日本医真菌学会雑誌
Online ISSN : 2434-5237
Print ISSN : 2434-5229
64 巻, 1 号
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原著
  • 富田 勉, 宮﨑 俊, 澁谷 和俊
    2023 年 64 巻 1 号 p. 1-15
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/28
    ジャーナル フリー
     糸状菌による侵襲性真菌症の病態には菌糸の伸長による組織傷害が深くかかわっている.しかし,抗真菌薬により菌糸の細胞死が誘導される過程で生ずる形態変化についてはほとんど解析されていない.本研究では,イサブコナゾール(ISCZ)存在下で代表的な病原糸状菌であるAspergillus fumigatus およびRhizopus oryzaeを培養し,両者における菌糸形態に関する動的かつ詳細な観察を行った.この結果,両糸状菌の菌糸がISCZの作用により伸長停止,細胞膜の変性および細胞内基質の流動性の連続的低下を起こすことを確認した.さらに両糸状菌でみられた菌糸の経時的な形態変化の終末像である不整膨化や細胞の壁構造の破綻は,伸長停止した菌糸先端部で生じた変性した微小器官の凝集による細胞内基質流路の狭窄・閉塞による局所的な内圧上昇に起因すると推定された.Propidium iodide陽性化率で評価した生存活性の消失率は,試験した菌株でA. fumigatus で96.8%,R. oryzaeでは100%であり,以上の変化はISCZにより細胞死に向かう過程で誘導されるものと考えられる.
総説
  • 若山 恵, 定本 聡太
    2023 年 64 巻 1 号 p. 17-23
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/28
    ジャーナル フリー
     糸状菌感染症を迅速に診断するためには病理組織学的検査は有用であるが,真菌症の診断に詳しい病理医は非常に少ないのが現状である.糸状菌のなかで特に鑑別が問題となるアスペルギルスとムーコルは菌の形態や組織反応に加えて血管侵襲部位における進展様式を観察すると判別可能な場合が多い.しかし,アスペルギルス様の菌糸性発育を示す真菌は多数あり,さらに真菌様にみえる組織内構造物も多いため,これらに注意して診断を行いたい.
  • 髙園 貴弘
    2023 年 64 巻 1 号 p. 25-30
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/02/28
    ジャーナル フリー
     肺アスペルギルス症は,免疫状態が低下した症例や呼吸器系の基礎疾患を有する症例に発症する難治性の呼吸器感染症であり,病状進行の期間,基礎疾患により侵襲性肺アスペルギルス症と慢性肺アスペルギルス症に大別される.診断には臨床的な背景,画像所見からまずは疑うことが重要である.そして,喀痰の糸状菌真菌培養の感度が低いこともあり,気管支鏡検査(病理学的検査,培養検査)の実施は重要であるが,全身状態や血球の状態から回避される症例も多い.そのため,補助診断法の意義は大きい.侵襲性肺アスペルギルス症では,ガラクトマンナン抗原検査の精度が比較的高い一方で,慢性肺アスペルギルス症では同検査の精度は低い.さらに比較的感度が良好な沈降抗体検査も保険承認が得られていない点も問題であり,今後のアスペルギルスIgG抗体の保険承認や,新規診断法の開発が望まれる.
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