本研究の目的は,統計的推論の進展を目指した教材開発の枠組みを構築し,その枠組みを用いて教材を開発することである.そのためにまず,Ben-Zvi & Garfield(2004)の統計的推論の定義を援用し,統計的推論の概念規定を行った.次に,Garfield & Ben-Zvi(2008)の統計的推論学習環境を分析した.そして,教材開発をするための9 つの視点を設定するとともに,その視点を3 つの段階(授業の目標の検討,問題場面の検討,資料の検討)に整理し,教材開発の枠組みとした.最後に,枠組みを用いてオールドフェイスフル間欠泉を題材とした教材を開発した.その結果,分布についての推論に焦点をあてた教材を開発することで,構築した統計的推論の進展を目指した教材開発の枠組みが実際に機能し得ることが示された.また,開発した教材には,分布,中心,広がりをそれぞれ独立したものとして推論するのではなく,互いに結びつけて推論することの価値を実感できるよさがあることが明らかとなった.