本研究では,数学的コミュニケーションにおける数学的アイデアの創発過程を,教師の関わりに着目して特徴付けることを目的とした.小学4年生「立体」の授業データを,江森(2006)の数学学習におけるコミュニケーション連鎖理論の創発連鎖,及び吉村他(2015)の創発の要件を用いて分析を行い,数学的アイデアの創発現象を特定した.そして,この数学的アイデアの創発に関連した教師の関わりを同定することで,その関わりを「数学的アイデア創発を促す」ための2つの目的(情動的な経験を促す,選択的知覚を促す)と3つの介入方法(話題の焦点化,情報の補完と共有,情報の整理)から整理した.