ヒトの皮膚は多種多様な微生物(細菌,真菌,ウイルス)によって構成されているが,真菌マイクロバイオームでは
Malassezia属菌が優位に存在する.
Malassezia属菌はヒト皮膚の常在菌であり,健常な皮膚においては皮膚環境の維持に寄与するものの,宿主の皮膚環境が変化した場合は,アトピー性皮膚炎や脂漏性皮膚炎などの原因あるいは増悪因子となることがある.アトピー性皮膚炎では,皮膚バリア機能の低下により外来抗原が侵入しやすくなり,また皮膚のpHが中性にシフトすることで,
Staphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)の増殖が促進される.これに対し,
Malassezia属菌はアスパラギン酸プロテアーゼ(Sap)を分泌することで,
S. aureusのバイオフィルム形成を抑制する役割を担っている.一方,脂漏性皮膚炎においては,皮脂量の増加に伴い
Malassezia定着量も上昇し,特に
Malassezia restrictaが高い占有率を示す.これにより,炎症を惹起する不飽和脂肪酸量も増加することが,脂漏性皮膚炎の発症機序の一つであると考えられる.両疾患ともに皮膚マイクロバイオームのバランスの破綻(ディスバイオーシス)が生じている.本総説では,皮膚真菌マイクロバイオームの解析からこれらの皮膚炎の発症機序を紐解いてみたい.
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