土木学会論文集F
Online ISSN : 1880-6074
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66 巻, 3 号
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招待論文
  • 山下 久男, 平田 尚, 木下 雅敬
    2010 年 66 巻 3 号 p. 319-336
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/20
    ジャーナル フリー
     1954年に塩釜港桟橋で鋼管杭が使用されて以降,我が国では港湾構造物をはじめ道路橋や建築物の基礎として鋼管杭は大量に用いられてきている.鋼管杭の強靭で衝撃に強い性質が施工機械の大型化を支える形で,高度経済成長の要求に応えた.1960年代に入ると公害問題が問題視され,中掘り系の鋼管杭工法の開発が進み,近年では,鋼管ソイルセメント工法や拡大根固め球根工法等の大支持力杭工法も開発された.一方で,直打ち工法も,無公害の回転杭工法や,硬質地盤にも沈設可能な工法が開発されるなど,多様化する市場要求に応じた工法が開発されている.杭の施工法の開発は杭の設計技術・構造形式とも互いに影響しながら発展している.本稿では,鋼管杭工法の変遷と最近の技術開発の状況を概観するとともに,今後の課題について展望する.
和文報告
  • 三木 千壽, 鈴木 啓悟, 小野 潔, 柳沼 安俊
    2010 年 66 巻 3 号 p. 337-350
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/20
    ジャーナル フリー
     単弦ローゼ桁橋の鉛直材が鋼床版に貫通する溶接部位において,疲労損傷の疑いを持つき裂が発見された.これらのき裂は溶接割れか疲労を原因とする可能性が高く,特に後者の場合は適切な対策が必要となる.本研究は,き裂の原因を特定し,そのメカニズムを明らかにすることを目的として,コア抜き調査と応力測定を行った.コア抜き調査の結果,ルート部に未溶着部の存在が確認され,また破面観察からは疲労き裂の疑いのある破面が見られた.応力測定では,活荷重のレベルとその作用位置に対する応答に着目し,活荷重が損傷部位に及ぼす影響を明らかにした.
  • 稲垣 博信, 水野 裕介, 藤野 陽三, 河村 圭
    2010 年 66 巻 3 号 p. 351-359
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/20
    ジャーナル フリー
     社会基盤施設の合理的な保全・運用が必要とされている中で,大きな課題の一つはその保全状況や補修・更新投資の水準を表す定量的指標の構築にある.本研究では,橋梁を例にとり,地方自治体の維持管理の実態をアンケート,ヒアリングを通じて調査した.アンケートからは,1)各自治体の保有する橋梁資産に比べて維持管理・更新関連の予算が非常に少なく,2)データの整備状況や点検実施に関しても全般的には整備がまだ進まない機関が多いことがわかった.また,ヒアリングからは,3)データ整備状況に関し,諸元や点検結果の保存状況に比べ,補修等に関する整備が非常に遅れていることがわかった.さらに,橋梁の健全度と補修・更新投資とには負の相関があり,維持管理・更新への投資効果があることを示した.
  • 中道 正人, 清宮 理, 田端 竹千穗, 江村 剛, 木村 誠, 森田 嘉満, 河井 悟
    2010 年 66 巻 3 号 p. 366-381
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/20
    ジャーナル フリー
     空港における滑走路,誘導路と道路との交差では,航空機の安全通行の確保からアンダーパスで立体交差させている.現在建設中の関西国際空港 2期空港島は,長期にわたり大きな地盤沈下が継続するため,アンダーパスの建設にあたっては,沈下を考慮するとともに,ドライ施工が可能な構造としてPC蓋掛け構造を採用した.
     本研究では,航空機荷重(LA-0)が作用する広幅員のPC蓋掛け版の設計法および施工法を検討し,実際の構造物における重ダンプ載荷実験や大型航空機(A-380)走行時計測により妥当性を検証した.
  • 中村 俊一, 鈴村 恵太
    2010 年 66 巻 3 号 p. 402-411
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/20
    ジャーナル フリー
     2種類の橋梁用ケーブル試験体を用いて,腐食させたケ-ブルに6種類の補修方法を施し,その防食効果を実験的に研究した.19本平行線ケーブルを用いた腐食促進試験によれば,エポキシ樹脂を充填した補修法と送気乾燥による補修法が最も効果的であった.また,内層鋼線の腐食減量は外層鋼線より著しく小さかった.一方,7本より線ケーブルを用いた腐食促進試験によれば,新品のより線ケーブルは4ヶ月間の腐食促進試験により断面積が約2.2%減少した.無防食試験体はその後も腐食はさらに進行したが,6種類の補修を行ったすべての試験体は,腐食の進行が抑止された.したがって,腐食したケーブルであっても適切に補修すれば長寿命化が可能であることを見出した.
  • 有賀 貴志, 矢吹 信喜, 城古 雅典
    2010 年 66 巻 3 号 p. 432-446
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/20
    ジャーナル フリー
     土地造成工事や道路工事を行う際,切土と盛土のバランスを考慮した土量配分と土砂の運搬距離が最短となるよう繰返し検討が行われる.2次元の設計図を用いる従来の方法は,平面的な収まり,擁壁等の設置の判断は技術者の能力や経験に依存し,また土量計算は複数の検討案に対して繰返しの作業が生じるため多大な労力と時間を要する.本研究は,安価で汎用性のある土工シミュレーションツールの開発を目的とし,フリーソフトの3次元CADおよび汎用表計算ソフトを用いた「ブロックモデル」による土工シミュレーションおよび積算に関するシステムを開発した.さらに,サンプル地形を対象として,土工シミュレーションを行い,ブロックモデルの操作による完成形状の確認,プログラムによる土工分類の判定,積算および工程表の作成までできることを示した.
  • 金澤 博, 西 恭彦, 野々村 政一, 西崎 晶士
    2010 年 66 巻 3 号 p. 447-458
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/21
    ジャーナル フリー
     山岳トンネルを高速で掘進することは,コスト縮減と工期短縮に大きく寄与する.そのため,著者らは,軟岩での機械掘削を対象として支保を含めた高速掘進施工法の研究を行った.この工法は,個々の施工機械の能力を高めたものを採用し,掘削はトンネル断面を左右に分けてベンチカットし,掘削とずり積を併行に行う方式を用い,高速掘進の補完として鋼製支保工を省略し初期高強度を発現する吹付けコンクリート材料を用いた支保を併用することにした.
     新幹線の峰山トンネル工事で,この高速掘進の試験施工を実施した.その結果,最高月進304mの国内記録を達成でき,高速掘進施工法の実用性と有効性を明らかにすることができた.
和文論文
  • 貝戸 清之, 松岡 弘大, 渡辺 勉, 曽我部 正道, 藤野 陽三
    2010 年 66 巻 3 号 p. 382-401
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/20
    ジャーナル フリー
     振動モニタリングを継続的に実施して同定される振動特性の相対的な変化に基づいて,社会基盤施設の異常を早期に検知することができれば,維持管理の効率性は飛躍的に向上する.本研究では,毎日定刻に,ほぼ均一な速度と荷重を持つ列車が走行する鉄道橋に着目し,走行列車荷重を利用した振動モニタリング手法を提案する.鉄道橋への入力となる列車荷重の計測が困難であるために,はじめに未知外力作用下における振動特性の同定手法を検討し,振動計測システムの構築を行った.さらに,提案手法の有効性を検証するために,実際の鉄道橋2橋を対象としたフィールド試験を実施し,固有振動数と振動モード形を同定するとともに,2,3の分析を通して固有振動数が異常検知指標となりうる可能性を実証的に示した.
  • 大堀 勝正, 森地 茂
    2010 年 66 巻 3 号 p. 412-431
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/20
    ジャーナル フリー
     近年,多くの土木官庁で大規模な人員削減が行われており,限られた人的資源の有効活用が重要性を増している.特に,多様な行政需要に直接携わる維持管理部門においては,人員が減少する中で供用サービスを保持することが緊急の課題となっている.そのため,人材育成など中長期的観点もふまえた上で,出先機関ごとに異なる行政需要に対して適正な人員配置を実施するための理論的根拠が必要となっている.
     本論文では,こうした課題を総合的に解決するため,行政需要,個人・組織の能力,業績を定量的に評価し,出先機関への職員の最適配置手法を提案する.さらに,考察した手法の応用例の報告を行う.
  • 藤田 悠介, 中村 秀明, 浜本 義彦
    2010 年 66 巻 3 号 p. 459-470
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/21
    ジャーナル フリー
     本論文では,光の変動や影あるいは壁面に汚れのある画像に対して,二つの前処理と,閾値処理の問題に対する二段階の抽出処理からなる高精度なひび割れ自動抽出法を提案する.本手法では,撮像系の条件により画像の分解能を指定することで,画像処理のスケールパラメータの設定を容易としている.また,前処理の多重スケール線強調処理により,抽出したひび割れを幅別に分類することが可能である.さらに,二段階の抽出処理では,確率的弛緩法を適用することにより閾値のようなパラメータの設定を不要としており,段階的閾値処理により高精度な抽出を実現している.光の変動がある状態で汚れなどの見られるコンクリート表面を撮影した画像を用いた実験により,提案手法は従来法や従来の閾値処理と比べて抽出性能が高いことを示している.
和文ノート
  • 水野 裕介, 片岡 慶太, 松本 好弘, 長山 智則, 藤野 陽三
    2010 年 66 巻 3 号 p. 360-365
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/20
    ジャーナル フリー
     本研究は,営業列車による軌道モニタリングシステムにおいて位置同定精度を向上し,軌道変状を検出するための手法を開発したものである.はじめに,走行位置同定の高精度化を行った.まず,簡易な GPS (Global Positioning System) 受信機では測位に数メートル以上の誤差があるため,測位点を既存の地図データにおける軌道上の最短地点に配置し,誤差を低減した.また,レール継目の線路キロ程をもとに,位置補正を行った.さらに,同じ区間における計測ケース毎の加速度応答に関して低周波成分の相関を用いて,位置同定精度を向上させた.次に,鉛直成分の加速度応答と軌道変位量との比較により整合性が確認された.また,修繕区間における修繕前後の軌道変化を加速度応答から捉えることができた.
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