日本情報科教育学会誌
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原著論文
  • 漆原 宏丞, 島袋 舞子, 岸本 有生, 本多 佑希, 兼宗 進
    2023 年 16 巻 1 号 p. 5-12
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/05/27
    ジャーナル 認証あり
    2022年度より高等学校で必履修科目である情報Iが始まり,すべての高校生がプログラミングを学ぶことになった.プログラミングは他教科での学習と同様に,「前に学んだ内容を前提とし,新しい内容を学んでいく」といった積み上げ型で学習を進めることが多い.数学や英語では学習順が系統表や学習指導要領等で示されているが,プログラミングの学習順は示されておらず,教員に委ねられており,教科書の説明順で学習を進めているのが現状である.そこで本研究では,高校生が使用する情報Iの教科書に着目し,プログラミングにおける構文要素の学習順の検討を行う.情報Iの教科書13冊を調査した結果,ほとんどの教科書で「変数」,「分岐」,「反復」,「配列」,「関数定義」などの個々の構文要素と「反復と分岐」の入れ子構造が扱われていることがわかった.また,教科書での説明順を調査することで,情報Iにおけるプログラミング学習の系統図を作成した.各構文要素の文法的,意味的な関係性を分析することで,標準的な学習順を明らかにすることができた.
  • ~デザイン記号論のデザイン手法の特徴を取り入れて~
    三輪 理人, 梅田 恭子
    2023 年 16 巻 1 号 p. 13-21
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/05/27
    ジャーナル 認証あり
    情報Ⅰでは科目全体を通して問題解決を学ぶことが求められている.情報デザイン分野でも問題解決的な活動を行う必要があるが,情報デザインの初学者である生徒にとって問題を発見することは難易度が高い.そこで本研究では,デザイン記号論で扱われている機能論的デザイン手法と効用論的デザイン手法の特徴を取り入れた授業を経て,その後の課題における問題発見にどのような特徴が見られるのかを明らかにする.またそれを踏まえて,問題発見に着目する情報デザインの授業において,デザイン記号論の二つのデザイン手法について,その特徴の取り入れ方を考察する.具体的には,それぞれの手法で学習した生徒の制作物や課題から,情報デザインの初学者に対しては機能論的デザイン手法の特徴を活かした活動ののちに,効用論的デザイン手法の特徴を活かした活動に取り組ませる方法などを提案する.
実践論文
  • ‐情報Ⅰにおけるユーザビリティ設計の授業を踏まえて‐
    平田 篤史, 吉原 和明, 稲川 孝司, 渡辺 健次
    2023 年 16 巻 1 号 p. 25-32
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/05/27
    ジャーナル 認証あり
    情報Ⅰ「⑵コミュニケーションと情報デザイン」では,情報デザインの考え方や方法を用いてコンテンツを設計する力を養うことが求められている.情報デザインの例であるユーザビリティを,人間中心に設計する手法の一つとして「ペルソナ手法」がある.ペルソナ手法を授業で活用する上での課題として,ユーザ像のパターン化にデータ収集・分析の技能が必要であることが指摘されている.また,ユーザ像の擬人化に経験値や専門性が必要であること,ユーザ像の優先順位づけの手順と基準が明確でないことも課題であると考えられる.そこで本研究では,データに基づかない「プロト・ペルソナ」の作成におけるユーザ像の擬人化と優先順位づけの双方を支援する「プロト・ペルソナ作成支援シート」を開発し,授業実践と事後アンケートの分析を行った.分析の結果,本教材がユーザ像の擬人化と優先順位づけの支援に有効に機能したことが示された.
  • 岸本 有生, 本多 佑希, 漆原 宏丞, 島袋 舞子, 兼宗 進
    2023 年 16 巻 1 号 p. 33-43
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/05/27
    ジャーナル 認証あり
    学習指導要領の改定により,高等学校においても「データの活用」の分野が重要視されている.共通教科「情報」においては,情報Iでは基本的なデータ分析について学習し,情報IIでは重回帰分析等の発展的な内容を学習する.その一方,情報IIに対応した教材や授業案が多くないといった課題がある.そこで本研究では,情報IIで扱われる分析手法である重回帰分析に着目し,授業の中で生徒が重回帰分析を行えるデータ分析学習ツールを開発し,その特徴を学習できる授業案を検討した.高等学校では情報IIの授業は実施前だったことから,作成した授業案による実験授業を工学部の大学2年生(N=149)を対象に実施した.事前アンケートと3つの課題,振り返りから学習効果について検証を行った結果,約8割の学生が重回帰分析と散布図行列の特徴を読み取れていることを確認できた.今後は作成した授業資料を公開し,高等学校での利用を進める予定である.
  • 本多 佑希, 岸本 有生, 漆原 宏丞, 島袋 舞子, 兼宗 進
    2023 年 16 巻 1 号 p. 45-55
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/05/27
    ジャーナル 認証あり
    プログラミングの学習において,算数の計算や漢字の書き取りのように類似問題を反復的に練習することは知識の定着に有効と考えられる.しかし,教科書等では紙面のスペースの都合などにより,掲載できる問題数は限られている.そこで,本論文では学校教員がプログラミングの授業で活用できるワークシートを作成できるツールと,このツールの中に自由にインポートして使える問題バンクを提案する.問題バンクはprint,変数,if,forなどの基本要素を学ぶための「基本問題」と,それらの要素を組み合わせた「応用問題」などが多数用意されている.提案するツールを使うと,教員は生徒の理解度に応じてこうした問題バンクから適切に問題を選択して簡単にワークシートを作成できる.また,このワークシートにはWeb上で動作するプログラムの実行環境が埋め込まれているほか,自動正誤判定や生徒の識別,進捗状況管理などの授業利用に適した機能が組み込まれている.
  • 堤 健人, 阿濱 茂樹, 新田 拓也, 川﨑 徳子, 友清 祐子, 野村 厚志, 中田 充, 鷹岡 亮
    2023 年 16 巻 1 号 p. 57-65
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/05/27
    ジャーナル 認証あり
    本研究では,生成AIの活用による教育DXの推進を支援する立場から,教員養成課程に所属する学部学生を対象に,学校現場の生成AIの活用について検討する授業を提案した.生成AIの活用場面は,「教員のICT活用指導力チェックリスト(平成30年6月改訂)」の項目から抽出した.提案授業は先行研究等をもとにハンズオンや小グループでの意見交流を組み込み,数理・データサイエンス・AI教育プログラムのリテラシーレベルに認定されている科目の1講義(90分)で実践した.146名分の授業前後のアンケートを,対応のあるt検定とテキストマイニングによって分析した.その結果,本実践においては,学生が校務における情報収集や文書等の作成,授業準備等に生成AIの活用の可能性を見いだすこと等が示唆された.また,科学的な知識に基づき生成AIの長所や短所等に配慮して活用するような資質・能力の育成に資することが期待でき,教育DXの観点からは生成AIを活用することで業務の効率化を期待する様子も見られた.
実践速報
  • 𠮷田 拓也
    2023 年 16 巻 1 号 p. 69-74
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/05/27
    ジャーナル 認証あり
    本研究では,「情報Ⅰ」と「技術」の両科目で,縦の連携を図るために,学習内容を検討した上で,工夫を凝らした授業を開発し,その有用性を検証した.中学1年生204名を対象に試行授業を行い,授業実施前後に質問紙調査を実施した結果,授業実施後に「知識,技能」,「思考,判断,表現」および「主体的に学習に取り組む態度」の要素平均得点が有意に増加した(全てp<.01).中学生に対して,中高の縦の連携を意識した知的財産に関する試行授業として,その有用性を示すことができた.また,本授業を通して,対象生徒は,著作権および産業財産権の権利の対象について理解したり,知的財産と身近な生活との結びつきを考えられるようになったことがわかった.
  • ―動画教材における肉声から合成音声への代替可能性の調査結果―
    池之上 勇斗, 北澤 武
    2023 年 16 巻 1 号 p. 75-83
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/05/27
    ジャーナル 認証あり
    本研究では,教員養成系大学の学部1年生(35名)が,1)教員の肉声音声,2)教員の合成音声,3)別人の合成音声が活用された動画教材の3つを視聴し,どの音声に基づく教材を支持し,その差異を明らかにした.質問紙調査の結果,学生は「教員の合成音声」よりも「別人の合成音声」のほうを支持することが明らかになり,その理由として,別人の合成音声は普段から聞く合成音声と近いため聞くことができるが,教員の合成音声は本物の声との差があり違和感があるからなどの回答が得られた.
資料
  • 森 建人, 田中 遼, 丸山 浩平, 萩原 浩平, 森本 康彦
    2023 年 16 巻 1 号 p. 87-95
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/05/27
    ジャーナル 認証あり
    本論文では,「指導と評価の計画」の作成支援を目的に,高等学校情報科における学習指導要領の「内容とその取扱い」の記述を分節化し,細分化した内容を作成し,細分化した内容と各教科書の章を構成する節の対応付けを行った.この対応関係に基づき,各教科書の細分化した内容を組み合わせた単元の評価規準と具体的な評価規準を作成し,各教科書に応じた「指導と評価の計画」の作成を支援するテンプレートを検討した.検討したテンプレートを用いた「指導と評価の計画」作成の試行の結果,構想や計画している授業を具体化し,教科書と学習指導要領の内容に準拠した評価規準を検討すること,高等学校情報科で育成する資質・能力を踏まえた具体的な学習活動と評価方法を考えることに役立ち,「指導と評価の計画」の作成を支援できた可能性が示唆された.
高校現場からの声
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