日本世代間交流学会誌
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5 巻, 1 号
日本世代間交流学会誌
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
  • 自己意識尺度、M-GTAを用いたMixed methods approach分析
    青木 利江子
    2015 年 5 巻 1 号 p. 03-10
    発行日: 2015/09/30
    公開日: 2023/05/12
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、中学生と赤ちゃんとのふれあい体験(以下赤ちゃんふれあい体験とする)が中学生の自己意識に与える影響について分析することを目的とした。分析方法は、 中学生 422名を対象に、赤ちゃんふれあい体験実施前後で、自己意識について自記式質問紙調査が行われ、検定による検討がなされた。対照群は、中学生 84名に、体験を実施せず同様の調査を実施した。その結果、介入群は、体験後に自己肯定感、ソーシャルサポート、レジリエンス、性意識が有意に高くなっていた。 また3年生は多くの自己意識項目が高くなり、男子は体験後、他者肯定感が低下し、女子は保護者意識が高くなっていた。体験後の記述データは、M-GTA (Modified Grounded Theory Approach)にて分析し、22概念、11カテゴリーが構成され、【感謝】【自分の育ちの振り返り】【命の大切さの理解】【結婚への思い】等の肯定的概念と【赤ちゃんへの否定的な思い】【結婚】、【子育てへの思い】の否定的概念があった。
  • M-GTAによる学童保育指導員の意識分析から
    森田 久美子, 青木 利江子, 小林 美奈子, 山本 晴美, 呂 暁衛, 永嶺 仁美, 佐々木 明子
    2015 年 5 巻 1 号 p. 11-20
    発行日: 2015/09/30
    公開日: 2023/05/12
    ジャーナル オープンアクセス
    高齢者と放課後児童クラブ・放課後子ども教室・ 放課後子ども総合プラン(以下、学童保育) における世代間交流の実態と課題を明らかにするために、全国市区町村の学童保育指導員に調査を実施した。 世代間交流の実践における課題について記載のあった 302 件の質的記述データを、 Modified Grounded Theory Approach (M-GTA)により分析した。 分析の結果、「世代間交流の実践における課題」は、66 概念が生成され、そこから12カテゴリーが構築された。 【プロ グラム効果に関する要因】に「双方向プログラム」「子どもの心を育てる」【実施に関わる環境】に「コーディネーターの存在、役割」があり、 世代間交流を継続するためには「行政の支援」の役割も大きいことが明らかになった。 また、【高齢者と子ども、保護者の関係性】、世代間交流に関する【情報の必要性】も課題としてあげられた。 さらに世代間交流の実施継続に向けた課題について検討した。
  • 鈴木 宏幸, 大場 宏美, 安永 正史, 藤原 佳典
    2015 年 5 巻 1 号 p. 21-28
    発行日: 2015/09/30
    公開日: 2023/05/12
    ジャーナル オープンアクセス
    わが国の少子高齢化が進展して久しい。増え続ける高齢者と減り続ける年少者という状況を前向きに捉えれば、 年少者に対する豊かな教育環境が整っているといえる。 我々は小学校の授業の中で高学年児童が高齢者ボランティアと集中的な交流を持つ“交流授業” を展開している。 向社会的な高齢者との集中的な交流は、児童にとってコミュニケーションスキルの新たな獲得の機会となるだけでなく、既に学習したコミュニケーションスキルを活用する場となることが考えられる。本稿では、公立小学校において絵本の読み聞かせを題材とした交流授業を実施し、それらが6年生児童のコミュニケーションスキルに及ぼす影響について比較対照群を設定した介入研究から検討した。その結果、児童が人の話を聞く際の「うなずく、あいづちをうつ」 行 為の知識と意識、自身が人に話す際の「相手に体を向ける」知識と意識および行動、「年上の 人には敬語を使う」知識に介入効果がみられた。
  • 内田 勇人, 藤賀 彩花, 江口 善章, 西垣 利男, 山本 存, 矢野 真理
    2015 年 5 巻 1 号 p. 29-36
    発行日: 2015/09/30
    公開日: 2023/05/12
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、孫との関係が祖父母の精神的健康度に及ぼす影響について明らかにすることを目的として実施した。研究参加者として、兵庫県南部A市及び南西部B市に在住し、孫を有する68名(男性20名、女性48名。 62~90歳) を選択した。調査は平成25年10月から12月に実施された。「抑うつ傾向なし群」と「抑うつ傾向あり群」の間で各種調査項目値を比較した結果、「抑うつ傾向あり群」より「抑うつ傾向なし群」の方が、「同居者あり」の割合、「時間的展望促進機能」「道具的, 情緒的援助機能」「日常的、情緒的援助機能」の各平均値が有意に高かった。 本研究の結果より、孫との関係が祖父母の精神的健康に良い影響を及ぼすことが示唆された。
  • 伊藤 ひとみ, 亀井 智子
    2015 年 5 巻 1 号 p. 37-45
    発行日: 2015/09/30
    公開日: 2023/05/12
    ジャーナル オープンアクセス
    看護系大学が主催する都市部における高齢者と小学生の継続的な世代間交流プログラムにおいて生じる両世代間の交流、および高齢者のgenerativity (世代継承性)についてのエスノグラフィーを示した。その結果、高齢者の世代継承性は異世代への関心の強さの表れであり、小学生に高齢者の言動が受け入れられることで成立していた。一方、世代継承性を発揮しなかった高齢者は、認知症や虚弱等、小学生への関心や物理的距離を縮める自身の力が弱く、世代間交流が自然には起きにくい者、小学生の行動を一方的に正そうとする者であった。関心を持っていても認知機能の低下や身体的脆弱性のために異世代との交流に発展しない場合には、主催者である看護教員がサポートしながら、両世代を結びつけていた。また、本プログラムでは両世代が時間と空間を共にすること自体も重視されていた。場の共有も含めた自然な交流の促進により、老年期の終盤になっても世代継承性が発揮できる可能性が示唆されている。
  • 溝邊 和成, 田爪 宏二, 吉津 晶子, 矢野 真
    2015 年 5 巻 1 号 p. 47-55
    発行日: 2015/09/30
    公開日: 2023/05/12
    ジャーナル オープンアクセス
    本報告では、近年、小中学校に導入された「聴講生制度」に注目し、世代間交流にかかわる事例的検討を行っている。愛知県と福岡県で取り組まれている「聴講生制度」に関する資料収集・分析ならびに「聴講生制度」を取り入れた中学校の生徒・聴講生・教員へのアンケート調査等を実施した。その結果、「聴講生制度」は、 生涯学習社会における地域に開かれた学校づくりの一つとされ、参加した聴講生は、学ぶ喜びや生徒とのふれあいなどに充実感を得ており、生徒側 教師側も聴講生との関係に「学ぶところが多い」「授業に支障はない」など好印象を持っていることが明らかになった。
  • 東京都板橋区福祉の森サロンを事例として
    高橋 知也, 村山 幸子, 野中 久美子, 安永 正史, 藤原 佳典
    2015 年 5 巻 1 号 p. 57-64
    発行日: 2015/09/30
    公開日: 2023/05/12
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、一地域に存在する多世代が参加する子育てサロンの活動実態を網羅的に把握し、その実態について検討を行うことを目的とした。 2014年5月より 2014年11月にかけて、東京都板橋区社会福祉協議会の支援のもとに活動を行う「板橋区福祉の森サロン」に登録するサロンに対して質問紙調査を実施し、28ヶ所の多世代交流を交えた子育てサロンの運営者、およびそれらのサロンに参加する 117名を分析対象とした。 調査結果から、サロンの運営者と参加 者のいずれもほとんどが女性であることが示された。また子育て世代以外に子育て世代を支援 する高齢者も多く活動に参加していること、さらに参加者全体で「活動に対する満足度」 および 「活動継続の意志」 が高く、前者は「サロン参加を通じた自身の変化」 が、後者は「他者か らの援助に対する欲求や態度」 や 「参加頻度」、「近所付き合いの程度」 が関連することが示された。
  • 持続可能な開発のための教育(ESD)の実践との関連を通して
    佐々木 剛, 草野 篤子
    2015 年 5 巻 1 号 p. 65-72
    発行日: 2015/09/30
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル オープンアクセス
    世代間交流学の概念の一つである「ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)」は、米国の政治学者である PUTNAM, Rにより、「信頼・規範・ネットワーク」の概念として提唱された。 この概念は、世代間交流プログラムの実践を進める上で、世代間交流の持つ水平的互恵的な人間関係構築の基礎理論と言える。 本研究は、この世代間交流プログラムの実践的広がりの一部を担う学校教育について、その可能性を学校の教科活動との関連性から探った。 学習指導要領に世代間交流にかかわる直接的な記述は見られないが、 多くの学校は何らかの形で、地域や地域に住む多世代、 特に高齢者との結びつきを深める授業を行っている。 その活動の一つに、近年、ユネスコスクールと呼ばれる ESD 教育が取り入れられるようになった。 この活動は国連の主導で進められている。 その活動は「地球規模の問題」「人権」・「異文化理解」・「環境教育」 の基本分野で構成され、 参加者は人と人のつながりの実践によりソーシャル・ キャピタルを学ぶことができる。本研究では、このユネスコスクールに世代間交流プログラムとしての可能性があることを探った。
  • 石家庄市の調査を通して
    劉 明凱, 佐々木 剛, 草野 篤子
    2015 年 5 巻 1 号 p. 73-79
    発行日: 2015/09/30
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル オープンアクセス
    中国の高齢化は急速に進んでいる。中国国家統計局調査によると、2012年の時点で、65歳以上の高齢者数は1億2714万人(香港、マカオ、台湾を除く) と言われ、 それは人口の9.4%に達している。先進国は、高齢化するまでに百年近くかかった。中国は、成人型社会から老人型社会に変わるまでわずか20年しか経っていない。  本研究は、人口大国としての中国の高齢社会作りへの示唆を得ることを目指し、中国の石家庄市における高齢者の地域社会活動の実態を把握することを目的とした。そこで、世代間交流に焦点を当て、高齢者による地域社会活動について調査・集計したところ、奉仕活動と社会活動への比較的若い高齢者の高い参加傾向が見られた。また、孫世代との同居年数が10から20年程度の高齢者に若者世代との積極的な交流態度が示された。
  • 安永 正史, 倉岡 正高, 村山 陽, 鈴木 宏幸, 大場 宏美, 藤原 佳典
    2015 年 5 巻 1 号 p. 81-86
    発行日: 2015/09/30
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は地域在住の高齢者を小学校の新入生支援ボランティアとして導入する上での問題点と意義を明らかにすることである。そこで、フォーカスグループインタビュー法を用い、以下の4点についてボランティア参加の高齢者を対象に調査を行った。 ①事前研修、②学習支援上の困難事例、 ③連絡・連携上の問題点、 ④活動の意義。 その結果、 ①事前研修に関係する支援上の問題点・課題として、「開始当初の不安、支援の範囲」、 ② 学習支援上の困難事例については、 「子どもの安全とボランティア 「の責任」、「言葉遣い」、「学級担任が(高齢者)対応に慣れていた反面、急な指示もあり、対応に戸惑った」、 ③連絡連携上の問題点としては、「学級担任と打ち合わせをする時間の必要性」が挙げられた。 ④活動の意義としては、 「子どもの教育活動に直接参加することの実感」、 「これまで見る機会のなかった日常的な教育風景を見ることができた新鮮さ」 が挙げられた。
  • デイサービス職員へのインタビュー調査を通して
    小林 美奈子, 森田 久美子
    2015 年 5 巻 1 号 p. 87-95
    発行日: 2015/09/30
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は通所介護施設 (デイサービス)を利用している認知症利用者(以下、利用者と記す)と保育園児との世代間交流プログラム (IGP)の実践について、 現状のプログラムの影響と効果を明らかにし、今後のあり方を検討するための基礎的資料とすることを目的とする。デイサービススタッフへのフォーカスグループインタビューによる質的分析の結果は、【正の側面の影響】【負の側面の影響】【IGP 継続の意義】【IGP 継続の課題】の4つの重要カテゴリーに分類され、現在のIGP継続の課題としてマンパワー不足やコーディネーターの欠如があり、 積極的な発展には至らず現状維持となっていることが分かった。 以上を踏まえ、 利用者と子どもの正と負の側面を考慮した IGP のプログラムを企画し、心身への効果を継続的に見て行くことが 今後の課題である。
  • 「健康長寿囲碁まつり」を例に
    飯塚 あい, 鈴木 宏幸, 高橋 知也, 倉岡 正高, 南 潮, 村山 陽, 安永 正史, 藤原 佳典
    2015 年 5 巻 1 号 p. 97-103
    発行日: 2015/09/30
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル オープンアクセス
    2014年3月15日に、東京都板橋区の「東京都健康長寿医療センター」において、 病院患者とその家族、スタッフを対象とした囲碁イベント、「健康長寿囲碁まつり」(主催: 日本社会人囲碁協会)を開催した。 内容は、インストラクターによる入門講座、プロ棋士による指導碁、参加者同士の対局等であった。 イベント参加者は100名以上となり、参加者の年齢は最年少で4歳、最高齢で 91歳と多世代に及んだ。参加者を対象としたアンケート結果より「イベントへの満足度」や「囲碁への興味・関心」についていずれの年代からも高い評価が 得られたことから、囲碁が世代間交流プログラムに用いるツールとして有効である可能性が示された。今後は、囲碁を活用して世代間交流を促進する仕掛けについて様々な場面で検討を加えるとともに、客観的な尺度を用いて交流の評価を行うことで、その世代間交流プログラムとしての特性と効果を明らかにし、互恵性の高いプ ログラムとしての普及の可能性を検討していく。
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