製油所において,製品軽油は水素化脱硫触媒を用いる水素化脱硫装置を経て精製される。 国内の製品軽油には,硫黄濃度を10ppm以下とする規制への対応が求められる他,難脱硫性の原料油処理に対応する需要もあることから,水素化脱硫触媒には高い脱硫性能が求められる。千代田化工建設(株)が軽油向けに開発した水素化脱硫触媒CT-HBT®では,アルミナとチタニアを理想的にハイブリッド化した新規担体を用いる効果により,高い脱硫性能が得られ,従来触媒では処理対応の難しかった原料油の処理が可能となっている。本触媒は商業一号機が西部石油(株)山口製油所の灯油/軽油水素化脱硫装置に導入され,安定した高い触媒性能が実証されたことで,その後,複数の商業機に採用されている。さらに当社では使用済み触媒を良好に再生する技術を確立し,再生触媒の商業実績を構築するに至っている。
鉄鋼業は日本のCO2排出量の15%を占めている。その中でも,石炭を原料とする製銑工程は,その過半を占めており,地球温暖化抑制への貢献の期待は大きい。製銑での省CO2,省エネルギー手段として,高炉の還元材比低減が有効である。そこで,高炉の還元平衡制約の回避効果に着目した新塊成物による還元材比低減を検討し,その基本原理を見出した。まず,微粉炭材と微粉酸化鉄を混合することで,高炉内で酸化鉄のガス還元反応とカーボンのガス化反応のカップリング現象が発現し,カーボン反応性が向上する。そして,カーボン反応性が向上することで,高炉の熱保存帯が低温化して,反応効率が向上する。この2つの基本原理に基づき,微粉炭材と微粉酸化鉄から構成される含炭塊成鉱,RCA(Reactive Coke Agglomerate)を開発し,実用化した。開発に際しては,製造上の課題に対して,含炭塊成鉱の成分設計,含有カーボン量の最適化,蒸気養生による製造効率化,の3つの技術開発ポイントに注力した。本技術は,実機使用評価試験と実機測定データによる原理確認を経て,当社の3製鉄所,高炉6基に順次適用され,高炉の還元材比低減を通じた省エネルギーに貢献している。
地球の大気の歴史や熱バランスから温室効果について再考した。その上で,二酸化炭素からのメタノール合成やメタネーションといったカーボンリサイクル技術を紹介すると共に,そのシステムとしてのあり姿について述べる。
大崎クールジェンでは,究極の高効率発電技術である石炭ガス化燃料電池複合発電とCO2分離回収技術を組み合わせた「革新的低炭素石炭火力発電」の実現を目指し,実証試験に取り組んでいる。本稿では,プロジェクトの概要および進捗状況について紹介する。
脱炭素社会への実現に向けて,カーボンニュートラルなバイオマスエネルギーの利用は近年ますます注目が高まっている。本稿では,噴流床型ガス化炉とFT合成プロセスを組合せてバイオマスからのジェット燃料製造に成功したので,その開発状況について紹介する。
脱炭素化で期待が高まるカーボンリサイクルに向けて,大崎クールジェン(株)などでのNEDO事業を契機とする研究開発や実証事業が進んでいる。広島県を中心に,瀬戸内エリアのカーボンリサイクルに関するポテンシャルを整理し,拠点化への展望を示す。
消費電力の100%を再エネにすることを宣言することで,再エネの普及を目指すRE100イニシアチブの最新動向,何をもって再エネを消費したと信頼性高く主張できるのか,そして日本の課題について概説する。
2020年10月に菅首相が「2050年カーボンニュートラル,脱炭素社会の実現を目指す」と発表して以降,脱炭素を宣言する企業が急速に増加している。これまで大和ハウスグループは,いち早くSBT,EP100,RE100加盟による脱炭素を宣言し,「環境と企業収益の両立」を掲げ,自社の脱炭素の取り組みと事業拡大の両立させる戦略を進めてきた。この戦略と事業に及ぼす影響を以下に紹介する。
当社は2019年1月にRE100イニシアチブに加盟し,事業活動で使用する電力を2050年までに100%再エネ電力とすることを宣言した。建設現場で使用するエネルギーは,ディーゼルエンジンで稼働する建機による軽油が多いものの,タワークレーン,シールドマシン,溶接,構内照明等では大量の電力も使用している。本記事では,当社のRE100イニシアチブ加盟経緯から再エネ電力の調達,そして今後の課題について紹介する。
2050年までに脱炭素社会の実現が望まれる中,事業活動で使用する電力等を再生可能エネルギーへ転換することが企業に求められている。このような背景において,当社の環境ビジョンに基づき,オーナーと共によりよい環境の実現を目指す「積水ハウスオーナーでんき」の取り組みについて紹介する。
グローバルマネーが気候変動ビジネスに向かっている。その背景および動向について解説し,企業がどのように対応しているか,今後の展望を概観する。
分子量は重質油の基本的な物性であり,その測定には種々の方法が用いられているが,確立した測定法はなく,ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)が広く用いられている。本稿では分子量の計算方法及び保持時間を分子量に換算するための分子量校正曲線とその標準物質の取り扱いなどを解説する。
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