日本テスト学会誌
Online ISSN : 2433-7447
Print ISSN : 1880-9618
11 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
一般研究論文
  • —多枝選択式の英語文章読解テストを用いて—
    寺尾 尚大, 安永 和央, 石井 秀宗, 野口 裕之
    2015 年 11 巻 1 号 p. 1-20
    発行日: 2015年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,多枝選択式の英語文章読解テストにおける錯乱枝の選択率が能力別にみてどのように異なるか検討することであった.研究1 では,英語文章読解テストにおいてどのようなものが錯乱枝になりうるか質的に検討するため,調査協力者16 名に対し,私立大学入学試験問題の多枝選択式・英語文章読解テストで出題された問題を用いて,誤答選択枝のそれぞれについてコメントを収集し,コメントの結果をもとに錯乱枝の要因・水準を作成した.研究2 では,大学生の受検者366 名に英語文章読解テストを実施し,能力別にみた錯乱枝の効果を検討した.多項ロジスティック回帰分析および残差分析の結果,能力低群では文章中に記述がなく否定語や因果関係を用いた錯乱枝を選ぶ者が多かった一方,能力中群では文章中に記述があり否定語や因果関係を用いた錯乱枝を選ぶ者が多かった.また,能力高群では文章中に記述があり対義語を用いた錯乱枝を選ぶ者が多かった.本研究の知見から,実際の英語文章読解テストにおける誤答選択枝のもっともらしさが能力別に異なる可能性と,多枝選択式の項目作成にかかる労力を軽減できる可能性が示唆された.

  • ―問題作成の専門家に対する調査結果に基づいて―
    荒井 清佳
    2015 年 11 巻 1 号 p. 21-34
    発行日: 2015年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

    テストは,成績の判定や選抜などに用いられ,受験者個人や社会に大きな影響を与える。そのため,テストは適切であるべきだが,テストが適切であるにはテストを構成する各問題項目が適切であることが必要であろう。

    本研究は,実際に問題の作成に携わっている専門家の方々に調査を行い,その結果に基づいて問題項目を作成する上で大切なことは何かを明らかにすることを目的とする。本研究で対象とするのは多肢選択式の問題である。研究1では,作成ガイドラインとして知られているものの比較を行い,問題作成の専門家の意見を伺った。研究2では,問題作成時に問題作成の専門家が大切にしていることを尋ねた。その結果,作成ガイドラインの中には試験の目的に応じて柔軟に捉えるべき項目があることが分かった。また,問題作成時に大切なことは,「試験の目的の沿っていること」と「測定したい内容を測定できる問題になっていること」,さらに加えて「受験生のためになるような問題であること」であると考えられる。

事例研究論文
  • 光永 悠彦
    2015 年 11 巻 1 号 p. 61-80
    発行日: 2015年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

    看護系大学の臨地実習前の学生が必要な知識と適性を有するかを判断するために,看護学の18 分野について大学間共通のCBT(Computer Based Test)を導入する計画において,CBT 実施に先立ち,項目バンク構築に向けた試行試験を行い,多数の項目について項目特性を推定する必要が生じた. 多数の項目に対し少数の受験者から項目特性を推定する必要があるため,本論では比較的少数の受験者データからでもIRT(item response theory)と同様に解釈可能な項目特性を推定できる潜在ランク理論(latent rank theory, LRT, Shojima, 2009)を適用した. 事前分布を指定したIRT による項目特性推定値と,事前分布なしの LRT の結果を比較したところ,項目特性及び能力値の大部分について IRT とLRT が同じ傾向の推定値となった. この結果から,LRT がIRT の代替として機能し得ることを示した. 同時に,LRT を項目バンク構築に用いる場合の課題を指摘した.

  • ―教研式標準学力検査 NRT「中学1年数学」への適用―
    鈴木 雅之, 豊田 哲也, 山ロ 一大, 孫 媛
    2015 年 11 巻 1 号 p. 81-97
    発行日: 2015年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

    多くのテストでは,テスト全体の得点や各問題の正誤,受検者集団の中での序列などの情報が受検者にフィードバックされる.しかし,これらは学習のどこにつまずいているかについて有益な情報を提供しないため,学習改善に活用しにくい.こうした中で近年,学習内容の習得状況について詳細に診断するための方法として,認知診断モデル(cognitive diagnostic model)が注目されている.そこで本研究では,教研式標準学力検査 NRT「中学1年数学」に対して,認知診断モデルによる学習診断を適用し,その有用性を検討した.その結果,認知診断モデルを適用することで,テスト全体の得点や「数と式」「図形」などの内容領域別の得点からは知ることのできない診断情報が得られることが示された.また,認知診断による学習診断を利用する上での問題点と今後の課題について展望した.

  • 坂野 永理, 渡部 倫子
    2015 年 11 巻 1 号 p. 99-109
    発行日: 2015年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

    本稿は2012 年に改訂された日本語コースのプレースメントテストをラッシュモデルを使い検証したものである。分析では2012 年版と旧版テストのデータを用い,改訂がテスト結果にどのように影響を与えたかを検証した。受験者は国内の大学の日本語プログラムに在籍する留学生487名である。分析の結果,改訂の意図通り2012 年版のほうが旧版よりテストの難易度が高いことが確認された。一方で,問題文のルビの削除を行った改訂については,削除によって難易度が変化したとは言えないことも明らかになった。また,2012 版テストの難易度は受験者の能力に比べて依然低く,難易度の高い項目を増やす必要や,新たに追加した項目の中の選択肢がうまく機能していない項目の修正など,今後改訂すべき点も明らかになった。

  • ―ビジネス日本語テストを資料とした実証的研究―
    小野塚 若菜, 加藤 清方, 梅木 由美子, 越前谷 明子, 前川 眞一
    2015 年 11 巻 1 号 p. 111-129
    発行日: 2015年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

    項目反応理論を用いてテストの作成・運用を行う場合,項目バンクに質の高いテスト項目を十分に確保することは容易ではない.本研究では,この問題の解決のために,日本語能力を測定する公的な大規模日本語試験のうち,BJT ビジネス日本語能カテスト(Business Japanese Proficiency Test)を資料として調査・分析を行い,実証的な研究を行った.具体的には,(1)過去の出題項目から項目統計量が特異であったテスト項目を抽出し,その解答の傾向の内実を検討,項目統計量が特異であった要因についての検証を行った.さらに,(2)検証結果に基づく方針によって項目に修正を加え,(3) 実験的データを収集してその修正が項目統計量の改善に寄与したか,定量的・定性的に分析した.検証の結果,修正によって項目統計量が改善されたことから,従来,項目統計量が特異であったために試験実施後に項目バンクへ追加されなかった項目も,適切な修正・改変を加えれば再利用できることが判明した.

展望論文
  • 石井 隆稔, 植野 真臣
    2015 年 11 巻 1 号 p. 131-149
    発行日: 2015年
    公開日: 2022/02/15
    ジャーナル フリー

    2007 年に,ISO/IEC 23988 ISO でe テスティング実施に関する世界標準が決定された.その特徴は,何度異なるテストを受験しても,等質で精度の高い評価が保証されることである. e テスティングの現場では,異なる項目により構成されるが,テスト情報量や出題領域が等質な “等質テスト” をなるべく多く構成しなければならない.しかし,複数等質テスト構成は,アイテムバンクから互いに等質となる異なる項目の組み合わせを抽出する最適化問題であり, NP 困難である.その為,複数等質テスト構成は,コンピュータサイエンスの技術を用いて,近年,そのアルゴリズム開発が急速に発展してきた.本論では,e テスティングで利用される複数等質テスト構成の近年の発達について解説する.

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