病原性真菌
Cryptococcus neoformansや
Cryptococcus gattiiは,一般的に肺を侵入門戸として感染しクリプトコックス症を引き起こす.中枢神経系に播種する病態では重篤になる症例も多く,感染を予防するワクチンの社会実装が望まれている.クリプトコックス症ワクチン研究は文献が遡れるものでは1958年からみられ,当初はワクチンによる抗体産生誘導が着目されていた.1990年以降はワクチンによる細胞性免疫の誘導と肉芽腫形成による菌体増殖の抑制が研究されている.途上国ではクリプトコックス症がHIV感染に続発する感染症として問題になっており,2010年以降ではCD4
+ T細胞に依存せずに細胞性免疫を誘導するワクチン,さらには
C. neoformansと
C. gattiiの両方に対して防御効果を発揮するワクチンが研究されている.それらの性能を満たすワクチンとして,高免疫賦活性株を利用した全粒子経鼻ワクチンが複数報告された.これらのワクチンは,CD4
+ T細胞が欠乏する条件でもワクチンの性能が維持されており,自然免疫やCD8
+ T細胞が免疫記憶を代償するらしい.これら代償性免疫記憶を誘導するために,ワクチンにはどのような要素が必要なのか.安全性に優れた成分ワクチンを目指した場合に,アジュバントやモダリティーを工夫すれば,生体防御能を有する自然免疫記憶や記憶CD8
+ T細胞を誘導できるのか.本稿では,クリプトコックス症に対する全粒子経鼻ワクチン H99γ,
sgl1∆,
ZNF2oe,
fbp1∆について解説し,他の呼吸器真菌症での研究事例も交えて,CD4
+ T細胞非依存性ワクチンについて考察した.
抄録全体を表示