日本世代間交流学会誌
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6 巻, 1 号
日本世代間交流学会誌
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
  • 持続可能な社会の処方箋「Positive spiral of care」を目指して
    藤原 佳典, 倉岡 正高, 長谷部 雅美, 南 潮, 村山 陽, 安永 正史, 野中 久美子
    2016 年 6 巻 1 号 p. 03-08
    発行日: 2016/12/31
    公開日: 2023/05/12
    ジャーナル オープンアクセス
    Japan is experiencing rapid increase in aging population, combined with a low birthrate and decrease of total population. It may be important to promote and generalize the concept of Circle of care, which circulates multigenerational mutual support. Therefore, we propose multigenerational mutual support system based on the concept of Positive spiral of care. The concept aims at developing social policies that include the concept circle of care, which may contribute to achieve sustainable society. Multigenerational mutual support system based on the concept of Positive spiral of care should include 4 areas of support; 1) children and childrearing, 2) persons with disabilities, 3)financially disadvantaged, 4) the elderly. To circulate the multigenerational mutual support in the four areas of support continuously, we introduce a tentative plan of building a platform Integrated support center for multigenerational residents. This study investigated nation-wide advanced examples and demonstrated that these examples were categorized into four types. All the examples aimed at supporting multigenerational and individual high risk cases. From the preventive view point of these risks, multigenerational approach should be implemented to population-based approach for enhancing community.
  • 萩原 元昭
    2016 年 6 巻 1 号 p. 09-14
    発行日: 2016/12/31
    公開日: 2023/05/12
    ジャーナル オープンアクセス
    今日、ESDと世代間交流の両概念が重視される背景には地域、地球の経済、社会文化、自然の環境を持続可能な状態で、次世代に継承していくには危機的な問題状況が山積している点があげられる。本稿ではまずESDと世代間交流の概念の関連性、特にその共通点と背景としての問題状況 と必要課題を明らかにした。さらに、その課題にアプローチするのに不可欠と考えられる子どもの主体的な参画権を取り上げ、具体的には、現おとなの世代と次世代の子どもの世代の参加、参画の実践システムの構造的相違のモデルを提示した。さらに次世代の子どものESDへの参画をファシリテイトするおとな世代の好事例として「オホーツクミニタウン」と「乳幼児期におけるESD活動へのママ世代の支援」の2事例を提示した。 最後に ESDの視点から世代間交流の可能性を明らかにするためにESDと世代間交流の関連のタイプ「並列関連型」から「統合型」 への視座の転換を提案する。 具体的には次世代の子 どもの ESDへの7つのプロジェクトへの参画におとな世代がどのようにファシリテイトしたらよいかその課題性と役割の重要性を指摘してこれからの世代間交流の新たな課題と可能性について示唆し、言及した。
  • 活動に関する振り返りの内容分析と、疑似体験中の会話分析から
    高橋 知也, 野中 久美子, 村山 幸子, 安永 正史, 鈴木 宏幸
    2016 年 6 巻 1 号 p. 15-25
    発行日: 2016/12/31
    公開日: 2023/05/12
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、都市部に位置する小学校における高齢者疑似体験が児童にもたらす効果について 検討を行うことを目的とした。 2012年3月に、 「総合的な学習の時間」にて、小学校第3学年に在籍する児童62 名(男子23名、 女子 39 名)を対象に高齢者疑似体験を通じた高齢者理解を目標とした授業を実施した。 活動場面の一部を撮影しトランスクリプション化した文章および活動についての自由記述を分析した結果、 活動における相互のやりとりを通じた児童の学びの様子や、体験を通じた 「お年よりの抱える不自由さ」の気づきや補助を行う際の難しさのほか、 高齢者への共感的理解についての記述などがみられた。 一方で高齢者像が曖昧な児童や、単に 「活動が楽しかった」といった振り返りも散見され、並行して疑似体験以外の方略の導入も検討すべきであることが示唆された。
  • 森田 久美子, 青木 利江子, 小林 美奈子, 山本 晴美, 呂 暁衛, 永嶺 仁美, 佐々木 明子
    2016 年 6 巻 1 号 p. 27-36
    発行日: 2016/12/31
    公開日: 2023/05/12
    ジャーナル オープンアクセス
    全国の学童保育における高齢者との世代間交流(以下、交流)の実態調査をし、1,714か所を分析対象とした。交流を継続的に実施」している所は36.4%、交流回数は「年に1~5回」が 66.2%であった。交流を実施していない理由は【機会関心の欠如】【環境要因 】【 学童保育以外の交流】など、継続できなかった理由には【感染症】【予算】などがあった。交流経験の有無と施設の概要において、「正規職員」「高学年の受け入れ」「児童館」が有意に関連していた。現在実施または今後実施したいプログラムは「昔遊び」が最も多く、「読み聞かせ」「季節行事」などほとんどのプログラムで交流経験あり群のほうが現在実施または今後実施したいと回答した割合が有意に高かった。交流経験の有無と交流に期待することでは「高齢者の経験や知識を学ぶ」「高齢者を敬う心を育てる」など多くの項目で、交流経験あり群のほうが交流への期待割合が有意に高かった。
  • 東京都A小学校が独自に実践する「里孫制度」からの検討
    佐々木 剛, 草野 篤子
    2016 年 6 巻 1 号 p. 37-47
    発行日: 2016/12/31
    公開日: 2023/05/12
    ジャーナル オープンアクセス
    東京都多摩地区にあるA小学校は、1991年から現在までおよそ25年の長期に渡り、小学生と高齢者の間で「里孫制度」と名付けた独自の世代間交流プログラムを実施している。この取り組みは、高齢者が生活する高齢者介護施設と、B市の社会福祉協議会及びA小学校を支える地域住民で組織する協議会が運営を担っている。  本研究では、現存する資料と文献、及び活動の発足経緯を知る人への聞き取り調査により、この実践が地域に根ざしたボランティア意識により支えられていることを明らかにした。特に、このA小学校の実践は、総合的な学習の時間が制定・実施される前から共生の思想による地域社会と一体化した福祉教育を進めていた。また、この実践は地域との好循環による小学校の実践としては数少ない、地域と学校及び周辺住民との協働による事例となっている。本研究は、この「里孫制度」が作り出した地域社会との協働や共生の意識の背景を探るとともに、これからの福祉教育において必要な世代間交流プログラムの考え方と、学校教育に根づくために必要な概念を検討した。
  • 土佐町学校応援団「生涯楽習学校」の分析と小・中学生の意識調査をもとに
    溝邊 和成, 田爪 宏二, 吉津 晶子, 矢野 真
    2016 年 6 巻 1 号 p. 49-58
    発行日: 2016/12/31
    公開日: 2023/05/12
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は、 高知県土佐郡の聴講生制度に注目し、 関係資料ならびに児童生徒への意識調査から、世代間交流の特徴を明らかにすることである。調査の結果、 「生涯楽習学校」と称される聴講生制度は、「学校応援団」 登録者が小中学校の授業を受けることができる生涯学習推進システムであることがわかった。 制度を受け入れる小・中学生は、そのほとんどが学校応援団の活動等で既に高齢者との交流を経験していた。 高齢者とともに学ぶ体験によって中学生 は、高齢者の思いへの理解や教える気持ちが高まる結果となった。 また 「歴史」 「昔の遊び」 といった小・中学生の教わりたい内容やICTの使い方等高齢者に教えたいことも明らかとなり、 双方向の学びが成立する世代間交流が期待されていることがわかった。
  • 樋口 勝一
    2016 年 6 巻 1 号 p. 59-68
    発行日: 2016/12/31
    公開日: 2023/05/12
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、平成25年に兵庫県青少年団体連絡協議会より報告された兵庫県内在住者 225 人を標本とした児童期の体験についての意識調査のうち、 異世代交流体験が大人になってから 役立ったかどうかに関する7つの設問とそれら異世代交流の未体験率を分析した。  今回注目した異世代交流体験は年代、性別、 在住地域、兄弟姉妹の有無にかかわらず、どのような集団からも大人になって役立ったとされた。 中でも、これら異世代交流体験には歳を重ねるにつれて役立ったと感じるような効果があることもわかった。 また、 異世代交流体験が少ない都市部よりもそれ以外の農漁村山間部が多い地域在住者の方が役立ったと感じる人が多いことも判明した。 一方で、このような体験をしたことがないとする人が、祖父母との同居については4人に1人、 その他の体験でも10人に1人いて、 特に、 若い世代や都市部在住者、 一人っ子にその傾向が強いこともわかった。
  • 倉岡 正高, 長谷部 雅美, 野中 久美子, 村山 陽, 安永 正史, 南 潮, 藤原 佳典
    2016 年 6 巻 1 号 p. 69-74
    発行日: 2016/12/31
    公開日: 2023/05/12
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、地域に根差した様々な健康、 福祉、教育に関する施設と人材が中核となり、 様々な世代間交流を継続的に行う 「多世代循環型」 の社会を構築するために必要な多世代共創プログラムの検証と多世代循環型社会における地域のへの導入の要件を検証することを目的とし た。高齢者支援、 子ども・子育て、就労・生活困窮者(学生、 ニート含む)、 障害者支援の分野における全国の世代間交流の事例から、14の先進事例を対象に、聞き取り調査を実施した。その結果、連携における要件として、「連携を可能にする環境(場)の必要性」と「連携のための人 「材の必要性」、さらには、多世代循環型システムへの導入おいて、「自発的な運営と工夫」 「持続可能な支援の必要性」、「世代間の視点を持った人材の育成」の要件が挙げられた。
  • 効果に関する理論的考察と先進事例からみる活動上の工夫と課題
    村山 幸子, 松永 博子, 倉岡 正高, 野中 久美子, 藤原 佳典
    2016 年 6 巻 1 号 p. 75-82
    発行日: 2016/12/31
    公開日: 2023/05/12
    ジャーナル オープンアクセス
    あいさつ運動は、子どもの安全確保やコミュニティの醸成・強化、ならびに地域全体の犯罪抑止を目指した活動であり、地域における世代間の交流を促す一つの契機となり得るものである。本稿では文献レビューから、その効果を理論的に考察すると共に、実際の活動上の工夫や課題を整理した。その結果、 子どもたちにとってはあいさつ習慣の定着と社会化の促進、中高年世代にとってはジェネラティビティの醸成という点において、あいさつ運動が各世代の発達に有益な効果をもたらす可能性があることが示された。さらに、あいさつ運動を効果的に進めるための工夫として、1)単発的なイベントではなく、長期的な展開計画に基づく活動を実施すること、2)市民と行政機関、あるいは学校と地域住民が協働し、 幅広い年齢層を活動に引き入 れること、3)グッズの活用やイベント開催による活動の「見える化」 の3点が抽出された。今後は、体系的な調査研究や優良事例への聞き取り等を通じて、あいさつ運動の効果や活動実施上の工夫・課題について、より詳細かつ実証的な検討が必要になると考えられる。
  • 金盛 琢也, 亀井 智子, 山本 由子
    2016 年 6 巻 1 号 p. 83-88
    発行日: 2016/12/31
    公開日: 2023/05/12
    ジャーナル オープンアクセス
    都市部多世代交流型デイプログラムに参加している高齢者と小学生との間に生じる世代間交流を、聖路加式世代間交流観察インベントリー得点および観察された言動から、高齢者特性および活動内容別に評価した。般高齢者(n=8)に比べて虚弱高齢者(n=5)や認知症高齢者(n=3)は小学生との世代間交流が少ない傾向にあり、特に会話に関連した交流が虚弱、認知症高齢者に少なかった(p=.009)。また活動内容により世代間交流には差が見られ(p.002)異世代と向かい合う活動では交流が多かった。虚弱、認知症高齢者では小学生への注意・関心が断続的で交流に至らないことがあるため、高齢者に対する世代間交流支援では、活動内容を検討するとともに高齢者の心身の状態に応じてコミュニケーションをつなぐ支援の重要性が示唆された。
  • 異世代の関係を豊かに 都市と山村の協働のとりくみ
    藤井 修
    2016 年 6 巻 1 号 p. 89-97
    発行日: 2016/12/31
    公開日: 2023/05/12
    ジャーナル オープンアクセス
    たかつかさ保育園はUR花園団地内にあり、この地は明治政府が設立した京都蚕業伝習所、その後継の京都工芸繊維大学繊維学部の学舎の跡地である。保育活動に養蚕を導入した当初のねらいは、子どもたちにこの土地で昔は養蚕をしていたことを想像させたかったからである。 和装産業の集積した西陣地域に近く、それらに関連する高齢者との交流が生まれ、様々な技術援助が得られた。子どもたちは蚕飼育と繭の収穫、生糸と真綿づくり 染色、繭玉人形などのそれぞれのプロセスで、お年寄りの技能に触れた。さらに、この養蚕に関心をもった過疎山村の高齢者が桑栽培を営んでいた当時の記憶を呼び覚まし、 新たに桑畑を造成することになった。 養蚕は幼児と高齢者のそれぞれの生活に自然と伝統技術とのかかわりを意識させ、 発展的な交流を作りだしている。 一過性の行事ではなく、地域の産業文化との関係を活かした世代間交流の意義と課題を考察する。
  • 地域在住の高齢者と大学生による小学校出前授業の実践記録
    村田 浩子
    2016 年 6 巻 1 号 p. 99-105
    発行日: 2016/12/31
    公開日: 2023/05/12
    ジャーナル オープンアクセス
    大学におけるゼミ指導での研究の一つとして、 色々な自然素材を利用した作品制作を行っている。 蚕の飼育から繭を作り、 その糸で作品を作る試みを行うにあたって、 奈良県の山添村の大和高原文化の会会員の協力を得られることになった。 会を構成する半数以上が 70 歳以上 の高齢者であるが、かつて地域を潤した養蚕を村の次世代に伝えておきたいということで、空き校舎を利用した民俗資料館で蚕の飼育を引き受け、地域や村外の小学生など子ども達にも蚕 を飼育している様子を公開した。また文化の会、大学生たちと一緒に村内の小学校で出前授業 を年数回行った。 大学生たちは絹糸にして着物などの作品を制作し、 文化の会の総会などで披露した。 本活動は高齢者、 大学生、児童が世代間で学びあう相互互恵的な交流となり、 地域活性、文化の伝承にも貢献すると考えられる。
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