ボランティア学研究
Online ISSN : 2434-1851
Print ISSN : 1345-9511
6 巻
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 森定 玲子
    2006 年 6 巻 p. 3-6
    発行日: 2006/02/28
    公開日: 2024/04/30
    ジャーナル オープンアクセス
  • REACHプログラムの事例から
    佐藤 美穂
    2006 年 6 巻 p. 7-26
    発行日: 2006/02/28
    公開日: 2024/04/30
    ジャーナル オープンアクセス
     本稿では、開発とジェンダーの概念である開発における女性(WID)からジェンダーと開発(GAD)への変遷と1975年の国際女性年から第4回1995年の世界女性会議に至るまでの開発におけるジェンダーのアプローチを報告すると共に、開発プロジェクト内でのジェンダーの位置づけを横断的領域、そしてジェンダーの主流化、というキーワードによって説明する。さらに、ジェンダーの具体的なプロジェクトへの統合を、米国国際開発庁の資金援助の下に実施されているアフガニスタンの保健プロジェクト、日本国際協力機構によるアフガニスタンにおける女性の経済エンパワメントプロジェクトを例に挙げて報告するものである。  ジェンダーという言葉は例えば「女性」と同意に使われたり、あるいは男性の権利・権威を脅かす概念として受け取られるなど、誤解を受けることがある。各地での因習や誤解を超えて男女ともに有益な開発プロジェクトを推進するうえで、開発におけるジェンダーの位置づけには複雑なコミュニティ独自の社会、文化、その中での女性と男性の役割について洞察しながら、女性と男性が共に平等なパートナーとしてプロジェクトに参画する、「男女共同参画」の視点が重要である。
  • 国連の2つのアプローチと日本政府による法改定、およびその問題点
    清末 愛砂
    2006 年 6 巻 p. 27-46
    発行日: 2006/02/28
    公開日: 2024/04/30
    ジャーナル オープンアクセス
     1970年代の終わりから1980年代にかけて、アジアにおける移住労働者の主要な受入国となった日本では、女性の移住労働者をターゲットとした性産業への人身売買の被害が続出してきたものの、日本政府は2004年に取り組みを開始するまで、何ら対策をとってこなかった。むしろ人身売買の被害者は、「不法滞在者」、「不法就労者」として強制送還の対象とされてきたために、被害者の保護はおろか、真相究明が困難な状態が続いてきた。国連は世界的に盛り上がる女性運動影響も受け、1960年代から1990年代にかけて、女性の人権、女性に対する暴力という視点から、主には女性の移住労働者に対して行われている深刻な人身売買の問題に取り組んできた。そのいっぽう、1990年代に入ると、人身売買が組織犯罪対策、「反テロ」対策というあらたな視点をもって位置づけられるようにもなった。現在では、女性に対する暴力という視点よりも、むしろ組織犯罪対策・「反テロ」対策の視点に立った取り組みの方が強化されつつある。2004年に着手された日本政府による人身売買政策もまた、同様な視点から行われている。国際組織犯罪禁止条約への批准を前提に行われていている一連の取り組みは、加害者処罰に重点がおかれ、被害者保護の視点は非常に弱い。5年後の見直しのときには、女性に対する暴力という視点から、被害者保護法を制定する必要がある。
  • 横浜市磯子区の事例より
    加藤 謙介
    2006 年 6 巻 p. 49-69
    発行日: 2006/02/28
    公開日: 2024/04/30
    ジャーナル オープンアクセス
     本研究では、コミュニティにおけるコンフリクトを解消するための「対話」の特微について、横浜市磯子区において実施されている『地域猫』活動を事例として取り上げ、検討を行った。磯子区では、地域の野良猫問題への対策として、住民が話し合いを通して猫の飼育方法に関するガイドラインを作成・遵守し、地域住民と猫との共生を果たしている。  本稿では、これらの取り組みを、猫をめぐる社会問題の構築過程として捉え、検討を行った。具体的には、ガイドライン制定のための住民集会の議事録、ガイドライン制定前後に推進団体が発行したニューズレターを分析した。  分析の結果、ガイドライン制定前の住民集会の議事録には、「『地域の問題』としての野良猫問題」という社会問題が構築される過程が見出された。一方、ガイドライン制定後は、『地域猫』活動を行うボランティアの紹介等を通して、周辺住民の視点が示され、『地域猫』をめぐる「問題」の再構築が行われたことが示された。
  • 新潟県中越地震におけるfromHUSの活動から
    諏訪 晃一, 渥美 公秀, 関 嘉寛
    2006 年 6 巻 p. 71-95
    発行日: 2006/02/28
    公開日: 2024/04/30
    ジャーナル オープンアクセス
     新潟県中越地震の被災地支援活動にあたった学生を中心としたグループ(fromHUS)の事例をもとに、学生による災害時のボランティア活動の意義とその背景について検討した。現代の学生の多くは状況的関心(論理的な一貫性に基づかずに語られるところの関心)に基づいて行動することが多いといわれる。本稿では、学生たちが災害時に有意義な災害ボランティア活動を展開することが可能であることを例証し、その背景の一つに状況的関心の存在があることを指摘した。また、こうした活動から、学生たちが確かに何かを学んでいることを示した。さらに、こうした有意義な活動や学びが成立した背景として、学生たちの活動が「ワークショップとしてのボランティア活動」となっていたことを指摘し、それを可能にした条件についても検討した。
  • 縄手南中学校区校外指導協議会の事例より
    中村 有美, 渥美 公秀, 諏訪 晃一, 山口 悦子
    2006 年 6 巻 p. 97-117
    発行日: 2006/02/28
    公開日: 2024/04/30
    ジャーナル オープンアクセス
     大阪府教育委員会が進めているボランティア組織であるすこやかネット事業の一事例(大阪府東大阪市縄手南中学校区校外指導協議会)を調査することによって、地域主導の協働モデルの実践について現地調査を行った。その結果、すこやかネットの中で、協働モデルと連携モデルを使い分けることによって組織運営を円滑に進めていることが明らかになった。また、学校と家庭と地域の三者の協働に子どもが参画することによって一層地域全体の協働が促進されることが示された。
  • 岐阜県可児市における外国人の子どもの教育環境に関する実態調査の事例から
    小島 祥美, 中村 安秀
    2006 年 6 巻 p. 119-135
    発行日: 2006/02/28
    公開日: 2024/04/30
    ジャーナル オープンアクセス
     本研究では、信頼できる科学的根拠に基づいた行政施策に反映するための基礎資料づくりを目的に、外国人の子どもの教育環境に関する実態調査を実施した。外国人集住地域である岐阜県可児市をパイロット地域として選定し、ボランティア団体・行政・研究者が協働して研究調査を行った。  1年間に計2回の直接訪問調査を実施することにより、就学年齢期の就学状況に関する実態が詳細に明らかになった。市の個人情報保護条例に従い情報提供を受け、研修を受けた調査員が半構造化質問票を用いて対象者の家庭を訪問するという調査方法により、就学年齢期にあるすべての国籍の外国人の就学実態を把握することが可能になることが実証された。  外国人の居住は偏在化しており、課題解決のためには、地域ごとによる調査は不可欠である。その中、今回の調査方法の手技は、外国人が集住する他地域においても十分に応用可能であると考えられた。とりわけ、大学研究者と複数の行政機関と民間団体が協働し、行政機関の立場を越えて連携し、調査研究を協働で行った結果、地域の抱える外国人の子どもの就学課題解決への道を探ることができた。
  • 東ティモールの事例から
    桑名 恵
    2006 年 6 巻 p. 137-159
    発行日: 2006/02/28
    公開日: 2024/04/30
    ジャーナル オープンアクセス
     冷戦の終焉以降、国内紛争が頻発するにつれて、国際社会による紛争後の国づくりや復興支援が増加し、長期の社会開発との関わりの重要性が高まっている。本稿は、紛争後の援助がコミュニティの社会開発に与える影響を分析し、コミュニティでのより効果的な援助の方策を探ることが目的である。  前半部では、紛争後の援助全般の特性について分析し、ドナー主導体制、プロジェクト主義、短期の援助サイクル、資金の継続性の欠如など、社会開発過程を阻害する要因を明らかにした。特にこれらの問題は、正当な国家が存在せず、ドナーが本格的な援助を行わない「移行期」に顕著である。  後半部では、東ティモールの事例を取り上げ、特に「移行期」の援助がコミュニティの社会開発に及ぼす影響を考察した。現地調査等の分析を通して、移行期の援助の特性が、コミュニティにおいて、当事者意識、ローカルガバナンス、コミュニティ結束、市民社会組織の成長等の点で、コミュニティの社会開発に弊害をもたらしている状況を指摘した。今後、援助の効果を上げ、持続的な社会開発を実現するためには、プロジェクトベースの援助体制の限界と弊害を認識しながら、コミュニティや政策との関連に配慮し、その効果を国や他地域、他プロジェクト等のネットワークに繋げる援助の実践が求められている。
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