本研究の目的は,「面積の問題」(近藤, 2022)と同時に実施された「角度の問題」における「説明・証明」の記述の特徴や傾向を把握すること,及び子ども個人の両問題に対する記述の一貫性に関する傾向を把握すること,その上で,小学校高学年の学習指導改善への示唆を得ることである.まず,近藤(2022)と同様の枠組みを用いて「角度の問題」の解答を分析し,次に,子ども個人の両問題に対する記述の特徴を比較した.その結果,自身の主張の妥当性を図形の性質に結びつけて示す割合は,「面積の問題」でみられた傾向と同様に,小6 から中2 へと増加する一方で,小5 から小6 へはその増加幅が小さいという結果を得た.また,両問題ともに「選択式・短答式」の解答部分を正しく判断した子どものうち,一貫してその妥当性を図形の性質に結びつけて示す小5,小6 の割合は20%台であること等が明らかとなった.これらの結果に基づき,「角度の問題」が,小学校高学年の「説明」の能力の育成に適した教材になり得ること等の示唆を得た.
本研究の目的は,統計的探究プロセスを授業化する際の課題を示し,それを踏まえた第6学年「Dデータの活用」領域の単元指導計画を提案するとともに,実際に収集したデータを用いた場合の,児童の問題解決における様相を明らかにすることである.授業化に当たっては,当該学年の指導内容を踏まえて「読書チャンピオンクラスを決めよう」という問題を設定し,委員会活動と連携することで,児童の必要感に迫りながら従来の配当授業時数を大幅に超えることなく統計的な問題解決を実現できるよう計画した.また,単元構想図を作成し,児童の思考に応じて柔軟性のある単元指導を行えるようにした.
このように構成した授業を,発話記録と児童のノート記述を基に分析した結果,自分たちが導こうとしている結論を批判的に考察し,統計的探究プロセスを行き来しながら問題解決を図る児童の姿が見られた.また,課題は残るものの,図書委員会との連携や単元構想図の作成により,授業時数の大幅な増加や指導内容の漏れがなく,学習指導要領解説に示された内容を具現化することができたと考える.