日本医真菌学会雑誌
Online ISSN : 2434-5237
Print ISSN : 2434-5229
60 巻, 2 号
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原著
  • 吉野 裕美子, 角田 梨沙, 柴田 泰洋, 佐藤 友隆, 矢口 貴志, 安西 秀美
    2019 年 60 巻 2 号 p. 49-54
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/05/31
    ジャーナル フリー
    皮膚クリプトコックス症はCryptococcus neoformansをおもな原因菌とし,クリプトコックス症の10~15%にみられ,その皮膚症状は多彩である.まれな一型として蜂窩織炎様皮膚症状を呈することがあり,さらに進行すると時に壊死性筋膜炎にいたる.皮膚クリプトコックス症のうち,皮膚のみならず肺や脳など他臓器に感染が及ぶ全身型は免疫能が低下した患者に多くみられる日和見感染症である.蜂窩織炎様皮膚症状を呈する症例は,全身型であることが多く,皮膚が初発症状となり得る.細菌性蜂窩織炎として初期加療されたが,抗生剤への反応が乏しく,潰瘍形成など非特異的な臨床像を呈し,培養・病理組織学的検査を通して初めて診断されることが多い.今回われわれは,前立腺癌骨転移に対しデカドロンを長期内服中,蜂窩織炎様皮膚症状を呈し,抗生剤を投与・変更するも亜急性の壊死性筋膜炎にいたった,高齢の全身型皮膚クリプトコックス症の1例を経験した.壊死は潰瘍部のみならず,潰瘍周囲皮下織深部にも広く及び,最終的に筋膜直上までの潰瘍となった.デブリードマンと抗真菌薬投与を継続し,皮膚症状は改善したが,全身状態の悪化に伴い逝去された.日和見感染症を起こし得る患者の蜂窩織炎様皮膚症状の場合には,本疾患も鑑別にいれ,早期デブリードマンと抗真菌薬の全身投与が肝要と考えた.
総説
  • 神田 善伸
    2019 年 60 巻 2 号 p. 55-61
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/05/31
    ジャーナル フリー
    血液疾患患者においては,高度な免疫抑制を背景にして侵襲性真菌症の発症がみられる.その対策を考える上で重要なことは,個々の患者がどのような免疫抑制因子を有していて,どのような病原微生物による感染症を発症しやすい状態にあるかを常に把握しておくことである.早期診断のために必要な検査を行い,実際の抗真菌薬の投与においては個々の薬剤の特性を十分に理解し,カンジダを標的とした抗真菌薬とアスペルギルスにも抗菌活性を有する抗真菌薬(抗糸状菌薬)の使い分け,毒性による使い分け,予防的投与,経験的治療,先制攻撃的治療,標的治療での使い分けなどを考察する.近年,好中球減少による真菌症発症リスクを評価する指標としてD-indexが開発され,新たな侵襲性真菌症対策のツールとして期待されている.
シリーズ用語解説
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