LD研究
Online ISSN : 2434-4907
Print ISSN : 1346-5716
26 巻, 2 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 学級担任1人による介入の実施可能性の検討
    宮木 秀雄
    2017 年 26 巻 2 号 p. 221-232
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/12/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は,授業逸脱行動に対する対応として,相互依存型集団随伴性を利用した介入の効果を検証するとともに,学級担任1人による介入の実施可能性についても検討することであった。対象は公立小学校3年の1学級(32名)で,標的行動は授業中の離席行動であった。国語科の授業においてトークンエコノミー法を適用し,授業開始時に全員が着席できること,および一定時間離席しないことにトークンを随伴させた。そして,トークンを与える基準を徐々に変更するチェンジング・コンディション・デザインと除去デザインとの組み合わせにより介入の効果を検証した。また,学級担任が1人で介入を実施できるように,行動を記録するためのフォーマットを簡便にしたり,トークンとバックアップ好子の提示(交換)や準備にかかる労力を削減したりした。その結果,離席率,離席人数ともに減少傾向を示すとともに,学級担任1人による介入の実施可能性もおおむね示された。
  • Efforts for Improving Poor Awareness of Writing Deficits in LD Student
    鈴木 徹, 佐々木 健太郎, 平野 幹雄
    2017 年 26 巻 2 号 p. 233-239
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/12/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,書字に対する苦手意識が顕著な高校生のLD児に対して,苦手意識の払拭に向けた取り組みを行い,その効果を検証した。取り組みは,タブレット型端末を活用した漢字学習を中心とした。経過は,①ペンを持つことへの抵抗感をなくす時期,②漢字学習とは別に書字の機会を設ける時期,③弱点の把握と対処法を学ぶ時期に分けられた。各時期の様子によって使用するアプリケーションを変えたり,苦手な漢字のタイプ分けやその対処法について話し合ったりした。その結果,対象児の書字に対する苦手意識は払拭された。これらの取り組みの経過をもとに,対象児の書字に対する苦手意識が払拭された要因と中学生以降のLD児に求められる支援の在り方について考察した。
  • 高等学校と特別支援学校における短期指導の事例の比較検討
    坂内 仁, 熊谷 恵子
    2017 年 26 巻 2 号 p. 240-252
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/12/26
    ジャーナル オープンアクセス
    通常の高等学校と知的障害特別支援学校高等部において,就労場面で必要なスキルを選定し,ソーシャルスキルトレーニング(SST)を取り入れた授業を短期間で実践し,その効果を検討した。併せて,短期間の指導における両校種での効果的な指導方法について検討した。その結果,行動評定におけるスキルの生起率やチェックリストの結果が上昇し,SSTを取り入れた授業実践の有効性が示された。また,高等学校での指導では,職業に関わる学習機会の少なさから,職場におけるスキルの必要性の理解や,具体的な職場を想定し,スキルを繰り返し遂行する反復的なリハーサル機会の設定が重要であると考えられた。特別支援学校での指導では,参加生徒全員がスキルを発揮できるよう,リハーサルでの指示内容を生徒の認知能力に応じて設定すること,自己の行動の適切なモニタリングと評価を促すためビデオフィードバックを組み合わせることが重要であると考えられた。
  • クラスワイドな支援と個別支援を組み合わせた支援過程の妥当性
    佐囲東 彰
    2017 年 26 巻 2 号 p. 253-269
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/12/26
    ジャーナル オープンアクセス
    小学校の通常の学級1年に在籍し,ADHDの診断があり,強い反抗性を示すA児が支援対象であった。授業中,A児の問題行動に呼応するように他児童の問題行動が増加した。学級においてクラスワイドな支援および個別支援が実施できない状況が生じた。そのため,2つの対応策を講じた。①一時的にA児は学級から離れ,主に通級担当者,級外職員による個別支援を実施した。学級ではクラスワイドな支援を実施し,学級経営を機能させた。②その後,A児は学級に戻り,担任がクラスワイドな支援と個別支援を実施した。結果,学級全体およびA児の問題行動の減少があった。計画実施後の社会的妥当性のアンケート結果は,一定の社会的妥当性が示された。以上のことから,強い反抗性を示すA児への支援は,一時的に個別支援を重点的に実行することが有効であったと推察される。また,学級におけるA児に対する支援は,学級経営が安定した状況において,個別支援を実施するという支援過程の妥当性が示唆された。
  • 特別支援教育コーディネーターとの協働
    倉澤 茂樹, 立山 清美, 丹葉 寛之, 浅井 郁子, 島津 雅子, 田村 仁彦, 大歳 太郎
    2017 年 26 巻 2 号 p. 270-283
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/12/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,特別支援学校において作業療法士(以下,OT)が自閉症スペクトラム障害(以下,ASD)児童生徒を受け持つ担当教諭に対してコンサルテーションした内容を分析し,OTが特別支援教育に携わるための端緒を得ることを目的とした。同意の得られた児童生徒27名について,学校が発行した事業報告書をもとに書き取り調査を行った。内容分析にはテキストマイニング解析を用いた。結果,担当教諭はOTに,遊びに関すること,切り替えの難しさ,常同行動,姿勢や摂食などを相談し,その行動への理解と対処方法を求めていた。OTは感覚特性を中心にASD児童生徒の全体像を説明し,休み時間や授業,給食場面において,行動障害や目と手の協応といった具体的な課題に対し,遊びや活動の提案,時間や場面設定などの助言を行っていた。本研究の知見は特別支援学校におけるOTの活用促進,OTの養成,卒後教育に寄与することが期待される。
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