らいに長期罹患した場合,患者は寛解後もしばしば種々の特徴的な皮膚所見を残すことはよく知られており,創傷治癒後の肥厚性瘢痕やケロイドが極めて生じにくいことも日常しばしば経験する。これら皮膚の性状を決定するには極めて多くの要素が関与するが,真皮結合組織中の弾性線維もその主たるものの1つである。今回我々は,過去にらいの既往を有する患者の皮膚を対象として,その真皮結合組織の厚さ,線維成分の計測とともに,皮膚付属器の病理組織学的所見について検討した。被検部位として,らい病変を比較的発症しやすい顔面と四肢を選んだ。対象患者は60才以上の高齢者であったので,対照群として患者に近似した年齢群における同様部位を選び比較した。その結果患者皮膚では,下肢の真皮の厚さが著明に減少するとともに,弾性線維の相対的増加傾向が見られた。また皮膚付属器は,全般に著明に減少,退縮していた。しかし汗腺に関しては,表皮内汗孔はほぼ消失しているものの,わずかな分泌機能を有する腺体が残存している所見が得られた。一方頬部皮膚では,対照群で見られたようなsolar elastosisの形成が不十分な症例があり,これには病型,罹病期間とうの関与が推察された。以上より,患者皮膚では,一般の加齢による皮膚変化以外に,上記のような特徴的な皮膚所見が存在するものと考えられた。
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