土木学会論文集F
Online ISSN : 1880-6074
ISSN-L : 1880-6074
66 巻, 1 号
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招待論文
  • 広兼 道幸, 白木 渡, 大幢 勝利
    2010 年 66 巻 1 号 p. 55-69
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/02/19
    ジャーナル フリー
     土木学会の安全問題研究委員会では,労働災害に係わる調査研究の一環として,建設業における安全教育の実態を把握すべく,「建設業における安全教育に関するアンケート調査」を実施してきた.
     本論文では,ここで取り組んできたアンケート調査の一部,特に「現場での安全教育」に関する質問項目に対する回答をとりまとめた.これらのアンケートの集計結果をとおして,入場時の受入教育および危険予知訓練(KYT)が,現場において特に効果的な安全教育であると考えられていることがわかった.さらに,安全管理の総合対策でも日々の安全教育として効果的であるとされたKYTに焦点をあて,様々な分野でのKYTの取り組みについて取りまとめた.その結果,他分野における先行事例からKYTを継続的に進めていく上で,教材(KYTシート)を工夫し共有できる仕組みが重要であることがわかった.
和文報告
  • 本城 勇介, 諸岡 博史
    2010 年 66 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
     社会基盤施設に関連した事故に関する判例などが報道されると,工学で考えられている設計問題の枠組みと,法律で規定されている枠組みに差があることを感じることがある.本研究はこのような法律の考え方と,設計の考え方の関係を明確にし,社会基盤施設に求められる安全性や技術者の責任を明らかにすることを目的とする.判例を検討していると,瑕疵に関する考え方も,徐々に安全性が相対的なものであるという認識に変化していると思われる.判例は依然通説である「客観説」をとっているが,その判断にあたり,予見可能性,回避可能性など技術的見識を加え,結果の重大性や構造物の重要性などを多面的に勘案するようになってきていると思われる.
  • 井上 雅夫, 藤野 陽三
    2010 年 66 巻 1 号 p. 14-26
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
     2007年8月の米国ミネソタ州での鋼トラス橋落橋事故の社会的影響を行政機関等の資料に基づき総括的に調査整理した.その結果,1)事故は,直接損失および間接損失(交通迂回損失,経済損失)に加え,橋梁の安全性に関する国民の不安を生んだ.その不安を受け,全米での道路橋の緊急点検,点検厳格化の連邦法案,連邦および州による追加的な橋梁改築などの多様な追加安全対策(事故前より安全の水準を引き上げ)が講じられている.2)追加安全対策は,全米で実施され,時間的にも事故から10年程度あるいは永続的に実施されるものもあり ,その総額は,直接および間接損失よりかなり大きい.3)追加安全対策のなかには,点検厳格化の連邦法案など合理性に問題があると指摘されている対策もあることがわかった.
  • 高山 博文, 増田 康男, 仲山 貴司, 植村 義幸, Narentorn YINGYONGRATTANAKUL, 朝倉 俊弘
    2010 年 66 巻 1 号 p. 132-145
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
     NATMで施工された覆工コンクリートでは,トンネル天端付近において軸方向に伸びるひび割れがしばしば確認されている.このひび割れは地圧によるものと類似するため,維持管理段階における健全度評価を困難なものとしている.本研究では,このひび割れの発生メカニズムを明らかにするため,実際の坑内環境と施工条件を模擬した模型試験とそのシミュレーション解析を実施した.この結果,吹付けコンクリート面の凹凸などによる外部拘束がない現在の覆工コンクリートにおいて,ひび割れの発生に寄与すると考えられるコンクリート自身が発生させる内空側と地山側との収縮量の差(内部拘束)を数値解析で適切に表現するためには,「湿気-応力連成解析」を行う必要があることを示した.
  • 井上 雅夫, 藤野 陽三
    2010 年 66 巻 1 号 p. 193-207
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
     米国の州交通局の道路橋設計照査制度を資料および関係者へのヒアリングにより調査し,1)コンサルタントには設計を自らチェック(照査)することが義務付けられており,設計の責任があることが契約上,また実態上も明確である.一方,2)州交通局にはコンサルタントの設計をレビュー(照査)する義務があると連邦道路法に規定されている.3)州交通局はこの義務を果たすために,レビューおよびチェックのあり方を技術基準で規定し,設計照査制度として運用している.橋梁設計の専門知識を有するインハウスを配置してレビューを実施し,そして,コンサルタントに対し,設計者とは別人の技術者による独自の設計計算の義務付けなど厳格なチェックを担保するための処置をとっている,ことがわかった.
和文論文
  • 中澤 博志, 菅野 高弘
    2010 年 66 巻 1 号 p. 27-43
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
     巨大地震時あるいは地震後において,空港の果たす役割は,被災地への緊急物資輸送や救急医療の観点から非常に重要である.しかし,実際に大規模地震が襲来した際に,どのような被害や影響を受けるのかといった被災予測が困難であるのが現状であり,事前に講じるべき対策について早期の確立が求められている.本研究では,臨海部の埋立て地を始めとする軟弱地盤上に施工された滑走路の合理的な液状化対策を検討するため,実大滑走路試験体を施工し,制御発破により地盤の液状化を実際に発生させる現場実験を試みた.本実験から得られた結果より,液状化地盤上の滑走路の挙動観測,液状化対策効果や未対策部分に関する被害の比較・分析を実施し,液状化対策の仕様について検討したので報告する.
  • 亀山 修一, 川端 伸一郎, 石田 眞二, 合田 功
    2010 年 66 巻 1 号 p. 44-54
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
     積雪寒冷地域では冬期に路面清掃を実施できないため,初春期では路面に堆積する塵埃が多くなる.札幌市では,清掃対象路線を路線の重要度に応じて6つの清掃ランクに分類し,初春期の清掃頻度を定期よりも多く設定しているが,両時期における清掃頻度の妥当性については検討されていない.本研究では,札幌市の市道で継続的に収集した路面堆積塵埃を分析し,定期と初春期における路面堆積塵埃の堆積特性と粒度特性を明らかにした.また,路面清掃従事者と一般市民を対象に実施した路面堆積塵埃美観評価試験から,「美観」の保全に必要な路面清掃頻度を求める手法を確立した.さらに,本手法によって得られた路面清掃頻度を用いて,現状の路面清掃頻度の妥当性,問題点ならびに改善策について論じた.
  • -低縦流風速の場合-
    横田 昌弘, 川端 信義
    2010 年 66 巻 1 号 p. 70-84
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/02/19
    ジャーナル フリー
     論文は,道路トンネルに対して排煙塔を設置することによる火災時の排熱効果について,1/5スケール模型トンネルを用いた火災実験を行い,その特性について明らかにした結果を報告するものである.火災実験の結果,排煙塔から排出される排熱流量は主に車路天井近傍熱気流平均上昇温度に支配され,その3/2乗に比例することが分かった.また,排熱効率は上昇温度にはほとんど影響されず,0.44~0.61の範囲になることが分かった.また,模型トンネル実験結果の普遍性の確認のため,LESシミュレーターにより排煙塔下流側トンネル長さの影響を調べたところ,排煙塔周囲の流れ場はほとんど違いがなく,排熱流量が上昇温度の3/2乗に比例する関係も同様に確認することができた.
  • 北川 隆, 後藤 光理, 田村 武, 木村 亮, 岸田 潔, 野城 一栄, 嶋本 敬介
    2010 年 66 巻 1 号 p. 85-100
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/02/19
    ジャーナル フリー
     山岳トンネルの沈下対策としてサイドパイルに着目し,その作用メカニズムや適用性を調べることを目的として剛塑性有限要素法による数値解析を実施した.その結果,サイドパイルの作用メカニズムは,トンネルの掘削により生じるすべり線と交差するように打設することにより,すべり線をトンネルから離れた場所に移動させて破壊がトンネル周辺に集中しないようにし,地表面の沈下を減少させるというものであることがわかった.また,サイドパイルが効果を発揮するためにはすべり線と交差するような長さが必要で,トンネルとサイドパイルとを剛結した場合,内部摩擦角の大きい地山である場合,トンネル上部よりトンネル下部に打設した場合に効果が高まることがわかった.
  • 槙島 修, 加藤 佳孝, 魚本 健人
    2010 年 66 巻 1 号 p. 101-111
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/02/19
    ジャーナル フリー
     断面修復工法は,コンクリート構造物の劣化・損傷部の修復および外部から侵入した劣化因子の除去と断面修復材によって形状の復元をする工法である.しかし,この工法に適用される断面修復材は,基本的な物理的性質および施工性は明示されるが,耐久性に関わる性能は明示されていない.そこで,補修後の構造物の耐久性を確保するために構造物の劣化状況とコンクリート品質から断面修復材の要求性能を定める必要があると考えた.ここでは,断面修復工法を適用する場合の効率的かつ経済的に断面修復材を選定するための性能評価の方法を考察した.また,断面修復材の耐久性に関わる性能を,基本的な試験条件による評価と,製造,施工,養生の過程で生じる性能の変化および性能のばらつきの評価により実際に施工された材料の性能を推定する方法を提案した.
  • 松川 努, 宮本 文穂, 中村 秀明
    2010 年 66 巻 1 号 p. 112-121
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/02/19
    ジャーナル フリー
     本研究では,メタ戦略の一つである従来型の粒子群最適化のアルゴリズムに対して,[1]解空間の効率的な絞り込みと,[2]粒子の移動速度に減速機能を設けるといったシンプルな改良を図ることで,これら2つの機能の相乗効果によって最適解の探索効率が向上した.また新たな試みとして,求解困難な問題と考えられていたコンクリート製下水管路の腐食劣化現象の将来予測に,この改良型粒子群最適化を適用して,腐食深度予測式を新たに構築したことを特徴とする.その際,[1]硫化水素ガスの発生量,[2]下水管内の気温の1年分の計測データ,[3]下水管路の供用年数,[4]管壁材料の種類の情報を説明変数として採用した.本論文では,この改良型粒子群最適化の有用性と,腐食深度予測手法および予測式の有効性を検証した.
  • 篠崎 嗣浩, 福田 賢司, 大石 博之, 杉原 成満, 古川 浩平
    2010 年 66 巻 1 号 p. 122-131
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/02/19
    ジャーナル フリー
     平成17年度より土砂災害警戒情報の運用が始まっているが,土砂災害の発生危険基準線を構成するRBFN値の理解や周知が不十分であることや,避難勧告等の発令において予測雨量の精度の問題からタイミングよく住民へ避難を促すことができていない事例が見られる.そこで,本研究ではロジスティック回帰モデルを用いて,土砂災害警戒情報の発表や避難勧告等に用いられている指標を,より切迫性を実感しやすい確率値という形で表現することにより,災害発生の危険性や,予測雨量に頼らない 1時間先の超過予測の設定を試みた.また,発生確率の適用性を検証するため,他地域においてモデルの検証を行い,その有効性を確認した.さらに,10分間雨量データを用いて急激な降雨変動に対して,どの程度の予測の向上が可能であるかの検討を行った.
  • 岡本 英樹, 五味 保城, 赤木 寛一
    2010 年 66 巻 1 号 p. 146-157
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
     水素は将来の環境に良いクリーンエネルギーとして,実用化に大きな期待が寄せられている.この 1つの活用形態として,埋設導管による水素ガスの燃料電池への供給構想が国内外で検討されている.これらを実現する上で,最も重要となるのが保安確保である.これには配管材料の信頼性評価だけでなく,万一の水素ガス漏出時の地中での移動範囲や速度などの移動特性に関する知見が極めて重要で,安全な設備の設計や維持管理を行う上で基盤となる.これら水素ガス供給用埋設導管の保安確保の基礎を確立するため,実大規模の水素ガスの地中漏出実験と数値解析を実施して地中における水素ガスの移動特性を確認するとともに,水素ガスの漏洩検知技術の確立を目的として各種の埋設場所・条件下での水素ガスの移動特性を調査した.
  • 大津 宏康, Suwanishwong THAMRONGSAK, 幹 拓也, 上出 定幸
    2010 年 66 巻 1 号 p. 158-169
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
     本研究は,道路斜面補強に適用されたグランドアンカー工(以下アンカーと称す)の維持補修に関して,目視点検結果を用いて腐食等に起因する劣化過程を表現すると共に,路線単位での補強・補修を実施する工法選択および優先順位付けを検討する試案を示すものである.具体的には,既存のランク分けによる目視点検結果を用い,そのランクの変動状況をマルコフ過程を用いてモデル化する.このモデル化により算定される遷移マトリックスを用いて,点検結果に基づく路線毎での統計的なアンカーの現在状態を検証するとともに,その将来状態のシミュレーションを実施する.さらに,アンカーの補強・補修を表現するモデル化手法を適用し,検討対象路線毎での最適な補強・補修方法の選択,および補強・補修を実施する路線の優先順位付けが可能となることを示す.
  • 石井 裕泰, 檜垣 貫司, 伊藤 一教, 木村 政俊, 小山 文男
    2010 年 66 巻 1 号 p. 170-180
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
     自立性,希釈抵抗と充填性に優れた可塑状グラウトが,建設工事における空洞充填工事で実用化されている.充填範囲,充填圧といった施工仕様の検討にあたっては,実施事例,実験的検討に基づく知見に加え,理論的,数値解析的検討が有効と考えられる.本論文では,可塑状グラウトの流動挙動に適した数値流体解析手法を提案し,その適用性を検討した.静置状態や一様流動状況に対しては,数値解析結果と理論値の比較を通し手法の妥当性を確認した.また,充填試験のシミュレーションでは,解析結果が充填状況や充填圧を精度よく表現できること,及びセメントの水和反応の影響を念頭に置いたレオロジー変化を導入することで,実測に見られた注入圧~注入量の関係をうまく説明できることを示した.
  • 津坂 仁和
    2010 年 66 巻 1 号 p. 181-192
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
     日本原子力研究開発機構は,北海道幌延町にて,堆積軟岩に内径4.5mと6.5mの2本の立坑を掘削中である.地層処分場の建設では,地上約3km四方に複数の大深度の立坑を順次施工することが想定されている.これらの立坑群を安全かつ合理的に設計・施工するために,幌延町での立坑掘削では情報化施工技術の開発を行っている.坑道掘削の情報化施工には,日常的な施工管理を念頭に,内空変位計測や支保部材の応力計測などの結果を迅速に評価し,未施工区間の掘削に伴う岩盤挙動を予測できる指標が必要である.本論文では,これまでの立坑掘削で実施した内空変位計測と岩盤観察の結果をもとに,初期変形率,断面変形率,岩盤の弾性係数と初期地圧の比,非弾性挙動の程度の関係を分析し,その結果を立坑掘削における岩盤挙動分類として提案した.
和文ノート
  • 吉田 武
    2010 年 66 巻 1 号 p. 208-213
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
     道路管理者は,道路構造物維持管理における計画的維持の重要性を主張する一方で,対症的維持に日々追われている.本稿では,対症的維持が計画的維持に劣らず重要であるとの認識の下に,対症的維持の意義と改善が論じられている.対症的維持は,受益者および納税者としての道路利用者の満足度を向上させ,市民と道路行政との信頼関係を改善する好機と位置づけられている.コスト縮減,所要時間短縮,および通報者の待ち時間短縮を改善目標とした改善の枠組みが提案されている.
  • 吉武 俊章, 長岡 克典, 宮本 文穂
    2010 年 66 巻 1 号 p. 214-219
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
     本研究は道路施設の維持管理において,現況把握の重要な要素となる目視巡回に着目し,車両走行映像と路線位置,道路台帳を一元的に管理する協同点検作業環境の開発を行った.システムは車載の民生用ハイビジョンビデオカメラとWebシステムにより構成される.これにより,ユーザが地図画面から路線を選択し,道路台帳ごとのセクションにおいて舗装だけでなく,道路付帯施設,法面,植物の繁茂状況,道路占有物なども視覚的にとらえることが可能となる.そのため,通常の車上目視に比べて見落としの減少や複数人での確認による客観的な評価が可能となる.また,映像を整理しデジタルアーカイブ化することで経年変化の比較や道路計画策定時に類似する道路線形の視覚的な走行イメージの疑似体験も可能となる.
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