日本手外科学会雑誌
Online ISSN : 2188-1820
Print ISSN : 2185-4092
41 巻, 6 号
選択された号の論文の61件中51~61を表示しています
Proceedings
自由投稿論文
  • 廣瀬 仁士, 河村 真吾, 平川 明弘
    2025 年41 巻6 号 p. 854-858
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/08
    ジャーナル 認証あり

    著者らは保存的治療に抵抗するEaton 分類stage 3 で,アライメント不良を伴う母指CM 関節症に対してlocking plate を用いたCM 関節固定術を行っており,今回,術後機能の回復過程を経時的に調査し,その治療成績を検討した.2018 年2 月~2022 年2 月に施行した11 例11 手を対象とし,術前,術後3 か月・6 か月・12 か月時の患側母指可動域,握力,ピンチ力,Pain visual analogue scale(VAS)(安静時・運動時),DASH スコア,Hand20,Kapandji スコアを調査した.握力,ピンチ力,DASH スコアは術後12 か月,Hand20 は術後6 か月で有意に改善した.Pain VAS は安静時・運動時共に術後3 か月時より有意な改善を認め,術後6・12 か月でさらに改善した.母指掌側外転角は術後12 か月で有意に改善したが,母指橈側外転角,MP 関節可動域,Kapandji スコアは有意差を認めなかった.Locking plate を用いることで強固な固定が可能となり,術後早期での回復が期待された.本法は術後早期より高い除痛効果が得られるが,筋力の有意な改善には術後12 か月,患者立脚型評価の有意な改善には術後6 か月を要し,予想以上に回復まで時間を必要とすることがわかった.本研究結果は術前後の患者説明時の参考となる可能性がある.

  • 山上 信生, 山本 宗一郎, 青木 陽, 伊藤 修司, 髙鳥 幸葉, 内尾 祐司
    2025 年41 巻6 号 p. 859-864
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/08
    ジャーナル 認証あり

    手に発症した非結核性抗酸菌による腱鞘滑膜炎を経験したので報告する.細菌培養検査により診断に至った7 例(平均年齢72 歳)を対象とした.治療は6 例に対して可及的な滑膜切除と抗菌薬投与,1 例に対して滑膜生検の後,抗菌薬投与を行った.組織採取から抗酸菌検出までの期間は平均約1 か月と長期間を有していた.病理組織学的検査では類上皮肉芽腫を7 例中6 例に認めていた.病理組織学的検査は抗酸菌培養よりも早く結果が得られるため,類上皮肉芽腫は早期診断の一助となり,菌種を同定する前であっても病歴や身体所見が典型的であれば,抗菌薬治療の開始を検討すべきと考える.感染の再燃は4 例に認めた.再燃した症例の多くは,易感染宿主例であり,初診時にすでに骨・関節内への感染の波及があった.免疫低下例,骨・関節内浸潤例は非結核性抗酸菌による腱鞘滑膜炎において,予後不良因子である可能性がある.

  • 今井 優子, 阿部 真悟, 栗山 幸治
    2025 年41 巻6 号 p. 865-868
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/08
    ジャーナル 認証あり

    橈骨遠位端骨折に伴う尺骨茎状突起基部骨折において,遠位橈尺関節(以下DRUJ)不安定性を有する症例では骨接合が検討される.著者らは吸収性体内固定用ピンと縫合糸を用いた骨接合術を行い,この治療成績について検討した.対象は当院で手術加療を行った橈尺骨遠位端骨折のうち,橈骨遠位端骨折を掌側ロッキングプレートで整復固定後,術中徒手検査にてDRUJ 不安定性を認めた尺骨茎状突起基部骨折13 例(男性5 例,女性8 例)であった.手術方法は,尺骨茎状突起の先端から骨折部近位の橈側骨皮質を貫くように吸収性体内固定用ピンを挿入し,さらに茎状突起骨片がピンから脱転しないよう縫合糸をかけて締結固定するものである.術後最終観察時点でDRUJ 不安定性が残存した症例はなく,13 例中12 例で骨癒合が得られ,12 例の癒合時期は術後平均5.2 か月であった.尺骨茎状突起骨折に対する本法は,基本的に抜釘を必要とせず,従来法による合併症を軽減しうる点で内固定法の一選択肢になり得ると思われた.

  • 根本 信太郎, 石垣 大介, 佐竹 寛史, 高木 理彰
    2025 年41 巻6 号 p. 869-872
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/08
    ジャーナル 認証あり

    手根管開放術を行った25 例27 手に対し,術前から術後6 か月にかけて第2 虫様筋(2L)および短母指外転筋(APB)導出の運動神経遠位潜時(DML)を経時的に計測し,手根管症候群質問票(CTSI),Semmes-Weinstein test(SW test),およびAPB の徒手筋力テストの推移と比較した.いずれの指標も術後6 か月時点で有意に改善していたが,2L-DML,CTSI の症状スコアおよびSW test は術後1 か月から有意に改善し,3 か月以降は有意差を認めないという類似した術後経過を示した.また,複合筋活動電位(CMAP)導出不能例では,APB-DML より2L-DML が早期に導出可能となった.術後早期にしびれ感や感覚障害が改善していく経過は,2L-DML で評価できるものと考えられた.

  • 新井 猛, 寺内 昴, 嶋田 洋平, 染村 嵩, 加納 洋輔
    2025 年41 巻6 号 p. 873-876
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/08
    ジャーナル 認証あり

    非結核性抗酸菌感染症は近年増加傾向にある.今回,稀な菌株であるMycobacterium arupense による化膿性腱鞘炎症例を経験した.症例は71 歳,男性で,右中指の腫脹,疼痛を認め,右中指ばね指の診断にてステロイド腱鞘内注射を施行し,症状は軽快した.その後数か月,中指全体の違和感が続き,次第に腫脹,疼痛が出現した.MRI にて化膿性腱鞘炎を疑い手術を施行した.中指屈筋腱周囲の病的滑膜を切除し,術中所見より非結核性抗酸菌感染症を疑い抗菌薬の内服を開始した.培養検査および病理組織検査にてMycobacterium arupense 感染症と診断した.Mycobacterium arupense は2006 年,Cloud らによってMycobacterium の新種として報告された.非結核性抗酸菌による化膿性腱鞘炎は慢性経過をたどり,炎症所見が乏しいのが特徴である.本症を疑った場合は,可及的早期に徹底的な滑膜切除と多剤併用療法を開始することが重要である.

  • 辻本 淳, 上村 卓也, 矢野 公一
    2025 年41 巻6 号 p. 877-880
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/08
    ジャーナル 認証あり

    Masquelet 法は外傷や感染による骨欠損に対する再建法で,主に下肢長管骨に用いられているが,手指に適用した報告は多くない.今回,犬咬傷後の骨欠損を伴う左小指末節骨骨髄炎に対して,Masquelet 法で治療を行った61 歳女性の1 例について報告する.First stage 手術では末節骨感染巣のデブリードマンと洗浄を行い,骨欠損部にvancomycin 含有の骨セメントを充填した.術後3 週間抗菌薬投与を行い,術後6 週でSecond stage 手術を施行した.骨セメントを除去し,被膜(induced membrane)の内部に腸骨海綿骨移植を行った.Second stage の術後16 週で骨癒合が得られ,術後24 か月で末節骨の骨欠損は再建され,感染の再燃もなかった.Masquelet 法は末節骨における骨髄炎に対しても,感染制御と骨欠損の再建が可能となる有用な治療選択の一つとなり得る.

  • 岩瀬 紘章, 徳武 克浩, 中川 泰伸, 大山 慎太郎, 建部 将広, 山本 美知郎
    2025 年41 巻6 号 p. 881-885
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/08
    ジャーナル 認証あり

    救急外傷医療において,テレトリアージ(遠隔医療トリアージ)システムを活用した手指外傷患者の搬送プロセスと画像評価について分析した.テレトリアージシステムとは,救急隊が撮影した手指の画像を専門医に送信し,それを基に搬送先の病院を迅速に決定する仕組みである.名古屋大学医学部附属病院において,2013~2018 年の間に救急搬送された44 例63 指を対象とした.救急隊の画像撮影の質が搬送の適切性に与える影響を評価した結果,撮影枚数が多いほど適切な画像が得られる傾向が確認された.また,手外科専門医2 名による画像診断の一致度は「完全切断の有無」や「緊急性・専門性」において高い結果を示した.画像情報を活用した迅速な病院搬送の可能性を示す一方で,撮影技術の均一化や映像データの活用といった課題もある.将来的には,AI の活用により画像情報からの重症度診断を自動化し,搬送効率をさらに向上させるシステム構築を検討していく.

抄録集
feedback
Top