情報通信政策研究
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特集号: 情報通信政策研究
4 巻, 1 号
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〔特集〕データエコノミーの将来 ~期待と課題~
特別寄稿
  • 岩田 一政
    2020 年 4 巻 1 号 p. 1-18
    発行日: 2020/12/01
    公開日: 2021/01/07
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    現代は「データ駆動型経済」の時代である。本論は、データのもつ特性を踏まえ、日本経済が直面する政策上の課題とその解決策を探ろうとするものである。データは通常の財と異なり、「消費の非競合性」や「外部性」といった特性がある。また、個人データの提供とプラットフォーム企業によるデジタル・サービス提供との交換は、ゼロ価格で行われることが多く、両者の間に情報の非対称性が存在していることもあって、個人データの価値の測定を困難にしている。またデータは、社会財、共有財、公共財としての性格を備えており、社会的課題の解決には、データを共有財、公共財として扱い、活用することが求められる。

    データは、企業による最適技術の選択に対して有用な情報を提供するばかりでなく、生産性向上に寄与するアイデアや知識の投入物として用いられている。データを可能な限り広く流通させることは、経済の効率性を改善させるが、その一方で、個人データに関するプライバシー保護や企業の営業秘密を保護することが求められている。

    日本の政策上の課題の第一は、データの自由な流通とプライバシー保護を両立させることである。民主主義社会において個人データの所有権は個人にあることを前提に、プライバシー保護とデジタル・サービス享受に関する選択をプラットフォーム企業ではなく、個人に委ねることが望ましい。個人が自らのデータをコントロールする権利があることを明確にした上で、データの「ポータビリティ」や「インターオペラビリティ」に関するルール作りが求められている。このルール形成によって、情報仲介機関として情報銀行が有効に機能することになろう。また、巨大テック企業によるデータ共有についても政府によるガイダンス作りが求められる。

    第二の課題は、国境を越えた個人データの自由な移動を可能にすることである。欧米間での個人データの自由な流通を可能にする「プライバシー・シールド原則」は、欧州司法裁判所により欧州連合(EU)の「データ保護一般規則(GDPR)」に違反するとの判断がなされた。この問題解決の鍵は、どのようにしてプライバシー保護と国家安全保障維持との両立を図るかにある。欧米間でこの論点に関する合意形成がなされない場合には、世界は、中国(国家中央集権システム)、アメリカ(「告知―合意(選択)」システム)、EU(プライバシー重視システム)の3つの「デジタル経済圏」に分裂するリスクがある。

  • 実証分析とケースによる考察
    渡部 俊也, 平井 祐理
    2020 年 4 巻 1 号 p. 19-31
    発行日: 2020/12/01
    公開日: 2021/01/07
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    データ政策を検討するうえで、基礎となるのが、データの価値をどうとらえるのか、どのようなデータに経済的な価値があるのかという考え方である。一般的にデジタルデータを多量に保有しているからといって、そのデータから利益を生み出せるとは限らず、多くの条件が整って初めて企業の利益や競争力につながり、産業競争力に結び付く。その要件を踏まえたデータの保護やデータ利活用のインセンティブシステムを設計することがデータ政策として重要となる。

    本稿ではそのような観点から、データについての経済的価値に着目して、質問票調査に基づく実証分析による検討結果を示し、あわせて具体的な事例として、機械学習に提供されるアノテーションデータにおける価値について考察を加えた。

    これらの結果をもとにデータの法的保護の在り方について検討した。

  • 定量的なアプローチ
    大橋 弘, 中村 豪
    2020 年 4 巻 1 号 p. 33-46
    発行日: 2020/12/01
    公開日: 2021/01/07
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    近年、欧米では企業のマークアップ、すなわち限界費用に対する価格の水準が上昇し続けている。これに対して日本企業のマークアップには、目立った上昇が見られない。欧米におけるマークアップの特徴として、特にマークアップの高い企業がさらにマークアップを高め、かつ市場シェアを拡大していることがある。そしてこのような傾向の源泉としては、データ資産を有効に活用する企業の存在が指摘できる。データ資産の活用は、他社との差別化を可能にし、より顧客の嗜好に合う製品・サービスを提供しながら、マークアップを高めるとともに市場シェアの拡大にも寄与する姿が見て取れる。顧客との取引データなどのデータ資産がこれによってさらに蓄積され、更なる活用を通じて一段とマークアップの上昇がもたらされていることになる。

    わが国における企業のマークアップが欧米企業と大きく異なる傾向をもつのは、このようなデータ資産の活用が有効になされていないためではないか、という問題意識のもとに、日本企業におけるデータ資産とマークアップの関係を定量的に分析する。データ資産の保有状況や活用状況については、総務省情報通信政策研究所が実施した「データの活用に関する調査」によって得られた2018年度の状況に関するデータを用い、マークアップについては財務データを用いて推計した値を用いた。分析対象となる企業には、製造業企業、非製造業企業の双方が含まれる。

    分析の結果、データ資産の保有量はマークアップと相関を持たず、日本企業においてはデータ資産がマークアップの上昇につなげられていないことが明らかになった。データの利用頻度が高い企業の場合は、相対的にはデータ資産とマークアップの相関が強まるものの、有意とは言い難い。また、データの処理方法としてAIなど高度なものを用いているか否かにかかわらず、同様にデータ資産とマークアップの相関は見られないという結果となっている。

    その一方で、マークアップの代わりにTFPについて分析したところ、データ資産を多く保有する企業では、TFP水準が有意に高い傾向が見られた。以上の分析より、日本企業は、保有するデータ資産を事業の効率化やコストダウンなど、生産性の向上のためには活用できているが、他社と差別化された製品・サービスを提供し、収益性を高めることにはつなげられていないのが現状であるといえる。

  • ―経済的価値はあるかという問いからの考察
    高口 鉄平
    2020 年 4 巻 1 号 p. 47-61
    発行日: 2020/12/01
    公開日: 2021/01/07
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    本稿では「パーソナルデータに経済的価値があるか」という問いを考察することを通じて、パーソナルデータを財として扱うことの課題を整理した。

    パーソナルデータは、それが最終的には経済上の利益につながるという点では、経済的価値を認めることはできるが、その価値がどの程度であるかという算定の方法等については明確ではない。また、個人はパーソナルデータ提供の対価を正しく評価できない可能性があり、対価への意識からパーソナルデータの利活用が進まなくなる可能性がある。さらに、パーソナルデータを、経済的価値を有する財として捉えることと個人情報保護法の趣旨には相違がある。

    現在、パーソナルデータの利活用を目指して情報銀行等の仕組みが展開されている。このような仕組みが有益なものとなるためには、個人や事業者のパーソナルデータの価値に対する認識を支える政策が求められる。

    また、パーソナルデータには公共財的性質や外部性があり、これらの性質を踏まえて、どのようなメカニズムによって利活用を促進するのかを検討する必要がある。

論文(査読付)
  • 大久保 英樹
    2020 年 4 巻 1 号 p. 81-101
    発行日: 2020/12/01
    公開日: 2021/01/07
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    AI・IoTなどの新たなICTによるデジタルデータの生成・収集・分析の進展と活用拡大により、新たなエコノミーが形成されつつある。一方、デジタル化の進展に伴い、サイバーセキュリティの重要性も高まる中で、我が国においてセキュリティ人材の人的規模などに関する各種報告がなされているが、これらの報告の中でセキュリティ人材の育成に関わる研修に必要な費用・期間をどの程度に推計すれば良いかが明らかにされていない。このことが、企業や地方公共団体がセキュリティ人材の確保に積極的に取り組むことを躊躇する一因になっている面もあると思われる。

    本論文では、セキュリティ人材の育成に関わる研修費用・期間の算定を試みる。算定にあたっては、単に研修コースの費用・期間の積算だけでなく、研修に参加する要員が本来の職務に従事していないために発生する社内費用や研修のインターバル、継続的な維持費用も考慮するとともに、企業規模に応じた研修費用・期間の算定を試みる。

    具体的には、「研修要領に応じた研修費用・期間算定モデル」により社内費用や研修のインターバルを考慮した研修費用・期間などを試算するとともに、「企業規模に応じた人材構成モデル」により企業規模に応じたモデルを設定して、企業規模ごとの人材育成に関わる研修費用・期間の試算を行った。また、試算結果と経済産業省「平成29年情報処理実態調査」の企業規模ごとのIT分野の人材育成に関する社外教育・研修費用との比較を行った。

    本論文により、これまでの各種報告書では提示されていなかったセキュリティ人材の育成に関わる研修費用・期間の算出の考え方と手法の一案を提示できた。我が国の人口動態予測等から産業人口の減少が予測されている中、セキュリティ人材の育成に関わる研修費用・期間を推計することはデータエコノミーの時代の今後の施策を考える上で重要であり、セキュリティ分野の施策推進による企業や地方公共団体等におけるセキュリティ分野の人材確保・スキルアップに寄与できるであろう。

  • 清水 たくみ, 早矢仕 晃章, 深見 嘉明, 松島 裕康, 坂地 泰紀, 大澤 幸生
    2020 年 4 巻 1 号 p. 103-123
    発行日: 2020/12/01
    公開日: 2021/01/07
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    様々な産業・経済システムのデジタル化が進展する中、デジタルデータを活用した価値創造への期待が高まっている。その流れを受けて、異なる事業者間でデータを交換・取引するデータ流通エコシステムが萌芽し、新たなイノベーションの源泉として注目され始めている。このようにデータ流通を通じた価値創造への関心は高まっているものの、法制度設計と技術仕様が複雑に絡み合うことから、データ流通エコシステム全体を包括的に捉えた議論が進んでいるとは言い難い。加えて、データ流通プラットフォームの仕組みやサービスについてのシステム面・ビジネス面に絞られた形での議論は存在する一方で、実際に取り扱われるデータ自体の特徴やデータ間の関係性などのデータ流通メカニズムについて十分には明らかになっていない。そこで本論文では、データ流通プラットフォームにおけるデータ連携・相互作用メカニズムを、実証分析に基づいて検討した。プラットフォーム上のデータネットワーク分析から、1) 連携可能性を高めるデータの特徴、2) 連携を促進するデータ共有条件、及び3) データネットワーク構造の特徴に関する知見を得た。具体的には、「時間」や「場所」などに関わる変数が多様な異種データの連携可能性を高めることが示された。また、秘匿データと共有可能データの混在が密なネットワーク構造の構成を促し、異分野間データ連携の成立可能性を高めることが明らかになった。加えて、データネットワークは人間関係と似た「局所的に密、大域的に疎」な構造をしており、疎の部分を埋めるデータを提供することで、異分野をつなげるデータ活用を活性化できる可能性が示唆された。これら分析結果をもとに、データ流通プラットフォームの設計・運営及びデータエコノミー推進への示唆と課題を議論する。

調査研究ノート(査読付)
  • 山口 真一, 谷原 吏, 大島 英隆, 渡辺 智暁, 菊地 映輝, 庄司 昌彦, 高口 鉄平
    2020 年 4 巻 1 号 p. 125-144
    発行日: 2020/12/01
    公開日: 2021/01/07
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    近年、データ利活用による経済効果や、社会課題の解決が注目されている。他方、パーソナルデータの漏洩や悪用といった、消費者にとってのリスクも指摘されている。このようなデータ利活用に関する諸課題を解決し、データ流通・利活用を促進するための施策の1つに、情報銀行がある。情報銀行とは、データ提供者とデータ利用者を仲介する組織であり、個人がデータを管理すると共に、個人の指示や指定した条件に基づいてデータを第三者に提供することができる組織である。内閣官房や総務省、経済産業省が中心となり、本組織の利用を推進している。

    しかしながら、このようなサービスは国内外で未だ黎明期を脱しておらず、普及が進んでいないという現状がある。その要因の1つとして、消費者側の「不安」や「便益が実感できない」という大きな課題が指摘されている。

    そこで本研究では、消費者の情報銀行への評価の決定要因を定量的に検証し、今後情報銀行の普及を促進し、データ流通・利活用を加速させるための施策を検討する。分析に当たっては、分析対象とした10分野10アプリのいずれか1つ以上を利用している、2,200名分のアンケート調査データを回帰分析した。

    分析の結果、次の4つが明らかになった。第一に、男性であれば情報銀行にポジティブな傾向で、年齢が上がると情報銀行にネガティブな傾向であり、特に年齢の影響が大きい。第二に、インターネットリテラシー、データリテラシー、データ収集認知率は、どれも情報銀行への評価を高めてポジティブな態度にする。第三に、総合的な情報銀行より、特定の分野のデータに特化した情報銀行の方が、ニーズが高い。第四に、情報銀行を使ってみたい理由としては「より便利なサービスを受けられそうだから」という便益を期待するものが多く、使いたくない理由としては、「自分のデータが漏洩(流出)するリスクが高まりそうだから」等のデータの悪用や流出、プライバシー侵害懸念が多かった。

    以上の結果から、次の2つの政策的含意が導かれる。第一に、受け入れられやすい対象(消費者)や、受け入れられやすいデータにフォーカスして展開することが、情報銀行の普及促進に繋がる。第二に、インターネットやデータに関するリテラシー教育を充実させることが、情報銀行の普及促進に繋がる。

寄稿論文
調査研究ノート(査読付)
  • 菅田 洋一
    2020 年 4 巻 1 号 p. 145-158
    発行日: 2020/12/01
    公開日: 2021/01/07
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    携帯電話やWiFi、衛星通信に代表される無線通信は、既に現代社会の社会経済活動に欠かせない存在となっているが、電波を使用する特殊性から、有線の通信と比べて各国・事業者に課される制約は多い。世界各国が国際拘束力を有す規律を遵守することではじめて、混信のない、適正で安定的な電波の利用が維持できる。こうした無線通信の国際規律は「無線通信規則(RR:Radio Regulations)」に集約されているが、第5世代移動通信システム(5G)など新たな無線通信システムの導入等に際して改訂される。

    この改訂は、3~4年毎に開催される世界無線通信会議(WRC)で決定されるが、各国政府、通信事業者、製造業者等は、自国あるいは自社に有利な技術や運用ルール、又は、既存システムを十分保護できる基準等を含む規律の制定を目指す。近年の5G等の無線通信技術の開発競争は、欧米・日本主導から韓国、中国等の新興国主導へとシフトしつつある。WRCでの審議は、こうした無線通信分野の目覚ましい技術発展や無線局種・局数の増大に伴う周波数資源のひっ迫、加えて、これら技術要素以外の各国等の思惑が絡まって複雑化し、利害関係のある地域・国・関係者間の対立はますます厳しくなっている。

    本稿では、RRの改訂過程で生じる地上業務vs宇宙業務の代表的な対立構造として、「新規・従来システム間の対立構造」、「近接国間の対立構造」、「地域グループ間の対立構造」を取り上げ、これらの具体的な事例を分析し、国際規律の合意に当たっての考え方やその改善の状況等について明らかにするとともに、この結果を踏まえた今後の課題や方向性を探る。

立案担当者解説
  • 堀口 裕記, 山内 匠, 坂本 光英, 増子 喬紀
    2020 年 4 巻 1 号 p. 159-173
    発行日: 2020/12/01
    公開日: 2021/01/07
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    第201回通常国会において成立した「電波法の一部を改正する法律」は、Society 5.0の基盤となる電波の有効利用を促進するため、周波数の能率的な利用や安心・安全な電波利用環境の構築に必要な所要の措置を講ずるものである。

    具体的には、①電波有効利用促進センターの業務の追加、②特定基地局開設料に関する制度の対象となる特定基地局の追加、③技術基準に適合しない無線設備に関する勧告等に関する制度の整備、④衛星基幹放送の受信環境の整備に関する電波利用料の使途の特例に係る期限の延長の措置を講ずる。

    ①については、電波有効利用促進センターの業務として、他の無線局と周波数を共用する無線局を当該他の無線局に妨害を与えずに運用するために必要な事項について照会に応ずる業務を追加する。電波有効利用促進センターとは、電波の有効かつ適正な利用に寄与することを目的とする一般社団法人又は一般財団法人であって、総務大臣がその申請により指定するものであり、総務大臣から情報提供を受けて、無線局の開設等に際し必要となる事項に関する照会・相談に応ずる業務等を実施している。

    ②については、特定基地局開設料に関する制度の対象として、移動受信用地上基幹放送をする特定基地局を追加する。特定基地局開設料に関する制度とは、申請者が電波の経済的価値を踏まえて開設計画に記載した特定基地局開設料の額を考慮して開設計画の認定をする制度である。

    ③については、技術基準に適合しない無線設備(不適合設備)が他の無線局の運用を著しく阻害するような妨害を与えた場合に加え、不適合設備を使用する無線局が開設されたならば、他の無線局の運用を著しく阻害するような妨害を与えるおそれがあると認める場合は、無線設備の製造業者、輸入業者又は販売業者に対して必要な措置を勧告できるようにする。

    ④については、衛星基幹放送の受信環境の整備に関する電波利用料の使途の特例について、平成32年(令和2年)3月31日までとされている期限を令和4年3月31日まで延長する。

    なお、①は令和3年4月1日から、③は公布の日から起算して9月を超えない範囲内において政令で定める日から、②及び④は公布の日から施行することとしている。

  • 田中 隆浩, 小林 由佳, 甚田 桂, 岡邊 公志
    2020 年 4 巻 1 号 p. 175-185
    発行日: 2020/12/01
    公開日: 2021/01/07
    ジャーナル フリー HTML

    第201回通常国会において成立した電気通信事業法及び日本電信電話株式会社等に関する法律の一部を改正する法律は、電気通信市場のグローバル化、人口減少等の社会構造の変化等に対応し、電気通信サービスに係る利用者利益等を確保するため、①外国法人等が電気通信事業を営む場合の規定の整備等を行うとともに、②NTT東西(東日本電信電話株式会社及び西日本電信電話株式会社をいう。以下同じ。)が他の電気通信事業者の電気通信設備を用いて電話を提供することを可能とするための措置を講ずるほか、③第一種指定電気通信設備を設置する電気通信事業者の役員兼任規制に関する規定の整備等を行うものである。

    ①については、外国法人等が提供するプラットフォームサービス等の国内における利用が急速に拡大していること等を踏まえ、外国法人等に対する規律の実効性を強化するため、登録又は届出の際の国内代表者等の指定義務、電気通信事業法違反の場合の公表制度等に係る規定を整備するものである。

    ②については、人口減少の急速な進展に伴い、電話の提供に係るNTT東西の近年の赤字傾向が更に拡大するおそれがあること等を踏まえ、所要の条件を満たす場合に限って、総務大臣の認可により、NTT東西が他の電気通信事業者の設備を用いて電話を提供することを可能とする等の制度整備を行うものである。

  • 甚田 桂
    2020 年 4 巻 1 号 p. 187-200
    発行日: 2020/12/01
    公開日: 2021/01/07
    ジャーナル フリー HTML

    第201回通常国会において成立した聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する法律は、聴覚障害者等1による電話の利用の円滑化を図るため、①国等の責務及び総務大臣による基本方針の策定について定めるとともに、②聴覚障害者等の電話による意思疎通を手話等により仲介する電話リレーサービスの提供の業務を行う者の指定に関する制度及び当該指定を受けた者の当該業務に要する費用に充てるための交付金に関する制度を創設する等の措置を講ずるものである。

    ①については、聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に当たっては、国等の関係主体が政策的意義を共有し、相互に連携した上で、電話リレ-サービスの提供を含む措置を総合的に講ずる必要があることから、国、地方公共団体、電話提供事業者及び国民について、それぞれの役割に応じた責務を課すとともに、電話リレーサービスの適正かつ確実な提供に加え、音声認識やAI等の技術開発の推進等も含め、聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に資する施策全般についての方針を定める観点から、聴覚障害者等による電話の利用を円滑化するための施策に関する基本方針の策定について規定するものである。

    ②については、聴覚障害者等による電話の利用の円滑化を図るためには、電話リレーサービスの適正かつ確実な提供を実現することが重要であることから、電話リレーサービスの提供の業務を適正かつ確実に実施できる者を、その申請により、電話リレーサービス提供機関として指定することができることとし、業務規律及び監督規律に関する規定を整備するとともに、電話リレーサービスの提供の業務に要する費用に充てるための交付金を、電話リレーサービス提供機関に対し交付することとし、当該交付金に係る負担金について、電話提供事業者に納付を義務付ける等の措置を規定するものである。

座談会
  • 宍戸 常寿, 工藤 郁子, クロサカ タツヤ, 庄司 昌彦, 山本 龍彦
    2020 年 4 巻 1 号 p. 201-224
    発行日: 2020/12/01
    公開日: 2021/01/07
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    日本が目指すべき未来社会の形としてSociety5.0が提唱されてから数年が経ち、デジタル経済社会においてはサイバー空間とフィジカル空間の融合は深化している。

    そこでは、Society5.0の名の下にイメージされていた創造性の発揮や利便性の向上が見られる一方で、従来の個人情報保護政策や競争政策の枠では捉えきれないデジタル経済社会における「新たな課題」も出現してきている。

    このような「新たな課題」を適切に捉えるためには、現在起きている地殻変動を、単にサイバー空間の領域が拡張し、フィジカル空間を侵食しているものとイメージするのではなく、むしろ、サイバー空間における活動とフィジカル空間における活動が、データの流通を介して相互に深く影響を与え合うという関係性・循環性を適切に認識することが重要である。

    そのようなサイバー空間とフィジカル空間の活動がデータの流通を介して相互に深く影響を与え合う相互の関係性・循環性を含む総体としての「ネットワーク空間」における状況と課題について、大きく4つの議題(「ネットワーク空間の環境変化とその背景」、「環境変化に伴う社会経済的な課題」、「課題解決に向けて採るべき政策、目指すべき姿」、「新型コロナウイルス感染症拡大に係る問題意識」)に分け、それぞれについて話題を提起しつつ、有識者による議論を行った。

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