日本テスト学会誌
Online ISSN : 2433-7447
Print ISSN : 1880-9618
10 巻, 1 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
一般研究論文
  • ―志願者の2 層構造化と出願行動の地域特徴―
    内田 照久, 橋本 貴充, 鈴木 規夫
    2014 年10 巻1 号 p. 47-68
    発行日: 2014年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

    近年,大学入試の改革に関わる議論が足早に進められている。中でも大きな役割を担うセンター試験は,四半世紀に及ぶ歴史の中,18 歳人口の減少や参加私立大学の増加といった,社会的な変化に揉まれてきた。本研究では,センター試験の利用方法の移り変わりを追うことで,その社会的役割や機能の変遷を捕捉し,望まれる改革のあり方を探る。まず受験出願動向の年次推移を分析し,志願者はどのように変わってきたのか,変わらない性質は何かを検討した。その結果,センター試験志願者の2 層構造化が見出された。経年的に安定した中核層と,試験の利用方法が多様な新参入層とが分離した。次に,都道府県別にセンター試験利用率や出願先の属性を分析したところ,地域ごとに固有の特徴的なパターン類型が見られ,センター試験の担う役割は地域ごとに異なることが浮き彫りとなった。さらに県別の18 歳人口の推移予測からは,地域特性や将来展望に即した個別方策の必要性が指摘された。

  • ―対応づけ可能性分析への応用―
    佐藤 喜一, 柴山 直
    2014 年10 巻1 号 p. 69-80
    発行日: 2014年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

    本稿では,対応づけの実行可能性を検討するための指標の充実を図るため,対応づけ得点の測定の標準誤差と対応づけ得点の信頼性指数を提案した.提案指標は,テスト得点の分散,信頼性係数,相関係数といった基本的な統計量を用いて容易に推定できる.データ収集デザインが単一グループデザインの場合,試験結果の基本的な分析結果から提案指標をただちに推定できる.等価グループデザインの場合でも,テスト間の相関を予想できる場合は提案指標を利用可能である.さらに,実際の大規模テストの結果と提案指標を利用し,信頼性の観点から対応づけの実行可能性について検討した数値例を示した.それらの例を通し,提案指標が対応づけ得点の信頼性評価に役立つことや,対応づけの実行可能性について様々な示唆を与えてくれることを示した.

  • ―新しいアルゴリズムの提案とシミュレーションによる評価―
    秋山 實
    2014 年10 巻1 号 p. 81-94
    発行日: 2014年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

    本論文の目的は,潜在ランク理論に基づくコンピュータ適応型テストの新しいアルゴリズムを提案し,それらをモンテカルロシミュレーションによって評価することにある.

    提案したアルゴリズムを用いた潜在ランク理論に基づくコンピュータ適応型テストの性能は,ランク数 3 において 50 アイテムのアイテムバンクを使用した場合の推定誤差は1.7%,40 アイテムのアイテムバンクを使用した場合の推定誤差は2.8%,30 アイテムのアイテムバンクを使用した場合の推定誤差は5.5%,20 アイテムのアイテムバンクを使用した場合の推定誤差は8.9%であった.このことは潜在ランク理論に基づくコンピュータ適応型テストが項目応答理論を適用できない小規模なサンプルデータを用いて構築したアイテムバンクを使って実用的なレベルで実行できることを示している.

事例研究論文
  • 熊谷 龍一
    2014 年10 巻1 号 p. 115-123
    発行日: 2014年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

    本研究では,熊谷ほか(2012)により提案された簡易型コンピュータ適応型テスト(simplified computerized adaptive test;SCAT)について,そこで算出される得点の特徴および測定精度について検討を行った.検討に際して,Rasch モデルを利用したコンピュータ・シミュレーションを利用した.

    シミュレーションの結果,1)SCAT 得点がその両極に行くほど中央値方向へのバイアスが生じること,2)バイアスの影響からSCAT 得点の両極ほど標準誤差が小さくなること,3)項目固定型テストと比較すると相対的に標準誤差が小さくなること,が示された.

  • ――その意義と発信型,対面型広報の効果――
    倉元 直樹, 泉 毅
    2014 年10 巻1 号 p. 125-146
    発行日: 2014年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

    現在,我が国の大学において,大学入試広報活動は欠かせないものとなっている.入試広報は受験生への大学情報の提供を目的として始まったが,少子化の中,今は学生募集の意味合いが強くなっている.入試広報活動に関する研究は国立大学を中心に2000 年代に入ってから活発化している.中でも,入試広報の効果を探る研究が必要とされている様子がうかがえる.本研究では,東北大学工学部が10 年以上にわたって実施されてきたAO 入試Ⅱ期受験生を対象としたアンケートから,入試広報活動の効果に関わる項目について分析した.その結果,発信型広報の効果には受験生の出身地の地域差は見られなかった.対面型広報は東北地方出身の受験生の活用度が高かった.いずれも,年を追うごとに参考にする度合いが高くなる傾向が見られた.拡大する入試広報活動には限界や弊害も指摘されているが,大学志願者の進路選択への役割が大きくなっていることが示唆された.

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