本年6月に閣議決定された「廃棄物処理施設整備計画」を軸に廃棄物処理施設に関する施策の展開を紹介する。
地域から発生する廃棄物は,すでに地域資源の一つになっていると考えてよかろう。すなわち,廃棄物燃焼プラントが立地している場所では,近隣への熱供給に留まらず,それなりの効率で発電して,所内利用のみならず売電も行えている。一方,廃棄物燃焼プラントは,定常的に安定処理できることが必須になっており,必然的に年間の定期点検の回数が複数回になったり,プラントの基数も複数基設置することが余儀なくされている。今後,各地域からのごみの総排出量は減少傾向になるであろうものの,発電効率を意味する微分的な効率や年間稼働日数を意味する積分的な効率のさらなる向上とともに,厳格化する環境規制への対応にも万全なプラントにしなければならなくなるであろう。
荏原環境プラントでは,ごみ焼却施設において過熱器腐食予測式の確立による高効率発電への取り組み,AI(深層学習)利用およびIoTによる遠隔サポートでの省力化・安定操業への取り組み,地域のエネルギーセンター・災害に強い施設への取り組みを実施し,最新の社会ニーズに応えるよう開発を進めている。
近年,ごみ焼却施設はごみの安全・安心処理に加え地域のエネルギーセンターとしての機能が期待されている。現在,川崎重工業では,ごみ焼却施設の運営に不可欠な安心・安全な運転と運転員の負荷軽減を支援するSmart WtE Operation構想のもと,新たな運転支援システムである高度な自動燃焼制御を実現するSmart-ACC®と,ベテラン運転員の高度な状況判断と的確な手動介入操作を再現可能とするAI運転支援システムの開発を進めている。
最新鋭の廃棄物焼却施設には,循環型社会構築に貢献すると同時にエネルギー供給施設としての役割が大きく求められる。JFEエンジニアリング株式会社は,最新鋭かつ革新的な廃棄物焼却技術を開発し,実施設に実装することで廃棄物焼却施設の性能と価値向上に取り組んでいる。
国際社会においては持続可能な開発目標(SDGs)が定められ,日本においても,各分野において低炭素社会への移行に向けた動きが加速されている。一般廃棄物処理分野においては,よりエネルギー効率の高い焼却施設への更新や,電気や熱を活用した地域の産業振興への貢献,等が求められている。本稿では,発電効率の向上に寄与する蒸気の高温高圧化や,低温排熱を隣接工場供給することによりエネルギー利活用の効率を高めた事例について紹介する。 また,技術の進展が著しいICT・AIを活用した制御の高度化による省力化への取り組み事例についても紹介する。
シャフト炉式ガス化溶融炉は,多種多様な廃棄物を高品質なスラグとすることで循環型社会の構築に貢献をしてきたが,一方で温暖化対策としてコークス使用量削減や発電量UPによる温室効果ガス排出削減が強く求められている。当社は低炭素シャフト炉によるコークス使用量の大幅削減,欧州での高効率発電技術の国内適用,ボイラ水管のショットクリーニングによる総発電量UP,AI・IoT を用いた消費電力原単位削減等に取り組んできた。本稿ではその最新技術を紹介する。
近年の廃棄物処理施設は,ごみの安定燃焼技術や低公害技術がさらに進歩してきたのに加え,地域のエネルギーセンターや防災拠点など,様々な役割が求められるようになっている。 そこで,廃棄物処理施設に関するタクマの最新の取り組みについて,「①高効率廃棄物発電,低炭素化」「②運転効率化」「③低公害技術」,「④災害に強い施設(防災拠点)」の観点から紹介する。
Hitz日立造船株式会社は,高効率のごみ焼却発電施設の導入を積極的に進めており,2017年10月1日から運営を開始した「上越市クリーンセンター」にも様々なシステムを導入した。 「上越市クリーンセンター」運営開始後の運転データから,21.3%の高効率発電および窒素酸化物(以下,“NOX”)や一酸化炭素(以下,“CO”)などの排ガス基準値を満足する安定した運転を実現していることを確認した。
(株)プランテックは独自の竪型火格子式ストーカ炉と乾式反応集じん装置を組み合わせた廃棄物処理システムを開発した。竪型火格子式ストーカ炉は,一般廃棄物から,産業廃棄物, 医療廃棄物,災害廃棄物,高含水汚泥等まで,広範な種類の廃棄物を安定して燃焼できる技術であり,乾式反応集じん装置と組み合わせることで、小規模な廃棄物焼却炉での廃棄物発電等,環境負荷の低い,最適な処理システムを実現している。
エネルギー分野の規制緩和は,自然独占性を根拠とする公的規制の必要性についての技術的,理論的展開の結果として生じた。この政策を望ましい方向への導くために,市場の詳細な分析や組織の経済学的視点からの考察が必要である。
わが国電力・ガス自由化は,トップランナーの英国・北欧(電気),米国(ガス)から10年以上遅れて始まった。当初低調なスタートから,東日本大震災による屈曲点を経て現在は競争の活況と市場の全国化という事象と安定供給システムのゆらぎという事情が同時並行している。さらに近年の特徴である需要側資源の活用も加えて,これまでの経緯をまとめ,今後に向けた注目点をあげてみた。
競争が激化する関西のガス事業者の視点から,自由化後の現状と「ガス事業の健全な発達」に向けた期待を,新規小売電気事業者の視点からは,市場環境のさらなる整備に向けた期待を述べる。大阪ガスは,ガス・エネルギー市場の発展とお客さまへの貢献を目指し,「常に必要とされる事業者」であるための挑戦を続けていきたい。
国内電力市場における自由競争は進展はしているものの,2000年の部分自由化以来の構造的な課題も引き続き存在している。熾烈化を増す価格競争への対応とともに,今後は需要家に必要とされる価格以外の付加価値をいかにスピーディーに提供できるかが鍵となる。
現在,電力システム改革は,2020年の第3段階に向けて,更なる競争の活性化・再エネの導入拡大・安定供給等の公益的課題に対応するため,新たな市場整備等に関する議論が行われている。本稿では,今までの取り組みに加えて,容量市場・需給調整市場の概要について説明を行う。
2011年3月に発生した東日本大震災以降の一連のエネルギーシステム改革において設置された電力・ガス取引監視等委員会の役割や,電力市場・ガス市場における足元の競争状況,競争環境上の課題について概観する。
今後の電力システムは,再生可能エネルギーと分散型エネルギー資源が大量に導入され,分散型システムに移行していく。分散型エネルギーシステムを統合し,電力システムの運用に活用していく仕組みの確立がサステナブルな世界の実現に向け重要な課題である。
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