日本周産期・新生児医学会雑誌
Online ISSN : 2435-4996
Print ISSN : 1348-964X
最新号
日本周産期・新生児医学会雑誌
選択された号の論文の31件中1~31を表示しています
原著
  • 慶田 裕美, 中嶋 美咲, 米本 大貴, 赤石 睦美, 飯田 浩一
    2025 年61 巻2 号 p. 244-248
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/10
    ジャーナル フリー

     一絨毛膜一羊膜双胎(monochorionic monoamniotic twin:MM双胎)は,一卵性双胎の1〜2%と稀であり,早産,低体重,先天異常,双胎間輸血症候群,臍帯相互巻絡など合併症が多く,双胎妊娠の中で最も周産期予後が不良とされている.周産期死亡率は近年低下しているが,児の臨床像や予後に関する報告は少ない.MM双胎の臨床像,短期・長期予後を明らかにするため,当院で管理したMM双胎6組12児について,診療録を用いて後方視的な検討を行った.子宮内胎児死亡は,22週未満の3児を含め4児(33.3%)で,出生した8児の在胎週数は中央値32週3日(29週4日~35週6日),出生体重は中央値1,686g(973~2,368g)であった.先天性心疾患,頭蓋内病変を高率に認め,50%に神経学的後遺症を残し,MM双胎児全例に長期的なフォローアップが必要であると考えられた.

  • 萩元 慎二, 岩谷 壮太, 小林 孝生, 生田 寿彦, 松井 紗智子, 芳本 誠司
    2025 年61 巻2 号 p. 249-255
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/10
    ジャーナル フリー

     極低出生体重(VLBW)児では直接ビリルビン(DB)の上昇がみられることが少なくないが,その頻度や要因は明らかとなっていない.2020~2023年に出生した先天異常のない161例のVLBW児を調査した.日齢14から修正36週までにDB値が複数回2mg/dL以上となったのは9例(5.6%,ケース群)であった.同時期に同じ在胎週数で出生し,DB値が2mg/dL未満で推移した27例をコントロール群として作成し,臨床因子を比較検討した.ケース群では,コントロール群に比して,男児,腹部手術の施行,DB値が2mg/dLを超える直前1週間における2日以上の絶食の頻度が有意に高かった(89 vs. 44%,56 vs. 4%,44 vs. 11%).結論として,先天異常のないVLBW児の5.6%に高DB血症の遷延がみられ,男児,腹部手術の施行,長期間の絶食がその発症に関わることが示唆された.

  • 横井 碧, 近藤 乾, 高瀬 千尋, 朴 智加, 宮原 奏, 宮原 宏幸, 四手井 綱則, 森丘 千夏子, 杉江 学
    2025 年61 巻2 号 p. 256-261
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/10
    ジャーナル フリー

     【背景】在胎22週出生児は生育限界とされ,在胎23週出生児と比較して死亡率が高い.

     【方法】2014~2021年に出生した在胎22週出生児8例(在胎22週群),在胎23週出生児16例(在胎23週群)の出生前要因,合併症,死亡率につき,診療録を用いて後方視的に検討した.

     【結果】在胎22週群の死亡率は63%で,在胎23週群の13%に対し有意に高かった.母体へのステロイド投与を含む出生前要因や,出生後のインドメタシン予防投与・ハイドロコルチゾン投与・動脈管開存症に対する治療などの介入には,両群間で有意差がなかった.

     【考察】在胎23週群と同等の介入を行っても在胎22週群で有意に死亡率が高かった原因として,在胎22週群では副腎機能をはじめとする各臓器の未熟性により,脳室内出血や動脈管開存症などの合併症によるストレスが死亡率の上昇につながったのではないかと考察した.

  • 赤澤 宗俊, 橋本 和法
    2025 年61 巻2 号 p. 262-268
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/10
    ジャーナル フリー

     【目的】未受診妊婦は梅毒感染のハイリスク群であり,診断や治療の遅れから新生児予後が不良となりやすい.梅毒合併妊娠および先天梅毒が急増する今日,梅毒合併の未受診妊婦の臨床像および周産期予後の実態把握が求められる.

     【方法】直近の10年間で症例報告された国内文献から,先天梅毒21症例を含む30症例の梅毒合併の未受診妊婦の症例を集約し,臨床像を研究した.

     【結果】平均年齢は23.4歳で,職業は性風俗産業従事者の割合が60%であった.分娩様式は53%が飛び込み分娩で,帝王切開率は40%であった.出生体重は平均1,977g,早産率64%であり,死産1例を認めた.先天梅毒の発症の有無での二群比較では,患者背景で有意差はなく,新生児予後は有意に先天梅毒群で不良であった.

     【結論】梅毒合併の未受診妊婦は,若年の性風俗産業従事者を主体とする患者層であった.全体の2/3が早産児および低出生体重児と予後は不良であった.

  • 川田 孝平, 中西 秀彦, 関谷 里佳, 小阪 裕佳子, 山口 綾乃, 石田 宗司, 大岡 麻理, 龍井 苑子
    2025 年61 巻2 号 p. 269-275
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/10
    ジャーナル フリー

     当院では未熟児網膜症(ROP)の治療として抗VEGF抗体ラニビズマブ硝子体内注射(IVR)を2019年に導入した.IVRは網膜光凝固術(PC)に比べ再発率が高く,経過観察が長期化しやすい.IVR導入がNICU管理に与える影響を検討するため,2018年1月~2022年3月にNICUに入院したROP症例63例を後方視的に分析した.無治療群30例(48%),PC群18例(29%),IVR群15例(24%)に分類し,追加治療によってIVR群をIVR単独群(12例)とIVR後PC群(3例)に分類した.IVR単独群はPC群より入院期間が長く,IVR後PC群はPC群と同等であった.IVR単独では網膜血管の進展観察のため入院が長期化するが,適切な時期のPC追加により早期退院が可能となる可能性が示唆された.IVR後PC併用は有用な選択肢となり得るが,長期予後の検討が必要である.

  • 熊谷 健, 南 佐和子, 奥谷 貴弘, 利光 充彦, 樋口 隆造
    2025 年61 巻2 号 p. 276-282
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/10
    ジャーナル フリー

     目的:和歌山県の周産期医療の改善点を明らかにする.

     方法:和歌山県の周産期死亡調査20年分を10年間毎に前期後期に分けICD-PM(International classification of Disease for Perinatal mortality)を用いて比較検討した.

     結果:周産期死亡率は4.44から2.33に減少し,特に早期新生児死亡の割合が減少した.ICD-PM分類では分娩前死亡はA3:胎児低酸素,分娩中死亡はI3:急性分娩時事象,早期新生児死亡はN1:先天異常,母体因子はM1:胎盤/臍帯/卵膜の異常が最も多かった.胎盤/臍帯の異常に胎児低酸素や発育異常を伴う死産は減少しておらず,妊娠高血圧症候群などを伴う母体症例の周産期死亡の割合は増加していた.

     結論:胎盤/臍帯の異常を伴う胎児管理,母体の内科的疾患の管理,周産期死亡症例の詳細な原因検索が今後の課題と考えられた.

  • 桑原 春洋, 田中 雅人, 楡井 淳, 庄司 圭介, 小林 玲
    2025 年61 巻2 号 p. 283-289
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/10
    ジャーナル フリー

     早産児のNICU入院中の身体発育不良は長期的な発達予後不良との関連が示唆されている.今回我々はNICU入院中の身体発育が3歳時の発達に与える影響を検討した.当院NICUに入院した極低出生体重児48例を検討対象とし,①体重,身長,頭囲(以下,体格)のExtrauterine growth restriction(以下EUGR)の有無,②出生時の体格SDスコア(以下SDS)と比較した際の修正40週での体格SDS改善の有無,③体格の1日平均増加量の3つの項目と3歳時Bayley-III乳幼児発達検査(以下BSID-III)の発達スコアとの関連を検討した.体重,頭囲のEUGR群では運動スコアは有意に低く,平均体重増加量と認知,運動スコアの間に有意な正の相関を認めた.極低出生体重児に対して出生後から適切な栄養管理を行い良好な身体発育を促すことは,将来の良好な神経発達に繋がる可能性がある.

  • 告野 絵里, 津田 弘之, 簑田 章, 中村 侑実, 鈴木 美帆, 伊藤 由美子, 手塚 敦子
    2025 年61 巻2 号 p. 290-295
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/10
    ジャーナル フリー

     双胎経腟分娩の成功に関わる因子を明らかにすることを目的とした.2018年9月から2023年8月までに当院で分娩となった双胎妊娠につき後方視的に検討した.当院における経腟分娩の許可基準は先進児が頭位,両児ともに推定体重1,800g以上,二羊膜双胎,経腟分娩の禁忌事項がない,患者が経腟分娩を希望することである.試験経腟分娩を行った双胎妊娠のうち,両児とも経腟分娩に至ったものを成功群とし,年齢,非妊時BMI,経産数,ART妊娠,膜性,分娩誘発,後続児の胎位,両児の出生時体重差について不成功群と比較した.全双胎妊娠338例のうち経腟分娩を試みたのは92例で,成功群が80例(87.0%),不成功群が12例(13.0%)であった.成功群では経産婦と非ART妊娠が有意に多かった.経産婦および非ART妊娠は積極的に双胎経腟分娩を検討することで,経腟分娩率の上昇に寄与できると考える.

  • 竹田 健彦, 岸上 靖幸, 田野 翔, 加藤 幹也, 柴田 莉奈, 村井 健, 小鳥遊 明, 森 将, 稲村 達生, 柴田 崇宏, 春原 友 ...
    2025 年61 巻2 号 p. 296-303
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/10
    ジャーナル フリー

     2020年7月から2023年1月に当院で管理したSARS-CoV-2陽性または濃厚接触妊婦132例について,分娩経過と母児の転帰を解析した.132例中34例が隔離対応中に分娩となった.34例中23例(67.6%)がSARS-CoV-2陽性であった.通常の一般的な感染対策のもと妊娠分娩管理を実施し,34例中28例(82.4%)が経腟分娩,6例(17.6%)が帝王切開だった.SARS-CoV-2感染のみを理由とした帝王切開の実施はなく,全例が産科的適応での帝王切開だった.出生児のNICU入院率は23.5%で,新生児のSARS-CoV-2感染例はなかった.また,対象期間内に院内感染の発生は認めなかった.本研究は,感染症指定医療機関ではない地域周産期母子医療センターにおいても,感染流行下で安全な分娩管理が可能であることを示し,今後の感染症流行期の対応に有益な知見を提供する.

  • 山田 祐也, 安原 肇, 渡辺 しおか, 竹田 善紀, 扇谷 綾子
    2025 年61 巻2 号 p. 304-310
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/10
    ジャーナル フリー

     医療用医薬品添付文書(以下添付文書)の授乳婦の項では,授乳中止を促す記載が多く,専門書との記載内容の乖離が指摘されていた.こうした中,2019年4月から2024年3月にかけて添付文書の記載要領の改訂が行われた.今回我々は,当院院内採用の内服薬414剤を対象に,添付文書の改訂前後で授乳婦の項の記載内容の変化について調査を行った.また,改訂後の添付文書と専門書との記載内容の違いについても検討を行った.結果,約3分の2の薬剤で授乳中止を促す記載は治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮して検討する旨の記載に変更された.改訂後の記載内容においても専門書と一致しない薬剤がみられ,また一部の薬剤において各専門書間に記載の相違を認めた.授乳婦に薬剤を投与するときは,添付文書だけでなく複数の専門書等の内容を参照し,総合的な検討が必要である.

  • 松本 匡永, 上村 哲郎, 鳥井ヶ原 幸博, 竜田 恭介, 清水 大輔, 大村 隼也, 杉谷 雄一郎, 横田 千恵, 渡邉 まみ江, 宗内 ...
    2025 年61 巻2 号 p. 311-317
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/10
    ジャーナル フリー

     当院で診療した正期産児の新生児壊死性腸炎7例はいずれも先天性心疾患を有し,我々はそれらをCHD-NECとし,その背景と発症病態,転帰について後方視的に検討した.単心室循環は5例(71%).全7例で発症前の腸間膜血流低下が疑われ,5例では高肺血流の関与が示唆され,2例は心停止,多臓器不全に続発した.腸管虚血範囲は全例が回腸末端以遠で,6例(86%)が結腸病変を含んだ.消化管手術介入は5例(71%)で,死亡率は4例(57%)であったが,全て遠隔期死亡であった.早産児NECのリスク因子はほとんど関与を認めなかった.早産児NECに特徴的な腸管未熟性の影響は乏しく,腸管血流低下が主な発症病態と考えられ,特に病変分布が結腸に偏在することが特徴的であった.CHD-NECは病態学的には早産児NECとは異なるものとして捉え,予防と管理を最適化することが重要と考えられた.

症例報告
  • 綱掛 恵, 佐川 麻衣子, 山根 尚史, 菅 裕美子, 中村 紘子, 三春 範夫, 熊谷 正俊
    2025 年61 巻2 号 p. 318-323
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/10
    ジャーナル フリー

     胎児超音波異常を認め羊水検査で出生前診断した環状染色体の2症例について報告する.症例①の母体は28歳,2妊1産.自然妊娠成立後,妊娠18週に胎児水腫などを認め,羊水検査で13番環状染色体と診断された.遺伝カウンセリングの結果,人工妊娠中絶を選択し妊娠21週4日に422gの男児を娩出した.症例②の母体は38歳,1妊0産.体外受精で妊娠成立し,妊娠15週に嚢胞性ヒグローマを認め,羊水検査で15番環状染色体と診断された.遺伝カウンセリングの結果,人工妊娠中絶を選択し妊娠20週2日に174gの男児を娩出した.環状染色体は稀な染色体構造異常であり,欠失のない環状構造を有する症例では成長障害,小奇形,軽度知的障害を呈する.欠失を伴う場合は欠失部位に応じて表現型は軽症から重症まで様々である.そのため欠失部位や超音波所見をもとに適切な情報提供を行い,両親の意思決定を促すことが重要である.

  • 上松 由昌, 小西 健一郎, 田中 潔, 髙安 肇, 渡辺 栄一郎, 泊 卓志, 隈元 雄介
    2025 年61 巻2 号 p. 324-328
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/10
    ジャーナル フリー

     【緒言】胎児超音波技術が発展し,頸部嚢胞として発見される梨状窩瘻が増加した.呼吸障害や感染も多く早期診断が重要となるが,特に右側例は稀であるため,診断に時間を要することも多い.

     【症例1】胎児期に右頸部嚢胞を指摘,出生後の超音波検査で不整形嚢胞を認めた.日齢1に哺乳を開始すると嚢胞内に含気を認め,日齢3にdebrisが出現,日齢5に感染を来し,日齢8に摘出術を施行した.

     【症例2】胎児期に右頸部嚢胞を指摘,出生後の超音波検査で含気を伴う不整形嚢胞を認めた.哺乳で含気量は増加,日齢2にdebrisが出現,日齢5に感染を来し,日齢7に摘出術を施行した.

     【考察】梨状窩瘻は,単純性嚢胞内に経時的に含気,debrisが出現するという特徴的な超音波検査所見を示した.早期診断には経時的な超音波検査と,右頸部嚢胞でも梨状窩瘻の可能性を念頭に置くことが重要である.

  • 久田 正昭, 仲間 司, 家入 里志, 高槻 光寿
    2025 年61 巻2 号 p. 329-334
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/10
    ジャーナル フリー

     症例は日齢15の女児.在胎40週,自然分娩にて出生.日齢5に左頸部腫脹と喘鳴を認め前医入院.気管を圧排する左頸部嚢胞と著明な炎症所見を認めたため切開ドレナージを施行され,頸部リンパ管腫疑いで紹介された.前医の単純CTで嚢胞内空気混入を認めたため鰓原性嚢胞を疑い,エコー,造影CT,咽頭食道造影,嚢胞穿刺造影を施行し瘻孔の証明はできなかったが,梨状窩瘻が最も疑われた.炎症消失後,日齢29に手術を施行した.手術開始前に内視鏡下に左梨状窩瘻を同定し,術中に嚢胞を開放して頸部術野からガイドワイヤーを瘻管に挿入し,内瘻孔まで安全に切除した.先天性梨状窩瘻は幼児期以降に好発するとされるが,近年新生児報告例が増えている.梨状窩瘻は瘻管の確実な完全切除が根治的治療に必要なため,瘻孔の位置診断と切除方法の選択は重要である.新生児梨状窩嚢胞本邦報告48例を集計し,診断と手術方法を中心に検討する.

  • 福田 圭佑, 山田 直樹, 伊東 菜摘, 関 ももこ, 宮本 和恵, 飯場 萌絵, 加藤 怜子, 人見 義郎, 中村 佳子, 藤木 豊
    2025 年61 巻2 号 p. 335-339
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/10
    ジャーナル フリー

     非侵襲性出生前遺伝学的検査(noninvasive prenatal testing:以下NIPT)は非確定的検査である.18番染色体由来過剰マーカー染色体により,NIPTが偽陽性となった1例を報告する.

     症例:44歳4妊3産,自然妊娠.出生前診断を希望され,妊娠10週5日当院へ紹介された.遺伝カウンセリング後にNIPTを施行し,結果は18トリソミー陽性であった.羊水検査の結果は47,XX,+mar.ish der(18)(D18Z1+)dnであった.両親の染色体核型は正常で,マーカー染色体はde novoと判明し,18番染色体セントロメア由来であり染色体として極めて小さく臨床的に意義のある症状を呈する可能性は低いと考えられた.妊娠38週3日母体未破裂脳動脈瘤破裂予防目的に帝王切開術を施行した.児は2,568gの女児で,出生時に表現型に異常を認めず,3歳児の時点で発達障害を認めていない.

  • 久保 雄大, 川﨑 裕香子, 平岩 明子, 中村 健太郎, 長岡 貢秀, 猪又 智実, 田村 賢太郎, 吉田 丈俊, 今井 千速
    2025 年61 巻2 号 p. 340-345
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/10
    ジャーナル フリー

     ピルビン酸脱水素酵素複合体(PDHC)欠損症は発達遅滞と高乳酸血症を特徴とする先天性代謝疾患である.新生児型のPDHC欠損症は脳の構造異常を呈し,West症候群を発症し難治に経過する.症例は胎児脳室拡大を認め,在胎37週5日,2,154g(-1.8SD),頭囲29.5cm(-2.4SD)で出生した女児.乳酸アシドーシスを認め,血中乳酸/ピルビン酸(66.9/4.2mg/dL),遺伝子検査でPDHA1遺伝子変異が判明した.日齢13より難治性無呼吸発作が出現した.脳波検査でてんかんによる無呼吸発作と診断した.

     ケトンフォーミュラとフェノバルビタール投与で,代謝面の安定とけいれん発作抑制を図り在宅医療へ移行した.生後4カ月時にライノウイルス感染を契機に,無呼吸発作を伴う焦点てんかんがみられた.新生児型のPDHC欠損症で,無呼吸発作を発症した際には発作時脳波による積極的診断と治療介入が必要である.

  • 末次 雅保, 志村 光揮, 田中 佑輝子, 藁谷 深洋子, 森 泰輔
    2025 年61 巻2 号 p. 346-350
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/10
    ジャーナル フリー

     胎児甲状腺腫は羊水過多や気道狭窄による出生後呼吸障害を来たしうるため,胎児期の正確な診断と適切な治療介入が必要である.症例は40歳,2妊0産,妊娠初期にBasedow病と診断された.プロピルチオウラシル(PTU)とヨウ化カリウム(KI)でBasedow病の治療を開始したが,妊娠26週より羊水過多と胎児甲状腺腫を認めたため,当院紹介となった.超音波検査所見より胎児甲状腺機能低下に伴う胎児甲状腺腫と診断し,妊娠34週からKIとPTUを中止したところ,羊水量の正常化と胎児甲状腺腫の縮小を認めた.出生時の気道確保の必要性を考慮し,妊娠38週に帝王切開術を実施した.出生児は女児,2,716g,Apgarスコア9/10で,呼吸障害は認めなかった.胎児甲状腺腫を呈するBasedow病合併妊娠では,胎児の甲状腺機能を評価し,母児のモニタリングを行いながら抗甲状腺薬や無機ヨウ素薬を調整することが重要である.

  • 堤 彩乃, 北岡 寛己, 桐野 万起子, 入佐 千晴, 水主川 純, 垣内 五月
    2025 年61 巻2 号 p. 351-357
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/10
    ジャーナル フリー

     本邦では近年の梅毒患者増加に伴い,先天梅毒の報告数も増加している.先天梅毒の予防のため,梅毒感染妊婦の早期発見・早期治療が望ましいが,妊婦健診未受診で治療が間に合わないことも多い.今回未受診妊婦から出生した早産児顕性先天梅毒を2症例経験したため報告する.早産児で全身状態が悪かったことから検査に制約はあったものの,Polymerase Chain Reaction(PCR)を用いて病原体診断ができ,抗菌薬治療と支持療法を行い短期予後は良好であった.性感染症についての社会的啓発や女性支援充実の必要性が再認識された.

  • 得居 広葉, 穴見 愛
    2025 年61 巻2 号 p. 358-361
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/10
    ジャーナル フリー

     今回,胎児期に腸管拡張像と多数の腸石像を認め,さらに羊水過少を伴い胎児診断が困難であった重複尿道の症例を経験したため報告する.症例は28歳,1妊0産.妊娠25週の妊婦健診で,胎児に心室中隔欠損と胎児発育不全(-1.5SD)を認めた.妊娠27週より羊水量は減少傾向となり,妊娠29週に羊水過少と診断した.さらに,胎児膀胱の背側の腸管拡張像と腸石像を確認した.これらの所見より鎖肛,尿道直腸瘻および下部尿路通過障害を伴う病態を考えた.羊水過少の診断で,妊娠35週から入院管理とした.妊娠36週1日に自然破水し,骨盤位のため緊急帝王切開術を施行した.娩出時に児の腹部が圧迫され,大量の腸石が肛門から噴出した.鎖肛は認めず,尿道口閉鎖を認めた.児は,日齢2に外科的治療目的で専門医療施設に転院した.精査の結果,重複尿道,尿道直腸瘻と診断された.今後,尿道と直腸の分離手術が予定されている.

  • 明 祐也, 蛯原 郷, 楠田 剛, 梶山 あずさ, 佐々木 瑶, 土持 皓平, 芹田 陽一郎, 野口 雄史, 島 貴史, 漢 伸彦, 中村 ...
    2025 年61 巻2 号 p. 362-366
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/10
    ジャーナル フリー

     症群性頭蓋縫合早期癒合症の1つであるApert症候群は合指/趾以外にも様々な合併症を呈するが,消化管形態異常は稀である.今回,食道閉鎖と多発性空腸閉鎖を合併した1例を経験した.

     児は胎児期より短頭蓋,児頭大横径の拡大,眼球突出並びに両合指/趾がありApert症候群が疑われていた.また羊水過多があり胃胞が確認できず,更に腸管が拡張しており食道閉鎖と小腸閉鎖が疑われた.在胎37週5日に帝王切開で出生,喉頭展開時に気道から胆汁様の分泌物が噴出した.X線検査で食道閉鎖,小腸閉鎖と診断し日齢0に食道絞扼術,胃瘻/空腸瘻造設術を施行,術中所見より多発性空腸閉鎖と診断した.その後,根治術後に退院した.

     Apert症候群の食道閉鎖合併例は複数あるが小腸閉鎖の報告は1例のみであり,複数箇所に閉鎖を認めたものはない.同症候群と診断した際は上下部の消化管形態異常を考慮すべきであり,発症機序の考察を含め報告する.

  • 東城 悟恵, 志村 光揮, 田中 佑輝子, 藁谷 深洋子, 森 泰輔
    2025 年61 巻2 号 p. 367-372
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/10
    ジャーナル フリー

     大動脈左室トンネル(aorto-left ventricular tunnel:ALVT)は,上行大動脈と左室との間に大動脈弁を介さない交通孔を認める稀な先天性心疾患で,多くの症例で新生児期に外科的閉鎖が必要になるため,胎児期に診断することが重要である.症例は28歳,1妊0産.妊娠36週時に胎児心拡大を認めたため,当院紹介となった.胎児心エコーで心胸郭面積比0.44と心拡大を認めた.また,上行大動脈の拡大,拡張期の大動脈から左室への逆流を認めた.カラードプラ法を併用した左室流出路の観察で大動脈血の逆流は大動脈弁を迂回するように左室に流入する所見を認め,ALVTと診断した.小児科・小児心臓血管外科待機の上,妊娠37週に帝王切開術を実施した.児は出生後のエコーでもALVTと診断され,同日外科的閉鎖術を実施した.ALVTの胎児診断では,カラードプラ法を併用した左室流出路の評価が重要である.

  • 亀岡 緋菜, 西村 力, 相樂 昌志, 下澤 弘憲, 矢田 ゆかり, 河野 由美
    2025 年61 巻2 号 p. 373-378
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/10
    ジャーナル フリー

     抗Diegoa(Dia)抗体による重症黄疸をきたし交換輸血を要した症例を経験した.症例は在胎39週6日,3,958gで出生した女児.産院での生後14時間の経皮的黄疸計は7.4mg/dLであったが,生後38時間に17.1mg/dLに急上昇した.血清総ビリルビン値は23.6mg/dLと交換輸血基準を超えており当院へ搬送された.入院時総ビリルビン値とアンバウンドビリルビン値はいずれも交換輸血基準を上回っていたが,急性ビリルビン脳症の症状は認めなかった.抗Dia抗体による新生児溶血性疾患と診断し光療法2方向,輸液,免疫グロブリン静注療法を開始し,交換輸血を行った.治療後総ビリルビンは速やかに低下し,その後光療法2日間でリバウンドはなかった.生後半年の頭部MRIでビリルビン脳症の所見はなく明らかな症状もなかった.抗Dia抗体は重症化のリスクがあり,母児共に対応可能な施設での適切な管理が重要である.

  • 髙野 亮, 阿部 春奈, 伊東 菜摘, 東 福祥, 西田 恵子, 眞弓 みゆき, 大原 玲奈, 小畠 真奈, 佐藤 豊実, 濱田 洋実
    2025 年61 巻2 号 p. 379-383
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/10
    ジャーナル フリー

     二分脊椎等の疾患による難治性の膀胱蓄尿機能障害に対して,膀胱拡大術という手術が行われることがある.治療の進歩により,膀胱拡大術を受けた女性が妊娠・分娩を経験することとなったが,周産期管理に関する報告は少ない.今回我々は二分脊椎術後,幼少期に膀胱拡大術を行われた患者における妊娠管理を経験したので報告する.症例は36歳初妊婦.凍結融解胚移植にて妊娠成立した.妊娠中期より尿路感染症を反復し,水腎症を呈した.尿管ステント留置困難であったため,妊娠17週および22週に両側腎瘻を造設された.その後は概ね順調に経過したが,妊娠37週でイレウスを発症し妊娠中断の方針とした.分娩誘発を行ったが,分娩停止し緊急帝王切開を行った.尿管は高度に偏位していたが,臓器損傷なく分娩終了し,母児共に後遺症なく経過している.膀胱拡大術後妊娠では尿路感染症のリスクが非常に高く,他科との連携をとった適切な治療介入を要する.

  • 天満 祐貴, 三宅 史人, 渡邉 健太郎, 湯井 万里子, 本倉 浩嗣, 松島 智恵子, 高原 賢守, 北村 律子, 飯尾 潤, 西田 吉伸 ...
    2025 年61 巻2 号 p. 384-388
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/10
    ジャーナル フリー

     日齢0の男児.妊娠18週時に胎児腹水を認めたが自然消退した.妊娠37週に胎児機能不全のため緊急帝王切開で出生した.喘ぎ呼吸を認め,人工呼吸を開始するも徐脈は改善せず,気管挿管を試みるも声門様構造は認められなかった.生後30分で緊急気管切開を施行し,有効な換気を得られた.日齢5の咽喉頭ファイバースコープにて声門下腔が同定し得ず,先天性喉頭閉鎖の診断とした.食道造影では明らかな気管食道瘻を認めなかった.安定した自発呼吸を確認し,日齢56に退院とした.生後10カ月時の咽喉頭ファイバースコープで声門に僅かな開口があり,仮声帯の収縮を認めたことから先天性喉頭横隔膜症と診断した.胎児期に未診断だが,小児外科との迅速な連携により大きな後遺症なく退院できた.先天性上気道閉塞症候群の特徴的な画像所見は寛解することがあり,⼀過性の胎児腹⽔を認めた場合,先天性上気道閉塞症候群も念頭に置く必要がある.

  • 三輪 将大, 阿水 利沙, 水本 洋
    2025 年61 巻2 号 p. 389-393
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/10
    ジャーナル フリー

     症例は34週早産児であり,出生後の呼吸・循環状態は安定していた.日齢21に直接ビリルビンが1.5mg/dLまで上昇し,精査を進めたところ,TSH < 0.01μU/mL,free T4 3.24ng/dLと甲状腺機能亢進症を認め,TSAb(thyroid stimulating antibody)が陽性であった.日齢21よりチアマゾールを開始し,日齢48には直接ビリルビンは正常化した.母親は無症状であったが,出産後22日目にTSAb陽性が判明し,バセドウ病と診断された.出生時の保存血清検査では,母児ともにTSHは測定限界以下であり,free T4は基準範囲内であった.母親はTSAbおよびTSBAb(TSH stimulation blocking antibody)がともに陽性であり,児にも両抗体が移行したと考えられた.児の日齢37にはTSAbは陽性を維持していたが,TSBAbは陰性であった.妊娠後期にはTSBAbの影響により母児ともに甲状腺機能は正常であったが,出生後にTSBAbが先に消失し,遅発性の甲状腺機能亢進症を発症したと考えられた.

  • 近江 英理子, 遠藤 英作, 髙野 亮, 築比地 彩香, 熊崎 誠幸, 木村 友沢, 飯場 萌絵, 人見 義郎, 中村 佳子, 山田 直樹, ...
    2025 年61 巻2 号 p. 394-398
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/10
    ジャーナル フリー

     エコーウイルス11型(E-11)感染症は一般に軽症である.最近新生児で重症化する報告が増えているが,母体の妊娠経過に関する情報は乏しい.今回重症E-11感染症で新生児死亡に至った症例の母体臨床経過を報告する.症例は妊娠34週に発熱,下腹部痛,腰痛が出現し増悪したため当院へ搬送された.白血球5,300/μL,CRP 2.26mg/dL.発熱および子宮の圧痛を認め,臨床的絨毛膜羊膜炎の診断で分娩とした.児は体重2,561g,Apgarスコア5分値9点,臍帯動脈血pHは7.343で出生した.母体は術後1日目より症状軽快したが,児は日齢3より発熱を認め,日齢4にE-11重症感染症となり日齢8に死亡した.臨床経過から母子感染だったと考えた.分娩周辺期に母体の発熱と腹痛を認め,血液所見として白血球数正常かつCRP軽度上昇を認める症例は,E-11感染症の可能性を考慮し母体管理をする必要がある.

  • 神原 紀香, 近藤 真生, 杉山 裕一朗, 齊藤 明子, 中山 淳, 大城 誠
    2025 年61 巻2 号 p. 399-403
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/10
    ジャーナル フリー

     心肺蘇生の必要性や低いApgarスコアは高い死亡率や神経学的障害と関連するとされるが,施設外出生後に心肺停止状態で来院したにも関わらず神経学的障害を回避した超早産児を経験した.在胎24週4日,出生体重620gの男児で,母体下腹部痛があり救急車内で分娩に至り救命士による胸骨圧迫と人工呼吸下に臍帯結紮はされず搬送された.病院到着時に心音を聴取されないため新生児科医により胸骨圧迫と人工呼吸が行われた.心拍再開後の生後26分に胸骨圧迫が中止され新生児集中治療室に入院した.気管挿管されたが日齢23に抜管でき日齢132に経口哺乳可能となった.頭部MRIで異常を認めず修正46週で在宅医療や合併症なく自宅退院した.暦3歳の新版K式発達検査での発達指数79で神経学的障害はみられなかった.偶発的に臍帯結紮遅延となり,母子間の血流維持による循環血漿量の増加や循環動態が安定し,神経学的障害を回避できたと考察した.

  • 濵 郁子, 水冨 慎一朗, 岩﨑 秀紀, 三谷 裕介, 安部 孝俊, 酒井 清祥, 和田 泰三
    2025 年61 巻2 号 p. 404-408
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/10
    ジャーナル フリー

     Hirschsprung病(HD)は腸管壁内神経節細胞の先天的欠如により機能的腸閉塞を呈する疾患で,近年早産児の割合が増えている.これまでにHDに腸回転異常を伴わない小腸捻転を合併した報告は見られない.我々は,このまれな合併症から小腸壊死に至った超低出生体重児例を経験したので報告する.症例はHDの家族歴のある出生体重711gの児で,浣腸とブジーを行いながら母乳栄養で体重増加を得られていた.日齢70に未熟児網膜症治療のために鎮静,人工呼吸管理を行ったところ腹部膨満が増悪した.腸管減圧や抗菌薬治療を行ったが奏効せず,日齢84に開腹手術を行った.腸管膜を軸とした小腸捻転を認め,小腸壊死のため小腸部分切除術を要した.超低出生体重児,ひいては早産児のHDでは腹部膨満から小腸捻転へ進行する可能性があり,状態悪化時には小腸捻転も念頭に置き開腹手術のタイミングを逸しないよう注意が必要と考えられた.

  • 神山 真弓, 渡邊 敦, 高田 献, 齋藤 朋洋, 森山 元大, 小泉 敬一
    2025 年61 巻2 号 p. 409-413
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/10
    ジャーナル フリー

     新生児化膿性顎下腺炎は稀な疾患で多くが早産児に発症する.今回,本疾患を発症した正期産児の臨床経過を報告する.症例は在胎39週,体重3,012gで出生.日齢15に発熱と右顎下部に15mm大の腫瘤を認めたため入院した.造影CT検査で顎下腺が腫大していた.腫瘤の圧迫でWharton管開口部から排膿し,膿塗抹検査でグラム陽性球菌が検出されたため化膿性顎下腺炎と診断した.初期輸液とABPC/SBT投与で末梢循環不全から回復し翌日に解熱した.膿・咽頭・母乳培養からStaphylococcus aureusが検出され,口腔内からの上行性感染が考えられた.第6病日に腫瘤は消失し,第14病日に抗菌薬を終了し退院した.退院から2カ月の外来診察で再発はない.本疾患は周囲へ炎症波及し重篤な病態へ進展することがある.稀ではあるが正期産児にも発症するため,顎下部腫瘤を認めた際には本疾患を疑い,速やかに診断・治療へと繋げることが重要である.

  • 寺田 知正, 宮沢 篤生, 及川 洸輔, 氏家 岳斗, 江畑 晶夫, ⻑谷部 義幸, 髙木 孝士, 水野 克己
    2025 年61 巻2 号 p. 414-418
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/10
    ジャーナル フリー

     末梢挿入型中心静脈カテーテル(Peripherally Inserted Central venous Catheter:以下PICC)は,新生児医療をはじめとした小児科領域で使用されている.PICCカテーテルは末梢静脈ラインと比較して長期留置に適しているが,閉塞すると入れ替えの必要がある.カテーテル閉塞の原因としてカテーテルの屈曲や破損などPICCに原因がある場合や,血液や薬剤由来の構造物による内腔閉塞が考えられる.カテーテル閉塞の原因を判別することは困難であり,確定することは一般的には行われない.今回走査型電子顕微鏡とエネルギー分散型X線分析装置を使用することでカテーテル先端の解析を行い,NaとClが原因で閉塞したことが判明した.閉塞の原因が従来報告されていた血球成分やCa3(PO4)2によるものではなかったこと,閉塞の原因成分を比較的簡便に特定できたため報告する.

  • 甲斐 蘭七, 木下 正啓, 海野 光昭, 原田 英明, 前野 泰樹
    2025 年61 巻2 号 p. 419-423
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/10
    ジャーナル フリー

     当院では2015年より,地域の産科クリニックとの間でビデオ通話を用いた新生児医療支援を実施している.今回,遠隔支援が有効に機能した新生児仮死の一例を経験した.在胎38週6日,臍帯脱出と胎児機能不全を認め緊急帝王切開となり,当院へ連絡があった.当院よりビデオ通話を開始し,分娩前のブリーフィングおよび蘇生支援をリアルタイムで実施した.新生児仮死に対する遠隔からの蘇生支援では的確な判断と指示が可能であった.呼吸障害を認め当院へ搬送となったが,神経学的後遺症なく退院した.当院と産科クリニックでは,ビデオ通話による定例会を行っていたこともあり,機器操作の習熟および医療者間の関係性構築が進んでいたことも円滑な連携に寄与したと考えられた.本症例は,遠隔支援による新生児蘇生の有効性と今後の課題を示唆するものである.

feedback
Top