ご存じのように2020年10月の総理所信表明演説において,わが国の2050年カーボンニュートラルへの挑戦が表明され,続く2021年4月の米国主催気候サミット(Leaders Summit on Climate)にて,わが国は2030年に2013年比で46%の削減を目指すことが宣言されました。世界が脱炭素化に大きく舵を切る中で,今後,わが国がいかにしてこの大きな目標を実現していくのか,喫緊でありながら低・脱炭素社会システム構築へまだ多くの議論が必要です。
一方で,現在もなお,わが国を含む世界は新型コロナウィルス感染症拡大の難局に直面し,依然として不透明な状況が続いています。世界は“新しい社会様式”への転換を迫られ,加えて,昨今の国際情勢によりエネルギー資源の安定的確保が不安定になりつつあり,エネルギーを取り巻く情勢は大きくうねり,エネルギーに対する考え方,エネルギーに対する行動,などすべてにおいて変革が求められてきています。技術面だけではなく,人文・社会科学的な捉え方も含め,エネルギー問題を総合的に捉える視点がより重要になるといえます。
「エネルギー学」部会は2001年にエネルギー学研究会が立ち上げられ,2007年の部会設立を経て21年が経過しました。そこでこの度,日本エネルギー学会100周年記念事業の一環として,歴代部会長をお迎えし,「エネルギー学20周年座談会「エネルギー学20年の歩みと次の20年」」を企画し実施しました。二部構成とし,第一部では「エネルギー学20年の歩み」と題して,初代部会長の地球環境産業技術研究機構の山地憲治氏から立ち上げ時のお話を頂戴し,続いて歴代部会長からそれぞれ当時の活動内容等について様子をお話頂きこれまでの活動について振り返りを行いました。続いて第二部では,「今後の20年をどう考えるか? ~エネルギー学の視点から~」と題し,1.今後の20年をどう考えるか? ~エネルギー需給~,2.カーボンニュートラル実現への原子力の役割,3.カーボンニュートラル実現への再生可能エネルギーのあり方,の各テーマについて歴代部会長から話題提供を頂き,討論を行なっていただきました。今から20年後というと2042年であり,前述の46%削減が達成されている(はずの)2030年から12年後で,かつ2050年まであと8年しかなく,2050年カーボンニュートラル実現への重要な時点です。
「エネルギー学」部会は理系と文系の学問を統合した“エネルギー学”の形成を目指し活動しています。多くの学問分野の方々が集いエネルギーに関連する諸問題への議論・意見交換を進める場が必要であり,それこそが持続可能な社会構築,2050年カーボンニュートラル実現へ繋がっていくと考えます。当座談会をきっかけにして若手研究者・学生も含め議論の展開ならびに研究の推進につなげていただければ幸いです。
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