本研究の目的は,関数を学び始める中学生が2 つの数量から比例関係を見出し,事象の問題解決を行う際にどのような共変的推論を働かせているか,その様相を明らかにすることである.そのために,共変的推論の概念規定を行うとともに,共変的推論を捉える枠組みを設定した.次に,先行研究から調査問題を開発する観点を見出し,調査問題の開発を行った.最後に,開発した調査問題を用いた実態調査を分析し,中学生の共変的推論の様相を考察した.
共変する2 つの量と,それらの量の変化の背後にある,媒介変数の働きをする量に着目して考察を行った結果,中学生の共変的推論の様相として次の4つが得られた.第1に,2つの量それぞれに媒介変数の働きをする量を想定することである.第2に,2つの量を別々に変動させた後に値の組を捉えようとすることである.第3 に,2 つの量の共変を捉えるために媒介変数の働きをする量を見出すことである.第4 に,2 つの量を単一化して変化を調整することである.