日本世代間交流学会誌
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4 巻, 1 号
日本世代間交流学会誌
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
  • 世代間交流の視点による考察
    朴 真玉
    2014 年 4 巻 1 号 p. 03-16
    発行日: 2014/03/31
    公開日: 2023/05/16
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は、ジェンダー意識が多文化家族の夫婦間の葛藤に与える影響を調査することである。本研究の対象は大邱市及び慶北地域に住む多文化家族の夫婦である。 データ収集のために計画された調査が行われた。 定量的方法を補うために質的方法が用いられた。徹底した面 談と観察によって本研究のデータは集められた。韓国に婚姻によって移住してきた女性の夫婦間の葛藤は出身国に端を発す。夫の夫婦間葛藤は結婚持続期間、権力構造意識、家庭役割意識の影響を受ける。結論として、異なった要因が多文化家族の夫婦間葛藤に影響しているのである。今後、祖父母世代との世代間交流が多文化家族における結婚移住女性とその夫(韓国人)に 具体的にどのような役割を果たすかを検討するとともに、 夫婦間葛藤を減らすために多文化な 空間や男女が平等な役割を持つ体制を作る個々にあわせた教育プログラムが求められている。
  • ライフコースに応じた重層的な支援とは
    藤原 佳典
    2014 年 4 巻 1 号 p. 17-23
    発行日: 2014/03/31
    公開日: 2023/05/17
    ジャーナル オープンアクセス
    本来、世代間交流とは長い人生の中で徐々に対象や形態を変えながらシームレスに継続されていくべきものである。本稿の目的は、世代間交流についてのライフコースに応じた研究成果 の紹介と研究の展望について総括することである。高齢者の社会参加・社会貢献を生産性の側面から捉えたproductivity の理論に基づき操作的(1)就労(2) ボランティア活動 (3) 自己啓発 (趣味・学習・保健) 活動 (4) 友人・隣人等とのインフォーマルな交流(5) 要介護期の通所サービス利用の5つのステージに定義し、社会参加世代間交流の枠組みと効果について紹介した。 しかし現実には、円滑に次のステージへ移行することは容易ではなく、孤立・閉じこもりに陥る者も少なくない。その背景には高次から低次のステージへの移行をシームレスに支援する重層的な体制が十分整備されていないことが挙げられる。 地域包括ケアシステムにその支援機能が求められる。
  • 導入した高齢者向けネイチャーゲーム指導に見る学生の学び
    溝邊 和成, 吉津 晶子
    2014 年 4 巻 1 号 p. 25-37
    発行日: 2014/03/31
    公開日: 2023/05/17
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、クロストレーニング実習プログラムに関する研究の一つとして位置づけられている。 前研究報告 (溝邊・吉津 2013)で得られた課題に対する解決策である修正版プログラムのネイチャーゲーム指導について、学生の学びからその成果と課題を報告するものである。プログラムに参加した保育士養成課程学生14名の実習記録および作成されたカード等を分析考察の対象とした。その結果、学生の多くは使用した自作カードの項目数や表記上の工夫点などを好評価していた。 また様々な感覚を使う項目や「笑顔」を項目としたり、発展的に「歌」や「エピソード」などを盛り込んだりする改善点が見出された。課題として、事前にフィールドの下見を十分に行っておくとともに高齢者の身体的特徴や得意不得意などへの配慮が挙げられた。
  • 首都圏高齢者の地域包括的孤立研究(CAPITAL study)より
    小池 高史, 鈴木 宏幸, 野中 久美子, 藤原 佳典
    2014 年 4 巻 1 号 p. 39-45
    発行日: 2014/03/31
    公開日: 2023/05/17
    ジャーナル オープンアクセス
    独居高齢者と別居子の交流頻度および独居高齢者の心理的健康と別居子との距離の関連について検討した。 2012年7月、埼玉県和光市にて自記式質問紙調査を実施した。 対象者は調 査時点で65歳以上だった和光市民全員 (11,172人) とし、有効回答は8,191票 (73.3%)であった。 回答者のうち、独居高齢者のみを分析対象とし、別居子との距離と別居家族や親せきとの対 面・非対面の交流頻度のクロス集計を行った。 また、GDS-15 および将来への不安感の合計点 を被説明変数とし、別居子との距離と性別を説明変数、年齢と移動能力を共変量とした二元配 置分散分析を行った。 結果、独居高齢者の別居子との日常的な交流においても、独居高齢者自身の心理的な健康においても、別居子との空間的距離が重要であり、とくに10分未満の距 離に別居子が暮らしていることは、対面での交流頻度と将来への不安感の軽減に対して重要であることが明らかになった。
  • 竹中 優子
    2014 年 4 巻 1 号 p. 47-54
    発行日: 2014/03/31
    公開日: 2023/05/17
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は地域居住高齢者の地域における多世代共生意識に及ぼす要因を明らかにすることである。 神戸市灘区A地区に在住の20歳以上の成人を対象に自記式の質問紙調査を実 施した。調査内容は、 基本的属性のほか、 地域活動やボランティア活動への参加状態、 近所づきあいの志向、 近隣交際量、多世代共生に対する考え方である。 得られた回答801部のうち 65歳以上の高齢者のデータ434 部を抽出し分析を行った。最初に、地域における人的交流の状況を整理した後、近隣交際量と多世代共生意識の相互関連を調べた。結果、近隣交際量と多世代共生意識の間にはあまり関連が見られなかった。最後に、 階層的重回帰分析によって、 多世代共生意識に及ぼす影響を検討した。 結果、住宅のタイプ、地域活動への参加、 近所づきあいの満足度が多世代共生意識に影響を及ぼしていた。
  • 鈴木 宏幸, 小川 将
    2014 年 4 巻 1 号 p. 55-60
    発行日: 2014/03/31
    公開日: 2023/05/17
    ジャーナル オープンアクセス
    高齢者イメージ研究ではポジティブ・ネガティブといった側面だけでなく、 イメージの属性である思い浮かびやすさ(心像性) や、 個人が持つ経験を加味した検討を行う必要がある。本研究では、大学生を対象に高齢者イメージに関する反応時間測定実験と祖父母との接触経験に関する調査を行い、 高齢者イメージの心像性と接触経験との関連を検討した。 各対象者の祖父母との被支援的接触経験について、 高群 (14名) と低群(16名)に群分けした。イメージを判断するまでの時間について、イメージごとにt検定で比較したところ、「役に立つ」、「役に立たない」、「好き」、「嫌い」などのイメージにおいて有意差がみられた。いずれの場合も低群の反応時間が遅く、 被支援的接触経験が少ない大学生は特定のイメージの心像性が低いことが示唆された。祖父母からの被支援的な接触が希薄な大学生においては、高齢者が「役に立つ」存在であるか否かを判断できるような経験を持っておらず、併せて「好き・嫌い」のイメージも浮かび難いと考えられる。
  • 高橋 知也, 村山 陽, 村山 幸子, 野中 久美子, 鈴木 宏幸, 安永 正史, 小池 高史, 藤原 佳典
    2014 年 4 巻 1 号 p. 61-67
    発行日: 2014/03/31
    公開日: 2023/05/17
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、地域在住の一般高齢者の持つ世代性意識について、その性別による相違を明らかにすることにより、男女それぞれの世代性意識の在り方に即した世代間交流プログラムの提供を目指す足場を作ることを目的とした。 2013年6月に、東京都A区のシルバー人材センターに登録している高齢者40 名を対象とする、自記式によるアンケート調査を実施した。調査に応じた対象者のうち、世代性意識についての自由記述に回答した30名(男性14名、女性16名: 有効回答率 75.0% 平均年齢72.0歳(SD=4.6)) を分析対象者とした。自由記述の内容に基づきカテゴリー生成を行った結果、「積極的」「両価的」「消極的」 の3つのカテゴリーが生成された。 また FISHER の正確確率検定を行った結果、 基本属性のうち性別においてのみカテゴリ一間の分布に有意な違いがみられた。男女それぞれの世代性意識の在り方に留意した世代間交流プログラムを発信する必要があろう。
  • 「第9段階」及び「他者」概念の考察を通して
    佐々木 剛, 草野 篤子
    2014 年 4 巻 1 号 p. 69-76
    発行日: 2014/03/31
    公開日: 2023/05/17
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、世代間交流学に介在し形成される共生概念である「相互互恵性」 を、 ERIKSON, E. とERIKSON, J. が新たに提唱した「第9段階」概念による心理社会的発達理論と、VIGOTSKY が述べた社会文化発達理論による「他者」概念を通して検討する。世代間交流学では、高齢者と他世代の相互互恵性を考察しながら世代間交流プログラムによ る高齢者と若者世代の具体的な交流活動を提示している。この考え方の根底には、「対人接触 (人と人のつながり)」の考え方が介在する。ゆえに、「第9段階」の概念による ERIKSON, Eの世代性(GENERATIVITY 理論)とVIGOTSKYの社会文化発達理論による「他者」概念が、世代間交流学の課題となる「世代間の確執」や「世代間交流の必要性の希薄さ」に与える新たな視座を追究する。さらに、世代間交流プ ログラムと教育の結びつきの可能性を考察する。
  • 学内スポーツクラブ会員を対象とした意識調査と公開講座の結果を元に
    花井 篤子
    2014 年 4 巻 1 号 p. 77-83
    発行日: 2014/03/31
    公開日: 2023/05/17
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、水中運動を活用した多世代間交流プログラムを開発し、その有用性を検証することを目的とした。 まず、世代間交流や水中運動に対する意識調査を実施し、その結果を元に多世代間交流プログラムを開発し、公開講座にてその有用性について検証を行った。その結果、世代間交流に対して関心が高い対象者は、水中運動を活用した世代間交流に関しても高い関心を示しつつ(51.1%)、一方で「水が怖い・苦手」や「水着になるのが嫌」など消極的な意見(30.1%)も認められた。開発された多世代間交流プログラムは公開講座(全3回)にて実践され、参加者 このプログラムに対する満足度や世代間交流が促進されたことに対する実感は非常に高い結果となった。以上より、世代間交流プログラムのひとつとして水中運動を活用することは有効で あることが示唆された。今後、 プールのマイナスイメージを如何に払拭していくかが、 プログラムの普及の鍵となるといえる。
  • 更生保護ボランティアの支援力に着目して
    間野 百子
    2014 年 4 巻 1 号 p. 85-94
    発行日: 2014年
    公開日: 2023/05/17
    ジャーナル オープンアクセス
    世代間メンタリングとは、一般市民が心理・社会的困難を抱えている青少年に個別・ 続的に関わりながら、青少年の発達を支援する活動を意味する。メンタリングは20世紀初頭からアメリカを発祥の地として組織的・体系的に展開され、現在ではリスクの高い青少年の発達支援対策として教育現場にも導入されている。メンタリングの理念は、日本にも戦後初期に取り入れられ、困難を抱える青少年の支援方法として更生保護の領域で制度化された。こうして新制度のもとでは、保護司を中心と する民間ボランティアが、非行少年の地域社会内における立ち直りを支えてきた。しかし、その一方で、非行少年の社会内処遇に対する一般市民の理解や認識は極めて低い。そこで本稿では、更生支援に民間ボランティアが関わることの意味を世代間メンタリングの機能に着目して明らかにした。結論として、メンタリングには、困難を抱える青少年 の自尊感情を向上させたり、学業に関心を向けさせるなどの効果があることを明らかにした。 最後に課題として、地域社会内で民間人が非行少年に向き合うことの社会的意味を実証していくことをあげた。
  • 村山 陽, 高橋 知也, 村山 幸子, 二宮 知康, 竹内 瑠美, 野中 久美子, 藤原 佳典
    2014 年 4 巻 1 号 p. 95-101
    発行日: 2014/03/31
    公開日: 2023/05/17
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、地域高齢者が若者に抱く世代差意識を把握するとともに、その対処方略を探索的に明らかにすることを目的とした。東京都A区在住の65歳以上の高齢者47名を対象にインタビュー調査を行い、KJ法を参考に質的分析を実施した。その結果、若者に対する世代差意識として、①会話不成立の不安、②価値観の相違、③恐怖や不安感が認められた。さらに、若者に対する世代差意識の対処方略として、 ①行動的方略 (積極的な働きかけ、次世代への忠告・助言)および②認知的方略 (共感的態度、 共有意識の形成)を用いていることが明らかにされた。本結果から、 世代差意識の解消に向けてこれら2つの方略を段階的に使用することが有効 な手段になることが推測される。
  • 矢野 真理, 内田 勇人, 西垣 利男, 江口 善章, 藤井 明美, 吉田 隆三, 作田 はるみ, 木宮 高代, 濱口 郁枝, 東根 裕子, ...
    2014 年 4 巻 1 号 p. 103-110
    発行日: 2014/03/31
    公開日: 2023/05/17
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、児童養護施設入所児童に対する世代間交流プログラムが、 児童の高齢女性ボラン ティアと大学生の各イメージに及ぼす影響について明らかにすることを目的とした。 研究参加者は、兵庫県A市のA児童養護施設に入所する小学4年生から6年生までの児童12名(男子6名、女子6名)と地域の高齢女性ボランティア3名 (62歳 68歳 70歳)、 大学生4名(男性2名、女性2名)であった。調査は2012年9月と12月に各1回実施された。 プログラム前のイメージ比較では、大学生における「はやい」「強い」の各得点が有意に高く、プログラム後は 大学生における「はやい」「強い」「大きい」の各得点が有意に高かった。 プログラム前後の高 齢女性ボランティアのイメージ比較においては、「話しやすい」「頼りがいがある」の各得点が 有意に高くなっていた。 里山での交流は児童の抱く高齢女性ボランティアイメージをポジティブな方向に変化させたことが示唆された。
  • 特別養護老人ホームの空き地を活用した空間でデザイン作品による世代間交流の試み
    髙野 明広, 劉 珊, 中野 美代子, 小和田 淳子, 山田 良, 村松 真澄
    2014 年 4 巻 1 号 p. 111-115
    発行日: 2014/03/31
    公開日: 2023/05/17
    ジャーナル オープンアクセス
    日本における都市の高齢化は、 生涯未婚率の上昇と単身高齢世帯の増加をともなっており、 今後の課題は、地域社会における人々のつながりを新たにつくり出すことである。 本研究では 新興住宅地に新築された特別養護老人ホームの空き地を活用した空間デザイン作品制作ワー クショップを開催することで、入居者同士や入居者の家族、施設の職員、地域の人々との交流のきっかけ作りができたかを検討した。その結果、 空間デザイン作品が入居者に非日常的な時 空間を提供し、 世代間交流のきっかけとなった。
  • 児童期以前における祖父母との交流頻度を通して
    松山 礼子, 安永 正史, 草野 篤子
    2014 年 4 巻 1 号 p. 117-122
    発行日: 2014/03/31
    公開日: 2023/05/18
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は、大学生の児童期以前における祖父母との交流頻度の視点から、 現代の大学 生の高齢者イメージについて検討していくことである。 調査対象は、東京都・埼玉県の大学生 450名(有効回答数408名)であった。 測定には、 SD (Semantic Differential)法を用いた。 その 結果、「有能性」 「活動・自立性」 「幸福性」 「社会的外交性」の下位因子において交流頻度高群 の方が交流頻度低群よりも有意に平均得点は高かった。 祖父母との交流頻度が高かった大学生 は祖父母からケアされたという体験の積み重ねを通して、 高齢者の人格や精神面における能力、 高齢者の活動性や自立性、 高齢者自身の幸福感に関する要素、 社会へ向かう積極性をそれぞれ 高く認識していた。
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