日本医真菌学会雑誌
Online ISSN : 2434-5237
Print ISSN : 2434-5229
最新号
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原著
  • 西本 勝太郎, 一ノ瀬 弥久, 竹中 基, 室田 浩之
    2024 年 65 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2024/01/31
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル フリー
     長崎県諫早市の一皮膚科診療所における,粘着セロファンテープを利用した,体部白癬,股部白癬の,最近12年間における原因菌検索結果を報告した.
     検索を行った試料は254検体,同定された菌株は,Microsporum canis 49(男7,女42),Trichophyton tonsurans 39(男31,女8),Trichophyton rubrum 73(男42,女31),その他18で,培養陽性率は70.5%であった.
     M. canisは年少者と年長女性に多く,ペットとの接触による感染をうかがわせた.T. tonsuransはほとんどが高校の接触競技者とその関連であり,男性が79.5%であった.この両菌種は一時の全国的な流行の後,菌相の一員として定着しているものと考えられた.
     T. rubrumはわが国における最も重要な菌種であり,今回の調査でも性別,年齢をこえて分離され,特に男性高齢者に多い傾向があった.足白癬,爪白癬との関連で注意を要する菌である.
     粘着セロファンテープを利用した試料の採取は簡単で,そのまま同定が可能なこともあり,患者の診療のみならず,疫学的なデータの収集にも有用なことを確認した.
総説
  • 加納 塁
    2024 年 65 巻 1 号 p. 7-10
    発行日: 2024/01/31
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル フリー
     Trichiohyton indotineaeによる白癬は国内においても2020年から散見され,今後拡大する懸念がある.そのため皮膚科診療の参考となるように,分離同定および薬剤耐性機構,国内外の分離状況について解説したい.患部の落屑・痂皮などの鏡検後,菌体成分を確認し,定法に従ってマイコセル寒天培地などの皮膚糸状菌分離培地上に試料を接種する.マイコセル寒天培地およびサブローブドウ糖寒天培地上では発育が旺盛で,集落は白色から淡黄褐色の扁平で短絨毛状または粉末状で,Trichophyton interdigitaleと酷似している.そのため同定法としては,臨床所見(広範囲な体部白癬),ウレアーゼ試験を参考にして,分離株のリポソームのinternal transcribed spacer(ITS)領域のシーケンスを行い,National Center for Biotechnology Information(NCBI)サイトのBasic Local Alignment Search Tool(BLAST)検索にかけて,登録されているT. indotineaeと100%と一致すれば同定することができる.著者が把握している国内での分離状況は,東北,関東,九州の複数個所における体部白癬から分離されている.患者の多くは外国籍であるが,海外の渡航歴のない日本人からも分離され始めたので,国内の感染拡大が危惧される.渡航者も使用する可能性のある共有物から感染する可能性があるため,公衆衛生の指導が必要である.
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