必要となる。これらのBe拡散処理されたブルー・サファイアからは数ppm~10数ppmのBeが検出されており、色の改変を目的に意図的にドープされたものと考えられる。
     さらにこれとは別にLA-ICP-MSにおいて1ppm以下のBeが検出されることがあり、これらはBe拡散処理に用いたルツボの再利用あるいは電気炉の汚染による偶発的な混入と推測されるが、このようなケースでの情報開示について国際的な議論がなされている。
  • 阿依 アヒマディ, 北脇 裕士
    セッションID: 11
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/10
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    ブラジルのパライバ州のMina da Batalha鉱区及びリオグランデ ド ノルテ州のMulunguとAlto dos Quintos鉱区から産出された銅とマンガンを含有するブルー~グリーン色調のエルバイトは、1990年の初期に宝石業界において“パライバ”トルマリンと呼ばれるようになった。2001年からナイジェリアの西部イバダン州のEdeko鉱山、そして2005年の中頃、モザンビークのAlto Lingonha地域からも銅を含有するエルバイトの新しい供給源が発見され、ブルー~グリーン、バイオレット、ピンクなどを有するトルマリンが産出されている。色や外観だけでなく化学組成もブラジル産エルバイト・トルマリンと重複しているため、標準的な宝石鑑別や半定量化学分析値 (EDXRF分析により得られる)によってブラジルの素材との識別は困難である。
     本研究では、ブラジル、ナイジェリア及びモザンビークのそれぞれの産地が既知の相当量の銅を含有する198個以上のブルー~グリーンのトルマリンをレーザーアブレーション・誘導結合プラズマ分析装置(LA-ICP-MS)を用いて分析した新しい化学データを示し、さらにこれらのデータをどのように原産地決定に用いるのかを評価した。
     上記の産地からのトルマリンを区別するのに化学分析値が有効であることを示すため、副成分と微量元素の2つの異なった組み合わせ;(Ga + Pb)対(Cu + Mn)、(Cu + Mn)対Pb/Beの比率のプロッティング、微量元素の組み合わせ;Mg-Zn-Pbによるプロッティングをした。
     LA-ICP-MS分析によって得られた定量化学分析値では(Ga + Pb)対(Cu + Mn)、(Cu + Mn)対Pb/Beの比率のプロッティングやMg-Zn-Pbによって、3カ国から産出されたトルマリンを区別することができる。また微量元素の特徴として、ナイジェリア産トルマリンはより多くのGa、Ge及びPbを含むのに対してブラジル産はMg、ZnおよびSbが多い。モザンビークからの新しい含Cuトルマリンは、Be、Sc、Ga、Pb、およびBiに富むが、Mgを欠いている。
     各産地のトルマリンの宝石学的特性や蛍光?線分析による化学組成が重複しているため、標準的な分析手法においてはこれらの地理的な産地を識別するのが困難である。世界の主要鑑別ラボや各国の業者団体はこのような状況を踏まえ、産地を問わずCuやMnを含有するブルー、ブルー~グリーン、グリーン、バイオレットのエルバイト・トルマリンを“パライバ・トルマリン”と呼ぶことに同意したが、本研究では産地鑑別にはより高度な定量化学分析が必要であることを強調する。
  • 前田 敬子, 小倉 繁太郎
    セッションID: 12
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/10
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  • 岡野 誠, 北脇 裕士, 阿依 アヒマディ, 神田 久生
    セッションID: 13
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/10
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    GAAJラボラトリーにおける最近の2つのトピックスについて報告する。
    ◆HPHT処理実験
    1999年3月、LKIの発表以降、ダイヤモンドのHPHT(高温高圧)処理が世界的な関心事になっている。当初、HPHT処理のプロデューサーはGE社に限られていたが、その後Nova Diamond社がこれに続き、最近では米国のSundance社や韓国のILJIN Diamond社も新規参入している。LKIの発表では看破不可能と言われたHPHT処理も、世界の主要宝石鑑別ラボでの精力的な研究の結果、現在ではかなりのレベルまで看破出来るようになっている。しかし、プロデューサーによって処理の技術や原材のダイヤモンドのタイプも微妙に異なることが考えられ、今後とも継続的な研究が必要である。
      GAAJラボではLKIの発表当初から物資材料研究機構とのHPHT処理ダイヤモンドに関する共同研究を行っている。これまで、タイプ?のブラウンの脱色・ピンク化やタイプ?のブラウンのイエロー~グリーンへの変化についての実験・考察を行ってきた。
      今回はタイプ?bのブラウンをHPHT処理してブルーの色調を誘発する実験を行い、その処理前後の拡大検査、紫外―可視分光分析、赤外分光分析、325・488・514・633nmレーザーによるPL分析による変化を捉えることができた。また、特殊なタイプ?aのケープ・イエローを処理してオレンジ・イエローにする実験を行い同様に処理前後の分析を行った。
    ◆マスグラバイトとターフェアイトの鑑別
      マスグラバイトとターフェアイトはコレクター・ストーンとして知られた宝石である。しかし、その宝石学的特性は多くの点で重複しており、その識別は極めて困難なアイテムである。標準的な鑑別手法では識別不可能であるが、定量化学分析、ラマン分光分析および?線粉末回折分析などのラボラトリーに技法を用いることによって識別が可能とされている。
      今回、およそ100ピースのターフェアイトもしくはマスグラバイトとして供されたサンプルについて紫外-可視分光分析、EDXRFによる半定量化学分析、顕微ラマン分光分析を行い、これらを詳細に検討することで両者が正確に識別できることが見出された。
  • 藤田 直也
    セッションID: 14
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/10
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    コパルはこはくよりも若い樹脂であり、重合がこはくに比べまだ不十分であるためにあまり安定していないとされる。今回はコパルを加熱し、前回発表したこはくと比較しながらその変化について調査をする。
  • 高橋 泰, 赤羽 久忠, 室井 克則, 國香 正稔, 今井 裕之
    セッションID: 15
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/10
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    北アルプス立山連峰の南西側に立山カルデラと呼ばれる大崩壊地帯がある。この崩壊地の底に立山火山の火口湖が3つあり、その一つが立山温泉新湯(以下新湯と称する)である。1856年(安政5年)の飛越地震以来、冷泉から温泉になったと記録されており、PH現在でも70度を少し下回る温度を維持している。明治時代には魚卵状珪華(別名玉滴石)を産出し、その産状は世界的にも珍しいものである。我々は、立山カルデラ砂防博物館の学芸員を中心に2002年以来、毎年調査を続けてきた。その結果、新湯の地質と新湯産オパールの産状が明らかになったのでここに報告する。
     一般に無色、白色、灰色のコモンオパールは多く見られるが、特に白色のものは貝殻様の堆積が見られる。大型のものは、厚さ10~20cm。はぼ水平堆積した様子が見られ、池底で形成されたことを示唆する。小型のものは旧火口壁に残存する温泉堆積物中に幅数cm、長さ20~30cmの脈として産出する。
     この調査を通して注目に値する発見が2件あった。一つは遊色効果を示すオパールが発見されたことである。プレシャスオパールは温泉堆積物中のコモンオパール脈に伴って産出することが多い。魚卵状珪華を採掘していた頃の水面は現在よりも4~5m高く、その当時の温泉沈殿物がすり鉢状の旧火口壁に残存している。つまり、プレシャスオパールは現在の水面よりも高い位置に産するため、明治時代の堆積と考えられる。一般に幅1~2mmの脈状で面積は1平方?以下の場合が大半である。全体に脆く、カット可能なものは現在見つかっていない。しかし、調査中に池底の再堆積層中にも数mm程度のものが見つかったため、現在も堆積中である可能性が出できた。
     もう一つは魚卵状珪華の再発見である。小さな砂粒を核とし、マントル部分を無色透明~白色不透明のオパールが構成する粒状のもので、その形状はまさに魚卵状を呈する。現在見られるものは当時の残存物であり、直径2mm程度が一般的だが、5mmを超えることも珍しくない。その美しさから、明治時代には日本産鉱物として世界中に売られていたと聞く。調査中に当時のズリ跡から破片や塊状の魚卵状珪華がみつかった。採掘当時の美しさはないが、中には母岩付きのサンプルも採取できた。これらの試料は、伝聞しか記録のない明治時代の産状を推定するために重要な役割を果たすと考えられる。
  • 古屋 正司
    セッションID: 16
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/10
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    2005年10月28日から11月13日までの17日間、ブラジルの宝石鉱山を訪問することができた。日本で根強い人気のあるパライバgルマリンの3箇所の鉱山を訪れ、それらの産状を視察すると共に、ミナス・ジェライス州の宝石取り引きのメッカ ゴベナドール・バラダレス(Govenador Valadares)を訪問し、最近アフリカのモザンビークで産出されている同じ様な色をした銅含有のトルマリンの流通の状況をしっかり自分の目で確かめることができた。さらに世界一変色性が良いとされているHematita鉱山のアレキサンドライトの産出状況、エメラルドの産地として有名なBelmont鉱山、Piteiras鉱山、そして発見されたばかりとの情報が入りコースを変更して訪れたRocha鉱山、通過したSanta Maria de Itabira やNova Eraの様子などを写真を使って報告したい。飛行機で約8000キロ、車で2000キロの宝石調査となり、想像していた以上の収穫を得る事ができた。
  • 荻野 隆, 矢崎 純子
    セッションID: 17
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/10
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    ?ブルー系真珠の発色機構
     アコヤ真珠に代表されるブルー系と言われる色調は、その真珠内部に存在する黒褐色の有機物(有機質層とも呼ばれる)に起因する。すなわち真珠層の厚さ(“まき”と言われる)が1ミリ以下の場合その黒褐色が透けて見えるわけである。
     一方その代表的着色法は「放射線照射法」である。これは真珠内部の核が淡水産貝の貝殻で作られているため、強い電磁波の照射によって含有元素であるMn(マンガン)が酸化マンガンになり黒褐色化するのである。
    ?ブルー系真珠の鑑別法としての光透過法
     両者の代表的鑑別法に「光透過法」がある。これは真珠の底面から上方に向けて強い光のビームを照射し、上方より真珠内部を観察し、以下のような両者の違いをもって鑑別する方法である。
    1)着色は内部が暗いのに対し、非着色は明るい。
    2)着色の内部の暗さは均一であるのに対し、非着色は不均一である。
    3)着色内部の色は赤褐色であるのに対し、非着色は青から黄色である。
    ?光透過法が限界を有する事例
     大多数のブルー系真珠には有機物と共に僅かながら稜柱層が存在している。その稜柱層が異常に発達している場合、その構造から光の透過性は著しく減少するため、着色に類似してくる。またブルー系真珠そのものに放射線照射した場合もその識別は困難になる。
    ?新たな鑑別法としての直接内部観察法の試み
     上記限界を克服するため、直径0.6ミリのファイバーを真珠の貫通孔から内部に入れ、その画像から内部の核の色を観察する方法を試みた。その鑑別法としての適性を報告する。
  • 鈴木 英之, 佐伯 美知子, 田中 美帆
    セッションID: 18
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/10
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    ?ゴールド系真珠の発色機構
     ゴールド系真珠の発色機構はその真珠層成分であるタンパク質内の黄色色素に由来する。一方着色ゴールド系真珠は、白色系や淡黄色系真珠を着色でゴールド系にしたものである。着色法の詳細は不明であるが、表層部に直接黄色物質を浸透させているものと思われる。演者等が着色真珠を切断し、その真珠層薄片を観察したところ、表面から表層50ミクロン付近までに着色層が観察された。
    ? ゴールド系真珠の代表的鑑別方法
    1)着色の痕跡観察
    孔口付近や突起や窪みなどのきず口付近には残留着色物質の痕跡が観察される場合がある。
    2)蛍光検査
    ある種の着色物質は、紫外線(短波)によりオレンジ色の蛍光を出す場合がある。
    3)分光反射スペクトル解析
    最も一般的な鑑別法である。GIAがこれまで発表したレポートを紹介すると共に真珠科学研究所の解析法を発表する。
    ?新たな簡易鑑別法の開発
    上述したように、着色真珠は共通して表層50ミクロンまでが着色されている。この真珠層の着色部の不均一性に着目した。光照射法を工夫してこの不均一性を増幅することにより両者の鑑別がしえるかを検討したので報告する。
  • 松田 優子, 高橋 由紀, 荻村 亨, 渥美 郁男
    セッションID: 19
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/01/10
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    ?はじめに
    (社)日本ジュエリー協会や鑑別団体協議会等では、鑑別結果の表記において「潜在的に有する美しさを引き出す真珠特有の加工が行われています」といったコメントを記載することを検討している。またその加工内容については「加温」「漂白」「調色」等を挙げている。
     しかし真珠業界で実際に行われている加工技術の内容やそれらが真珠に与える物性変化等については必ずしも正確に掌握されているとは思えない面がある。
    本研究はそれらの検討作業の参考試料として、主として物性変化を追跡したものである。
    ?真珠の加工法
    真珠の加工技術とは大別して、)前処理、)漂白、)着色、)研磨の4工程になる。本研究では)前処理、)漂白に絞り、一般的に行われている技術を公開して、真珠の物性変化を経時的に追跡する。
    ?真珠の物性変化測定
    測定項目としては)蛍光(蛍光スペクトル)、)分光スペクトル、)透過率、)光輝(てり)値、)オーロラ効果、)ビッカース硬度、)弾性率、)表面拡大、)光透過法による内部観察の9項目とする。
    ?試料
     アコヤ真珠、クロチョウ真珠、シロチョウ真珠、ヒレイケチョウガイ真珠の4種とし、浜揚げ直後のものとする。また測定の関係から、貝殻薄片も試料とする。
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