Journal of Applied Glycoscience
Online ISSN : 1880-7291
Print ISSN : 1344-7882
ISSN-L : 1344-7882
55 巻, 3 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
Regular Paper
  • 藤田 直子, 後藤 真司, 吉田 真由美, 鈴木 英治, 中村 保典
    2008 年 55 巻 3 号 p. 167-172
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/01
    ジャーナル フリー
    登熟胚乳の可溶性画分のSS活性の6割を占めるイネスターチシンターゼSSIは,植物において,その遺伝子の構造から,独特の機能をもつと考えられる.われわれは貯蔵デンプンを蓄積する植物として初めて,逆遺伝学的方法を用いてイネのSSI変異体を単離し,それらの詳細な鎖長分布解析等から,SSIがアミロペクチンのA鎖およびB1鎖の非還元末端がDP6-7の鎖をDP8-12に伸長する機能をもつことを解明した1).本研究では,大腸菌で発現させたイネSSI(rSSI)を用いて,Native-PAGE/SS活性染色法でα-グルカンとin vitroで反応させることで,その機能解析を行った.DP6の鎖が特異的に多いカキグリコーゲンおよびDP7をピークとした短鎖を豊富に含むウサギグリコーゲンを基質に用いたところ,rSSIによって伸長されたα-グルカンは,元のものに比べていずれもDP6の鎖が減少し,DP8をピークとしたDP8-12の鎖が特異的に増加した.また,イネアミロペクチンを基質に用いた場合,rSSIにより伸長されたDP20以下の鎖は小刻みな増減(DP6,7,10,13,17が減少,DP8,12,14で減少率が低下)を示し,DP20以上の鎖は増加していた.以上のことから,rSSIは,DP6か7のA鎖にグルコース1-2個付加する反応が特異的に強く,これに加えて短いB1鎖および長いB1鎖,さらにはB2鎖の非還元末端から分岐点までがDP6か7の鎖をグルコース1,2個程度伸長することがわかり,変異体によって明らかになった機能を裏付ける結果となった.
Notes
  • 小林 昭一, 三輪 章志, 田中 一朗, 三國 克彦, 三浦 靖, 小川 智, 高橋 圭子
    2008 年 55 巻 3 号 p. 173-177
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/01
    ジャーナル フリー
    コンゴーレッド(CR) 0.02 mM濃度-0.2 M酢酸緩衝液溶液(pH 5.0)にサイクロデキストリン(CD)のα-CD系(α-CD,グルコシル(G1)-α-CD,マルトシル(G2)-α-CD),β-CD系およびγ-CD系を各種濃度で添加して500 nmでの吸光度を比較した結果,G1-α-CDを含むCRの吸光度はα-CDを含むCRのそれよりわずかに高く,G2-α-CDを含むCRの吸光度はかなり高く,CD添加40 mMでも吸光度は上昇し続けた.β-CDの濃度に対するCRの吸光度の変化を示した曲線から,プラトーに達する濃度はpH 5.0では5 mMで,β-CDとG2-β-CDではほぼ同等の曲線であるが,β-CDでわずかに高かった.γ-CDでは,pH 5.0では0.04 mMであり,吸光度がプラトーに達した濃度で複合体形成が完成するものと仮定すれば,pH 5.0で1:2のCR: γ-CD複合体が形成されたことになる.これらの結果から,われわれはCD空洞のサイズとその性質がCR分子とCD分子の相互作用に影響すると推論した.α-CDでは,空洞のサイズが小さすぎてCR分子は入れず,CR分子へのCD分子の影響は小さく,β-CDでは,CR分子に,ある程度影響するが,CR分子は空洞には入れない.γ-CDでは,空洞にCR分子を取り入れることができ包接体を形成するが,枝は包接体形成に影響しない.α-,β-CD系はCD包接体以外の何等かの相互作用をし,特にβ-CDでは,包接体形成以外の相互作用が強く,その相互作用はCR/β-CD濃度比1:250以下で完成する,と推察した.プロトンNMRでは,CRのケミカルシフトがγ-CD系の添加で大きく変化するが,β-CD系ではわずかに変化,α-CD系では変化しなかった.γ-CDを同モル以上CR溶液に添加した場合,CRのプロファイルは完全に変化し,複合体形成比は1:1であった.NMRで求めたCR: γ-CD複合体形成比とスペクトル分析により求めた複合体形成比の違いは,pHにより複合体形成が変化することによるものと推論した.
  • 岡田 秀紀, 川添 直樹, 山森 昭, 小野寺 秀一, 菊地 政則, 塩見 徳夫
    2008 年 55 巻 3 号 p. 179-182
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/01
    ジャーナル フリー
    植物エキス発酵飲料は約50種類の植物を原料として,ショ糖の浸透圧を利用してエキスを抽出し,おもに酵母(Zygosaccharomyces spp. and Pichia spp.),乳酸菌(Leuconostoc spp.)の発酵によって製造される.この飲料からO-β-D-fructopyranosyl-(2→6)-D-glucopyranose(糖1)が見出され,発酵によって生成される.糖1は,ショ糖と比較し0.2倍の甘さであり,酸に対する安定性はショ糖とほぼ同等であった.また,低う蝕性,難消化性糖であることが認められ,さらに,腸内細菌による資化性を調査したところ,この糖質はクロストリディウム属菌などに利用されず,ビフィドバクテリウム属菌によってのみ資化された.
  • 森本 奈保喜, 王 一, 伊藤 進, 竹花 稔彦, 松井 博和
    2008 年 55 巻 3 号 p. 183-185
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/01
    ジャーナル フリー
    土壌より分離した好アルカリ性Bacillus sp. HM-127株からα-glucosidaseを精製し,その諸性質を解析した.本酵素はSDS-PAGEより分子質量63 kDaと見積もられ,マルトースを基質とした場合の至適pHは6.4,p-nitrophenyl-α-glucopyranoside (pNPG) を基質とした場合には6.4および8.3の二つの至適pHがみられた(Fig. 1).金属イオン等の影響を調べた結果,Fe2+,Zn2+およびethylenediaminetetraacetic acidによりマルトースおよびpNPG分解活性はともに強く阻害を受けた.しかしながら,phenylmethylsulfonyl fluorideおよびdithiothreitolは,それぞれpNPGおよびマルトース分解活性をほぼ消失する一方で,マルトースおよびpNPGを基質とした場合はそれぞれ弱い阻害効果を示した.また,スクロースおよびツラノースによりpNPG分解活性は二つの至適のうちpH 8.3においてのみ阻害を受けることがわかった.以上の結果より,本酵素はpH 6.4および8.3において異なるメカニズムによりpNPGおよびマルトースを分解することが示唆された.
  • 坊木 佳人, 山田 雅英, 高橋 昌江, 北小路 学, 小田 弘子, 萌抜 明子, 濱田 陽子
    2008 年 55 巻 3 号 p. 187-190
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/01
    ジャーナル フリー
    ニンジンPanax ginseng C.A. Meyer (PT)とサンシチニンジンPanax notoginseng (Burk.) F.H. Chen (PN)の根,ハンゲPinellia ternata (Thunb.) Breitenbach (PT)の根茎,タクシャAlisma orientale Juzepczuk (AO)の根茎,ヨクイニンCoix lacryma-jobi Linné var. ma-yuen Stapf (CL)の種子から調製された澱粉のアミロースとアミロペクチンの単位鎖長分布をゲルろ過法により調べた.澱粉のアミロース含量は,それぞれPG,15.4-28.2%;PN,25.9-35.7%;PT,20.1-34.9%;AO,26.6-35.2%;CL,17.2-26.4%であった(Table 1).澱粉のアミロペクチンの短鎖区分/長鎖区分(Fr. III/Fr. II)の比は,それぞれPG,0.82±0.19;PN,0.93±0.13;PT,1.22±0.25;AO,1.23±0.05であり,CLは0.97と3.49であった(Table 1).アミロペクチンの重量平均単位鎖長は,それぞれPG,34-47;PN,28-35;PT,22-32;AO,25-28;CL,23-38であった(Table 2).短鎖区分/長鎖区分(Fr. III/Fr. II)の比と重量平均単位鎖長(CLw)の間には負の相関性が認められた(Fig. 1).アミロースの重量平均重合度は,それぞれPG,2720-3590;PN,3240-3730;PT,2390-2710;CL,3090-3880であった(Table 3).
報文
  • 五十嵐 俊成, 神田 英毅, 木下 雅文
    2008 年 55 巻 3 号 p. 191-197
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/01
    ジャーナル フリー
    アミロペクチン単位鎖長分布と超長鎖(LC)含量に及ぼす登熟温度の影響をHanashiroらの蛍光標識ゲル濾過HPLC法で調べた.北海道米の主要品種である「きらら397」のアミロペクチンLC含量は,低温(21/17°C)2.58%,中温(25/21°C)1.30%,高温(29/25°C)0.48%で登熟温度が低いほど多かった(Table 1).アミロペクチン単位鎖の短鎖(A+B1)と長鎖(B2+B3)の重量比およびモル比(A+B1)/(B2+B3)は登熟温度が低いほど大きかった(Table 2).これらの結果は,近年育成された北海道米5品種と4系統およびミルキークイーンを供試して確証された.登熟温度は22/16,26/20,30/24,34/28°C(昼/夜)で行った.アミロペクチンLC含量の平均登熟温度1°C当たりの変動量は,19-23°Cの範囲では0.542%,23-27°Cでは0.152%,27-31°Cでは0.037%で,低温ほど大きかった(Fig. 4).見かけのアミロース含有率は登熟温度と負の相関があることが知られているが,アミロペクチンLC含量も同様に低温で増加することが明らかとなった.低アミロース品種はうるち品種に比べて見かけのアミロース含量に占めるアミロペクチンLC含量の割合が高かった(Fig. 6).見かけのアミロース含量とアミロペクチンLC含量は品種よりも登熟温度の影響が大きかった(Table 4).以上のことから,今後の良食味米の選抜において,アミロペクチンLC含量が低く,異なる登熟温度条件でも澱粉の構造が安定している品種の育成が目標である.これはアミロペクチンLCの生合成に関与する酵素の遺伝子分析によって達成できるかもしれない.
feedback
Top