看護教育学研究
Online ISSN : 2432-0242
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31 巻, 1 号
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原著
  • 鹿島 嘉佐音, 舟島 なをみ, 中山 登志子
    2022 年 31 巻 1 号 p. 1-14
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/05/01
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、「職場の『働きやすさ』評価尺度-病院スタッフ看護師用-」を用いた評価活動の有効性を検証することである。本尺度を用いた評価活動の有効性とは、スタッフ看護師の「働きやすさ」に関わる職員が、スタッフ看護師による「働きやすさ」の測定結果の解釈を通し、働きやすい職場づくりに向けて肯定的な知覚を生じることである。3病院4看護単位のスタッフ看護師に尺度への回答を依頼し、看護単位毎に回答を集計し測定結果とした。次に、各看護単位の測定結果を当該看護単位の看護師や他職種に提示した。測定結果の解釈を通し、これらの職員に生じた「働きやすさ」に関わる知覚を面接等により収集した。収集したデータを質的帰納的に分析した結果、65カテゴリが形成された。文献に基づき設定した2つの基準と65カテゴリを照合した結果、その多くが基準を充足した。これにより、対象者に生じた「働きやすさ」に関わる知覚の多くが、働きやすい職場づくりに結びつくことが示唆された。また、看護単位毎に基準の充足状況を確認した結果、4看護単位中2看護単位が2つの基準共に100%充足し、残る2看護単位が第1基準67%、第2基準100%充足した。以上は、本尺度を用いた評価活動が働きやすい職場づくりに一定の効果をもたらすことを示した。

  • 服部 美香, 舟島 なをみ
    2022 年 31 巻 1 号 p. 15-26
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/05/01
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、病院に就業するスタッフ看護師の学習ニードアセスメントツールを開発することである。次の3段階を経て開発した。①質的帰納的研究の成果に基づく質問項目の作成・尺度化、②尺度検討会とパイロットスタディによる内容的側面の検討、③1次・2次調査による尺度の信頼性・妥当性の検討である。
    34項目からなる6段階リカート型尺度を作成し、調査に用いた。1次調査は、全国の病院に就業するスタッフ看護師1,554名に質問紙を郵送し、686名(回収率44.1%)から回答を得、有効回答440部を分析した。結果は、クロンバックα信頼性係数が .953であり、尺度の内的整合性を備えていることを示した。また、ロールモデルがいる者(t = 2.50, p = .01)、明確な目標のある者(t =2.26, p = .02)が、そうでない者よりも尺度総得点が有意に高く、妥当性の外的側面の証拠を備えていることを示した。さらに、主成分分析の結果、全質問項目の第1主成分への負荷量が,絶対値 .50以上,寄与率は40.7%であり、1次元性であると判断した。これは、構造的側面の証拠を備えていることを示す。加えて、2次調査は200名を対象に再テスト法を実施した。その結果、尺度の総得点の相関係数が .72(p < .001)であり、安定性を備えていることを示した。
    以上より、開発したアセスメントツールは、高い信頼性と妥当性を備えていると判断した。

  • 丸山 紀子, 舟島 なをみ
    2022 年 31 巻 1 号 p. 27-42
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/05/01
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、専従の教育責任者を確保できない中小規模病院の看護部長(以下、中小規模病院の看護部長)が担う院内教育提供に関わる役割と特徴を明確化し、院内教育に関する示唆を得ることである。看護部長15名を対象に、半構造化面接法によりデータを収集した。「Berelson B.の方法論を参考にした看護教育学における内容分析」を適用し、個別分析、全体分析を実施した。個別分析の結果345記録単位を抽出し、さらに全体分析の結果、看護部長が担う院内教育に関わる役割を表す【部下に自身の院内教育に関する意向を伝える】【病院幹部に院内教育の重要性を説明する】【教育に関わる人材の採用に向け適任者を探索する】など24カテゴリが形成された。Scott.W.Aの式によるカテゴリ分類の一致率は70%以上でありカテゴリが信頼性を確保していることを示した。24カテゴリを考察した結果、≪自ら研修計画の立案・実施・評価に携わり部下にもその専門的知識を教示する≫など6項目の特徴が明らかになった。また、看護部長の教育機会として、[院内教育に関するビジョンの明確化][院内研修プログラムの立案、実施、評価の知識、技術の修得]など5点を包含する研修の必要性が示唆された。

  • 高橋 吏才子, 中山 登志子, 植田 満美子, 舟島 なをみ
    2022 年 31 巻 1 号 p. 43-56
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/05/01
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、職務上の困難に起因し病院を退職した看護師の退職に至る経験を表す概念を創出し、その特徴を考察することを通して、退職した看護師を客観的に理解するための資料とすることである。病院を退職後3年未満の看護師13名に半構造化面接を実施し、退職を思案する6ヶ月前から退職に至るまでの経験をデータとして収集した。看護概念創出法を適用しデータを分析した結果、病院を退職した看護師の退職に至る経験を表す21概念を創出した。21概念とは、【臨床経験累積による円滑な職務遂行と惰性での職務遂行】【就業環境への適応困難による心身負担蓄積】【目標喪失による新たな目標模索と目標設定不可による退職決意】等である。考察の結果、病院を退職した看護師の退職に至る経験を表す21概念が、「看護師として職務を遂行していることを表す経験」「職務上の困難に直面していることを表す経験」「目標を喪失し職業継続意思に影響を及ぼす経験」等、8つの特徴を持つことを示唆した。本研究成果は、退職を思案する看護師が、自身の職務遂行状況や直面している問題を客観視し、問題への対処や自身の将来を方向づけるために活用可能である。また、退職を思案する看護師と協働する看護職が、退職を思案する看護師を理解し、必要な支援を検討するための資料となる。

  • ―副看護師長のよりよい役割遂行に向けて―
    和田 卓磨, 横山 京子, 山下 暢子, 松田 安弘
    2022 年 31 巻 1 号 p. 57-71
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/05/01
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、副看護師長の役割遂行に伴う経験を表す概念を創出しその総体を明らかにすることである。また、創出された概念の考察を通してその特徴を見出し、副看護師長のよりよい役割遂行に向けた示唆を得ることである。対象者は、副看護師長として1年以上就業している現職の副看護師長15名である。看護概念創出法を適用し、半構造化面接法により副看護師長の経験をデータとして収集し分析した結果、副看護師長の役割遂行に伴う経験を表す18概念を創出した。18概念とは、【経験と学習による副看護師長役割の理解と遂行】【看護師長や他副看護師長への自己の見解提示と見解相違による葛藤】【看護提供の円滑化に向けた医療チームメンバー間の結束促進と対立回避】【看護管理者と実践者の両視点に基づくスタッフ看護師や看護学生への教育的役割の実行】【副看護師長としての課題の明確化と課題克服に向けた試行錯誤】等である。考察の結果、これら18概念は、《質の高い看護が円滑に提供されるように部署の看護に関わる職員と相互行為を展開し部署の運営に取り組む》《管理的および教育的な視点をもち個々のスタッフ看護師を支援する》《副看護師長役割を担いその役割を果たすことにより発達していく》等の5つの特徴を示した。副看護師長は、自己の役割遂行の現状とこれらの概念や特徴を照らし合わせ、現状を客観的に理解しながら副看護師長としての役割に取り組むことが重要である。

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