看護教育学研究
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特別寄稿論文
  • 舟島 なをみ
    2024 年 33 巻 1 号 p. 1-14
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/04/18
    ジャーナル フリー

    院内教育リーダー(Chief Nurse Educator)とは、病院がそこに就業する看護師を対象とする教育と病院をフィールドとする看護師・専門看護師・認定看護師等の養成に必要となる実習を牽引する看護師である。2023年、清泉女学院大学は大学院看護学研究科修士課程に院内教育リーダー養成プログラムを開設した。これは、日本初の試みである。
    本論文の目的は、院内教育リーダー養成に向けたカリキュラム開発の過程を記述することである。この目的達成に向け、第1に、院内教育リーダー養成の必要性と意義、第2に、C.N.E.の役割と役割遂行に向けて必要な能力、第3に、C.N.E.養成カリキュラムの編成の過程等について記述した。カリキュラム編成には、Torres,G.等による統合カリキュラム開発の方法論を採用した。結果として、院内教育リーダー養成の専門科目として10科目の必要性が明示された。10科目とは、「①看護教育学特論」、「②院内教育実践Ⅰ〈リーダーシップ論〉」、「③院内教育実践Ⅱ〈教育プログラムの編成と研修の展開〉」、「④院内教育実践Ⅲ〈実習フィールドマネージメント〉」、「⑤院内教育実践演習Ⅰ〈院内教育プログラム開発と再編〉」、「⑥院内教育実践演習Ⅱ〈研修計画の立案と実施〉」、「⑦院内教育実習〈インターンシップ〉」、「⑧看護学研究方法論」、「⑨特定課題研究」、「⑩看護管理学」である。このうち、①②③④⑤⑥⑦⑨の8科目が既存の学科目では代替不可能であり、新設科目として構築された。

論著
  • ─研究者倫理に焦点を当てて─
    金谷 悦子
    2024 年 33 巻 1 号 p. 15-21
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/04/18
    ジャーナル フリー

    研究に携わる看護職者が看護専門職者として発達するためには、自律的に研究を進める必要がある。筆者は、博士課程に進学し、研究者倫理に関する研究に取り組む中、様々な研究上の倫理的問題に直面した。これら直面した問題を博士論文として開発した『看護職者のための研究倫理行動自己評価尺度』を用いて振り返った。また、筆者は、博士課程修了後、開発した尺度を用いて研究に携わる看護職者の研究倫理行動の質を測定し、現状と看護職者との特性を解明した。結果は、研究を継続し、研究成果を公表している看護職者の研究倫理行動の質が高いことを示した。本稿では、研究成果を用いて自己の研究活動を振り返るとともに、研究に携わる看護職者が看護専門職者として発達するためには、自分の意思に基づいた責任ある行動および常に真理を追究する姿勢が不可欠であることを述べる。

原著
  • 山下 暢子, 舟島 なをみ, 松田 安弘, 中山 登志子
    2024 年 33 巻 1 号 p. 23-37
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/04/18
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、修士課程に在籍する学生が研究指導の良否を決定づける基準を解明し、その特徴の考察を通して、学生の知覚を把握し、修士論文完成に向けてより良い研究指導を実現するための示唆を得ることである。修士課程修了後5年未満の修了者656名を対象とし、大学院生が「良い」「良くない」と知覚する研究指導を問う自由回答式質問を含む質問紙を用いて調査した。質問紙の内容的妥当性は、教員による検討会とパイロットスタディにより確保した。分析には、Berelson,B.の方法論を参考にした看護教育学における内容分析を用いた。返送された質問紙314部(回収率47.9%)の内、有効回答289部を分析対象とした。分析の結果、修士課程に在籍する学生が研究指導の良否を決定づける基準を表す25カテゴリが明らかになった。Scott,W.A.の式によるカテゴリ分類への一致率は80%以上であり、カテゴリが高い信頼性を備えていることを示した。考察の結果は、学生が、研究指導の良否をa)研究指導日時の確保に関する基準、b)研究指導の準備に関する基準、c)学生の個別状況に応じた研究指導のあり方に関する基準、d)研究指導過程に示す教員の態度に関する基準、e)研究指導中に展開する教員と学生の相互行為に関する基準、f)研究者としてのロールモデル行動の提示に関する基準の6側面から決定づけていることを示した。修士論文完成という目標の達成を目ざしこれらを活用することにより、効果的な研究指導を実現できる可能性が高い。

  • 上國料 美香, 舟島 なをみ
    2024 年 33 巻 1 号 p. 39-49
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/04/18
    ジャーナル フリー

    研究目的は、病棟に勤務する看護師(以下、病棟看護師)ベッドサイドで患者教育を展開する際に直面する問題(以下、患者教育上の問題)を明らかにし、その特徴を考察することである。全国の病院のうち、研究協力に承諾の得られた87病院の病棟看護師1,743名を対象に郵送法による質問紙調査を行った。質問紙は、患者教育上の問題を問う自由回答式質問、特性を問う質問から構成された。回収された862名(回収率49.5%)の回答のうち、自由回答式質問に具体的な記述のあった477名の回答を、Berelson, B.の方法論を参考にした看護教育学における内容分析を用いて分析した。分析の結果、【患者・家族個別の教育目標達成阻害要因克服に向けた教育計画立案、修正困難】など、病棟看護師が直面する患者教育上の問題29カテゴリが形成された。Scott, W.A.の式に基づくカテゴリへの分類の一致率は85%以上であり、カテゴリが高い信頼性を備えていることを示した。考察は、病棟看護師が直面する患者教育上の問題が、患者・家族個別の教育目標達成阻害要因に影響を受けて生じるなどの特徴6点を示唆した。本研究の成果は、病棟看護師が、直面する患者教育上の問題を理解し、自ら解決するために活用できる。

  • 伊勢根 尚美, 中山 登志子, 舟島 なをみ
    2024 年 33 巻 1 号 p. 51-64
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/04/18
    ジャーナル フリー

    研究目的は、「実習指導役割自己評価尺度─病棟看護師用─」を用いた自己評価の有効性を検証することである。混合研究法を採用し、実習指導者34名を対象に次の内容を依頼した。①尺度を用いて第1回の実習指導における自己の役割遂行の質を測定する。②測定結果を解釈し、役割遂行の質向上に向けた対策を検討する。③第2回の実習指導を実施し、尺度を用いて再度自己の役割遂行の質を測定する。④研究者より面接を受ける。34名の2回分の尺度の測定結果を量的データとして収集し、対応のあるt検定を実施した。その結果、第2回の総得点と全下位尺度得点の平均値は、第1回よりも有意に上昇した。④の面接を通し、尺度を用いた自己評価による実習指導者の知覚と行動の変化に関する発言を質的データとして収集し、質的帰納的に分析した。その結果、尺度を用いた自己評価による実習指導者の知覚と行動の変化を表す56カテゴリが形成された。t検定の結果と56カテゴリのうち4カテゴリを統合した結果、尺度の得点が、自己の測定結果を基に検討した対策を実施することにより上昇したことが明らかとなった。以上は、尺度を用いた自己評価が、実習指導に携わる病棟看護師の役割遂行の質向上に有効であることを示す。

  • 植田 満美子, 中山 登志子, 舟島 なをみ, 上國料 美香, 横山 京子
    2024 年 33 巻 1 号 p. 65-78
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/04/18
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、手術室看護師が、患者の安全確保に必要な医療事故防止能力を自己評価するための尺度を開発することである。尺度開発は、次の3段階を経た。①質的研究による手術室看護師の医療事故防止行動の解明、②質的研究の成果に基づく尺度の作成、③項目反応理論を用いた分析による質問項目の選択と尺度の信頼性と妥当性の検討、である。手術室看護師の医療事故防止行動38種類に基づき作成した25項目からなる5段階リカート型尺度を調査に用いた。1次調査は、全国の手術看護に携わる看護師841名を対象に実施し、有効回答438部を分析した。2次調査は、684名を対象に再テスト法を実施し、有効回答204部を分析した。項目の選択に向け、IRTによる分析データと内容の両側面から項目の選択と削除を繰り返した。その結果、最適な13項目を選択し、完成版尺度とした。完成版尺度の情報量は9.0以上、クロンバックα信頼性係数は .91であった。再テスト法による2回の総得点間の相関係数は .62(p<.001)であった。また、尺度が、想定していた1次元性であることを確認した。さらに、既知グループ技法により6仮説が支持された。加えて、完成版尺度は、データと内容の両側面の検討により項目が選択された。これらは、完成版尺度が、信頼性のうち安定性にやや課題を残すものの、妥当性の複数の側面の証拠を備えており測定用具として活用可能であることを示す。

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