長崎県諫早市の一皮膚科診療所における,粘着セロファンテープを利用した,体部白癬,股部白癬の,最近12年間における原因菌検索結果を報告した.
検索を行った試料は254検体,同定された菌株は,
Microsporum canis 49(男7,女42),
Trichophyton tonsurans 39(男31,女8),
Trichophyton rubrum 73(男42,女31),その他18で,培養陽性率は70.5%であった.
M. canisは年少者と年長女性に多く,ペットとの接触による感染をうかがわせた.
T. tonsuransはほとんどが高校の接触競技者とその関連であり,男性が79.5%であった.この両菌種は一時の全国的な流行の後,菌相の一員として定着しているものと考えられた.
T. rubrumはわが国における最も重要な菌種であり,今回の調査でも性別,年齢をこえて分離され,特に男性高齢者に多い傾向があった.足白癬,爪白癬との関連で注意を要する菌である.
粘着セロファンテープを利用した試料の採取は簡単で,そのまま同定が可能なこともあり,患者の診療のみならず,疫学的なデータの収集にも有用なことを確認した.
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