看護教育学研究
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32 巻, 1 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
特別寄稿論文
  • ―面接データへの適用を目指して―
    舟島 なをみ
    2023 年 32 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/04/18
    ジャーナル フリー

    Berelson,B.の方法論を参考にした看護教育学における内容分析は、自由回答式質問への回答をデータとして、その内容を分析するために開発された。この方法論は、多くの研究者によって活用されるとともに、面接データへの適用の是非が論じられるようになった。既に3件の研究が面接データにこの方法論を適用した研究を成功に導いた。本論文は、この方法論のさらなる活用可能性拡大に向け、半構造化面接により収集したデータを必要とする研究に看護教育学における内容分析を適用するために次の5項目について論述した。第1は、Berelson,B.の方法論を参考にした看護教育学における内容分析の特徴について論述した。第2は、面接データへの「看護教育学における内容分析」の適用要件であり、どのような場合に面接データへの適用が必要になるのかについて論述した。第3は、研究事例と適用基準の4要件であり、実際の研究が4要件をどのように充足していたのかについて論述した。第4は、面接データの分析に必要な手続き、第5は、データの種類の相違と看護教育学における内容分析として、自由回答式質問への回答をデータとする場合と面接への回答をデータとする場合の手続きを対比した。

原著
  • 上國料 美香, 舟島 なをみ
    2023 年 32 巻 1 号 p. 13-24
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/04/18
    ジャーナル フリー

    研究目的は、ICU看護師が講じている患者安全のための医療事故防止対策を明らかにし、その特徴を考察することである。全国の病院のうち、研究協力に承諾の得られた54病院に就業する集中治療室の看護師(ICU看護師)428名を対象に郵送法による質問紙調査を行った。質問紙は、医療事故防止行動を問う自由回答式質問、特性を問う質問から構成された。回収された226部(回収率52.8%)のうち、医療事故防止対策を問う自由回答式質問への回答のあった164部とパイロットスタディの際に自由回答式質問に回答のあった36部、計200部の記述を、Berelson, B.の方法論を参考にした看護教育学における内容分析を用いて分析した。分析の結果、【医師の指示に基づく正確な治療進行に向けた確認の手段として指さし、呼称、チェックリスト、ダブルチェック、トリプルチェックを用いる】など、ICU看護師が講じている患者安全のための医療事故防止対策を表す42カテゴリが形成された。Scott,W.A.の式に基づくカテゴリへの分類の一致率は80%以上であり、カテゴリが高い信頼性を備えていることを示した。考察は、ICU看護師の医療事故防止対策の特徴7点を示唆した。本研究の成果は、ICU看護師個々が、自身の医療事故防止対策を客観的に理解するために活用できる。

  • ― 実習環境への適応促進に向けて ―
    上坂 唯子, 舟島 なをみ
    2023 年 32 巻 1 号 p. 25-37
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/04/18
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、看護学実習において学生が効果的であると知覚するオリエンテーションの全容を明らかにし、学生の実習環境への適応を促進するオリエンテーションのあり方への示唆を得ることである。全国に所在する看護基礎教育機関に在籍し、病院における実習の経験を持つ学生、または卒業後3年未満の看護師1,908名を対象に、効果的なオリエンテーションを問う自由回答式質問を含む質問紙を用いた調査を行った。回収された質問紙は549部(回収率29%)であった。効果的なオリエンテーションがあったと回答した対象者323名のうち、自由回答式質問に回答した316名の記述を、Berelson, B.の方法論を参考にした看護教育学における内容分析に従い分析した。結果は、【物品の保管場所、使用方法を説明するとともに学生の使用が許可されている物品を特定する】等、学生が効果的であると知覚するオリエンテーションを表す30カテゴリを明らかにした。Scott, W.A.の式に基づくカテゴリへの分類の一致率は80%以上であり、カテゴリが信頼性を確保していることを示した。また、30カテゴリから、学生の実習環境適応促進に役立つオリエンテーションの実現に向け、学生の立場を考慮しオリエンテーション内容を精選する等、8項目を実施する必要性が示唆された。

  • ―病院に就業し講師を担当する看護職者に着眼して―
    村井 佳美, 中山 登志子, 植田 満美子
    2023 年 32 巻 1 号 p. 39-53
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/04/18
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、院内教育の講師を担当する看護職者のうち、病院に就業する者が直面する困難とその克服法を解明し、院内教育の質向上に向けた示唆を得ることである。全国の60病院に就業する院内教育の講師経験を持つ看護職者449名に、講師の担当に伴い直面する困難とその克服法を問う自由回答式質問を含む質問紙を用いて調査を行った。返送があった293部(回収率65.3%)の回答に、困難の有無とその内容を問う質問が同様であったパイロットスタディにより回収した44部を加えた合計337部のうち、有効回答290をBerelson, B. の方法論を参考にした看護教育学における内容分析を用いて分析した。結果は、院内教育の講師を担当する看護職者が直面する困難22種類と、困難に対する克服法34種類を明らかにした。Scott, W. A. によるカテゴリ分類の一致率は困難、克服法ともに70%以上であり、カテゴリが高い信頼性を備えていることを示した。また、困難と克服法の対応を明らかにした。困難が生じる契機に着目し困難を考察した結果、7つの特徴が見出された。さらに、各特徴を持つ困難とそれらの困難に用いられていた克服法を考察し、院内教育の質向上に向けた示唆を得た。本研究成果は、講師を担当する看護職者が、自身の直面する困難を客観的に理解するために活用できるとともに、これを通して困難の克服に向けた方向性を見出し、講師の役割を円滑に遂行することに貢献する。

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