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西 恵佳, 佐野 倫生, 澤田 智一, 宮城 道人, 松山 幸弘
2025 年41 巻6 号 p.
630-632
発行日: 2025年
公開日: 2025/04/08
ジャーナル
認証あり
近年,スマートフォンやゲームの急速な進歩により,手や指に繰り返しストレスがかかり,de Quervain 症候群や腱鞘炎などの症状が発生することがある.しかし,短母指伸筋腱(EPB)の断裂に至った症例報告はない.今回,家庭用ゲーム機の連続使用によりEPB が単独皮下断裂し,母指伸展制限が出現した症例を経験したため報告する.本症例では腱移植を行い,術後1 年でMP 関節の可動域は健側と同程度まで改善した.スマートフォンやゲームの進歩により,今後同様の症例が増える可能性がある.
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岡本 道雄
2025 年41 巻6 号 p.
633-638
発行日: 2025年
公開日: 2025/04/08
ジャーナル
認証あり
手指腱鞘炎86 例を対象に,大豆の代謝産物であるエクオールの摂取の効果を検討した.治療方法をエクオール摂取のみ,エクオール摂取とステロイド腱鞘内注射の併用,ステロイド腱鞘内注射のみの3 群に分けた.評価方法にQuinnel 分類とHand20 を用いた.Quinnel 分類はgrade 0 となった場合,Hand20 は最終経過観察時に治療開始前と比較して20%以上低下した場合を改善ありと定義した.また,治療に影響を与える因子を検索するために,Hand20 の改善の有無を目的変数,年齢,生活習慣病の有無,Kellgren-Laurence 分類を説明変数として単変量解析,二項ロジスティック解析を行った.結果,Quinnel 分類の評価ではそれぞれ50%,54%,19%の改善率であった.また,Hand20 の評価ではそれぞれは65%,61%,43%の改善率であった.二項ロジスティック解析では,治療成績不良因子として高血圧症,脂質代謝異常が有意に抽出された.
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吉村 優里奈, 安岡 寛理, 浦田 泰弘
2025 年41 巻6 号 p.
639-643
発行日: 2025年
公開日: 2025/04/08
ジャーナル
認証あり
繰り返す筋力トレーニングによるmicro trauma が原因で生じたtrigger wrist の2 例を経験した.病理検査では腱鞘線維腫の診断であった.腱鞘線維腫は外傷などの機械的刺激により発生するとの報告があるが,本症例では明らかな外傷歴はなく,繰り返すmicro trauma が原因と考えられた.本症例のような筋力トレーニングはパワーグリップに伴う複雑な手関節の動きを要するため,屈筋腱掌側偏位による屈筋支帯との摩擦や手根管内圧の上昇が原因で腱鞘線維腫が発生したと推測する.
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杉浦 祐太郎, 鈴木 拓, 早川 克彦, 清田 康弘, 佐藤 和毅, 岩本 卓士
2025 年41 巻6 号 p.
644-647
発行日: 2025年
公開日: 2025/04/08
ジャーナル
認証あり
PIP 関節強直に対するシリコンインプラントを用いた人工指関節置換術の短期成績について報告する.平均PIP 関節自動屈伸可動域は,術前が屈曲,伸展ともに0°であったが,最終観察時(平均35 か月)は屈曲63°,伸展-4°であり,インプラントの破損や緩みは認めなかった.PIP 関節強直に対する人工関節置換術は,術前と比較してPIP 関節自動屈伸可動域を改善し,短期的な成績は良好であったが,インプラントの破損も含めた長期的な経過観察が必要である.
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谷本 佳弘菜, 四宮 陸雄, 林 悠太, 今田 英明, 安達 伸生
2025 年41 巻6 号 p.
648-650
発行日: 2025年
公開日: 2025/04/08
ジャーナル
認証あり
Centro-central union(CCU)は,断端形成部近位で切断された指神経同士を縫合する方法である.著者らは指断端形成の際,有痛性断端神経腫の予防のための神経処置としてCCU を行っており,その治療効果を検討した.2020 年以降に当科で指断端形成の際にCCU を追加し,1 年以上経過観察可能であった7 例を対象とした.最終観察時の安静時疼痛NRS(Numerical Rating Scale),Tapping pain(軽い触覚刺激による疼痛)NRS,触覚鈍麻の有無,static two-point discrimination(S2PD)を計測した.結果は,安静時疼痛NRS は全例0,Tapping pain NRS は平均1.85,触覚鈍麻ありは71%(5/7人),S2PD は平均6.3 であった.CCU は有痛性断端神経腫を予防する簡便な手段であると考えるが,まだ症例数が少なく,今後さらなる検討が必要である.
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高松 聖仁, 森本 友紀子, 石河 恵, 斧出 絵麻, 濱 峻平
2025 年41 巻6 号 p.
651-655
発行日: 2025年
公開日: 2025/04/08
ジャーナル
認証あり
近年,四肢・体幹・顔面と全身において軟部組織欠損以外の種々の病態に対して各種の穿通枝が使用され,多くの報告がなされている.今回,著者らが施行した上肢の有茎穿通枝皮弁・脂肪弁症例100 例について,その使用目的(軟部組織欠損の補填,神経保護・癒着防止または腱剥離後癒着防止),穿通枝の種類,対象疾患,術後成績について調査した.手術時年齢は平均55.0 歳,性別は女性26 例,男性74 例,術後観察期間は平均26.7 か月であった.その結果,使用目的は軟部組織欠損38 例,神経癒着防止・保護51 例,腱癒着防止11 例であった.使用された穿通枝の種類は,指動脈穿通枝65 皮弁・脂肪弁,橈骨動脈穿通枝18 皮弁・脂肪弁,尺骨動脈穿通枝12 皮弁・脂肪弁(重複使用例あり)などであった.上肢における有茎穿通枝皮弁は軟部組織欠損のみならず神経保護・癒着防止症例に対しても多く使用されており,軟部組織欠損および末梢神経に対しては良好な術後成績が得られる可能性が示唆された.しかし,腱癒着防止に対しては今後の検討が必要と考えられた.
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大竹 悠哉, 助川 浩士, 小沼 賢治, 井上 玄, 髙相 晶士
2025 年41 巻6 号 p.
656-660
発行日: 2025年
公開日: 2025/04/08
ジャーナル
認証あり
2019 年10 月~2023 年7 月に当院で肘部管症候群に対して尺骨神経皮下前方移動術あるいは尺骨神経筋層内移動術を施行し,術後3 か月以上経過観察可能であった33 例34 肘を後ろ向きに調査した.皮下前方移動術を施行した群(皮下群)は17 例18 肘,筋層内移動術を施行した群(筋層内群)は16 例16 肘であった.皮下群は平均年齢63 歳,男性5 肘,女性13 肘,筋層内群は平均年齢66 歳,全例男性であった.調査項目は赤堀病期分類,手術時間,術前の握力健側比,最終観察時の握力健側比,赤堀予後評価,術後合併症とした.調査の結果,筋層内群で有意に手術時間が長かったが,その他の検討項目に統計学的有意差はなかった.皮下群2 肘で肘部の愁訴を有する合併症の出現により追加手術を必要としたが,合併症出現率に有意差はなかった.
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神田 俊浩, 鈴木 歩実, 吉水 隆貴
2025 年41 巻6 号 p.
661-666
発行日: 2025年
公開日: 2025/04/08
ジャーナル
認証あり
外傷性上肢皮膚軟部組織欠損創に対する遊離前外側大腿皮弁の治療成績を後向きに調査した.対象は16 例17 皮弁,男性15 例,女性1 例,平均年齢46.2 歳であった.皮弁サイズは長径平均146.2mm,短径平均66.5mm であった.穿通枝は筋間型が3 本,筋内型が14 本であり,血管茎長は平均73.2mm であった.外側大腿回旋動脈下行枝がそのまま穿通枝となっていた例が2 例あった.動脈吻合法はflow through 型が12 皮弁,通常の端々吻合が3 皮弁,端側吻合が2 皮弁であった.術後1 例に阻血を生じ,創縁の抜糸で改善した.1 例に鬱血を生じ,静脈再吻合で救済した.全例で皮弁は生着した.本皮弁は長い血管茎を採取できるため,zone of injury 外での血管吻合を要する外傷例に有利な再建法である.下行枝から分岐することなく穿通枝となる例はflow through 吻合ができないため,主幹動脈温存を図る場合は,分枝への吻合か端側吻合での対応が必要である.
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仲 拓磨, 坂野 裕昭, 中村 玲菜, 坂井 洋, 高木 知香, 稲葉 裕
2025 年41 巻6 号 p.
667-671
発行日: 2025年
公開日: 2025/04/08
ジャーナル
認証あり
第2 中手骨軸を参照した新しい母指CM 関節撮影法,Thumb base imaging method with the Second Metacarpal Axis Referred To(母指SMART 撮影法)を考案した.大菱形小菱形骨間関節,第2CM 関節はほぼ不動の関節であり,大菱形骨・小菱形骨・第2 中手骨を1 つのunit として捉える.本法は触知しやすい第2 中手骨を参照することで大菱形骨の正面を描出する.撮影法決定のため,正常な60 手の3DCT 画像を用いた.大菱形骨正面像がXY 平面上に位置されるように3DCT 画像をXYZ 空間に設置し,第2 中手骨軸とX,Y 軸との傾きを計測した.カセッテをXY 平面と仮定すると,第2 中手骨を,カセッテに相対した面で30°背側に,真横から見て20°下方に傾け,指先方向から見て40°回内させると,カセッテの面に大菱形骨の正面像が設置され,良好にCM 関節が描出される.
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中尾 哲子, 鍜治 大祐, 河村 健二, 村田 景一, 矢島 弘嗣, 田中 康仁
2025 年41 巻6 号 p.
672-676
発行日: 2025年
公開日: 2025/04/08
ジャーナル
認証あり
今回,著者らは皮弁再建を考慮した指尖部損傷の分類を作成した.玉井分類のZone 1 の指尖部損傷を対象とし,切断面の損傷type をType 1(横切断),2(側方斜め切断),3(背側斜め切断),4(掌側斜め切断)の4 つに分類し,損傷深度をGrade A(骨欠損なし),C(爪母に損傷や欠損あり),B(A とC の中間)の3 つに細分化した.当院で2016 年4 月~2023 年6 月に行われた32 例34 指を分類し,問題点等を後ろ向きに検討した.Type 1 は18 指,Type 2 は7 指,Type 3 は4 指,Type 4 は5 指であった.行った皮弁はV-Y 前進皮弁が2 指,Oblique triangular flap が22 指,Graft on flap が6 指,逆行性指動脈島状皮弁が4 指であった.主な合併症は爪変形が5 指,末節骨部分切除を追加した症例が3 指,PIP 関節伸展制限が3 指だった.Grade が上がるにつれ合併症が増える傾向にあり,損傷状態に適したflap を吟味・検討し,そのプロトコールを提示することが今後の目標である.
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中村 玲菜, 仲 拓磨, 佐原 輝, 河添 峻暉, 稲葉 裕
2025 年41 巻6 号 p.
677-681
発行日: 2025年
公開日: 2025/04/08
ジャーナル
認証あり
上肢手術は伝達麻酔での手術が広く行われるようになったが,伝達麻酔手術における入院の要否についての見解は一致していない.手術を日帰りで行うか術後1 泊入院するかを勧める根拠は乏しい.本研究では,アンケート調査を通じて患者視点から上肢伝達麻酔手術における入院の必要性を検討した.アンケートに協力が得られた44 例のうち,8 割以上の患者が後方視的に入院の方がよいと回答しており,若年で同居家族がいる場合を除き,多くの例で入院の方が患者満足度が高いと考えられた.また,中高齢者や手術当日に付き添いがいない患者は,入院での手術の方が患者満足度が向上すると考えられる.入院希望の多くは不安感によるものであり,適切な対応と,可能であれば付き添いなどの支援により,生活の不便を解消することで,日帰り手術でも患者満足度が向上する可能性が示唆された.
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石河 恵, 高松 聖仁, 森本 友紀子, 濱 峻平, 斧出 絵麻
2025 年41 巻6 号 p.
682-686
発行日: 2025年
公開日: 2025/04/08
ジャーナル
認証あり
上肢末梢神経障害に対して行った神経剥離・神経縫合の後に有茎尺骨動脈穿通枝脂肪弁による癒着防止・保護を行い,良好な結果を得たため報告する.対象10 例の疾患は肘部管症候群4 例,手根管症候群3 例,尺骨神経損傷2 例,正中神経損傷1 例であり,脂肪弁のサイズは平均23×59mm2 であった.治療成績は疼痛Visual Analogue Scale(VAS),しびれVAS,患者立脚型機能評価質問票(DASH・Hand20)で評価を行い,1 例を除きすべての項目で改善がみられた.一部の症例ではMRI とカラードプラを用いて脂肪弁の生着を確認した.術後合併症は認めなかった.穿通枝脂肪弁は,筋膜を含まず薄いため再絞扼の危険性が少なく,十分な可動性を有し,有茎皮弁のため安定した血行を保持し,主要血管を犠牲にしないため冷感などの知覚障害,血行障害を起こしにくいという利点がある.また,穿通枝はカラードプラを用いて確認できるため,術前計画が容易である.有茎尺骨動脈穿通枝脂肪弁は,橈骨動脈穿通枝が使えない場合や部位によって有用な選択肢の一つである.
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村上 賢也, 佐藤 光太朗, 松浦 真典
2025 年41 巻6 号 p.
687-690
発行日: 2025年
公開日: 2025/04/08
ジャーナル
認証あり
角速度センサを用いて健常者と手根管症候群(CTS)患者の母指最大掌側外転角度と回内角度計測を行い比較検討した.健常者と比較してCTS 患者の掌側外転角度は有意に低値であった.中等度CTS と重度CTS を比較した結果,中手骨部で計測した場合の掌側外転角度は同等であった.爪甲で計測した掌側外転角度と回内角度は,中等度CTS と比較して重度CTS は有意に低値であった.中等度CTS の母指CM 関節での掌側外転角度は重度CTS と同等であるが,重症化すると回内運動障害が顕著となり,爪甲で計測した場合の掌側外転角度は低下し,機能的にも悪化すると考えられた.
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森実 圭
2025 年41 巻6 号 p.
691-694
発行日: 2025年
公開日: 2025/04/08
ジャーナル
認証あり
橈骨遠位端骨折において舟状骨窩掌側の小骨片(volar scaphoid facet 骨片:VSF 骨片)を伴った場合,固定性が不良であると手根骨亜脱臼をきたすことがある.3DCT を用いて骨折線マッピングを行い,その特徴を検討した.対象は平均年齢62(21~89)歳,男性17 例,女性22 例であり,骨折型はAO 分類type B3 が3 例,C3 が36 例であった.舟状骨窩掌側1/2 以下の関節面を含んだ骨片をVSF 骨片とし,これを有するものは背側転位型が1 例,掌側転位型が8 例であり,volar lunate facet(VLF)骨片とVSF 骨片の両方を有したものが4 例,VSF 骨片のみのものが5 例であった.VSF 骨片の大きさは橈骨茎状突起尖端から平均12.6mm,橈側縁から平均14.4mm で,関節面の割合は平均27%であった.VSF 骨片のみ縦径が小さい症例もあり,VLF 骨片の大きさのみを意識するのではなく,VSF 骨片の固定が可能かに留意してプレートを選択する必要がある.
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國分 直樹, 中山 裕一朗, 辻井 雅也
2025 年41 巻6 号 p.
695-699
発行日: 2025年
公開日: 2025/04/08
ジャーナル
認証あり
中手骨頚部骨折に対する逆行性髄内スクリュー固定法の治療成績を検討した.対象は24 例25 指で,男性20 例,女性4 例,平均年齢55 歳,平均経過観察期間は7.8 か月であり,単独損傷は15 例で,9 例に合併骨折を認めた.手術方法はMP 背側を約1.5cm の皮膚切開を加えて伸筋腱と関節包を縦割し,骨折部を整復して3.0mm 径のHeadless Compression Screw を挿入した.後療法は術翌日より可動域訓練を開始した.結果,骨癒合は全例で得られ,抜釘などの追加手術を要した症例はなく,合併症も認めなかった.最終経過観察時のDASH score は2.4 点,握力対健側比は95%であり,TAM(%TAM)は術後4 週で229 度(87%),最終246 度(93%),単独損傷の15 例のみでみると術後4 週で240(90%),最終258 度(96%)と早期より機能回復が得られていた.本法は手技が簡便で,抜釘も不要,臨床成績も良好であり,中手骨頚部骨折に対する有用な術式と考える.
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土居 平尚, 堀井 恵美子, 外山 雄康, 浜田 佳孝, 澤田 允宏, 齋藤 貴徳
2025 年41 巻6 号 p.
700-703
発行日: 2025年
公開日: 2025/04/08
ジャーナル
認証あり
上肢再建の腱移植ドナーとして,一般的に長掌筋腱や足底筋腱が選択される.長趾伸筋腱(以下EDL 腱)は低い欠損率,腱の長さ,太さ,強い剛性から有力なドナー候補だが,足趾腱間の交通枝や伸筋支帯などの解剖的煩雑さから,採取が避けられてきた.近年,EDL 腱をドナーとして用いる新たな採取方法が報告され,著者らも上肢再建で長い移植腱を必要とする際,EDL 腱を用いてきた.本研究では,腱移植のドナーとしてのEDL 腱の有用性・安全性を検討した.対象は上肢再建の際,移植腱としてEDL 腱を採取した8 例10 肢であった.結果,欠損例はなく,1 例を除き20cm 以上の移植腱が採取できた.上伸筋支帯レベルで,EDL 腱が2,3 趾と3,4 趾へと分離し,供給している亜型を1 例認めた.1 例で一過性の足趾伸展不全の合併症を認めた.EDL 腱は他の移植腱より長さ,太さとも十分な移植腱が採取でき,特に長い移植腱が必要な症例で有用なドナーの選択肢の一つになりうる.
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浅野 貴裕, 里中 東彦, 塚本 正, 小林 凱
2025 年41 巻6 号 p.
704-707
発行日: 2025年
公開日: 2025/04/08
ジャーナル
認証あり
当院にて伝達麻酔下に掌側ロッキングプレートを用いて手術加療を行った橈骨遠位端骨折症例43 例を対象とし,術後6 時間毎に鎮痛薬投与を3 回行い,夜間および翌朝の疼痛Visual Analog Scale(VAS)を測定した.鎮痛薬としてアセトアミノフェン注射液の静脈内投与を使用した群(A 群)とフルルビプロフェンアキセチル点滴静注を行った群(F 群)の2 群に無作為に分け,夜間および翌朝の疼痛VAS を比較検討した.夜間疼痛VAS(平均±SD)はA 群70.5±31.2mm,F 群68.3±33.6mm,翌朝疼痛VAS(平均±SD)はそれぞれ28.2±29.9mm,18.2±19.8mm であり,いずれも2 群間に有意差を認めなかった.術後採血でも明らかな肝機能障害を生じた症例はなく,橈骨遠位端骨折術後の鎮痛薬としてアセトアミノフェン注射液の投与は有用であると考えられた.
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西 亜紀, 辻本 律, 松永 千子, 朝永 育, 松林 昌平, 尾﨑 誠
2025 年41 巻6 号 p.
708-712
発行日: 2025年
公開日: 2025/04/08
ジャーナル
認証あり
透析施設に通院する350 名(調査率40.9%)を対象とし,透析関連手根管症候群の有病率を対象全体と透析期間ごとに調査した.二次解析として手術率,シャント側別比較,男女別比較について調査した.対象全体の左右いずれかの有病率は6.29%,両側有病率は4.0%であった.対象全体の透析期間別の有病率は,透析期間10 年未満で2.52%,10 年以上20 年未満で6.76%,20 年以上30 年未満で15.0%,30 年以上で44.4%であった.有病率は透析期間の長さと関連して増加したが,年齢を調整した場合,透析期間は左右いずれかの有病の増加と関連を認めなかった.シャントと手根管症候群の有病には明らかな関連は認めなかった.男女別で比較すると,男性の有病率は4.09%,女性は10%で女性が有意に高値であった.糖尿病合併群の有病率は4.62%,非糖尿病合併群は7.27%であった.透析関連手根管症候群の有病率は1990 年台と比較して減少している可能性が考えられた.
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山田 政彦, 森谷 浩治, 黒田 拓馬, 幸田 久男, 坪川 直人, 牧 裕
2025 年41 巻6 号 p.
713-716
発行日: 2025年
公開日: 2025/04/08
ジャーナル
認証あり
手根管症候群(CTS)における神経障害の指標として,神経伝導速度検査における短母指外転筋の運動神経終末潜時(TL)がある.今回,CTS 手術症例のTL と患者立脚型評価尺度との関係を調査した.対象は術前にQuick DASH JSSH バージョンとTL を評価し,TL が検出可能であった1108 例である.CTS に対する術式は鏡視下手根管開放術が1009 例,直視下手根管開放術が76 例,母指対立再建術が23 例であった.Spearman の順位相関係数の検定で評価すると,TL とQuick DASH は非常に弱い相関を示し,術式別では母指対立再建術施行群でTL とQuick DASH は中程度の相関を認めた.本研究結果からCTS 手術症例におけるTL と自覚症状の関連は非常に弱い,もしくはないと思われた.母指対立再建術を施行した症例でTL とQuick DASH に正の相関を認めたが,これはCTS 患者の自覚的評価はTL が大きく延長し,母指対立障害が生じることで初めてQuick DASH に反映されることを示唆していると考える.
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辻村 良賢, 山中 芳亮, 田島 貴文, 内藤 東一郎, 善家 雄吉, 酒井 昭典
2025 年41 巻6 号 p.
717-722
発行日: 2025年
公開日: 2025/04/08
ジャーナル
認証あり
ばね指は手外科で最も一般的な疾患であり,生涯有病率は30 歳以上の非糖尿病患者の2〜3%とされる.ばね指に対する保存療法の一つとして腱鞘内ステロイド注射の有効性が数多く報告されているが,腱鞘に対する機序は不明な点が多い.今回,ばね指患者の腱鞘より線維芽細胞を抽出し,トリアムシノロンアセトニド(以下TA)の分子細胞学的効果発現について,線維化関連遺伝子と炎症性サイトカインを中心に検討した.対象は当院でばね指に対して腱鞘切開術を受けた患者10 名とした.qRT-PCR では,TA 添加によるCol1A1,Col1A2,Col3A1,CTGF,αSMA の発現の抑制を認めた.一方,IL-6,COX-2,NF-κB の発現は抑制を認めなかった.本研究結果より,TA を含むステロイド腱鞘内注射は腱鞘に対して抗炎症作用ではなく,抗線維化作用を発揮し効果を発現している可能性が示唆された.ばね指の治療法として線維化を抑制することが重要と考える.
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松浦 智史, 井汲 彰, 岩渕 翔, 小川 健
2025 年41 巻6 号 p.
723-725
発行日: 2025年
公開日: 2025/04/08
ジャーナル
認証あり
当院で手関節形成術と同時に行った手指伸筋腱再建術後に,静的装具と減張位テーピングを併用した後療法を行った32 例34 手60 指の治療成績を検証した.最終評価時のMP 関節伸展不足角は4.9±8.2 度,Quick DASH のDisability/Symptom スコアは19.7±18.3 点であった.静的装具と減張位テーピングを併用した後療法は,動的装具を使用した諸家の報告と同等の治療成績が得られ,簡便で多数腱断裂例でも良好なMP 関節の伸展を獲得できる有用な方法である.
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上野 幸夫, 川崎 恵吉, 稲垣 克記, 岡野 市郎, 工藤 理史
2025 年41 巻6 号 p.
726-730
発行日: 2025年
公開日: 2025/04/08
ジャーナル
認証あり
手関節尺側部痛をきたす疾患の一つに豆状三角骨(PT)関節障害があり,なかでも骨折やPT 関節症などの報告は散見される.今回,両側に生じた不安定症によるPT 関節障害の稀な1 例を経験した.56 歳の女性が誘因なく両手関節掌尺側部痛を自覚し,両側豆状骨のgriding による疼痛と異常可動性を認めた.単純X 線では骨折および関節症変化などの異常はなかったが,軽度屈曲位のCT では豆状骨が亜脱臼していた.PT 関節内へのブロックテストは一時的に効果があった.全身関節弛緩の評価基準をわずかに満たしていなかったが,非外傷性の両側例であり,局所のlaxity が主体の両側PT 関節不安定症と診断した.保存治療で疼痛が軽減せず,豆状骨摘出術を順に行った.術後早期より疼痛は軽減し,原職に復帰した.手関節掌側尺側部痛をきたすPT 関節に起因するものとして,不安定症も鑑別疾患の一つである.
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石原 啓成, 西脇 正夫, 時枝 啓太, 三戸 一晃, 堀内 行雄
2025 年41 巻6 号 p.
731-733
発行日: 2025年
公開日: 2025/04/08
ジャーナル
認証あり
背側転位型橈骨遠位端骨折に対して徒手整復後にsugar tongs 型ギプスシーネ固定を行い,許容範囲内(単純X 線像でpalmar tilt(PT)-10°以上かつulnar variance(UV)健側差2mm 以下)に整復されて保存療法を行った56 例を対象として,矯正損失の危険因子を調査した.整復後に骨癒合または許容範囲外に転位するまで単純X 線パラメータ(PT,UV 健側差,radial height(RH),radial inclination(RI))を計測し,骨癒合前に許容範囲外に転位した場合を矯正損失とした.矯正損失の有無と,年齢,性別,骨密度,整復までの期間,背側皮質粉砕,尺骨骨折合併,受傷時と整復直後の単純X 線パラメータとの関係を単変量解析,多変量解析(ロジスティック回帰分析)で評価した.矯正損失は40 例(71%)で認め,単変量解析では年齢,尺骨骨折合併,受傷時のPT,UV 健側差,RH,RI,ロジスティック回帰分析では尺骨骨折合併,受傷時UV 健側差が矯正損失と関連していた.
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石原 啓成, 西脇 正夫, 時枝 啓太, 三戸 一晃, 堀内 行雄
2025 年41 巻6 号 p.
734-737
発行日: 2025年
公開日: 2025/04/08
ジャーナル
認証あり
手指基節骨骨折に対してナックルキャスト固定法による保存療法を行い,2 か月以上観察した21 例23 指(成人:骨幹部骨折3 指,基部関節外骨折10 指.小児:基部関節外骨折10 指)の外固定直後のMP 関節屈曲角を単純X 線側面像で計測し,治療成績を評価した.外固定直後のMP 関節屈曲角は平均67°で,全例で指交叉変形なく骨癒合が得られた.成人骨幹部骨折では10°以上の角状変形残存例はなく,屈曲可動域は全例良好であったが,65 歳の1 指で24°のPIP 関節伸展不全が残った.成人基部関節外骨折では,外固定時MP 関節屈曲角が不良であった75 歳の1 指で伸展変形と屈曲制限が残り,5 指でPIP 関節19°以上の伸展不全が残存し,うち4 指は69 歳以上であった.小児では可動域制限や7°以上の角状変形が残った例はなかった.したがって,MP 関節が深屈曲するように外固定し,特に高齢者では外固定中にもPIP 関節の自動伸展を十分に行うことが重要であり,小児基部関節外骨折はナックルキャスト固定法の最も良い適応である.
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高木 知香, 坂野 裕昭, 勝村 哲, 坂井 洋, 仲 拓磨, 稲葉 裕
2025 年41 巻6 号 p.
738-742
発行日: 2025年
公開日: 2025/04/08
ジャーナル
認証あり
橈骨遠位端骨折の受傷から手術までの待機期間が術後成績に与える影響を調査した.対象は掌側ロッキングプレートで手術を行った橈骨遠位端骨折149 例149 手で,待機期間10 日以内(早期群)と11 日以上(晩期群)に分けて術後成績を調査した.早期群/晩期群のulnar variance は術直後0.2/1.0mm,最終調査時0.5/1.5mm と早期群で有意に良好であった.Palmar tilt は術直後8.6/7.4 度と早期群で有意に良好であった.平均可動域は術後3 か月で背屈58.4/52.8 度,掌屈53.8/49.8 度,最終調査時で背屈68.0/63.6 度,掌屈65.4/61.5 度で,掌背屈可動域は早期群で有意に良好であった.Mayo wrist score は88.8/86.1,QuickDASH score は術後6 か月で6.8/12.9,1 年で4/8.1 と早期群で有意に良好であった.橈骨遠位端骨折では待機期間が長くなることで術中の整復が困難になると考えられ,受傷後10 日以内に手術を行うことを推奨する.
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岡田 純幸, 細川 高史, 筑田 博隆
2025 年41 巻6 号 p.
743-747
発行日: 2025年
公開日: 2025/04/08
ジャーナル
認証あり
高齢者の橈骨遠位端骨折では青壮年者と比べて変形と機能障害との関連は低く,単純X線アライメントと長期成績が関係していないという報告が多い.今回,著者らは橈骨遠位端骨折の手術および保存治療を受けた65 歳以上の患者のQuickDASH スコアの成績不良と関連する因子について後ろ向きに調査した.対象は関連施設において橈骨遠位端骨折の治療を受けた65 歳以上の患者で,1 年以上のフォローアップが可能で最終時のQuickDASH スコアを調査できた患者のうち,最終時のQuickDASH スコアが15 点以下の機能回復群(Recovery 群,以下R 群)と,30 点以上の機能障害群(Dysfunction 群,以下D 群)の計85 名である.受傷時X 線パラメータ(Radial Inclination,Palmar Tilt,Ulnar Variance),早期治療成績(3 か月QuickDASH スコア,3 か月握力)と最終のX 線パラメータ,最終QuickDASH スコア,変形治癒,合併症の有無,最終観察時の握力についてR 群とD 群で比較した.結果,有意差があった項目は3 か月QuickDASH スコア,3 か月握力,最終Ulnar Variance,変形治癒,最終観察時の握力であった.高齢者の長期QuickDASH にも単純X 線パラメータであるUlnar Variance と変形治癒が関連した.また,早期治療成績である3 か月時のQuickDASH スコアおよび握力は,最終的な機能成績にも関連した.
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古谷 友希, 斎藤 太一, 中道 亮, 島村 安則, 西田 圭一郎, 尾﨑 敏文
2025 年41 巻6 号 p.
748-752
発行日: 2025年
公開日: 2025/04/08
ジャーナル
認証あり
多発性軟骨性外骨腫症では30~60%に前腕の変形を伴うことが知られているが,治療方針については一定の見解が得られていない.著者らは尺骨短縮・手関節尺屈変形例に対し,外骨腫切除術に加え,橈骨の矯正骨切り術および尺骨延長術を行っている.当院で手術を施行した5 例を対象とし,術前後の関節可動域,橈骨の彎曲,Ulnar Variance,尺骨延長量について評価した.術後骨のリモデリング,関節可動域の増加が得られ,有効な治療法と考えられた.
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中山 裕一朗, 國分 直樹, 片岡 武史, 辻井 雅也
2025 年41 巻6 号 p.
753-755
発行日: 2025年
公開日: 2025/04/08
ジャーナル
認証あり
DIP 関節背側の指粘液嚢腫に対する関節包・骨棘切除術の治療成績を報告する.対象は17 例20 指で,男性4 例4 指,女性13 例16 指,平均年齢65.4 歳,平均経過観察期間23.7 か月であり,爪甲変形を8 例に認めた.手術方法はDIP 関節背側を切開し,嚢腫切除はせず,終止伸筋腱両側,伸筋腱下面の関節包と中節骨側の骨棘を切除し,末節骨側の骨棘は疼痛や整容面から切除を希望された5 指のみ切除した.結果,全例で再発は認めず,平均可動域は伸展が術前-6.8 度から術後-8 度,屈曲が術前57.5 度から術後55.5 度と維持されていた.疼痛は術前7 例に認めたが術後は全例軽減し,爪甲変形も全例で改善した.合併症として創治癒遅延や創部感染は認めなかったが,末節骨側の骨棘切除を行った5 例中1 例で終止伸筋腱を損傷し修復を要した.末節骨側の骨棘切除は慎重に行う必要があるが,本法は指粘液嚢腫に対する有用な術式と考える.
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船木 杏奈, 戸澤 麻美, 森 秀樹
2025 年41 巻6 号 p.
756-761
発行日: 2025年
公開日: 2025/04/08
ジャーナル
認証あり
愛媛大学医学部附属病院形成外科で2000 年3 月~2023 年9 月に治療介入した脈管奇形204 例のうち,上肢に発生した46 例について検討し,そのうち23 例に対して治療結果の評価を行った.部位別では頭頚部に次いで上肢発生が多く(22.5%),上肢の中では静脈奇形(Venous malformation:VM)と動静脈奇形(Arteriovenous malformation:AVM)が手部より遠位に多くみられた(リンパ管奇形(Lymphatic malformation:LM)30%,VM 64%,AVM 62.5%).全体として女性に多い傾向(1:1.4)がみられ,治療開始平均年齢はLM が12.4 歳,VM が20.5 歳,AVM が31.3 歳であった.LM やVM では手術単独で治療できた症例(LM 50%,VM 64.3%)は予後が良好であり,硬化療法単独で治療可能な症例も10~20%程度みられた.残りの約30%の難治症例に対しては,硬化療法と手術を組み合わせることで治療可能な症例もあるが,これらの治療法では限界がある.AVM に関しても完全切除できない症例は治療が困難であり,症状緩和としての塞栓療法・硬化療法が行われていた.
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原 理, 小島 安弘
2025 年41 巻6 号 p.
762-768
発行日: 2025年
公開日: 2025/04/08
ジャーナル
認証あり
遠隔地の三次医療機関にて初期治療が行われた重度上肢外傷の2 例を,早期再建目的に受け入れて治療する機会を得た.急性期に遊離皮弁と腱移行を伴う再建を行い,早期に自動関節可動域訓練と腱滑走訓練を実施した.上肢外傷に対するハンドセラピィにおいては,機能手をいかに再獲得しうるかが重要となる.今回,拘縮を回避しながらつまみと把持機能を獲得できたことにより,日常生活に大きな支障なく実用手まで改善が得られた.早期の腱移行を伴う再建は,機能温存に有効と考えられる.
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本田 祐造, 中尾 公勇, 朝永 育, 西 亜紀
2025 年41 巻6 号 p.
769-773
発行日: 2025年
公開日: 2025/04/08
ジャーナル
認証あり
橈骨を整復固定した後も尺骨頭が整復されず,尺側手根伸筋(以下ECU)腱が遠位橈尺関節(以下DRUJ)の整復を阻害していた回内型Galeazzi 脱臼骨折の4 例を経験したので報告する.対象は全例男性で,平均年齢17.3 歳であった.橈骨は手関節より平均6.5cm で骨折し,尺骨頭は全例で背側脱臼して,尺骨茎状突起基部骨折を合併していた.手術は受傷より平均4.8 日で行った.最初に橈骨を解剖学的に整復固定したがDRUJ は整復不可能であった.尺骨尺側を展開すると,尺骨茎状突起の骨折部にECU 腱が嵌頓した状態であった.ECU 腱の嵌頓を解除し,尺骨茎状突起を接合することでDRUJ は整復された.術後は手関節中間位で肘上までの外固定を平均3 週行ない,除去後より前腕可動域訓練を開始した.2 例で再脱臼を生じ,そのうち1 例で再手術を行なった.橈骨の解剖学的整復を行なった後もDRUJ の整復が不可能な場合,ECU 腱が整復阻害因子となっている可能性があり,再脱臼の危険性が高いことを念頭に入れる必要がある.
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大野 義幸, 山本 恭介
2025 年41 巻6 号 p.
774-779
発行日: 2025年
公開日: 2025/04/08
ジャーナル
認証あり
2018 年1 月以降,手根管症候群の手術症例には術前超音波検査(以下,エコー)をルーチンに行った.200 手のうち,6 手に手根管内腫瘤(STT 関節由来のガングリオン2 手,Tumoral calcinosis 2 手,Trigger wrist 2 手,屈筋腱付着のガングリオン1 手,屈筋腱付着の腱鞘線維腫1 手)があり,全てエコーで確認できた.6 手全て直視下に腫瘤切除を行い,Kelly 評価で優67%,良33%であった.また,以前の手根管開放術(右:直視下,左:鏡視下)後の再発例1 例2 手の直視下再手術(病理組織検査でアミロイド沈着陽性にて多発性骨髄腫と判明)と母指球筋枝単独麻痺の1 手(エコーで偽陽性)にも直視下手術(それぞれ良2 手,優1 手)を行った.残りの191 手には鏡視下手根管開放術を行い,術後合併症はなく,Kelly 評価で優29%,良71%であった.本研究における手根管内腫瘤の多くは症状(弾発,腫瘤感),単純X 線像(石灰沈着)でほぼ診断がついたが,術前に正中神経の評価,腫瘤の確認,病態確認にエコーは有用と考えられた.
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素村 健司, 大村 威夫, 杉浦 香織, 松山 幸弘
2025 年41 巻6 号 p.
780-782
発行日: 2025年
公開日: 2025/04/08
ジャーナル
認証あり
肘部管症候群の術後予後因子について,諸家の報告では年齢,症状持続期間,術前重症度,術前電気生理学的検査の結果などが挙げられおり,術前重症度が高いMcGowan 分類Grade 3 は術後重症度の改善に乏しいことが報告されている.Prognostic Nutritional Index(PNI)は,小野寺らが提唱した消化器癌の術後合併症に関する予測因子で,近年では婦人科や整形外科領域でも術後合併症のリスク評価として活用されている.本研究では,術前栄養状態と末梢神経障害としての肘部管症候群の術後回復の関係を検討した.McGowan 分類Grade 2 の肘部管症候群の患者において,術後1 年まで経過観察可能であった32 例32 肘を対象とし,改善群と非改善群に分けて比較検討した.原因は変形性関節症によるものが両群とも多く,性別,術前の電気生理,年齢,可動域,手術待機期間,アルブミンには両群で有意差が見られなかったが,PNI は改善群で有意に高値であった.
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瀧川 直秀, 大野 克記, 江城 久子
2025 年41 巻6 号 p.
783-785
発行日: 2025年
公開日: 2025/04/08
ジャーナル
認証あり
当院で手術加療した橈骨遠位端骨折患者に対する二次性骨折予防のための骨折リエゾンサービスの介入状況を調査した.2020 年10 月~2022 年10 月に手術治療を行った50 歳以上の175 例(男20 例,女155 例,平均年齢74.8 歳)を対象とした.術後DXA 実施率は91%,骨粗鬆症治療開始率は75%(骨粗鬆症有病者で90%)であり,術後1 年時の継続率が66%(骨粗鬆症有病者で81%)と概ね良好であった.投薬内容も7 割以上がガイドラインのA 評価の薬剤であり,術後1 年以内の脆弱性骨折の発生率は2.3%であった.橈骨遠位端骨折患者は脆弱性骨折の中では比較的若年で,本人の危機感が薄く,投薬治療の継続が困難な場合が少なくない.このため,すべての医師と患者への啓発活動がより重要である.
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久保田 豊, 川崎 恵吉, 雨宮 弥生, 稲垣 克記, 工藤 理史
2025 年41 巻6 号 p.
786-789
発行日: 2025年
公開日: 2025/04/08
ジャーナル
認証あり
母指CM 関節症において,大菱形骨全切除とligament reconstruction and tendon interposition(以下LRTI)の併用は一般的な手術方法の一つであり,良好な治療成績が報告されている.一方で,術後手根不安定症の報告もある.今回,著者らは大菱形骨全切除とLRTI の併用の影響について,関節形成術を施行した21 例を対象に,手根不安定症が発生するか手根骨配列のパラメーターを単純X 線で調査したところ,radio-lunate angle,radio-scaphoid angle 共に明らかな手根骨の配列の悪化は認めなかった.Stage Ⅳでは術前より月状骨は背屈傾向であり,STT 関節症の合併がDISI 変形の一因と考えられた.
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大石 崇人, 大村 威夫, 黒木 陽介
2025 年41 巻6 号 p.
790-793
発行日: 2025年
公開日: 2025/04/08
ジャーナル
認証あり
ステロイド注射後再発するばね指に対し,手術以外の有効な報告は渉猟されない.著者らはDuran 法と「とくなが法」に準じたストレッチを同時に行う変法を患者の希望に応じて施行し,即時的な症状(疼痛,snapping)の改善,および手術回避の有無を調査した.ステロイド注射後手術を勧められて来院し,母指以外のばね指と診断された110 例149 指(平均年齢63.6 歳,女性90 例,糖尿病の既往16%,重症度:Green 分類1 度17%,2 度4%,3 度5%,4 度3%)を対象とした.初診前ステロイド注射は平均2.2 回で,変法指導したのは9.3%(14 例)であった.変法指導後に疼痛が軽減したのは93%,snapping が減少したのは50%であった.手術を回避できたのは変法指導群で57%,変法指導なし群で8%であった.経過観察期間は平均7.1 か月,診断から手術までの待機期間は平均2.8 か月であった.手術回避を目的変数としたロジスティック回帰解析で,変法指導の有無は有意に関連していた.
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太田 剛
2025 年41 巻6 号 p.
794-796
発行日: 2025年
公開日: 2025/04/08
ジャーナル
認証あり
橈骨遠位端骨折に対する掌側ロッキングplate(VLP)固定において重要なことは,適切な軟骨下骨下にscrew を刺入し,強固な支持を得るためのplate 設置位置を決定することである.著者はguide pin を最初に関節面に平行に刺入し,それにより至適なsubchondral support が得られる設置位置と整復位を決定できるGuide pin Insertion First Technique(GIFT 法)をInitial R Xpert®に用いたので報告する.
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石原 典子, 矢﨑 尚哉, 田中 宏昌, 野村 貴紀
2025 年41 巻6 号 p.
797-800
発行日: 2025年
公開日: 2025/04/08
ジャーナル
認証あり
骨性マレットの治療法として,石黒法および石黒変法は簡便かつ有用な方法として広く用いられている.病態としては伸筋腱の機能不全として認識され,伸展不全が問題になることが多く,可動域に注目した先行研究が多い.一方で,骨性マレットは関節内骨折であり,術後変形性関節症の可能性を高めるが,術後の関節症性変化に注目した研究は渉猟しえる限りない.今回,関節固定鋼線の刺入位置が術後関節面に与える影響について検討した.本研究では,抜釘直後と最終経過観察時のX 線画像を比較し,関節症性変化の有無で2 群に分けて,その危険因子について比較検討した.最終経過観察時に関節症性変化を認めた群では,年齢,関節固定鋼線の骨折部通過率が有意に高かった.骨性マレットの治療時には,関節固定鋼線が骨折部を通過しないよう十分に注意することが,術後の関節症性変化の予防に重要であると考える.
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反町 武史
2025 年41 巻6 号 p.
801-805
発行日: 2025年
公開日: 2025/04/08
ジャーナル
認証あり
橈骨遠位部骨折の保存治療で用いる外固定材は,ギプスをはじめとして多種多様なものが存在する.今回,同一期間に橈骨遠位部の骨折と診断し保存治療を行った20 例20 骨折に対し,カバー付きキャスティングシステム(以下CS)を用いた群と一般的なシーネやギプスなどの固定材を用いた群を比較し,後ろ向きに検討した.主観的評価として固定材の外観,臭い,汚れ,蒸れ,安心感,満足度,疼痛(visual analogue scale),DASH Score(機能障害),客観的評価として可動域,握力健患差,X 線パラメータについて受傷後1,3,4 週と12 週で調査した結果,外観,汚れ,満足度,握力健患差の項目で有意差を認めた.橈骨遠位部骨折の保存治療において,CS は早期に日常生活に復帰することを実現するギプス固定材の新たな選択肢の一つとなり得る可能性が示唆された.
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白本 明大, 坂井 健介
2025 年41 巻6 号 p.
806-811
発行日: 2025年
公開日: 2025/04/08
ジャーナル
認証あり
Antero-medial type の鉤状突起骨折と外側側副靭帯複合体(LCL complex)損傷を合併した内反後内側回旋不安定症の治療経験を報告する.対象は7 例で,受傷時平均年齢は52.4 歳であった.全例,鉤状突起骨折にはバットレスプレート固定を行い,LCL complex 損傷にはsuture anchor を用いて再建した.術後深部感染を1 例で認めたが,最終時のJOA score は平均86.3 点と総じて良好であった.本外傷は未だ初療時の正診率が低く,診断に関しては鉤状突起骨折のX 線像が二分化される特徴を認めており,正確な評価にはCT が重要であった.術前MRI も有用性が高く,ストレステストとともにLCL complex 損傷の評価も重要であった.本外傷は初療時の正確な診断とともに,鉤状突起骨折の正確な固定およびLCL complex 損傷の確実な再建を行えば,予後は良好であると思われた.
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鈴木 秀平, 土肥 義浩
2025 年41 巻6 号 p.
812-815
発行日: 2025年
公開日: 2025/04/08
ジャーナル
認証あり
橈骨遠位端骨折に対するMIPO 専用プレートを用いたcondylar stabilizing 法の手術および成績を報告する.対象は2022 年11 月~2023 年8 月に当院で手術を受けたAO 分類A 型および関節内転位のないC2 型の12 例13 手で,平均年齢63.6 歳,経過観察期間は中央値5.0(2.2-6.3)か月であった.手術は全例2cm の小皮切を用いて行い,術中整復と術後の固定力を単純X 線像で評価した.術後ulnar variance の矯正損失が一部で認められたものの,術中整復は良好であり,Quick DASH は平均6.5 点で患者満足度は問題のない結果であった.本法はAO 分類A 型と関節内転位のないC2 型の橈骨遠位端骨折に対する治療の一つの選択肢になると考えられた.
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大森 翔, 前田 和茂, 沖田 駿治, 楢﨑 慎二, 今谷 潤也
2025 年41 巻6 号 p.
816-819
発行日: 2025年
公開日: 2025/04/08
ジャーナル
認証あり
橈骨遠位端骨折(DRF)は高齢者の中でも比較的年齢が若い患者に発生し,脆弱性骨折の初発骨折となる頻度が高いため,骨粗鬆症治療介入の好機とされる.一方,二重エネルギーX 線吸収法による骨密度測定は骨折リスク評価のgold standard とされているが,皮質骨と海綿骨の骨密度を各々測定することは困難である.DRF ではCT 検査による骨折評価の頻度が高く,CT 検査で使用するHounsfield Unit(HU)値は骨密度との相関性が報告されている.今回,女性DRF 患者および非骨折患者における有頭骨の皮質骨および海綿骨のHU 値を比較検討した.対象は転倒により受傷しCT 撮影を施行した40 歳以上の女性DRF 患者106 例と非骨折群120 例である.脆弱性骨折および骨粗鬆症治療既往症例は除外した.それぞれ冠状断での有頭骨全体,皮質骨のみおよび海綿骨のみのHU 値を測定し比較検討した.HU 値は有頭骨全体,皮質骨のみおよび海綿骨のみの全てにおいてDRF 群で有意に低下しており,女性DRF 患者では皮質骨および海綿骨の両方の骨強度低下が要因となり,二次骨折リスクが増加する可能性が示唆された.
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峯 博子, 井上 美帆, 鶴田 敏幸
2025 年41 巻6 号 p.
820-824
発行日: 2025年
公開日: 2025/04/08
ジャーナル
認証あり
進行期Kienböck 病に対する舟状有頭骨間部分固定術(SC 固定術)の長期成績を検討した.対象は術後10 年以上観察可能であった7 例7 手で,Lichtman 分類Ⅲb が3 例,Ⅲc が1 例,Ⅳが3 例,術後経過観察期間は平均17.5 年であった.手関節可動域,握力,疼痛,Hand20,Quick DASH,満足度(10 点満点),単純X 線評価を調査した.その結果,手関節可動域,握力は改善し,満足度は平均9 点であった.単純 X線にて,carpal height ratio は有意に低下し,radio scaphoid angle は術直後有意に改善するも最終調査時に増加した.Scaphoid translation ratio は有意に低下し,carpal ulnar distance ratio は変化を認めなかった.これらの変化は手根骨圧壊のために生じたというより,手根骨全体が掌屈し,橈骨舟状骨間の接触面を拡大しながら新しい関節面を作って適合してきたために生じたのではないかと考えられた.また,全例で橈骨舟状骨間関節にosteoarthritis を認めたものの,同部の疼痛はなかった.以上より,SC 固定術は安定した成績が期待できる有用な方法と考える.
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山田 佳世, 二村 謙太郎, 長谷川 真之, 小川 高志, 土田 芳彦
2025 年41 巻6 号 p.
825-829
発行日: 2025年
公開日: 2025/04/08
ジャーナル
認証あり
関節面が高度に粉砕している橈骨遠位端骨折では,volar locking plate(VLP)による内固定が困難な場合がある.他の固定法として創外固定術があるが,感染や変形治癒等の合併症が散見される.一方で1998 年にBurke らが考案したdistraction plate(DP)は,創外固定術よりも固定性に優れ,感染率が低く,主に海外で良好な機能および画像成績が報告されている.橈骨遠位端関節内粉砕骨折に対し,当院でDP を用いて治療した3 肢3 例の術後成績を検討した.概ね成績は良好であったが,1 年後の平均自動関節可動域で掌屈制限を認め,単純X 線では短縮による矯正損失が生じていた.DP は有効な内固定方法であるが,抜釘後の作業療法や初回手術時の固定方法に改善の余地がある.また,固定性と整復に限界があることを考慮し,その適応については慎重に検討すべきである.
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本田 宗一郎, 赤羽 美香, 中村 勇太, 森 灯, 多田 薫, 出村 諭
2025 年41 巻6 号 p.
830-832
発行日: 2025年
公開日: 2025/04/08
ジャーナル
認証あり
末梢神経欠損に対する治療のgold standard である自家神経移植術でさえもその成績は十分とは言えない.そこで自家神経移植術の成績を向上させるために,様々な機序で神経再生に寄与することが報告されている脂肪由来幹細胞(ADSCs)を自家神経移植モデルラットに経静脈的に全身投与し,その有効性について評価した.自家神経移植モデルラットの尾静脈からADSCs とリン酸緩衝食塩水(PBS)を混和した細胞懸濁液を投与したラットをADSCs 群,尾静脈からPBS のみを投与したラットを対照群とした.移植後12 週の時点で,ADSCs 群は対照群と比較して,前脛骨筋の筋湿重量が有意に大きくなっており,複合筋活動電位の終末潜時が有意に小さくなっていた.本研究の結果から,自家神経移植時にADSCs の経静脈的全身投与を併用することで,従来の自家神経移植術以上の神経再生が得られる可能性が示唆された.
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明妻 裕孝, 川崎 恵吉, 久保 和俊, 荻原 陽, 岡野 市郎, 工藤 理史
2025 年41 巻6 号 p.
833-837
発行日: 2025年
公開日: 2025/04/08
ジャーナル
認証あり
基節骨顆部近位指節間関節内骨折(以下,基節骨顆部関節内骨折)は扱う骨が小さく,固定性,骨壊死,関節の拘縮の観点から治療に難渋することも多い.今回,2011 年1 月以降に本骨折に対して骨折観血的手術を行い,3 か月以上経過観察し得た25 指の画像評価,臨床評価,合併症について検討した.骨折型は単顆骨折15 指,両顆骨折10 指(変形治癒1 例)で,平均年齢は15.9 歳であった.骨癒合は全例で得られていた.PIP 関節の最終平均可動域は屈曲89.8°,伸展-8.8°であり,術後合併症は創周囲のしびれを1 指に認め,拘縮を認めた3 指では授動術を要した.著者らは基節骨顆部関節内骨折に対する治療法について,単顆骨折か両顆骨折か,骨片のサイズ,骨折型,受傷から手術までの期間を総合的に判断して決定している.本研究結果は過去の報告と同程度に良好であった.基節骨顆部関節内骨折の治療は,内固定材料の慎重な選択に始まり,術中の慎重な手術操作,強固な内固定も必要である.以上より,今後も十分な検討が必要な骨折であると言える.
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上用 祐士, 武田 真輔, 服部 勇介, 川口 洋平, 立松 尚衛, 岡本 秀貴
2025 年41 巻6 号 p.
838-841
発行日: 2025年
公開日: 2025/04/08
ジャーナル
認証あり
顕微鏡視下の神経縫合や血管吻合は手外科医にとって必須の手技である.このマイクロサージャリーの手技上達を目的としたトレーニングの意義と有用性が多く報告されている.トレーニングモデルとしては人工材料モデル,非生体モデル,生体モデルなどが存在する.血管吻合トレーニングは多くの報告があるが,神経縫合トレーニングの報告は少ない.著者らは市場で購入したニワトリ18 羽36 本の坐骨神経を本研究に使用した.ニワトリの体重は平均1.25±0.18kg,坐骨神経の近位側から分岐部までの長さは平均43.4±4.46mm,長径は近位部平均2.04±0.19mm,中央部平均1.91±0.13mm,遠位部平均2.10±0.26mm であった.ニワトリの坐骨神経はヒト指神経とほぼ同じ太さであり,単一の神経上膜に覆われた2~4 本の神経束を有する.神経上膜縫合や神経束縫合のトレーニングにも適しており,マイクロサージャリー手技上達のためのトレーニングモデルとして有用と考えられた.
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柴田 実, 畠野 義郎, 吉川 哲哉, 松田 健
2025 年41 巻6 号 p.
842-846
発行日: 2025年
公開日: 2025/04/08
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著者らは母指CM 関節症に対する手術療法として関節固定術を第一選択としてきた.近年,様々な関節形成術が報告されるようになり,関節温存も可能になってきた.本研究の目的は,著者らの施設における関節固定術と関節形成術の治療成績を明らかにすることである.対象は,母指CM 関節症に対して関節固定術を施行した79 例と関節形成術を施行した16 例とした.関節固定術に用いたインプラントはscrew 68 例,staple 11 例であった.Screw の骨癒合率は88.3%,staple は100%であった.関節形成術として創外固定器を用いて関節裂隙を開大させ,遊離あるいは有茎のtissue interpositioning を12 例に施行し,長母指外転筋腱を用いたtendon interpositioning を4 例に施行した.疼痛が消失したのは,関節固定術施行例のうち85.1%,関節形成術施行例のうち68.8%であった.有茎脂肪移植術を施行した7 例中2 例において疼痛の改善が十分得られず,関節固定術を追加で行った.Staple を用いた関節固定術の骨癒合率は良好であった.これらの関節形成術による除痛効果に患者の満足が得られない場合,関節固定術を検討してよいと考えられた.
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